No.1914 じいじに会いたくない理由 投稿者:木器 投稿日:2024年06月11日 (火) 10時35分 [ 返信] |
ときどきドキリとしたりほっとしたり、しみじみさせてくれたりする傑作が載ることで定評ある読売新聞の「こどもの詩」に、先日、次のような作品が出ていました。
「ホスピスのじいじ 中嶋 晃太郎 じいじに会いたくないのは 元気なじいじに 元気でないじいじを 上書きしたくないから
どんどん元気がなくなっていく じいじを上書きしたくないから」 (広島県福山市・駅屋南中3年) うーん、切ない告白ですねー。じいじにとっても少年にとっても……。 これに対して、選者の平田俊子さんが、こう言葉を寄せています。 「会うたびに成長する晃太郎さんの姿がじいじには上書きされます。行くと喜ばれると思います」
私はこれを読んで、朝ドラのセリフではありませんが「はて?」と思ってしまったのです。
中3の少年になれば当然、パソコンは使いこなしているでしょう。だからこそ「上書き」なんて言葉も出てきたと思われます。 だったら、「上書き」だけでなく「保存」という機能も、パソコンと同じで人間の心にはあるのではないか、というのが私の「はて?」の理由です。
じいじがどんどん元気でなくなっていくのが悲しい、元気なころのじいじの姿が上書きされて消えてしまいそう、それが晃太郎少年には残念でしかたなくて、会いたくないとまで感じてしまったのだと思います。
だったら選者さんや大人が彼にかけてやる言葉としては、 「でもね、元気なころのじいじはいっぱい君の心のメモリーに保存されているんじゃないかな。きっと上書き防止のメモリーもたくさんあるだろうから、いつでもそのメモリーを呼び出せるじゃないか! だから会いたくないなんて言わずに、じいじのメモリーにもいっぱい君の元気な姿を保存してもらおうよ!」 そんなふうに言ってあげたいと、私は思いました。
なにせこのじいじと同じく、だんだん元気がなくなる年は争えない自分ですから。
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