ブックデザインや和更紗研究の第一人者で、我らが同期、熊谷博人さんが、このほど絵本『木賊』(とくさ)を出版されました。
文章を、何年も熊谷事務所でデザインの修行をして独立した望月文子さんが担当し、絵本の主体となる全編の絵と装丁を、熊谷さんが担当されています。
望月さんは私も存じ上げていますが、なかなか多才な人で、ご自分が毎日工夫して作るサラダをSNSにアップしていましたが、これを1冊の本にまとめたサラダの本(海竜社)もあります。
今度の絵本は、謡曲『木賊』に題材をとったものと言えば、飯田地方出身の人はあの園原の話だと思い出されると思います。あるいは、京都の祇園祭に繰り出す山車の中にも、ご神体の翁が右手に鎌、左手に刈った木賊とを持って立つ『木賊山』という1台があります。
B5判30ページとコンパクトに中綴じされたこの絵本は、開いたとたん、子どもたちにも一気に最後まで読める、興味深い展開になっています。
やはり絵がいいですね。ほのぼのとやさしく親しみ深い、田舎のにおいがします。
またまた、熊谷さん、望月さんとともに、本当にいいお仕事をされましたね。
巻末に名まえがありましたが、同じ阿智村の塚田紀昭さんはじめ、地元の人たちの協力も、うまく取り入れていらっしゃるようです。
私などは、こうしてまとめていただくと、かつて園原の記念館で見た木賊のことも、なるほどと合点し、またよく思い出すことができました。簡潔で味のある文章と絵の力で、京都の祇園祭の山車と相まって、とても印象に残りました。
それにしても、木賊を刈る鎌の逆手の持ち方が面白いですね。
山車の翁は左手に刈った木賊を持ちながら、それを刈る右手の鎌は逆手に持っていないようです。これでいいんでしょうか。
ま、この山車のほうは能の「木賊」からでしょうから、能での鎌の持ち方が地元に伝わる逆手を取り入れていなければ、しかたありませんね。でも、何か惜しい感じがします。
熊谷さんのこの絵を元に、山車も能も原点帰りをしたら面白いですね。
一応表紙と、内容の一部をご紹介させていただきますので、熊谷さんご自身からもぜひ、コメントをいただけると幸いです。
また、TOMOさんには、謡曲研究の立場から、一言いただけるとありがたいと思います。