No.1423 WOWOWといえば…… 投稿者:木器 投稿日:2023年09月21日 (木) 04時56分 [ 返信] |
おたぐりさんの情報で思い出したのは、普段見ていないWOWOWで傑作があったなーということです。
ちょっと前の話になりますが、浅田次郎の原作『黒書院の六兵衛』というのを、吉川晃司の主演でドラマ化したものがありました。私は普段、WOWOWは見ていませんが、娘の婿さんが折り紙付きの吉川ファンで、WOWOW会員にもなっていたので録画してあったのです。
なんでこんな話になったかと言えば、先日最終回を迎えたテレビドラマ『トリリオンゲーム』に吉川が重要な脇役で出ていて、じつにいい味を出していたので、こういう役者に黒澤明・三船敏郎の傑作『椿三十郎』をやらせたら面白いと思うんだけどなー、と婿さんに話したところ、それだったらWOWOWでこんなのがあったよ、とコレクションから出してきてくれたのが、6回分のDVD『黒書院の六兵衛』でした。
「えー?! そうなの、見る見る!」と言って借りてきて、さっそく全部見てしまいました。 いやー、面白かったー。全部で5時間以上、あっという間でした。
ストーリーはこんなですが……。 ――慶応4年、幕府と新政府の談判が成り、江戸城は不戦開城と決した。官軍側についた尾張藩の気弱な下級藩士・加倉井隼人(上地雄輔)は、城の引き渡しを支障なく進めるための先遣として城内に検分に入る。しかし、将軍直属の警護隊・御書院番の番士・的矢六兵衛(吉川晃司)が居座り…。――
つまり江戸城明け渡しのためすべての人が去っていく中、この吉川が演じる的矢六兵衛だけが、なぜかただ一人江戸城に座り込み、訳を聞こうにも脅そうにも口を閉ざし、動こうとしないのです。 まもなく京都から勅使が来るし、そのうち天皇もという江戸城で悶着があってはいけない、という西郷のきついお達しで、手荒なことはできません。
この一言も口をきかず端座しつづける武士を、吉川が見事に演じ切っています。西郷のほか大村益次郎や木戸孝允らが次々に説得にかかりますが、まったく応じずにわずかな表情の変化を見せるだけです。
この無言での演技が見事でした。わずか半眼に開いた目と、口元や首周りの筋肉の動き、とくに定時に与えられる握り飯と汁の粗末な食事を食べるときの所作には、見守る上地らが次第にほれぼれするようになる美しさがありました。
この沈黙と端座が何を意味し、どう結末するのかは、とても書ききれないので諦めますが、もう何年も前の作品にこうしたひょんなきっかけで出会えたのを幸運と思うしかありません。
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