混迷を極める世界情勢、なかでも泥沼化しているウクライナ戦争の行方は、まったく光が見えなくて人類の知恵のなさ、無力さにがっかりします。 とくに、わが日本という国が何の役割も果たせていないことに対して、慚愧の想いを持っている人も多いでしょう。
そんな中、2020年から今年4月11日までウクライナの駐日大使を務めたセルギー・コルスンスキー氏が、離任にあたって読売新聞(2025年4月12日朝刊)に寄せた手記に、日本人としての自覚を新たにさせられる部分が多々あると思い、全文、紹介させていただきます。
とくに前半、導入部の後、「新たな国際秩序の創設に向け、日本はより重要な役割を果たすことが可能であり、果たす必要がある」として、5つの日本人の特質を挙げているところから、日本人はもっと積極的に世界に関わらねばという思いが募ります。
「修正主義」抵抗 日本に期待 前駐日ウクライナ大使 セルギー・コルスンスキー氏(寄稿)
我々は今、力による一方的な現状変更の試みが横行するという意味での「修正主義」の時代にある。手法は違えど、驚くべきことに、その動きは米国、中国、ロシアで同時に起きている。
欧州、日本、韓国、豪州、ニュージーランドは結束し、法や相互尊重、外交に基づく平和的共存の原則を守り、発展させるべきだ。物事を変えようとすることに何ら問題はないが、武力を用いることは徹底的に排除しなければならない。
新たな国際秩序の創設に向け、日本はより重要な役割を果たすことが可能であり、果たす必要がある。模範として、世界と共有できるものが数多くあるのだ。
第一に、政治的責任を追及し、不正に不寛容だ。第二に、挑発に対しては静かに、しかし力強く抵抗する。第三に、規定や合意を履行するに際して、信じがたいほど細部に気を配る。第四に、自然や近隣諸国との共存を追求し、力による現状変更への反対を貫く。第五に、企業の社会的責任が徹底され、社会の団結に貢献している。
世の中に完全な社会などないが、人々が互いを尊敬しあう社会の方が良き模範を示せるだろう。
中国は台湾への脅迫や、南シナ海の周辺国に対する威嚇などをやめさえすれば、その描く未来像にいくらかの支持が得られるかもしれない。
ロシア版の「修正主義」は、各国が「偉大なロシア」を受け入れるか、さもなければ消えうせるかという原則に基づいている。国際秩序を強制的に変えようとするロシアの企ては、人類への明白かつ目下の脅威だ。
最も予期せぬ「修正主義」の動きは、ホワイトハウスから押し寄せた。トランプ米大統領は、単に自身の前任だけでなく、米国のこれまでの歴史までをも完全に否定する政治的目標を掲げている。
これまでの国際秩序は再考されており、「米国第一主義」は「米国孤立主義」に向かっている。我々を自由へと導いてきたかがり火の勢いは既に弱まっており、近いうちに完全に消えてしまうかもしれない。同志国との連携のもと、日本は光をともし続けなければならない。(英文は同日のジャパン・ニューズに掲載)
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