No.749 「ヴィオロン」か「ヸオロン」か 投稿者:木器 投稿日:2022年11月21日 (月) 08時39分 [ 返信] |
柏雀さん、興味深いお話ありがとうございます。この世界から離れてとんと芸術味のない生活をしている身にとっては、「干天の慈雨」のようにうれしい話題です。
なるほどねー。たしかに、この見事に5音で整えられた上田敏の名訳に、なぜか、一か所だけ6音の「鐘のおとに」がまぎれこんでいる。この違和感と言うか、魚の骨感と言うか、気になるとほっておけない杉下右京さん心理が働きますよね。
日ごろ、短歌や俳句といった定型詩を愛している身にとって、この上田敏の訳は、有名なカール・ブッセの「山のあなた」とともに、数少ない暗誦して心地よいリズムの詩の一つでした。 短歌や俳句には字余り字足らずがゆるされているというものの、やはりせっかく五七五や五七五七七のリズムが磨き上げられてきたよき伝統が財産になっているのですから、ぜひとも歌人俳人にはこのリズムを守ってほしいと思います。 名人たちの傑作と言われる作品の中にも、字余り字足らずが散見されますが、いくら傑作と言われても、小生などはリズム狂いだけでいやになってしまいます。
ですから、この上田敏の「鐘のおとに」も、たしかに仰るような魚の骨がのどに刺さるような感じが残ります。なぜあえて上田敏はここに魚の骨を残したのか。それを見過ごさないで考察された労と結論に心から敬意を表します。
あ、ところで忘れていましたが、上田敏の原文を見たら「ヴィオロン」が「ヸオロン」になっていました。この「ヸ」が難物ですね。 キーボードのどこを打てば出るのか。「ヰ」はとりあえず出せましたが、この濁点はどう付けるのか。 (今このヸはネットですでにあるものをコピーさせていただきました)
これも調べたらやっとわかりました。普段使っているローマ字入力でなく、「かな入力」に切り替えると、@のキーで濁点「゛」だけが出ます。しかし全角しかないので字間が「ヰ゛オロン」と不自然ですがしかたありません。 「ヰ゛」はかつてラテン文字の vi の翻字として使われた(この訳もそう)とのことですが、現在は「ヴィ」を用いることになったようです。
それと題名が「落葉(らくよう)」だったとは知りませんでした。シャンソンの「落葉」は有名ですが、こちらは「おちば」、上田敏のこの訳も、最後の「落葉」は「らくよう」でなく「おちば」なんですね。 フランス語の原詩を見たら、シャンソンの題名「落葉」は複数形でしたが、こちらの原詩、ヴェルレーヌの原題は「秋の歌」、しかも最後の「落葉」は単数形でした。 いかがでしょう。柏雀さん、このあたりも右京さんごっこで細かいことですが、ご意見を伺えたらと思うのですが……。
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