No.2252 藤沢周平作品の映画化ハテナ 7 投稿者:木器 投稿日:2024年11月26日 (火) 10時04分 [ 返信] |
映画化三部作の第二作も、原作は題名と同じ『隠し剣 鬼ノ爪』だけでなく、やはり短編の名作『雪明かり』が入っている。 嫁ぎ先で病気になり、ひどい扱いを受けていた義妹を、婚家の制止を押し切り背負って助けだすエピソードが印象的だった。
映画『隠し剣 鬼の爪』は、ひとことで言えば、このエピソードを短編小説『隠し剣鬼ノ爪』に取り入れたストーリーになっている。原作はこうなっている。
――海坂藩御旗組片桐宗蔵は、母が死んでから、近在の農家から奉公にきたきえと二人で暮らしていた。きえはよく働き、実家から運んだ花々を植えては楽しむ元気な娘だった。
そんなある日、宗蔵は、藩の重役から呼び出された。江戸で同僚を傷つけ山の牢屋に閉じ込められた狭間弥一郎が牢を破り、討手として宗蔵を指名してきたというのである。
狭間は剣の同門で五年先輩だったが、実力は拮抗し、御前試合で宗蔵が勝ったことがある。もうひとつ、師匠はこの二人のうち、なぜか宗蔵に秘剣鬼の爪を伝授していた。 この秘剣、じつは屋内闘争のための短刀術だったのだが、狭間はそれを知らず、急速に宗蔵の剣技がのびたのは秘剣のせいと誤解し、道場を去っていた。
討手に向かう前日、狭間の妻が訪ねてきた。狭間を逃がしてくれるなら、自分の体を与えようと言う。断る宗蔵に、それなら重臣の堀を訪ねると言って出て行った。 思いがけない申し出に気持ちの高ぶった宗蔵は、思わずきえを抱いてしまう。
二人の戦いは、むろん鬼の爪を使うことなく宗蔵の勝利に終わった。狭間の妻は堀を訪ねたことを宗蔵に明かし自害する。 これを聞いて、「いい身体をしていたのに惜しい」とせせら笑う堀を、宗蔵は翌日すれ違いざまに刺す。使ったのは鬼の爪だった。
そして宗蔵は、きえを妻にと所望した。許婚がいるという彼女に、「いざとなれば、すでに夫婦のちぎりを結んでしまったと白状するさ」と言い、泣きそうな声で「親に叱られます」というきえを可憐だと思った。――
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