No.2450 江戸の仕掛人 投稿者:木器 投稿日:2025年01月21日 (火) 08時14分 [ 返信] |
今年の大河ドラマ『べらぼう』が、だんだん本調子になってきたようですね。
まずはとにかく、現今の出版業界の急下降ぶりからして、まるでその逆をいくような本屋・版元の急上昇ものがたりであるだけに、何とかあやかりたい思いもあって、一生懸命見ております。
主人公・蔦重の活躍や発想の中に、様変わりしたご時世ではありますが、なにかこれからの業界にカツを入れてもらえるようなものがないものかと……。
そんな中、かねてより親しい仕事仲間の著述家・城島明彦さんが、目の覚めるような力作・快作を出版されました。題して『江戸の仕掛人 蔦屋重三郎』(ウェッジ刊)です。
歴史上の人物というより、現在の社会や企業にも大いに刺激を与える「理想の起業家像NO1」としてとらえた生き生きとした視点が興味を惹かれます。
この視点については、下の裏カバーを見ていただくと一目瞭然です。
すでにドラマでもあったように、廃れかけた吉原を活気づけた「千客万来仕掛人」から始まって、平賀源内の多芸多才さや、山東京伝の文画二刀流にいち早く目を付けた「文芸仕掛人」「異才発掘仕掛人」、黄表紙で大躍進した「新ジャンル仕掛人」、空前絶後の狂歌ブームを演出した「イベント仕掛人」や、歌麿の光と影、写楽の謎と真実を見抜いて売り出した「浮世絵仕掛人」や「大首絵仕掛人」などなど……。
そして最終的には、その奇想天外な発想と商才の行く着くところにあった本屋・版元としての大成功、「重版仕掛人」を経て、ついには江戸文化のその先を予言するような「未来仕掛人」となって生涯を閉じたのでした。
「仕掛人」と言えば、当然、あの池波正太郎さんの傑作「仕掛人・藤枝梅安」を思い出します。 この池波さんの作り出した「仕掛人」は、もちろん人知れず金で殺しを請け負うプロの殺し屋のことで、この作品の映画やドラマ化でしきりに言われた「仕掛けて仕損じなし」のナレーションが評判になりました。
蔦重はもちろん殺し屋ではありませんが、城島さんの描く蔦重は、まさに顧客の心を悩殺する凄腕の仕掛人であり、「仕掛けて仕損じなし」のプロの腕前を存分に発揮したということなのでしょうね。
池波作品では、もちろんこの仕掛人と並んで鬼平が有名ですが、ドラマにもすでに顔を出している長谷川平蔵も、この蔦重とほぼ同時代人です。 生年では平蔵が5つ上、平蔵が松平定信に命じられて火付盗賊改方になったのが42歳のときと言いますから、このとき蔦重は30台の半ば、そしてそれ以降のあと10年近くがお互いの活躍時期に重なりますね。 田沼意次はこのころまで権勢をふるって失脚、定信の時代になりますから、その絡みも興味があります。
この本は、ドラマの進展とともに、蔦重のこの凄腕の仕掛けを追いかけるのに、絶好の案内書になると思います。ぜひ一冊、とくにこの1年の座右の書にお加えください。
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