No.2247 藤沢周平作品の映画化ハテナ 5 投稿者:木器 投稿日:2024年11月25日 (月) 17時19分 [ 返信] |
(つづきです。ご興味ない人にはご迷惑ですが、もうしばらくお許しください)
一目してわかるように、「たそがれ清兵衛」という命名を別にすれば、ほとんどの筋書きは『祝い人助八』により、最後の決闘部分も重要なモチーフは『竹光始末』によっている。
もちろん映画としての統一感がみごとなので、こうしたつぎはぎは気にならないが、原作を愛する人なら、こうした作品対照は、必ずや映画も小説もその作品への興味を増し、理解をいっそう深めてくれると思うのである。
あと、原作になかった大きな違いは時代設定である。プログラムによると一八六五年元治二年、維新まであと三年で、語り手の岸恵子扮する清兵衛の娘が、明治になって親の墓参りに来るのは、この映画にとってどんな意味があるのかよくわからない。 しかし物語の本質には関係なく、どちらでもいいことかもしれない。
*「もどかしさも楽しさのうち」の原作映画化
昔、「メディアミックス」といって、原作本と映画を連携させる宣伝文句に、「読んでから見るか、見てから読むか」というのがあった。この仕掛けをした角川書店の巧みな宣伝に乗って、結局は映画も原作も両方、見て読むことになった人も多かったようである。
宣伝に乗せられて、と言うつもりはない。なぜならこうして開発された自分の関心が、結局はその本なり映画なりのより新しい楽しさの発見や理解に繋がるからである。 しかし、その期待がいつも満足されるかというと、そううまくはいかない。 ただ、こうしてあれこれ見くらべ、「うーん。なんか違うなあ」というもどかしさも、原作の映画化を見る楽しみのひとつではないかとも思う。
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