No.2266 藤沢周平作品の映画化ハテナ 14 投稿者: 木器 投稿日:2024年11月28日 (木) 20時16分 [ 返信] |
第二の点は、かなり決定的である。 映画では、木剣で打ち落とされたおびただしい虫の死骸や、虫の羽音に耳を澄ませ、神経を研ぎ澄ませるひそかな修練は、まったく出てこない。
孤独だが誰にも気づかれない、鬼気迫る必勝の工夫というものが、ここにはあるはずなのにどうしたというのだろうか。 実際に虫を撃つ訓練法が有効かどうかは、小説にしろ映画にしろ関係ない。それを意識的に排除した理由を知りたい。
映画にも、もちろん木剣の素振りは出てくるが、それだけでは修練の進度や工夫はわかりにくい。 そのかわり、原作にない剣の師匠・木部孫八郎(緒形拳)にすがる場面が出てくる。 ここで新之丞はいくつかのアドバイスを受け、「ともに死するをもって、心となす。勝ちはその中にあり。必死すなわち生くるなり」といった悟りのようなものを得る。
しかしそうした精神論よりも、気配を消した相手の攻撃を、見えぬ目で瞬時にとらえて勝つための感覚の練磨のほうがよほど説得力があると思う。
師匠の教えにしても、こうして藤沢氏が創出した原作の工夫を、わざわざ換えてまで入れる価値のあるものだろうか。 第一、こういう大事な点を削除するなら、なぜこの作品を原作に選んだのだろうか。
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