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知と空気の蓄積 「去年の掲示板で、あなたの先輩が同じことで叱られているよ。見てごらん。」
No:1940
投稿者:太田 健一(3期生)
投稿日:2008/09/02 Tue 23:49:39
昨年、現役生の方にこう伝えたことがありました。
自分では何気ない一言だったのですが、はたと初期掲示板での小山さんの言葉を思い出しました。
「纉c君への岩切君からのコメントは纉c君に向けられたものではないよ。
当然、小林君にも向けられたものなんだよ。」(bP39「あのねぇ」)
小山さんの書き込みを初めて読んだときには、読んだのが書き込みから既に数年経っているにも
かかわらず、何故か当たり前のことに気付きませんでした。
掲示板で教えたり、注意したりすることは、同じ時間を共有する他の者への空間的な影響を与える
ばかりでなく、時間をも超えた拡がりを持ちます。
これまで小山さん、杉山さん、岩切君、佐々木さんなど、様々な卒業生や先輩が書き込んできた
指摘や注意は、そのときに読んでいる人ばかりでなく、顔も見たことのない未来の後輩に対して
向けられたものでもあることに気付かされます。
掲示板を遡ってみると一目瞭然であるように、過去には段落も改行のないゼミ報告レポートや、著者名
表記すらない本の紹介なども数多く書き込まれていました。それでも私が現役の頃よりは格段に
全体的なレベルは向上しているのですが、やはり初歩的な内容で注意されることが多かったように思います。
現在ではそのような書き込みは皆無となりました。
もちろん、師範代の渡辺さんや佐々木さん、また大野さんのような先輩が(先生やOB/OGに同じ
ことを言わせぬよう)口酸っぱく指導されてきたことも大きいのでしょうが、この掲示板がゼミで
学んだことを蓄積する場として機能していることの証左だと思います。
暗黙知を形式知に転換するのがこの掲示板であると言っても良いでしょう。
完成物である『創』と異なり、掲示板では意見されたり、注意されたり、反論したり、訂正したりと
いった生き生きとしたやり取りがタイムリーに記録されていきます。「ゼミの風景」の記録としては
これに勝る媒体はないように感じられます。
私は今回の移管作業を通じて過去のすべての書き込みを再度「投稿」したわけですが、それは正に
ゼミの風景を垣間見、またその時代に流れるゼミの空気を吸う作業でした。そして、様々な指摘、
誤り、注意から学ばされることが多々ありました。私自身がおこなった注意や指摘についても、
ああ配慮が足りなかったな、言葉が足りなかったな、と反省させられます。
中には恥ずかしくて消したい書き込みもありますが、記録に残っているからこそ、そこからいつでも
学ぶことができます。
私は掲示板にデビューしてから2回目の投稿で、次のように書き込みました。
「1期生がゼロからスタートしたとするならば、10期生ならば1から、20期生ならば2から
スタートできるようになるのがゼミとしての蓄積です。
現役生の方々の文章などを拝見しますと、私や岩切君にこんな文章が書けただろうか、と思うことが
あります。
ですがこれは資質や力量の個人差の問題ではなく、正にゼミとしての蓄積の所産なのだろうなと
捉えています。「これぐらい出来て当たり前」のレベルが年々上がっていくというのは組織としては
理想的です。」(bP012「Re:浩友会報に念う」
この書き込みをしたときにはまだ過去ログを読み返してはいなかったのですが、幾度となく読み返す
うちに、この掲示板こそが蓄積なのだと分かりました。
言葉の「消費」に終わる掲示板であるならば、データを移管するという発想は生まれませんでした。
「蓄積」を担う掲示板であるからこそ、データを移管せねばならず、また無理してでもログナンバーは
そのままにしなければなりませんでした。
改めて思います。
過去ログのナンバーに意味がある掲示板がどれほどあるだろうか、と。
最後に、指摘・注意することがなくなったというのは、後輩のレベルが上がった一方で、裏返せば
先輩の力量が相対的に伸びていないことを示します。私自身、良い書き込みだな、何かレスポンス
したいけど何から始めれば良いだろう、と筆が止まり、歯がゆい思いをしたことが何度もありました。
三戸ゼミは、皆が一生を通じて成長を目指す場であり、社会人・学生とも学ぶ身であることに
変わりはありません。ただ、掲示板においても社会人には社会人の関わり方・振舞い方があるはずであり、
立場と役割を踏まえて先輩たらんとする事、高い壁であろうとすることが自らの成長を促すはずです。
それが自分を大切にすることであり、人を大切にすることに繋がるはずだと信じています。