No.1095 見える風 投稿者:木器 投稿日:2023年04月18日 (火) 09時43分 [ 返信] |
まえに「夕焼け小焼け」の作曲家・草川信のことを書いたとき、私の好きなクリスティナ・ロゼッティの「風」の西條八十訳の作曲者でもあることに触れました。 古い松竹映画で、芦川いづみが歌っているのを、印象深く聞いたこともありました。 「風」(映画「風船」芦川いづみ歌) 改めて引きますが、懐かしいこの歌です。 ♪(『赤い鳥』大正10年4月号) 誰(たあれ)が風を見たでせう? 僕もあなたも見やしない、 けれど木の葉を顫(ふる)はせて 風は通り抜けてゆく 誰が風を見たでせう? あなたも僕も見やしない、 けれど樹立(こだち)が頭をさげて 風は通りすぎてゆく。 ところが最近は、この見えないはずの「風」が見えてしまうようです。一つには中国大陸からの黄砂、そしてもう一つには花粉だそうです。 都内でも薄曇りになるほどの黄砂が、風の姿を見せたと言いますし、花粉症に人には山を吹く風に乗る花粉が、まさに風の波となって押し寄せる感じがするでしょう。 先週土曜日の新聞には、以前歌壇に寄せられたというこんな短歌が載っていました。 *クリスティーナ・ロゼッティよわたくしは花粉症なり風が見えます(名古屋市 山守美紀) そう言えば、最近久々の長編小説がまたベストセラーになっている村上春樹のデビュー作が『風の歌を聴け』でしたね。 この作家についてはまったく不案内ですので、どなたか魅力を解説していただけるとありがたいのですが、「風」も実際の気象現象の風ではなく、比喩的に人生に吹くさまざまな風といった意味かもしれません。
|
|