我が国が、遣隋使や遣唐使を派遣してその文化を取り入れた先である中国は、漢族ではなく異民族が統治した王朝が、珍しくはなかった。
晋王朝の皇帝は漢民族でしたが、その後は漢民族以外が出自とされる皇帝による隋、唐、宋、元が続いた(但し、皇帝の出自については諸説あり)。
14世紀に漢民族による明王朝となりますが、中国最後の王朝・清の皇帝は女真族(満州族)であった。つまり、住民の多数である漢民族は、長い間、他民族の血統も入っているといわれる皇帝に支配されてきたということになる。
結果的には支配者である他民族の方が、被支配者である漢民族に同化していくというのが興味深いところである。支配されることも多かった漢民族が、なぜ、今日まで中国の中心なのであろうか? 以下の二つの理由が考えられます。
1.数の力
圧倒的に人口が多い。これが漢民族が中国の中心であり続けたシンプルかつ強力な理由です。現在、世界全人口の2割近いとされる漢民族は、秦、漢の時代は6000万人ほど。その後、他民族の支配で増減を繰り返していたが、18世紀の終わりには2億人に達した。
19世紀になり、清の支配下で国内が安定し、食糧事情が良くなると、4億人を突破。現在は中国、台湾、シンガポールを中心におよそ14億人の漢民族がいるとされている。
2.漢字の力
漢民族が作り出した「漢字」は、公式文書に用いられ、文化を形成してきました。
『老子』など現代に残る優れた思想書、李白、杜甫など数々の詩人が詠んだ詩歌、インドから移入され中国で翻訳された仏教の経典はどれも漢字で書かれていますし、政治の中枢たる官僚になるための最難関のテスト「科挙」では、どんな皇帝の治世であろうと、漢文のスキルが必須であった。
彼らが残した政治的な文書はすべて漢字で記録されている。「文化人、政治家、権力者はみな、漢字ありき」――これが中国の歴代王朝の「当たり前」であった。
もちろん領土が広大ですから、庶民の話し言葉には地方差があった。今も北京語と広東語はかなり違う言葉である。
しかし、書き言葉は昔から漢文で共通しており、どの地方の人でも漢字は読めます。宗教的なものではないとはいえ、圧倒的な「共通語」として機能した漢字による漢文は、コーランが書かれたアラビア語、さらに先にお話ししたラテン語と言語としての立ち位置がどこか似ています。
漢字という文化的・言語的な最強ツールを持っていたのは、漢民族が中心であり続けた大きな理由です。
なぜいま、「民族」を学ぶべきなのか?
中国は、彼らが主張するような、公平で民主的で継続性がある民族によって統治されているとはとても思えない。
「世界の多様な価値観を理解すべき」と、このような声を聞くことが最近増えましたが、多様な文化・価値観を理解するためには、民族について知っていることが重要となる。
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私が書いた小説 「夏風越の(なつかざこしの)」
https://kakuyomu.jp/works/11773...「鵯越え」・・・・「夏風越の)」の続編です
https://kakuyomu.jp/works/11773...「くぬぎ越え」・・・「夏風越の)」の続々編です
https://kakuyomu.jp/works/11773...「遺された難所 疎にして越え難きもの」・・・時々書き足しています
https://kakuyomu.jp/works/16816...