No.2283 藤沢周平作品の映画化ハテナ 19 投稿者: 木器 投稿日:2024年12月01日 (日) 05時37分 [ 返信] |
改めて言えば、私が藤沢作品、とくに短編の映画化をまえから切望していたのは、短編といえども、いや短編であるからこそ、そこには描きたいことがより明確に示され、その描きたいことに対して、藤沢作品ならではの過不足ない描きこみがなされているため、一作で十分おもしろい映画になりうると思ったからである。
言い換えれば、遠藤さんが言うような「行間」に秘められた情報が多いから、原作をよく読み込み、行間情報を汲み取っていけば、余計なほかの作品を接木しなくても、その作品のよさが十二分に生かされた魅力的な映画ができあがると思っていたからである。
遠藤さんの文章にもあるが、この短編は文庫本でたった二十ページちょっとしかない。それを丹念にシナリオ化しているから、たとえば人物だけでなく、庄内の自然、山や川、野や花などが余裕を持って描かれる。
弥一郎、東山紀之の動きにも、えもいわれぬ風格が備わる。ぱりぱりの現代っ子だったと思っていた田中麗奈、野江の眼差しが、優しいだけでなく遠く深いのもまた、この原作を大事にするところから出ていると感じた。
「本のページをめくるように父の原作の映画を観たのは初めての経験でした」という遠藤さんの言葉がすべてを語っている。 何はともあれ、藤沢作品の映画化で納得できる作品に出会えてほっとしている。
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