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ドストエフスキーの「情報・意見」交換ボード
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〔最新の投稿記事〕

[373]《リプーチン》
名前:ほのか
2021年12月06日 (月) 15時30分
p28

引用開始
「われわれのサークルで一番古いのは、リプーチンであった。これはもう中年の県庁役人であったが、大の自由主義者で、町でも無神論者で通っていた。二度目の細君は若い綺麗な女で、彼はこの女の持参金に目をつけてもらったのである。そのほか、彼は三人のだいぶ大きな娘を持っていた。家族の者は彼の前にセンぶくしてしまって、まるで押籠めも同様な暮らしをしていた。彼は恐ろしいシマツ屋で、ために俸給で小さな家も買い込めば、ちょっとした財産もこしらえていた。落ちつきのない男であるうえに、官位もごく低いところなので、町でもあまり人に尊敬させられず、上流ではてんで相手にされなかった。そのうえ、彼はあまねく知れ渡った中傷家で、一再ならずひどい目にあったことがある。なんでも一度はある将校、二度めはれっきとした一家の主人であるさる地主にやられたのである。しかし、わたしたちは彼の鋭い機知と、好奇心の強い性質と、一種特別な毒々しい快活な態度が好きだった。ヴァルヴァーラ夫人は彼を毛嫌いしていたにもかかわらず、彼はいつも巧みに夫人に取り入るのであった。

[372]★お知らせ★ ― ページ内の投稿ボードのこと
名前:Seigo
2021年12月04日 (土) 15時55分
ほのかさん・レインさんをはじめ、皆さん、ページへの来訪、ボードへの投稿、ありがとうございます。

当投稿ボード及び音楽ボードについて、近日中に、ページ開設当初のシンプルな投稿ボード(返信のツリーが無い投稿記事が投稿順に上下に並んでいく投稿ボード)に戻します。
これまでの投稿ぶんは、過去の投稿記事として、閲覧できるように、順次、投稿記事をリンクさせて再掲載していく予定です。

[367]『自然=端麗さ』を、つまり、ドストエフスキイ氏の生き方を‼️を、『悪霊』で立証
名前:ほのか
2021年11月14日 (日) 00時32分
ドストエフスキー作品を読む事が、ライフワークになっているので、いまのところですが。
 今、多忙なため、一行でも、書かせて頂き、『悪霊』が、小説として成立すべき必要十分性を、『自然崇拝というか、自然、風景、葉っぱ、木、桜、海が大好き人間〜自然に救われる人間=人間の端麗さを自然と同値とみなす』考え方ですね。つまり、《媚びや粉飾》を、嫌うという《精神性》ですね。

[369] 『自然=端麗さ』に、背くのか⁉️
名前:ほのか
2021年12月02日 (木) 08時43分
『悪霊』河出書房新社』上巻
p24

引用の始まり
「ヴァルヴァーラ夫人は、ほとんど生きた心地もない彼を引っ張って、家へ連れて帰ったのである。・・・(あの連中は、わたしをまるで木綿の部屋帽子かなんぞのように扱いおった)と彼は意味もなくこうくり返した。夫人は夜っぴてその傍につききりで、ペーラムの雫をたらしてやりながら、夜の明けるまでくり返しくり返しこういった。『あなたはまだまだなすところのある人です。あなたはまた世に出る時がきます。また人に認められる時がきます・・・・・・ほかの土地へ行けばね・・・・・・』 引用終わり

⇄感想文:読むのを一週間ばかり空きましたが。ふと、今回、気が付きました。正誤はわかりませんが。過去にも、『悪霊』を、読んでますが、とんでもない発想が浮かんだのです。ドストエフスキイ氏は、ヴァルヴァーラ夫人とスチェパン氏を、《いい加減なばかな人間の象徴人間》として設定して描いたのではないかという、主人公にもっとも近い人物に、あるまじき私読者の発想でありますね。

 つまり、『自然=端麗さ』に、背く スチェパン氏と、ヴァルヴァーラ夫人の人物設定だという、読者私のまだまだ『悪霊』という小説が始まったばかりの想像でありますね。

[370] 前述の伏線です
名前:ほたみき
2021年12月02日 (木) 09時02分
p21

引用文
「これに侮辱を感じたヴァルヴァーラ夫人は、もう遮二無二『新しい思想』を目ざして飛びかかった。」 引用終わり

⇄感想文:例えば、スチェパン氏とヴァルヴァーラ夫人の、浅はかな人達二人の《喜劇の人生》の始まり。つまり、喜劇的小説になってしまいますね。


p21

引用文の始まり

「上流の社交界における地位の復興である。」 引用文の終わり

⇄感想文:硬そうな小説『悪霊』であったはずに、変な初めての発想を読者私は、今持ってしまいました‼️


[371] 『自然=端麗さ』 違反3⇄作家ドストエフスキイ氏的生き方に背く立証
名前:ほのか
2021年12月03日 (金) 07時54分
p27

引用文の開始

「『ねえ、きみ』二週間たった時、スチェパン氏はわたしに向かって、ごく内緒でこういった。『ねえ、わたしは自分にとって恐ろしい・・・・・・新事実をきみにうち明けよう。 Je suis un (わたしはただの一介の) 居候にすぎないのだよ、 et
rien de plus ! Mais r-r-rien de plus !
(それっきりの者だよ! ま、まったくそれっきりの者なんだよ!)』
引用文の終わり

⇄感想文: ふうーーっむ

[368]キリスト教と仏教
名前:レイン
2021年11月25日 (木) 07時42分
 崇高な助け合いの世界が信仰の世界だそうですね。これは隣人愛、兄弟愛、分かち合いのキリスト教的世界です。仏教は悟りを求めます。仏道修行。それで禁酒になります。しかしキリスト教は愛ある世界、対話の世界ですからお酒でも飲んで語り合おうぜ、飲酒容認になります。最近こんな見解です。

[327]『未成年』に挑戦です😃
名前:ほのか
2021年08月14日 (土) 09時09分
登場人物を、この人は、『スチェパンチコヴォ村』の叔父であるなぁ〜とか、この人は、つまり、『白痴』のムイシュキンであるなぁ〜とか、この人は、『カラマーゾフの兄弟』のゾシマ長老であるなぁ〜とか、普通に、浮かんできまして、相当、読み易い読書になってますね♬

 ムイシュキンとか、ゾシマ長老とか、『スチェパンチコヴォ村』の叔父とかが、登場人物に結び付きますと、ホッと致しまして、幸福な気分になりますね😋
 作家ドストエフスキイ自身の若い時と、作家ドストエフスキイ自身の五十歳の時を、同時に見つめながら、描いてるのかな⁉️とか思いながらの、読書で、すこぶる楽しいですね😃🎶

[328] 河出書房新社 米川正夫訳です。ヴァーシンの優しさに、ホッ😃
名前:ほのか
2021年08月16日 (月) 02時01分
 ヴァーシンが、ゾシマ長老か、ムイシュキンか、『スチェパンチコヴォ村』の叔父のように、優しくて、ホッと致しますね。『未成年』の主人公わたしとヴァーシンの会話ですが。まだ、3章を、p68を、読み終えたばかりですが。

〜主人公わたしの競売に出かける心の様子は、作家ドストエフスキイ自身の、賭け事に初めて出かけた時の、心の興奮度の描写であると、読みながら、そのように解釈を致しました。

『感情の思想』という語句が、主人公は好きで、それに反する合理的態度や合理的行動を嫌ってるのですね。
 『感情の思想』には、読者わたしも同意というか、興味深い言葉ですね〜
😃

[330] 『未成年』が面白いです。夢中です。79ページまで読みましたが。
名前:ほのか
2021年08月21日 (土) 07時07分
 欲求不満が、解決されますね。『地下室の手記』を、一番最初に出逢ったドストエフスキイ文学として、その当時、救われましたが。
 
 『未成年』は、今の私に、欲求不満を、解決してくださるというか、おなじ〜ような〜気持ちをドストエフスキイの『未成年』の主人公が現在の私の中にも、ありがちで、〜持っている〜というか、欲求不満を解決する『癒しの本』でありますね😃♫🎶♪


[331] 《なんか、書きたくなる文章♬なんか書きたくなる幸せな気持ちになる文章》を、小説から転記です∬◆∋≦≧∞∫》
名前:ほのか
2021年08月26日 (木) 10時27分
p73
『 クラフトはややけげんそうな顔つきでわたしを見つめた。「さようなら、クラフト君!いったいなんのために、自分をいれてくれない人たちにつきまとう必要があるんでしょう?いっそ何もかも、振りすててしまったほうがいいじゃありませんか、え?」
 「さて、それからどこへ行くんです?」なんとなく無愛想な調子でじっと足もとを見つめながら、彼はこうたずねた

「自分へ、自分へ帰るんです! いっさいのものを振りすてて、自分自身の中へ去るのです!」
 「アメリカへ?」
 「アメリカへ!自分自身、ただただ自分自身にのみおもむくんです! これがぼくの『理想』なんですよ。クラフト君!」とわたしは歓喜に充ちた調子で言った。
 彼は興味ありげにわたしを見まもった。
 「きみにはその場所があるんですね、『自分自身』という場所が?」
 「ありますよ。じゃ、さようなら、クラフト君。ありがとう、いろいろごめんどうをかけてすまなかったですね! しかし、ぼくがもしきみの位置に立って、そんなロシヤを頭の中に持っていたら、ぼくはありとあらゆる人間を呪ってやりますよ。どこへと好きなところへ行って、悪だくみをめぐらすなり、お互いに咬み合うなり勝手にするがいい、ーーおれの知ったことじゃないぞ、といってやりまさあ」
 「もっと話しておいでなさい」もう出口までわたしを送って来たとき、彼はだしぬけにこういった。
 わたしは少々めんくらったが、また引っ返し、腰をおろした。クラフトは向かい合わせにすわった。わたしたちは妙な微笑を交わした、ーーわたしはこれらすべてのことを、今なお目の前に見るような思いがする、わたしは彼を見ているうちに、なんだか不思議な気がしたのを覚えている。
 「ぼくはね、クラフト君、きみがそんなふうに丁寧なのが気に入りましたよ」とわたしはだしぬけにいった。
 「へえ?」
 「ぼくがそんなことをいったのは、自分が丁寧な人間になれないからですよ。そのくせ、そうなりたいとは思ってるんだけど・・・・・・しかし、まあ、人に侮辱されるのもいいかもしれません。少なくとも、他人を愛するという不幸からのがれますからね」
 きみは一日のうちでどういう時刻がいちばんすきです?」
明らかにわたしのいうことは聞いていないらしく
、彼はたずねた。
 「時刻? わかりませんね。ぼく、日没はきらいです。
 「そうですか?」と彼は何かとくべつ興味あることのようにいったが、すぐまた考え込んでしまった。
 「きみはまたどこかへ行くんですか?」
 「ええ・・・・・・行きます」
 「すぐ?」
 「ええ、すぐ」
 「いったいヴィリノまで行くのにピストルがいりますか?」
わたしは少しも底意なしにこうきいた。実際、そんなことは考えてもなかったのだ。ただ話題に窮しているところへ、ふとピストルが目にはいったので、そうきいてみたまでのことである。
 彼はふり返って、じっとピストルを見つめた。
 「いや、あれはただちょっと習慣で・・・・・・」
 「もしぼくがピストルを持ってたら、どこかへ隠して錠をかけておきますね。いや、まったく恐ろしい魅力を持ってる!
ぼくは自殺病の流行なんて信じないけれど、こいつが目の前に幅をきかしてると、まったく誘惑を感じる瞬間がありますよ」
 「そんな話をしないでください」といって、彼は急に椅子から立ちあがった。
 「ぼく、自分のこといってるんじゃありません」わたしも同じく立ちあがりながら、いい添えた。『ぼくは決してこんなものを使やしません。ぼくは命が三つあっても、まだ足りないくらいです」

 「できるだけお生きなさい」こういう言葉がひとりでに、彼の口からちぎれて出たように思われた。
 彼は放心したようにほほ笑んだ。そして、不思議にも、まるで自分のほうからわたしを送り出そうとするように、ずかずかと控え室のほうへ歩きだした。むろん、自分でも何をしてるか知らないのだ。
 「ぼくはきみにあらゆる成功を祈ります。クラフト君」もう階段のところへ出てから、わたしはいった。
 「あるいはそうなるかもしれません」と彼はしっかりした語調で答えた。
 『じゃない、また会いましょう?」
 「それもあるいは・・・・・・」
 わたしは今でも彼の最後の視線を覚えている。

    3

ああ、これがその人なのだ。幾年かのあいだ、わたしが憧憬の思いに胸をおどらしつづけたその人なのだ! ああ、わたしはクラフトからうんと多くのものを期待していたのだが! ああ、あれがいったいなんの珍しい報告であるか!
 クラフトのもとを辞し去ると、わたしは急に何か食べたくなってきた。もう夕べが迫っているのに、まだ食事をしていなかったのだ。わたしはすぐそこの、ーーペテルブルク区の大通りにある一軒の小さな料理屋へはいった。しかしおおよそ二十コペイカつかおう、多くても二十五ペイカ以上はつかわないつもりだった。それ以上は、当時のわたしとして許すべかざる贅沢だっだのだ。わたしはスープを誂えた。今でも覚えているが、それをすすりおわると、窓際にすわって外を眺めはじめた。部屋の中は人がうようよして、バタの焼けるような匂いや、安物料理らしいナプキンの匂いや、煙草の匂いなどが鼻をついた。なんとなくいやでたまらなかった。頭の上には一羽の鶯が声もなく、何やら考え込むように陰気らしく、こつこつと籠の底を嘴でつっ突いている。隣りの玉突き部屋のほうでは、大勢がやがや騒いでいたけれど、わたしはじっとすわったまま、一生懸命に考え込んだ。落日は(わたしが落日を好まないといったとき、どうしてクラフトはあんなに驚いたのだろう?)一種の新しい、まるで場所がらに不似合いな、おもいがけない感触を、わたしの心に呼び起こした。』

⇄(読者感想文:主人公わたしの少し、勘違いを感じた!?クラフトとの優しさにおける距離感を感じた!?主人公わたし)

[332] なんか〜文章2
名前:ほのか
2021年08月26日 (木) 10時51分
p92
「わたしには金は必要でない、といって語弊があれば、わたしに必要なのは、金でもなければ、力でもない。わたしの必要とするものは、力のみによって獲得されるもので、力なしにはどうしても得られないものだ。ほかでもない、孤独な落ちついた意識である! これこそ世界じゅうの人が一生懸命にもがいて、考えだそうとしている自由の最も完全なる定義である! 自由! わたしはとうとうこの偉大な言葉を筆にした・・・・・・そうだ、孤独の力の意識、ーーなんと美しく魅力に富んでいることか!わたしには力がある、それでもわたしは平然としている、それはちょうどジュピターが雷を掌中に握っていながら、しかも案外しずかなのと同じようである。ジュピターが鳴りはためくのを、そうたびたび聞くことがあるだろうか? ばか者には、寝ているように思われるくらいだ。ところで、もしジュピターの位置にそのへんの文学者か、それとも田舎のばか女房でも置いてみるがいい、それこそどれくらい雷がごろごろ鳴りだすかわかりゃしない!
 もしわたしに力があったら(と、当時わたしは考えていた)、その力はぜんぜんわたしに不用なものだ。まったくのところ、わたしはどこへ行っても、みずからすすんで一番の末席を占めるに相違ない。もしわたしがロスチャイルドだったら、わたしは古ぼけた外套にこうもり傘を持って、てくてく歩きまわるつもりだ。往来で突き飛ばされたり、馬車に轢かれないように、泥の中をぴょいぴょいと飛んで歩かねばならないとしても、それがわたしにとってどうしたというのだ。なに、これはわしだ、ロスチャイルド自身だという意識が、かえってその瞬間にわたしを浮き立たせてくれるだろう。自分の家にはどこにもないような食事がある。世界一の料理人がいるということを、わたしは承知している。それを知っているだけでたくさんなのだ。わたしは一片のパンとハムを食っただけで、自分の意識に満腹することができるのだ。わたしは今でもやはりそう思っている。

 わたしはものほしそうに貴族ぶるまい。貴族らしさは向こうのほうから自然にやって来る。わたしは女の後など追いまわすまい。女のほうで自分から、女の捧げうるすべてのものを捧げながら、水のように流れ寄るに相違ないのだ。『陋劣な女』は金のために来るだろう。賢い女は、いっさいに対してかつ然として隠者のように暮らしている、不思議な、傲岸な人物に対する好奇心にひかれて来るだろう。わたしはその両方とも優しくもてなして、もしかしたら、金もやるかもしれない。けれど、彼らからは決して何も取りはしない。好奇心は情熱を生むのだから、わたしもあるいは彼らに情熱を感じさせるかもしれない。しかし、彼らは何ものをもえずして去るのだ。わたしは誓っていうが、実際おくりものを持って帰るだけにすぎない。すると、わたしはひとしお興味のある人物となるわけだ」

[333] なんか〜文章3
名前:ほのか
2021年08月26日 (木) 10時51分
p95「その無能で凡庸な一人の男が、世間の面前に立って、顔に微笑を浮かべながら、『あなた方はガリレオです、コペルニクスです、カルル大帝です。ナポレオンです。あなたがたはプーシキンです、シェークスピアです、あなた方は大元師です、式部官です。ところが、わたしは無能な一私生児にすぎません。が、それでもやはり、あなた方より優れています。なぜって、あなた方が自分でそれに屈服したからです』とこういっている場景である。わたしはこの妄想を極度にまで押しすすめて、ついには教育さえ軽蔑するにいたった。わたしは、この人間が見苦しいほど無教育だったら、さらに魅惑的だろうと思った。この誇張にすぎた妄想が、当時、中学校の七年級における成績に影響したほどである。つまり、教育のないほうがかえって理想の美を増すというファナチズムのために、わたしは勉強するのをやめてしまったのだ。今ではこの点だけ信念を変えた。教育があっても邪魔にはならない。」

[334] 😃
名前:ほのか
2021年08月26日 (木) 10時52分
《手に取るよーに、作家の息づかいというか、主人公の息づかいというか、感じられて、何しろ〜人間と会話をしてるみたいですね♪小説を読むって♫!現実の人間同士の会話より、”本物の会話”が、心に響いて、楽しいですね。外に出る会話のひとことよりも、人間の内部の葛藤の心を【1対9】の割合の【9】描いて下さるので嬉しいです😃一般より、心の反応や心の躊躇がとりわけ大きな巨大な造りをした人間が、主人公であり、それらの状況が、読者の心を救いますね😋
つまり、表面の事態と、「えっ⁉️裏面の真実の事態、世界、感覚」との、人間が主人公のように携えてしまうという状況〜状態でありますね😃
ドストエフスキー文学の深淵と魅力が、ここに存在するのでしょうね😃
‼️人と違っても、良い!ということ‼️
‼️『通常事態や一般常識に変だな!?と、感覚することが、人間の貴重なる造りの構造であること‼️😃
結局、人それぞれ、ありのままの心で良いんだよ!っということですね。
結局、人それぞれ、人それぞれの反応で、正解だということですね‼️

[335] 知られざる性格を発見!ヴェルシーロフの。p190「あの婦人の物語は、彼の姿をぜんぜん別な光で照らし出したのである。」
名前:ほのか
2021年08月29日 (日) 18時55分
p185
「〜その晩、あの子は夜っぴて熱に浮かされ、譫言うわごとばかりいいつづけましたが、あくる朝、目をぎらぎらさせながら起き出して、部屋の中を歩きまわりながら、あいつを裁判所へ訴えてやらなきゃ、裁判所へ訴えてやらなきゃ! とひとりごとをいっているのです。わたしは黙っていました。いったい裁判所へ訴えてなんになるのだろう? どうして明しを立てようとするのだろう? と思ったからでございます。あの子は両手をよじりながら歩きまわっている。涙が後から後から流れて、唇はじっと食いしばったまま、動かないのでございます。そのときからあの子の顔に暗い影がさして、しまいまで直りませんでした。三日めには、あの子もちっとは気分が好くなり、だいぶ落ちついたようなふうで黙っていました。ちょうどその日の夕方四時ごろ、ヴェルシーロフさんが宅へおいでになったのでございます。
 『そこで、うち明けて申しますが、あのときあれほど疑り深くなっていたオーリャが、どういうわけですぐに最初の一言から、あの人の言葉に耳を傾けだしたのか、ほとほと合点が参りません。何よりいちばんわたしたち親子をひきつけたのは、あの人が恐ろしくまじめな、いかついくらいの様子をしながら、静かな声で丁寧に、順序だった話をされたことです。その丁寧なことといったら、いっそうやうやうしいといってもいいくらいで、しかも物ほしそうなふうなど、これっからさきも見えないのでございます。もう一目見ただけで、きれいな心を持った人だってことがわかりました。「わたしは、あなたの広告を新聞で読みましたが、あなたの書き方
は少し違っていましたので、そのためにご損をなさるかもしれません」といっていろいろ説明してくださるのです。実のところ、わたしはよくわかりませんでしたが、なんでも算術がどうとかいっておられました。見ていると、オーリャはもう顔を真っ赤にして、いかにもいきいきした様子で耳を傾けながら、自分も悦んで話に口を入れるのでございます。(まったく賢いお方に相違ありません!)聞いていると、あの子はお礼までいってるじゃありませんか。あの人はあれにいろんなことをこまかくきかれましたが、モスクワにも長くお暮らしになったとみえて、女学校の校長の奥さまもよく知ってらっしゃるとのことでした。「家庭教師の口はきっと見つけて差し上げます」とおっしゃるのです。「なぜって、わたしはここに大勢知合いががありますからね。それに、立派な勢力家に依頼することもできるから、もし永久的な職がお望みでしたら、それも心がけておいてよろしい・・・・・・ところで、さしむき失礼ですが、一つ露骨な問いを許していただきたい。ほかじゃありませんが、今すぐ何かあなたのためになることはできますまいか? もしあなたにどんなことでもつくすことを許してくださるなら、それはわたしがあなたをお悦ばせするのじゃなく、かえってあなたがわたしに満足を与えてくださることになるのです。それはあなたの借金になるけれども、あなたが職につかれたら、わずかな間に、そんな勘定はじきついてしまいます。どうかわたしの潔白を信じてください。もしわたしがいつか同じように貧窮に落ちて、あなたが反対になんの心配もない身分になられたら、そのときこそ、わたしがあなたのところへご無心にあがります。家内でも娘でもよこしますよ・・・・・・」実のところ、わたしはあの人のいわれたことを、みなまで思い出すことができません。ただそのとき、わたしは思わず涙を流しました。だって見ると、オーリャもありがたさに唇をふるわせているんですもの。「わたしがこれをお受けするのは、お父さんのかわりともなってくださる潔白な、人道的な心を持ったお方だと、信じればこそでございます
・・・・・・」まったくあの子は言葉すくなに、上品に、立派にそう申したのでございます。人道的な心を持ったお方とね。ヴェルシーロフさんは、すぐ席をお立ちになりました。「家庭教師の口も勤めの口も、きっときっとお世話します。今日からさっそくかかりましょう。実際、あなたは立派な免状を持っておいでなんだから・・・・・・」わたしは申し忘れましたけど、あの人は初めてはいって来たときから、あの子の女学校の免状をすっかり出させて、それを調べてごらんになったうえ、自分でいろんな学課を試験してくださったのです・・・・・・「お母さん、あの人はいろんな学課でわたしを試験してくだすったわ」とオーリャはわたしに申しました。「なんて賢いお方なんでしょう。まあ、あんな発達した頭を持った、教育のある人と話したのは、ほんとうにまあ久しぶりだわねえ・・・・・・」こういってあの子はうれしさに輝きわたっているのです。六十ルーブリのお金がテーブルの上にのってるのを見て、「お母さんしまっておいてちょうだい、勤め口を世話してもらったら、第一番にできるだけ早く返して、あたしが潔白な人間だってことを証明しましょう。だけど、あたしたちが優しい心の人間だってことは、あの方ももう見抜いてらっしゃるわねえ」それから、しばらく黙ってましたが、見ると、あの子は深い溜息をついてるじゃありませんか。「ねえ、お母さん」とふいにいいだすのです。「もしあたしたちが不作法な人間だったら、高慢ちきな心もちのため、お金を受け取らなかったでしょうね。ところが、あたしたちは受け取ったんだから、それでもって、あたしたちの心の優しさを証明したことになるわね。あたしたちはあの人を身分のある年配の人として、信用したんですものね、そうじゃなくって?」わたしは初めのうち、よくわからなかったものですから、「オーリャ、どうして立派な金持ちの方から、お恵みを受けちゃいけないんだえ、もしその方が、おまけに親切な心を持ってらっしゃるとすれば」すると、オーリャは顔をしかめて、「いいえ、お母さん、それは違うわ、わたしたちはお恵みがいるんじゃなくて、あの人の人情的な心がありがたいのよ。ねえ、お母さん、お金は取らないほうがよかったわね。あの人が勤め口を世話すると約束した以上、それだけでたくさんじゃありませんか・・・・・・もっとも、わたしたちは困ってはいるけれど」「いいえ、オーリャ、わたしたちの困りようといったら、それこそどうしても、ご辞退することができないくらいなんだよ」と、わたしはにやりと笑ったわけでございます。で、わたしは腹の中で悦んでおりますと、一時間ばかりたって、あの子はまただしぬけにいいました。「お母さん、あのお金をつかうのは、も少し待ってちょうだい」ときっぱり申すのでございます。「どうして?」と聞くと、「どうしても、ただ」といったなり、黙り込むのです。その晩、ずっと黙り通していましたが、夜中の一時過ぎに、わたしがふと目をさましますと、オーリャは寝台の上で、ごそごそしているじゃありませんか。「お母さん、寝てるの?」というから、「いいえ、寝てはいないよ」「ねえ、あの人はあたしを侮辱しに来たんだわ」と申します。「お前、何を言うんだえ、何を?」「いいえ、きっとそうよ。あれは卑劣な人間なんだから! お母さん、あの男の金を一コペイカも使っちゃいけないことよ」 わたしはあの子をいろいろ宥めながら、寝床の中で泣きだしたほどですけれど、あの子は壁のほうへくるりと向いてしまって、黙ってちょうだい、あたしに寝さしてくださいよ!」とこうでございます。あくる朝、見ると、あの子はまるで見違えるほどやつれて、部屋の中を歩いております。ほんとうになさるかどうか知りませんが、わたし神様の前に誓って申します・・・・・・あの子はもう正気じゃなかったのです! あの穢らわしい家で辱められてから、あれの心も・・・・・・頭も濁ったのでございます。わたしはその朝、あの子の顔を見て、不審に思いました。わたしは恐ろしくなってきて、こりゃひとことも逆らってはいけない、と思ったのでございます。「あの人はお母さん、住所を知らせなかったわね」「それはお前、罪だよ、オーリャ。昨日は自分であの人の話を聞いてさ、帰った後で讃めちぎって、自分からありがた涙をこぼさないばかりだったじゃないか」 わたしがそういうがはやいか、あの子は地団太を踏みながら、金切り声をあげて、「あなたは卑劣な感情を持った人だ。あなたは農奴制時代の旧式な教育を受けたんです・・・・・・」とわめくのです。そして、なんといっても聞かないで、帽子を取って駆け出しました。わたしは後から大きな声でわめきながら、いったいあの子はどうしたのだろう、どこへ行ったんだろう、と考えました。ところが、あの子は住所調査部へ走って行って、ヴェルシーロフさん住んでるところを聞いて来たのです。「あたしは今日にもすぐあの男にお金を返して来る。横っ面へたたきつけてやります。あの男はサブローノフ(というのは例の商人なのです)と同じで、ひとを侮辱しようとしたのよ。ただサブノーロフは無作法な、百姓みたいなやり方だったけど、あの男は狡猾な、狐みたいな手口で、侮辱しようとしているんだわ」
『ところへ悪いことに、とつぜんあの昨日の人(スチェペリコフ)が戸をたたいてはいって来て、ヴェルシーロフのうわさをしてらっしゃるのが耳にはいったが、自分もあの人についてお知らせすることがある。とこういうのです。ヴェルシーロフと聞くと、あの子はもう夢中になって、スチェペリコフに飛びかからないばかりの勢いで、しゃべってしゃべってしゃべり立てるのです。わたしはそばで見ながら、驚いてしまいました。ふだん無口な子で、だれにもあんな口をきいたことがないのに、思いがけない、まるで見も知らぬ人をつかまえて、頬を燃えるように赤くして、目をぎらぎらさせながら、しゃべり通すじゃありませんか・・・・・・しかも、あの人はまるでわざとのように、「お嬢さん、まったくあなたのおっしゃるとおりですよ。ヴェルシーロフは、よく、新聞などに書き立てる、ここの将軍連と同じような人間なんです。こういう将軍連は、ありったけの勲章を胸に飾って、新聞に家庭教師の広告をしている娘の家を歩きまわり、自分のほしいと思うような女を漁あさるのです。もしほしいと思うようなものがなくても、ぺちゃくちゃしゃべり立てて、いろんな約束をしたうえで引き上げる、それでもやはり、楽しみに相違ないですからね」という。オーリャは大きな声でからからと笑いましたが、それはさも毒々しそうな調子でした。見ると、スチェパリコフはあの子の手をとって、自分の胸へ押しあてながら、「お嬢さん、わたしは相当の財産を持った男でしてね、いつでも美しい娘さんに申込みができるんですが、しかしその前にかわいいお手に接吻しましょう・・・・・・」といって、あれの手を引き寄せ、接吻をしようとするのです。あれは、いきなり飛びあがりました。そして、わたしもいっしょになって、あの男を追んだしてしまいました。その夕方オーリャは、わたしの預かっていた金を盗み出して、駆け出しました。やがて引っ返して来て、「お母さん、あたしあの恥知らずに仕返ししてやったわ!」「ああ、オーリャ、オーリャ、わたしたちは自分の仕合せを棄てたのかもしれないよ、立派な情け深いお方に、恥をおかかせしたのかもしれないよ!」といって、わたしは情けなさに泣きだしました。もう我慢できなかったのでございます。すると、あの子はわたしをどなりつけて、「いやです! いやです! よしんばあの人が、この上ない立派な人間でも、それでもあたしはあの人のお情けなんかもらやしない! 人に憐れんでもらうなんて、そんなことあたしいやよ!」 その晩わたしは寝床にはいるときも、そんなことはまるで考えもしませんでした。わたしはもと鏡のかかっていたあの壁の釘を、幾度となくじっと眺めたもんですけれど、そんなことはてんで思いつかなかったのです。昨日もその以前も、まるで考えたことがありません。それに、オーリャがあんなことをしでかそうとは、思いもよらなかったのです。わたしはいつもぐっすり寝入って、鼾をかくのですが、それはきっと血が頭へのぼるのでしょう。どうかすると心臓がつまったようになって、夢にうなされるのでございます。ですから、オーリャが夜中にわたしを揺り起して、「お母さん、どうしてそう、ぐっすり寝られるんでしょう、起こしてあげようと思っても、起こされやしないわ」「ああ、オーリャ、ぐっすり寝るよ、ほんとにぐっすり寝るよ」こういうわけで、昨夜もわたしは鼾をかき始めたのでしょう。それをあの子は待ちかまえていて、少しの心配もなく、悠々と起き出したのでございます」

[336] 「抗議と反抗」
名前:ほのか
2021年09月04日 (土) 07時44分
⇄(読者感想文:そういえば、この女性と『悪霊』の女の子は、二人とも《貧窮》のために、正常な感覚を持てなくなっていたのでしょうね。

 『悪霊』のスタヴローギンでは、箒で我が子である女の子をぶつ母親を見て、世の中にそんな事があるんだっと、初めて見た状況に驚いて、その女の子を《可愛そうに〜‼️》と思って、優しくしてあげましたね。そして、それを、女の子が好意と誤解しましたね。
 
 『未成年』では、ヴェルシーロフが、家庭教師募集の新聞広告を見て、オーリャに、困ってるんだなぁという気遣いの優しさから、家へ行き職のことなどアドバイスしてあげました。しかし、《どん底の貧窮》というオーリャの生活が、《他者へ優しさを差し伸べたい》という心を素直に彼女たちに理解する事が出来ずに、《誤解》を、与えてしまったのですね。

 前者は、親切な優しさを好意と間違ってとってしまった事。後者のオーリャは、優しさの経験に出会えていないために、ヴェルシーロフの優しさを、危険な男と勘違いせざるを得なかった状況でありました。というか、積極的に、勘違いをしたのかもしれないですね。スチェペリコフ氏の登場がきっかけで。貧窮の抗議、つまり、新聞広告で、最初悪い目にあいましたね。それへの抗議が、現れているのでしようね。それから、オーリャは《農奴制時代》の貧富の差も抗議してますね。

 そういえば、『白痴』のナスターシャの死も、小さい頃貰われて、教育をつけてはくれたけど〜。最後は、そういう『女の一生』への抗議だったでしょうね。

[337] ヴェルシーロフの優しさ の お話
名前:ほのか
2021年09月04日 (土) 07時53分
p192
「少々せっかちですね、現代の青年は。しかし、まだそのほか、現実に対する理解が少ないという欠点があるのは、もちろんです。それはいつの時代でも青年はつきものですが、今の青年はどうもことに・・・・・・ところで、スチェペリコフ氏はあのとき何をしゃべったのです?」
「スチェペリコフ氏がいっさいの原因なのです」とわたしはだしぬけに口を入れた。「もしあの人がいなかったら、何事も起こらずにすんだのです。あの人が火に油をさしたのです」
 ヴェルシーロフは黙って聞きおわったが、わたしのほうを振り向こうともしなかった、ヴァーシンは顔をしかめた。
「わたしはそれからまた、ある一つの滑稽な点についても、自分を責めてるのです」依然ゆっくりと、一語一語ひき延ばすような調子で、ヴェルシーロフは語りつづけた。「どうもわたしは悪い癖で、あのときもあの娘さんに一種のうきうきした態度をとって、例の軽薄らしい笑い方なぞをして見せた。つまりぶっきら棒で、そっ気なくて、陰気らしくする度合いが足りなかったのです。この三つの性質は、現代の青年に非常に尊重されてるようですからね。てっとりばやくいえば、わたしはあの娘さんに対して、さ迷えるセラトン(フランスのユルフェ作「アストレ」の主人公、恋をあさる男の異名)と想像せらるべき根拠を与えたわけなのです」
「それはぜんぜん反対です」とわたしはまたもや言葉するどく口を入れた。「隣りの母親は、あなたがまじめで、厳正で、真摯だったために、とても立派な印象を与えられたことを、かくべつ力を入れて明言していました。これはあの婦人のいった言葉そのままなんです。当の死んだ娘も、あなたが帰った後で、この意味であなたを褒めたそうですよ」
「そうかね?」とうとうわたしのほうへちらと視線を向けながら、ヴェルシーロフは気のない調子でつぶやいた。「じゃ、この手紙をしまっておおきなさい。これはこの事件に関する必要書類ですからね」彼は小さな紙きれをヴァーシンに差し出した。」

[339] 『おれが会いに来たのは、純潔な人間であって』⇄主人公アルカージほっ‼️ヴェルシーロフの純潔さに‼️
名前:ほのか
2021年09月04日 (土) 10時06分
p194
「ほう! きみはなんて元気のいい顔つきをしてるんだろう。ところでね、きみはある手紙のことを知りませんか。それは長いことクラフトが保管していたのですが、つい昨日ヴェルシーロフの手にわたったもので、あの人が訴訟に勝った遺産相続に関する書類なんです。遺言人はこの手紙の中で、昨日の判決とはぜんぜん正反対な意志を述べています。もうずいぶん古い手紙なんですよ。しかし、正確なことは
何一つ知らないのですが、きみ何か知ってることはありませんか?」
「知らないどころですか、クラフトが一昨日あの連中のところから、ぼくを自分の家へ連れて行ったのは、つまりその手紙をぼくに手渡しするためだったのです。そしてぼくは、昨日それをヴェルシーロフに引きわたしました」
「へえ? そうだろうと思った。まあ、どうでしょう、さっきヴェルシーロフさんがここでいったことですね、ーー昨夜ここへやって来て、あの娘の誤解を解こうという決心を妨げた事件ですね、あれはほかでもない、この手紙から起こったことなんですよ。ヴェルシーロフさんは昨夜さっそく、ソコーリスキイ公爵側の弁護士のところへ行って、あの手紙を向こうへ引きわたしてしまったうえ、自分の勝訴になった遺産の相続権を完全に放棄したのです。今ではこの拒絶に法律的な形式が付与されたそうです。ヴェルシーロフさんは、自分のものを恵与するのでなく、この事件における公爵側の権利を認めているのです」
 わたしは棒のように立ちすくんだが、しかし、たちまちうれしさのあまひ、有頂天になってしまった。実際のところ、ヴェルシーロフがあの手紙を、湮滅してしまうものと信じきっていたのだ。そればかりでなく、わたしはクラフトに向かって、『そんなことをするのは卑劣だ』といいもしたし、料理屋でも心の中で、『おれが会いに来たのは、純潔な人間であって、あんな男ではない』とくり返しくり返し考えはしたものの、心のずっと奥のほうでは、やはり手紙を棒引きにしてしまうよりほか仕方がない、と考えていたのである。つまりわたしはそれをごくありふれたことと考えていたのだ。それゆえ、もし後でヴェルシーロフを非難するとしても、それはわざとみせかけのため、つまり、彼に対するわたしの高潔な立場を確保するためにすぎないのだ。しかし、今ヴェルシーロフの立派な行為を聞くと、わたしは心から強い歓喜を覚え、自分のシニズムと善に対する冷淡な態度を責める慚愧と、羞恥の念に襲われた。
わたしはとたんにヴェルシーロフを無限に高く自分の上へ押し上げて、ほとんどヴァーシンを抱きしめないばかりだった。
「なんて人間だろう! なんて人間だろう! そういうことがほかのだれにできるものか!」とわたしは夢中になって叫んだ。
「そうまったく、お説のとおり、ああいうことのできる人は非常に少ない・・・・・・そして疑いもなく、あの人の行為はきわめて無欲恬淡なものです・・・・・・」

「しかし?・・・・・・しまいまでいってください、ヴァーシン、あなたの説には『しかし』があるんでしょう?」
「ええ、むろん『しかし』があります。ヴェルシーロフ氏の行為は、ぼくにいわせると少し早まりすぎてるし、それにあまり率直とはいえませんね」とヴァーシンはほほ笑んだ。
「率直じゃないですって?」
「そうです、そこには一種の『台座』があります。なぜって、いつでもあれだけのことを、自分に損のいかないように実行することができたはずなんですからね。どんなに小心な見方をしたって、よしんば半分でないまでも、遺産の幾分かは、今でも当然ヴェルシーロフ氏に属すべきなんです。まして、あの証書は決定的な意味を持っていないし、訴訟もあの人の勝ちになったんですからね。相手方の弁護士さえも、同様こういう意見を持っています。わたしはその弁護士とたった今、話をしてきたばかりなんです。そうしたって、きっとまさり劣りのないくらい、美しい行為ということになったでしょうにね。ところが、ただ ジの欲望のために、別種の結果を生じたのです。一番いけないのは、ヴェルシーロフ氏が少し熱くなったことです。ーー余計なせきこみ方をしたことです。現にさっき自分でも、まだ一週間くらいは延ばせるとこだったと、そういったじゃありませんか・・・・・・」
「ねえ、ヴァーシン! ぼくはあなたに同意せざるをえないですが、しかし・・・・・・ぼくはああしたほうが好きなんです、ああしたほうが好ましいんです!」
「もっとも、それは好きずきです。きみが自分からいわせたんじゃありませんか。さもなかったら、ぼくだまってたところなんですよ」
「よしその行為に『台座
』があったって、それでもやっぱりいいですよ」とわたしはつづけた。「台座は台座でも、しかし自身が大いに尊重すべきものです。この『台座』は要するに、例の『理想』です。いまの人の心には、往々にして、この『台座』が欠けてるが、そのほうがいいとはいえませんものねか。少しくらいは醜いところがあっても、それを持ってるほうがいいですよ! あなた自身もきっとそう思うでしょう。ねえ、ヴァーシン、ぼくの敬愛するヴァーシン、ね、そうでしょう、ヴァーシン! 要するに、ぼくは図に乗って、でたらめをいってたけど、あなたにはぼくのいうことがわかるでしょう。それでこそヴァーシンなんですよ。とにかく、ぼくはあなたを抱いて接吻しますよ、ヴァーシン!」
「うれしさのあまりですか!」
「ええ、うれしさのあまり。だってあの人間は、『死したりしが甦り、失せたりけれど見いだされぬ』ですもの! ヴァーシン、ぼくはやくざな小僧っ子で、あなたの同情をうる価値はありません。ぼくがこんなことを自白するのは、どうかすると、ずっと高尚になり、ずっと深刻になることがあるからです。ぼくはね、一昨日あなたを面と向かって褒めそやしたでしょう(あれはただあなたがぼくをとっちめて、恥をかかせたからにほかならないんです)、そのために、まる二日間
あなたを憎み通しましたよ、ぼくは! ぼくはその晩、以後決してあなたのところへ行くまいと、心に誓ったのです。で、昨日の朝あなたのとこへ来たのも、ただつらあてにすぎなかったのです。いいですかつらあてだったんですよ。ぼくはこの椅子の上に一人で腰をかけて、あなたの部屋や、あなたの本や、あなた自身や、あなたの家の細君などを批評しながら、あなたをけなしたり、冷笑したりしたものです」
「そんなことはいわなくてよかった・・・・・・」
「昨夜もあなたのいったある一つの句から、あなたは女を理解してないと、きめてしまった。とうとうあなたの尻尾をつかまえることができたと思うと、うれしくてたまらなかったのです。現にさっきも『初舞台』であなたの弱点をつかんで、またもや大いに痛快がったものです。それもこれもみんな一昨日、ぼくが自分であなたを褒めそやしたためなんですよ」
「それはあたりまえですよ!」とうとうヴァーシンがこう叫んだ(彼はそれまで少しもわたしの言葉に驚かないで、にやにや笑いつづけていたのである)。「それはいつでもすべての人が、第一番に経験することですよ。ただそれをだれも白状しないだけです。また白状する必要なんか少しもありません。なぜって、どちらにしても、そんな心持ちはすぐ消えちまって、その跡に何も残りゃしないんですからね」
「いったいだれでもそうなんでしょうか? 人間みんなそうしたものでしょうか? あなたはそんなことをいいながら、平気でいられるのですか? だって、そんな見解をいだいていたら、生きてるわけにいかないじゃありませんか!」
「じゃ、きみの考えでは、

  卑しきまことの闇よりもわれは尊む
  人間の心を清むる偽りを

    なんですか?」
「だって、それがほんとうじゃありませんか」と、わたしは叫んだ。「この二行の詩の中には、神聖な原理が含まれています!」
「わかりませんねあ。この二行の詩が真理かどうかってことは、今きめないでおきましょう。きっと真理というやつは、いつでもどこか中くらいなところにかくれてるんでしょう。つまり、ある場合には神聖な真理だし、またある場合には虚偽なのです。ただ一つ正確にわかっていることがあります。というのは、この思想はまだまだ長いあいだ人々にとって、最もおもなる論点として残るに相違ありません。それはともあれ、見受けたところ、きみはまるで踊りでもしたそうな様子ですね。なに遠慮なくおやんなさい。運動はためになりますよ。ところで、ぼくはちょうど今朝、恐ろしくたくさん用事を押しつけられて・・・・・・おや、ほんとうにきみとしゃべりこんで遅れちゃった!」
「出かけます、出かけます! だけど、たったひとこといわしてください」もう鞄をつかんでから、わたしは叫んだ。「ぼくは今またしても、あなたの『首っ玉』にぶら下がったのは、ほかでもありません。ぼくがここへはいって来たとき、あなたがいかにも真摯な調子であの事実を伝えたうえ、ぼくがあなたの出かけないうちにやって来たのを、『心から悦ん』でくだすったからですよ。しかも、それがさっきの『初舞台』一件の後ですからねえ。あの真摯な悦びのために、あなたは一挙にしてぼくの『若い心』を引きつけてしまったのです。じゃ、さようなら、さようなら、なるべくお邪魔に来ないようにしますよ。そのほうがあなたにとってすこぶる好都合らしいから。それはあなたの目を見ただけでわかりますよ。それにまたお互いに利益でしょうよ・・・・・・」
 こんなことをしゃべりながら、そして、うれしまぎれのおしゃべりにむせびかえりながら、わたしはトランクを引っぱり出して、新しい下宿へ出かけて行った。さきほどヴェルシーロフが疑いもなくわたしに腹を立てて、最寄りものをいおうとも、顔を見ようともしなかったのが、何より気に入ったのである。トランクを運んでから、わたしはすぐさま老公のもとへ飛んで行った。正直なところ、わたしはこの二日間会わなかったので、少々淋しかったのである。それにヴェルシーロフのことも、彼はもうきっと聞き込んでいるに相違ないのだ。」

[340] アルカージーが、『カラ兄弟』のアリョーシャになってますね😋『けれど、今のところ生きるんだ、ただ生きるんだ!』『どうかして少しでも長くこの世に生きていたいもんだね!』
名前:ほのか
2021年09月04日 (土) 14時01分
p206
「アルカージイ、どうでしょう、あの昨日の娘さんは!」
「ああ、実にかわいそうなことをした。リーザ、ほんとうにかわいそうなことをしたよ!」
「ああ!ほんとうにかわいそうだわねえ! なんて運の悪い人でしょう! なんだかあたしたちがこうして、楽しそうに歩いてるのが、罪なことみたいに思われるくらいだわ。だって、あのひとの魂は今どこか闇の中を、何かしら底のないような闇の中を、罪びととして、心に怨みをいだきながら飛んでるでしょう・・・・・・アルカージイ、いったいあのひとの罪はだれの責任なんでしょう! ああ、なんて恐ろしいことだろう! 兄さんはいつか、この闇のことを考えたことがある? ああ、あたしは死ということがいちばん恐ろしいわ! そんなこと罪だわ! あたしは闇が大きらいなの。そこへ行ったら、太陽はなんていう違いでしょう! お母さんはね、恐れるのは罪だっておっしゃったわ・・・・・・アルカージイ、あんたはお母さんをよく知ってて?」
「まだよく知らないね、リーザ」
「ああ、お母さんはとてもいい方ねえ。兄さんは、ぜひ お母さんを知らなくちゃいけないわ。特別によく知らなくちゃ・・・・・・」
「だって、ぼくは現にお前さえも知らなかったじゃないか。だけど、今はすっかりわかってしまった。一分間ですっかり知り抜いちゃったよ。お前はね、リーザ、死を恐れるっていうけれど、きっと誇りの高い、大胆な、雄々しい娘に相違ないよ。ぼくよりえらい、ずっとえらいよ! ぼく、お前が好きでたまんないんだよ、リーザ、ああ、リーザ! 必要なときには、勝手に死がやって来るがいい。けれど、今のところ生きるんだ、ただ生きるんだ! あの不幸な娘はかわいそうだが、それでもやっぱり生を祝福しよう、そうじゃないか? ね、そうじゃないか? ぼくには『理想』があるんだよ、リーザ。ねえリーザ、ヴェルシーロフが遺産を拒絶したこと、お前、知ってるだろうね?」
「知らないわけがないじゃありませんか! お母さんと接吻し合ったくらいだわ」
「お前はぼくの心を知ってるかい、リーザ、知らないだろう。あの人がぼくにとって、どれくらい大切だかってことを・・・・・・」
「まあ、それを知らないでいられますか、すっかり知っててよ!」
「すっかり知ってる? ああ、そりゃお前ならあたりまえだ! お前は賢いんだもの。お前はヴァーシンより賢いよ。お前にしろ、お母さんにしろ、人の心を見透すような、人間的な目を持っている。いや、目じゃない、見方なんだ、ぼくはでたらめばかりいっている・・・・・・ぼくはいろんな点において悪い人間なんだよ、リーザ」
「兄さんて人は、優しく両手に抱き取ったらいいんだわ。そしたら、もうおしまいよ!」
「抱き取っておくれ、リーザ。今日はお前の顔を見てると、なんともいえないいい気持ちだ。いったいお前はなんともいえないほどいい娘だってことを、自分で知ってるかしらん? ぼくは今まで一度もお前の目を見たことがなかったが・・・・・・今日はじめて見つけたよ。いったいお前は今日、どこでその目を手にいれたんだい、リーザ? どこで買ってきたんだい? そして、何をその代価に払ったの? リーザ、ぼくには友達というものがなかったから、今まではあの『理想』だって、下らんもののように眺めていたのだ。しかし、お前といっしょにいると、それは下らんものじゃない・・・・・・お望みなら友達になろうか? だが、お前はぼくが何をいおうとしてるか、わかるだろうね?・・・・・・」
「ようくわかるわ」
「じゃ、いいかい、約束も契約もなく、ただ友達になるんだよ!」
「ええ、ただただ友達にね。だけど、たった一つ約束があるの。もしあたしたちがいつか互いに責め合ったり、互いに何か不満があったり、あたしたちが悪いいやな人間になったり、また今いったことを忘れてしまうようなことがあっても、ただ今日のこの日、この時間だけは、決して忘れますまいね! それを誓おうじゃありませんか。あたしたちがこうして、手と手をつなぎ合って笑いながら、愉快でたまらなかったこの日のことを、いつも思い出すという誓いをしようじゃありませんか・・・・・・よくって? え、よくって?」
「いいとも、リーザ、いいとも、ぼくちかうよ。しかし、リーザ、ぼくはなんだかはじめて、お前の言葉を聞くような気がするよ・・・・・・リーザ、お前たくさん本を読んだの?」
「今まで一度も聞かなかったわねえ! つい昨日あたしがひとこと言い間違いをしたとき、はじめてご注意をお払いくだすったわけねえ、あなた、賢人さん」
「じゃ、どうしてお前のほうからいいださなかったんだね、もしぼくがそんなばかなら!」
「あたしはあなたが利口になるのを、じっと待ってたのよ。あたしはそもそも初めから、あなたを見抜いていたのですよ、アルカージイ様。そして見抜いてしまうと、こう考えたの。『なに、あの人はそばへ寄って来る、きっと近づいて来るに相違ない、それがおちなのだ』で、あなたのほうから先に近づいていただこうと、その名誉をあなたにお譲り申すことにきめましたの。『いいえ、もうこうなったら、あたしの後からついてらっしゃい』とこう思ったの!」
「ああ、お前はずいぶん手管があるんだね! じゃ、リーザ、まっすぐに白状しておしまい。おまえはこの一ヶ月間、ぼくを笑ってたかどうだね?」
「ええええ、あなたはほんとうに滑稽な人よ、アルカージイ! だけどもね、あたしはこの一ヶ月間、あんたがそんな変人だものだから、それであんたを好いてたのかもしれないわ。でも、兄さんはいろんな点からいって、よくない変人でもあるわ。それはね、兄さんが得意にならないようにいっとくのよ。おまけに、どうでしょう、もう一人あなたのことを笑ってる人があるのよ、それはお母さんなの。お母さんは、あたしといっしょに、『なんという変人だろう、ほんになんという偏屈ものだろう』とひそひそ話をしているのよ! ところが、兄さんたらその間すまし込んで、『あのふたりはおれの前に出るとちりちりしてる』などと考えてたんでしょう」
「リーザ、お前はヴェルシーロフのことをどう考えている?」
「あたし、あの人のことは、いろいろたくさん考えてるのよ。だけどね、兄さん、あの人の話は今しないことにきめましょう。あの人のことはきょう話す必要がないわ、え、そうじゃなくって・・・・・・」
「ほんとにそのとおりだ。いや、お前は実に賢い女だよ。きっとお前はぼくより賢いに相違ない。まあ、少し待ってごらん、リーザ、も少したったら、ぼくもお前にいいことを話すかもしれないよ・・・・・・」
「何を兄さんそんなに顔をしかめるの?」
「いや、ぼくは顔なんかしかめやしないさ、リーザ、あれはただちょっと・・・・・・いや、まっすぐにいってしまおう。ぼくには一種妙な性質があってね、何か心の中のうしろめたいような点にふれられるのが、いやでたまらないんだよ・・・・・・つまり、ある種の感情を外へさらけ出して、人の見せ物にするのがいやなんだ。それは恥ずかしいことだものね。そうじゃないか? だからぼくはどうかすると、むしろ顔をしかめて、黙ってるほうがいいと思うことがあるのだ。お前は賢いから、それがわかるはずだ」
「ええ、それどこじゃない、あたしが自分でそんな人間なのよ。あたし兄さんがすっかりわかったわ。ねえ、兄さん、お母さんもやっぱりそういう人だったことを知ってて?」
「ああ、リーザ! どうかして少しでも長くこの世に生きていたいもんだね! え、お前、なんといったの?」
「いいえ、あたし何もいやしないわ」
「お前、見てるかい?」
「兄さんも見てるでしょう。あたしはあんたを見てるの、そしてあんたが好きなの」
 わたしは彼女をほとんど家のそばまで送って行き、自分の住所を教えてやった。別れるときは、わたしは生まれてはじめて彼女に接吻したのである」

[342] 『若者のアルカージイの反抗と、父ヴェルシーロフと子アルカージイの会話』
名前:ほのか
2021年09月08日 (水) 08時02分
第二編
第一章 愛の苦行者

p218
「〜と、ふいに一陣の風がおそって、わたしの蝋燭を消してしまった。そのときわたしはとつぜん、彼の手をとった。あたりは真の闇だった。彼はぎくっとしたが、やはり無言をまもっていた。わたしは彼の手に顔をよせて、いきなり貪るように接吻をはじめた。幾度も、幾度も。「かわいいアルカーシャ、なんのためにお前はそうまでわたしを愛してくれるのだ?」と彼はいったが、その声はまるで今までとは違っていた。
 彼の声はふるえた。その中には何かしら、ぜんぜん新しいものが響いていた。それはまるでだれかほかの人間がいったようだ。
 わたしは何か答えようとしたが、できなかった。そして、そのまま階段を駆けのぼってしまった。ところが、彼は依然として、ひとところでじっと待っている様子だった。わたしが自分の部屋まで駆け戻ったとき、やっと裏の戸がひらいて、パタンと激しく閉まる音が下のほうで聞こえた。またもやなんのためか寄って来た主人のそばを滑るように通り抜けて、わたしは自分の部屋へはいった。戸に掛金をかけると、蝋燭 もともさないで、自分の寝台の上へ身を投げ出し、顔を枕の中に埋めたまま、泣いて泣いて泣きつくした。トッシャールの塾以来、はじめて流した涙だ。歔欷きよきの声は恐ろしい力をもって、内部から爆発した。しかも、わたしはいい知れず幸福だった・・・・・・が、何もくだくだしく書き立てることはない。
 わたしは今このことを恥じることなく書き込んだ、なぜなら、こんなことはすべてばかばかしいけれど、それでもあるいはうつくしいことかもしれないから。

   3


が、そのかわり、彼はわたしからうんとひどい目にあった! わたしは恐ろしい暴君になったのだ。もちろん、この甘い場面については、その後二人とも、おくびにも出さなかった。それどころか、わたしたちは
三日目に顔を合わせたとき、けろりとすましこんでいた。のみならず、この二度目の晩に、わたしは彼に対して粗暴な言行をしたり、彼もまたなんとなくそっけないように思われた。この対面も同じくわたしの部屋で行われた。わたしは母に会いたい希望があるにもかかわらず、なぜか相変わらず、自分のほうから彼のところへ出かけなかった。
 わたしたちはこの間じゅう、つまり、この二月の間じゅう、ごく抽象的なことばかり話し合った。わたしは今でも驚いているのだが、わたしたちはただ抽象的なことーーもちろん、一般人類的な、きわめて必須な問題ではあるけれども、まるで目前にせまった実際問題にはふれないことばかり話すのを、仕事のようにしていたのである。目前の実際問題のなかには、ぜひともさっそく決定し、闡明しなければならぬことが、うんとたくさんあったのだが、そういうことには二人とも口をとざしていた。わたしは母やリーザのことばかりでなく・・・・・・自分自身のことも、自分の経歴のことも、何一つ話さなかった。羞恥のためか、それとも何か若い者にありがちな、ばかげた感情のためだろう、羞恥の念は、なんといっても飛び越すことができるから。ところで、わたしは彼にひどく専横な振舞いをして、時とすると暴慢におちいることさえあった。しかも、われとわが感情にさからって、そんなことをするのだ。やはり以前と同様、やみがたい力にひかれて、自然とそうなっていくので、わたしには自制することができなかった。
 ところで、彼の調子は依然、嘲笑的だった。が、なんといっても、いつも非常に優しいことは争われない。それから、もう一つわたしの感心したのは、彼が自分のほうから、好んでわたしの家へ来たことである。そのため、しまいにはわたしも母のところへごくたまにしか、一週間に一度くらいしか、出かけなくなってしまった。ことに最近、わたしが無性に方々とびまわるようになってから、それがさらにひどくなったのである。彼はいつも晩やって来て、しばらくすわり込んで、話して行くのだってが、主人とおしゃべりするのも大好きたった。彼のような人間があんな男と、ーーこう思うと、わたしは業が煮えて仕方がなかった。しかし、ときどき『いったいあの人は、おれの下宿しか行き場所がないのだろうか?』という考えが頭に浮かぶこともある。でも、わたしは彼に大勢の知己があることをたしかに知っていた。彼は、去年あたりから中絶していた。上流社会における以前の交流を、最近あらたにしたのである。しかし、彼はそんなものにはあまり心をひかれず、ほんの形式的に旧交をを温めたにすぎないらしく、むしろわたしのところへ遊びに来るのを好んでいた。
 どうかすると、彼のために非常に感動させられることがある。ほかでもない。彼は晩にわたしのところへはいって来るとき、いつも妙に臆病らしく戸を開けて、はじめいっとき妙に不安の色を浮かべながら、『邪魔じゃないかね? そうならそうといってくれ、わたしは帰るから』とでもいいたそうに、わたしの顔色をうかがうのであった。どうかすると、ほんとうにそれをくちにだすこともあった。一度あるとき(それはごく最近のことだ)、わたしがたったいま仕立屋から受取ったばかりの服を着込んで、『セリョージャ公爵』といっしょにあるところへ、(どこかということは後で説明する)くり出すために、これから出かけようとしているところへ、ヴェルシーロフがはいって来たことがある。彼はたぶん、わたしが支度していることに気がつかないらしく、はいるといきなりすわってしまった(彼はときおり、非常に奇怪な放心状態におちいることがあった)。しかも、わざとのように、主人のことなんか話し出したので、わたしはかっとなってしまった。
「ええ、あんな男のことなんぞうっちゃっといてください。主人のことなんぞ!」
「ああ、アルカージイ」彼は席を立った。「お前はこれから出かけるとこらしいね。とんだお邪魔をしてしまった・・・・・・勘弁しておくれ、後生だから」
 そういって、彼はおとなしく急いで出て行こうとした、こういう人物が、これほど自己独自のものをもっている独立不羈な上流の紳士が、わたし風情に対して、こんな忍従の態度を示したということが、彼に対する優しい愛情と信頼の念を一時にわたしの心中によみがえらせてくれた。けれど、もし彼がそれほどわたしを愛しているのなら、なぜ堕落の中途でわたしを支えてくれなかったのだろう? もし彼があのときたったひとこと注意してくれたら、あるいはわたしも自制できたかもしれないのだ。もっとも、そういかなかったかもしれない。しかし、彼は現にわたしのダンディ気取りや、気障きざなひとりよがりや、馭者のマトヴェイなどを見ていたではないか(一度などは、わたしの橇に乗せて行こうといったが、彼は乗ろうともしなかった。そういうことがなんべんもあった)。現に、わたしが金を湯水のように撒きちらすのを見ていながら、ただのひとこともたずねようとしないのだ! この事実は、今日にいたるまでわたしを驚かしている。わたしはもちろん、その当時、彼に少しも遠慮しないで、何かもあけすけにいってしまった。もっとも、ひとことたりとも、釈明らしいことをいわなかったのは、もちろんである。彼がきかなかったから、わたしもいわなかったのだ。
 もっとも、二三ど、実際問題にふれたことがある。あるとき彼が遺産相続を拒絶してからまもないころ、わたしは彼に向かって、いったいこれからなんで暮らしていくつもりか、ときいてみた。
「まあ、なんとかしてやって行くさ」恐ろしく落ちつきはらって、彼はいった。
 今はわたしもよく知っているが、タチヤーナ叔母のわずか五千ルーブリそこそこの心細い財産も、この二年間に、半分がたヴェルシーロフのために注ぎ込まれたのだ。
「アルカージイ」と彼はとつぜん、沈んだ調子でいいだした。「わたしはね、わたしたちのいっしょになった初めのころ、いや、中ごろにも終わりにも、ソフィヤによくこういったものだ。ーーソフィヤ、わたしはお前をいじめていじめて、いじめ抜いている。しかも、お前がわたしの目の前にいるあいだは、さほどかわいそうと思わないのだ。だが、お前が死にでもしてごらん、わたしはたしかに自分を罰せすにはいられないよ、とね」
 もっとも、忘れもしない、その晩かくべついろいろなことをうち明けてくれた。
「わたしは意志の弱いつまらない人間で、その意識のために苦しんで来たが、考えてみれば、そうじゃないのだ。しかも、どういうところが強いのか、お前わかるかい? ほかでもない、現代の聡明なロシヤ人に独特な、何ものとでも融和することのできる、天から賦与された力なのだ。わたしは何ものにも破壊されない。わたしは何ものにも滅せられない、わたしは何ものにも驚かされない。わたしは番犬みたいに生きる力が強いのだ。わたしは実に都合よく、相反した二つの感情を、同時に感ずることができるのだ、ーーもちろん、それは自分がしたくてするわけじゃない。が、それでもやはり、これが卑屈なことだとは承知してるのだ。その主な理由ば、あまりお利口すぎるからだ。わたしはほとんど五十の年まで生きてきたが、しかしこんなに生きてきたということが、はたしていいのやら悪いのやら、今だにわたしはわからないのだ。もちろん、わたしは生を愛する。それは間違いのない事実だが、しかしわたしのような人間が生を愛するのは、むしろ陋劣だよ。最近になって、何かしら新しいものがはじまった。そうして、クラフトのような連中は、融和しきれないで自殺していく。けれど、クラフトのような連中がばかで、われわれが賢いのは明瞭な話だ。したがって、ここにも平行線は許されない。が、それにしても。問題はやはり未解決のままだ。いったい地球は、われわれのような人間のためにのみ存在してるのだろうか? どうもそうらしく思われる。が、この考え方はあまりに悲惨だ。もっとも・・・・・・もっとも、問題は依然として未解決のままだがね。
 彼は沈みがちにこういった。が、それでもわたしは真剣かどうか知らない。どんなことがあっても、決して棄てようとしない一種の秘密な陰影を、彼は持っていた。」

[343] 『ほどほど』と、『人間あるままに愛する』
名前:ほのか
2021年09月09日 (木) 13時17分
p223

4
・・・・・・・・・・・

「あなたは、ただそうして冷笑するだけなんですか? それに、ぼく一人っきりそんな十戒を守ったところで、なんの役に立ちましょう?」
「いや! そういう疑惑や懐疑には頓着なしに、ただ十戒を履行してごらん、偉人になれるから」
「だれひとり知るもののない偉人にね」
「いかなる秘密といえども顕れざるはなしだ」
「あなたはほんとうに冷やかしてるんですね!」
「いや、どうもそんなにいちいち気にかかるんなら、少しも早く専門家になるように、努力するのがいちばんだ、まあ、建築とか弁護士業とか、そういうものをはじめるんだね。すると、もうほんとうにまじめな仕事にしたがってるんだから、お前も心がおちついて、下らないことは忘れてしまうだろうよ」
 わたしは口をつぐんだ。いったいこんなふうで何を抽き出すことができよう? けれども、こんな会話を交わした後で、いつもわたしは前よりいっそう興奮するのであった。そのほか、彼の内部にはいつも何か、一種秘密めいたものがひそんでいるのに気づいた。それがいちだんとわたしをひきつけるのだった、」


p225

「このうえもないけっこうな兆候だよ。アルカージイ。このうえもない頼もしい兆候、といってもいいくらいだ。なぜなら、ロシヤの無神論者は、もしほんとうに無神論者で、ほんの少しばかりでも知恵のある人間だったら、世界じゅうで最も善良な人間であって、いつでも神様をかわいがる傾向を持っているんだよ。つまり、正真正銘のお人好しだからさ。そのお人好しであるわけは、自分が無神論者であることに満足しきっているからさ。ロシヤの無神論者は、おおむね尊敬するべき人で、このうえもなく頼もしい連中、いわば国家の柱石なのだ
・・・・・・」
これはもちろん、何かを意味するものに相違ないが、わたしの聞きたかったのはこんなことじゃない。あるときたった一度、彼が胸中を吐露したことがある。しかし、それがきわめて奇形なので、わたしはすっかり面くらってしまった。とくに、カトリック教がどうの、錘おもりがどうのという彼のうわさを聞いているので、なおさら不思議なのであった。
 「アルカージイ」と彼はあるとき、長い話のあとでこういいだした。それは家の中ではなく往来だった。わたしは彼を送っていたのである。「アルカージイ、人間を現在あるがままに愛するということは不可能だ。が、しかし、当然なすべきわざなのだ。だから鼻をつまんで、目を閉じて(これがぜひ必要なんだよ)、われとわが心を励ましながら、彼らに善を行なうがいい。そして、彼らの悪を耐え忍んで『あれも人間だ』ということを念頭におきながら、できるだけ彼らに腹を立てないようにするのだ。もしお前がほんの少しでも、凡俗より賢くなりたかったら、むろん、彼らに対して厳格でなければならぬ。人間てやつは、本来の性質上卑劣なもので、恐ろしさのために愛することを好むものだ。そんな愛にうっかり釣り込まれないようにして、軽蔑を怠ってはいけない。コーランのどこかで、アラーが預言者に、『従順ならざる者ども』は、これを鼠のごとく見なしつつ彼らに善を施し、そのかたわらを通りすぎよ、と命じている、ーーこれは少し傲慢すぎるが、しかし正確な言葉だ。ことに、人が善良であるときにさえ、彼らを軽蔑することを学ばねばならぬ。なぜなら、そのようなときにこそ、人間はもっとも賤悪であるからだ。これはね、アルカージイ、自分から推していったことなのだ! どんな人間だって、ほんのこれっからさきほどでも利口な者は、自分を軽蔑しないでは、この世に生きていられないよ、ーー潔白不潔白にはかかわりなしだ。自分の隣人を愛して、これを軽蔑しないというのは、ーー不可能に属する! わたしの考えでは、人間はおのれの隣人を愛することができないように、ちゃんと生理的に造られているんだよ。この問題については、まずそもそもの初めから、一種の言葉の誤りがあるよ。『人類に対する愛』も、自分が心の中で創造した人類に対する愛、というように解釈しなければならない(いいかえれば、自分自身を創造したので、自分自身に対する愛ということになるのだ)、だから、そんな人類は実際には、決してあるべきはずがないんだよ」
 「今後も決してないでしょうか?」
「アルカージイ、これは少々ばかげてるよ、それにはわたしも異存ないが、しかしわたしの罪じゃないんだ。なぜって、世界創造のときに、なんの相談も受けなかったんだからね。わたしもこの点について、自己の意見を持つべき権利を保留するのさ。
「そんな意見を持ってるあなたを、どうしてまたキリスト信者などというのでしょう?」とわたしは叫んだ。「なぜ錘おもりを身につけた修道僧だの、宣教師だのというのでしょう? 合点がいかないですね!」
「だれがわたしのことをそういってる?」
 わたしは話して聞かせた。彼は非常に注意ぶかく聴きおわったが、しかし話はそれきり打ち切ってるしまった。
 このわたしにとって記憶すべき会話は、何が糸口となったのか、どうしても思い出せないけれど、しかし、彼はかつてないほどいらだたしそうだった。まるで相手がわたしでないかのように、冷笑的なところの少しもない、熱烈な調子で話した。しかし、わたしは今度も彼を信じなかった。彼がわたしみたいなものをつかまえて、こんなことをまじめで話すわけがないではないか?」

[344]
名前:ほのか
2021年09月12日 (日) 16時49分
第2章 貴族階級について

p229
「名誉という言葉は、とりもなおさず義務のことです」と彼はいった(わたしはただ記憶している範囲内で意味を伝えるにすぎない)。「ある国内で最高階級が牛耳を取っているときは、その間は国土が安泰堅固です。最高階級は常に自分の名誉と、名誉の宗教を持っています。それは間違ったものかもしれないけれど、常に連鎖の役をつとめ、国土を堅固にしてくれます。それは精神的にも有益ですが、むしろ政策的により有益なのです。しかし奴隷はーーつまりこの階級に属さない連中は、つらい目を見なければなりません。このつらい目を見ないため、権利の平等化が行なわれるので、わが国でもそれを実行しました。それはむろん、けっこうです。が、あらゆる経験に徹して、今までどこでも(といって、つまり、ヨーロッパのことですが)、平等化とともに名誉、したがって、義務観念の堕落が生じました。利己主義が従来の結合的理念にかわって、いっさいが個人の自由に分解してしまったのです。解放された人たちは、結合的観念がないために、ついには尊い連鎖というものをことごとくなくしてしまって、せっかく獲得した自由さえも、まもり遂おおせることができなくなったのです。しかし、ロシヤ貴族のタイプは、ヨーロッパのそれとはぜんぜん似ていない。わが国の貴族階級は、以前の特権を失っているにかかわらず、今日でも名誉や、文明や、科学や、高遠な思想の守護者として、依然、最高階級の位置を存続することができるのです。しかし、それは固定的な階級に閉じこもるわけではありません。それはただちに思想の死を意味します(ここがかんじんなことなんです)。わが国ではそれとまったく反対に、この階級へはいる門戸は、すでに遠い以前から、かなり解放されていました。ところが、今はこれを完全に解放する時が来たのです。どうかわが国では、すべての名誉や、科学や、勇気や、すべてそういうものに関する美事、功績が、あらゆる人間に、最高階級へ加入する権利を与えるようにしたいものですね。こういうわけで、最高階級は自然と、文字どおりに純粋な意味で、たんにすぐれたる人の集合に変化してしまい、以前のような特権階級ではなくなるのです。この新しい、いや、むしろ革新されたる形式において、最高階級は維持されうると思います」
 公爵は白い歯を剥いた。
「そんなものが、どうして貴族階級といわれますか? あなたが設計なさっているのはマソンの支部か何かだ、貴族階級じゃありません」
 くり返していうが、公爵は恐ろしく無教育だった。わたしは全部が全部、ヴェルシーロフに同意ではなかったものの、それでもいまいましさのあまり、長いすに腰をかけたまま、くるりとそっぽを向いてしまった。ヴェルシーロフは、公爵が歯を剥いたことを、十分に見てとったのである。
「あなたがマソンという言葉をつかわれたのはは、どういう意味か知りませんが」と彼は答えた。「もし現在ロシヤの公爵が、こういう思想をしりぞけるとすれば、もちろん、まだその時期が到ってないのです。絶対に解放されて、しかも不断に革新されていく階級へ、加入を望むすべての人にとって、神的ともいうべきこの名誉と開花の思想は、もちろん、一種のユートピアですが、しかしそれを不可能のものと呼ぶことが、どうしてできましょう? もしこの思想が、たとえ少数でも人の心に生きてるとすれば、それはまだぜんぜんほろび尽したのではありません。深い闇の中における一点の火のごとく、輝いているのです」
「あなたは『高遠なる理想』とか、『偉大なる思想』とか、『結合的理念』とかいう言葉を使うのがお好きですが、いったい、『高遠なる理想』というのは何を意味するのか、一つ伺いたいものですな」
「実のところ、どう返事していいかわかりませんね、公爵」とヴェルシーロフは静かにほほ笑んだ。「まあ、ご返事ができないといったほうがたしかでしょう。偉大なる思想というのは多くの場合、長いあいだ正体を突きとめられないままでいる感情なのです。わたしはただこういうことを知っています。偉大なる思想は、つねに生きた生活の流れ出る源泉です。ただし、それは理性的、人工的な生活じゃなくって、その反対に、少しも退屈なところのない楽しい生活なのです。こういうわけで、この生活の源泉たる高遠な理想は、どうしても必要かくべからざるものです。もちろん、みんなそれをいまいましがってはいますがね」
「なぜいまいましがってるんです?」
「なぜって、理想を持って生活するのは退屈だけれど、理想がないといつも愉快ですものね」
 公爵は苦虫を潰したような顔をした。
「いったいあなたのお説によると、生きた生活とはなんですか?」(彼は、見受けたところ、だいぶ業を煮やしているらしかった)
「やはりよくは知らんですよ、公爵。ただそれは何かしら恐ろしく単純な、恐ろしくありふれた、しじゅうわれわれの目にはいっている、平凡なものだということだけわかっているのです。しかし、それがあまりに平凡すぎるため、自然の結果として、われわれはもういく千年の間それに気がつかないで、そばを通り抜けているのです」
「わたしはただあなたの貴族讃美論が、同時に、貴族否定論である、ということだけ申し上げたかったのです」と公爵はいった。
「もし、しいてお望みなら、ロシヤには貴族階級はかつて存在しなかった、といっていいかもしれませんよ」
「それはどうも、非常に曖昧で、不明瞭です。わたしなどの考えでは、もし言を吐く以上、それを展開していかなきゃなりませんよ・・・・・・」
 公爵は額にしわをよせ、ちらと壁の上の時計を見上げた。と、ヴェルシーロフは立ちあがって、自分の帽子を取った。「展開させる!」と彼はいった。いや、むしろ展開させないほうがいいでしょう。それに、展開させないで話すのが、わたしの好みなんですから、まったくそうなんですよ。それに、もう一つ奇妙なことがあるんです。もしわたしがたまたま、自分の信じている思想を展開しはじめるようなことがあると、いつも話のおわるころには、自分の説を信じなくなる、そういう結果を生じるのです。今もそんなことになりゃしないかと心配なんですよ。さようなら、公爵、いつもわたしはあなたのところへ来ると、始末のつかないほどしゃべりこんでしまいますね」
 彼は出て行った。公爵は慇懃に見送った。が、わたしは侮辱を感じた。
「なんだってきみはそんなにふくれたんです?」事務机をさしてわたしのそばを通り過ぎながら、彼はこっちの顔を見ないで、いきなり頭からきめつけた。
「ぼくふくれたのは、ほかじゃありません」とわたしは声をふるわせながら、いいだした。「ぼくはね、あなたがぼくばかりか、ヴェルシーロフに対しても、奇妙に態度を変えてしまったのに気がついたもんだから・・・・・・もちろんヴェルシーロフの説は、初めのうちこそ、多少退嬰的であったかもしれませんが、しかし後のほうは非常によくなりました。そして・・・・・・彼の言葉の中には、深い思想がこもっていたかもしれません。ところが、あなたはてんでそれを理解しなかったのです。理解しなかったのです。そして・・・・・・」
「ぼくは人にさし出がましくお説教されるのがいやなんです! 小僧っ子扱いにされたくないんです!」と彼はほとんど怒気を含んで、ぶち切るようにいった・・・・・・」

[345] 「偉大なる思想というのは多くの場合、長いあいだ正体を突きとめられないままでいる感情なのです。」
名前:ほのか
2021年09月12日 (日) 16時54分
第2章 貴族階級について

p229
「名誉という言葉は、とりもなおさず義務のことです」と彼はいった(わたしはただ記憶している範囲内で意味を伝えるにすぎない)。「ある国内で最高階級が牛耳を取っているときは、その間は国土が安泰堅固です。最高階級は常に自分の名誉と、名誉の宗教を持っています。それは間違ったものかもしれないけれど、常に連鎖の役をつとめ、国土を堅固にしてくれます。それは精神的にも有益ですが、むしろ政策的により有益なのです。しかし奴隷はーーつまりこの階級に属さない連中は、つらい目を見なければなりません。このつらい目を見ないため、権利の平等化が行なわれるので、わが国でもそれを実行しました。それはむろん、けっこうです。が、あらゆる経験に徹して、今までどこでも(といって、つまり、ヨーロッパのことですが)、平等化とともに名誉、したがって、義務観念の堕落が生じました。利己主義が従来の結合的理念にかわって、いっさいが個人の自由に分解してしまったのです。解放された人たちは、結合的観念がないために、ついには尊い連鎖というものをことごとくなくしてしまって、せっかく獲得した自由さえも、まもり遂おおせることができなくなったのです。しかし、ロシヤ貴族のタイプは、ヨーロッパのそれとはぜんぜん似ていない。わが国の貴族階級は、以前の特権を失っているにかかわらず、今日でも名誉や、文明や、科学や、高遠な思想の守護者として、依然、最高階級の位置を存続することができるのです。しかし、それは固定的な階級に閉じこもるわけではありません。それはただちに思想の死を意味します(ここがかんじんなことなんです)。わが国ではそれとまったく反対に、この階級へはいる門戸は、すでに遠い以前から、かなり解放されていました。ところが、今はこれを完全に解放する時が来たのです。どうかわが国では、すべての名誉や、科学や、勇気や、すべてそういうものに関する美事、功績が、あらゆる人間に、最高階級へ加入する権利を与えるようにしたいものですね。こういうわけで、最高階級は自然と、文字どおりに純粋な意味で、たんにすぐれたる人の集合に変化してしまい、以前のような特権階級ではなくなるのです。この新しい、いや、むしろ革新されたる形式において、最高階級は維持されうると思います」
 公爵は白い歯を剥いた。
「そんなものが、どうして貴族階級といわれますか? あなたが設計なさっているのはマソンの支部か何かだ、貴族階級じゃありません」
 くり返していうが、公爵は恐ろしく無教育だった。わたしは全部が全部、ヴェルシーロフに同意ではなかったものの、それでもいまいましさのあまり、長いすに腰をかけたまま、くるりとそっぽを向いてしまった。ヴェルシーロフは、公爵が歯を剥いたことを、十分に見てとったのである。
「あなたがマソンという言葉をつかわれたのはは、どういう意味か知りませんが」と彼は答えた。「もし現在ロシヤの公爵が、こういう思想をしりぞけるとすれば、もちろん、まだその時期が到ってないのです。絶対に解放されて、しかも不断に革新されていく階級へ、加入を望むすべての人にとって、神的ともいうべきこの名誉と開花の思想は、もちろん、一種のユートピアですが、しかしそれを不可能のものと呼ぶことが、どうしてできましょう? もしこの思想が、たとえ少数でも人の心に生きてるとすれば、それはまだぜんぜんほろび尽したのではありません。深い闇の中における一点の火のごとく、輝いているのです」
「あなたは『高遠なる理想』とか、『偉大なる思想』とか、『結合的理念』とかいう言葉を使うのがお好きですが、いったい、『高遠なる理想』というのは何を意味するのか、一つ伺いたいものですな」
「実のところ、どう返事していいかわかりませんね、公爵」とヴェルシーロフは静かにほほ笑んだ。「まあ、ご返事ができないといったほうがたしかでしょう。偉大なる思想というのは多くの場合、長いあいだ正体を突きとめられないままでいる感情なのです。わたしはただこういうことを知っています。偉大なる思想は、つねに生きた生活の流れ出る源泉です。ただし、それは理性的、人工的な生活じゃなくって、その反対に、少しも退屈なところのない楽しい生活なのです。こういうわけで、この生活の源泉たる高遠な理想は、どうしても必要かくべからざるものです。もちろん、みんなそれをいまいましがってはいますがね」
「なぜいまいましがってるんです?」
「なぜって、理想を持って生活するのは退屈だけれど、理想がないといつも愉快ですものね」
 公爵は苦虫を潰したような顔をした。
「いったいあなたのお説によると、生きた生活とはなんですか?」(彼は、見受けたところ、だいぶ業を煮やしているらしかった)
「やはりよくは知らんですよ、公爵。ただそれは何かしら恐ろしく単純な、恐ろしくありふれた、しじゅうわれわれの目にはいっている、平凡なものだということだけわかっているのです。しかし、それがあまりに平凡すぎるため、自然の結果として、われわれはもういく千年の間それに気がつかないで、そばを通り抜けているのです」
「わたしはただあなたの貴族讃美論が、同時に、貴族否定論である、ということだけ申し上げたかったのです」と公爵はいった。
「もし、しいてお望みなら、ロシヤには貴族階級はかつて存在しなかった、といっていいかもしれませんよ」
「それはどうも、非常に曖昧で、不明瞭です。わたしなどの考えでは、もし言を吐く以上、それを展開していかなきゃなりませんよ・・・・・・」
 公爵は額にしわをよせ、ちらと壁の上の時計を見上げた。と、ヴェルシーロフは立ちあがって、自分の帽子を取った。「展開させる!」と彼はいった。いや、むしろ展開させないほうがいいでしょう。それに、展開させないで話すのが、わたしの好みなんですから、まったくそうなんですよ。それに、もう一つ奇妙なことがあるんです。もしわたしがたまたま、自分の信じている思想を展開しはじめるようなことがあると、いつも話のおわるころには、自分の説を信じなくなる、そういう結果を生じるのです。今もそんなことになりゃしないかと心配なんですよ。さようなら、公爵、いつもわたしはあなたのところへ来ると、始末のつかないほどしゃべりこんでしまいますね」
 彼は出て行った。公爵は慇懃に見送った。が、わたしは侮辱を感じた。
「なんだってきみはそんなにふくれたんです?」事務机をさしてわたしのそばを通り過ぎながら、彼はこっちの顔を見ないで、いきなり頭からきめつけた。
「ぼくふくれたのは、ほかじゃありません」とわたしは声をふるわせながら、いいだした。「ぼくはね、あなたがぼくばかりか、ヴェルシーロフに対しても、奇妙に態度を変えてしまったのに気がついたもんだから・・・・・・もちろんヴェルシーロフの説は、初めのうちこそ、多少退嬰的であったかもしれませんが、しかし後のほうは非常によくなりました。そして・・・・・・彼の言葉の中には、深い思想がこもっていたかもしれません。ところが、あなたはてんでそれを理解しなかったのです。理解しなかったのです。そして・・・・・・」
「ぼくは人にさし出がましくお説教されるのがいやなんです! 小僧っ子扱いにされたくないんです!」と彼はほとんど怒気を含んで、ぶち切るようにいった・・・・・・」

[347] セリョージャ公爵は、貴族風を装う〜
名前:ほのか
2021年09月14日 (火) 12時07分
3 p236 あたりですね。

セリョージャ公爵は、ヴェルシーロフの言う様に、貴族風を装って、化けの皮が剥がれるアタフタした有り様の章ですね。スチェペリコフとアルカージーわたしが、部屋にいるのを、「途方に暮れたような、情けなさそうな、しかも毒々しい視線を投げているのにふと心づいたとき、わたしの驚きはどんなだったろう!」と、表現されてますね。「セルゲイ公爵は自身熱望しているにもかかわらず(それはわたしもよく知っている)、まだ依然として、しんからペテルブルグの上流社会の人になりきっていなかったから、彼がこのような訪問を非常に尊重するのは当然の話だった。」

[348] 『あなたのお部屋にいると、魂が浄められるような気持ちがします。』 『あなたのお家を出るときには、実際よりもいい人間になったように感じます。』
名前:ほのか
2021年09月15日 (水) 10時21分
p242 第3章 義 姉

  3

p257
「今日はどうしても、あなたにいわないでおられません!ぼくはあなたに告白したいのです、ーーあなたがぼくをここへ招待してくだすった、その優しいデリケートなお心を、もういくど祝福したかしれないんです。あなたと知己になったことは、きわめて強烈な感化をぼくに与えました・・・・・・あなたのお部屋にいると、魂が浄められるような気持ちがします。そして、あなたのお家を出るときには、実際よりもいい人間になったように感じます。それはまったくなんです。あなたとならんですわっていると、悪いことを口に出すことができないばかりか、悪い考えをいだくこともできなくなります。あなたのそばにいると、そんなものはどこかへ消えてしまいます。そして、ちょっとでもあなたのそばで何か悪いことを思い出すと、ぼくは恥ずかしくなり、おどおどし、心の中で顔を赤らめます。それに、今日あなたのところで妹に会ったのが、ことに愉快でたまらないのです・・・・・・それはつまり、あなたの高潔なお心と・・・・・・美しい態度を証明しているわけだから・・・・・・つまり、あなたが実になんともいえない、兄弟のような情を示してくだすったので、もしこの隔ての氷を割ることを許してくださるなら、ぼくは・・・・・・」⇄(感想文:義理の姉アンナ・アンドレーエヴナとDNAでつながってるので、アルカージーの父ヴェルシーロフも、アンナ・アンドレーエヴナのように、『あなたのお部屋にいると、魂が浄められるような気持ちがします。』とか、『あなたのお家を出るときには、実際よりいい人間になったように感じます』というような、性質を携えているものと思って、ホッと!いたしますね😋つまり、アルカージー主人公わたしも、DNAで
その様な優し性格を、自ずと携えているのですね‼️ホッと読者私は、致しますね😃
 私読者の想像です。

 上記の文章は、読者私を、ホッとさせて下さる一瞬の《清涼剤》でありますね😋

 それから、つい昨日あたりから、この登場人物は、読者私の知人随分会ってないけど、彼女だぁ、彼女の若いとき。

 この人は、読者私の知人随分会ってないけど、あの人だぁ〜っと、読み始めました。突然。そうすると、なかなか、楽しく、小説を身近な違った風景を想像しながら読めますね😃

 今までの読み方は、自ずと、作家ドストエフスキイ氏の作品の中の、この登場人物に似ているな‼️だったんですけど。

 我ながら、過去に出会った友人に付き合わせて読んでみるっと、というような小説の読み方を発見して、楽しいです。

 何しろ、登場人物が、作家ドストエフスキイ氏の作品は、多いですから😃

[349] アルカージーも、ヴェルシーロフもリーザもアフマーコヴァ夫人も多分、アンナ・アンドレーエヴナも、皆、良い人ですね😃
名前:ほのか
2021年09月17日 (金) 16時41分
p263
「ぼくはもうあなたの微笑を我慢できません!」とわたしはだしぬけに叫んだ。「どうしてぼくはモスクワにいる時分、あなたという人をもの凄いほど華やかで、そして世馴れた、意地のわるい言葉づかいをする貴婦人のように想像してたんでしょう? ええ、モスクワにいたころです。ぼくはまだあちらにいる時分から、マリヤ夫人とあなたのことをうわさして、いったいどんな人だろうかと想像していたものです。マリヤ夫人を覚えてらっしゃるでしょう? あなたは、あのひとを訪問なすったんですものね。こちらへ来る途中も、汽車の中でぼくは一晩じゅう、あなたの夢を見たものです。ここへ来てからも、あなたが帰っていらっしゃるまで、ぼくはまる1か月のあいだ、お父さんの書斎にかかっている、あなたの肖像をにらみ通していました。あなたの顔には、子供らしいふざけた表情と、底の知れないほどの単純さがありますーーそうなんです! ぼくはあなたのとこへ出入りしている間じゅう、この点に驚きつづけていました。ええ、そりゃむろん、あなただって傲然と人を見おろして、ただちに一瞥をもって威圧することができます。ぼくはあなたがモスクワから帰って来たとき、老公の部屋でぼくを見おろされたあの目つきを、今でも覚えていますーーあのときぼくはあなたを見ましたが、しかしあの部屋を出たときだれかに、あなたがどんな方だったかときかれても、ぼくには返事ができなかったでしょう。あなたの背格好さえ、説明できなかったに相違がありません。ぼくはあなたを一目見るや、それきり目が眩んでしまったのです。あの肖像は、まるであなたに似ていません。あなたの目は暗いほうじゃなくって、明るい色をしています。ただ睫が長いために暗く見えるだけなんです。あなたは中背で、肥りじしでいらっしゃる。しかし、あなたのはよく締った、軽そうな肥りじしです。健康な田舎の若い娘の肥りじしです。それに、あなたの顔もそっくり田舎式です。田舎美人の顔です、ーー腹を立てないでください。だって、それはいいことなんですもの、そのほうがかえっていいのです。あなたの顔はまるまるした、血色のいい、朗らかな、大胆な、いつも笑いを含んだ・・・・・・しかも、内気の顔です。まったく内気な顔だカチェリーナ・ニコラエヴナ・アフマーコヴァが内気な顔をしてる! なんという矛盾だろう! しかし、ほんとうに内気な、**らしい顔です。まったく! いや、**らしいというくらいじゃ足りない、子供らしい顔だ! これがあなたの顔なんです! ぼくはたえず驚きを感じながら、心の中で『いったいこれがほんとうにあのひとだろうか?』とみずから問いを発したものです。ぼくは、今でこそあなたが非常に賢い方だってことを知っていますが、実際はじめのうちは、少し間抜けじゃないかと思ったくらいです、あなたは快活な知性を持っていられますが、それには少しの修飾もありません・・・・・・それに、あなたの顔から微笑ご去らないということも、ぼくはとても好きなのです。これはぼくの天国です! それから、またあなたの落ちついてらっしゃるのも、静かなのも、口のきき方がなめらかで、落ちついて、ほとんどものうげに思われるのも、やっぱり好きです、ーーつまり、このものうげなのが好きなのです。あなたはたとい足の下の橋がこわれても、それでも何かなめらかな、正確な口のきき方をなさるだろうと、思われるほどです・・・・・・ぼくはあなたを慢心と、情欲の権化のように想像していました。ところが、あなたはこの二か月のあいだ、ぼくを相手に、まるで学生同士のような調子で話されました。あなたがそんな顔をしておられようとは、ぼくすこしも想像していませんでした。あなたの額は、よく彫刻に見受けられるように少し低めですが、そのかわり白くて、きめが細かくて、まるで大理石みたいです。その上ふさふさした髪がかぶさっているのです。あなたは胸が高くって、歩きぶりがかるがるとして、実になんともいえない美しい方ですが、傲慢な点といっては、これっからさきもありません。ぼくはやっと今それを信じたのです。今までどうも信じかねていたのですが・・・・・・」⇄(読者感想文:次は第5章ですが、この文章は、自分自身に当てはめると、とっても、あまーーぁく、響いて、興味深く読めますね😋)

[350] 《母と子》の、優しさ溢れる会話と、『未成年』の主題が、盛り込まれているのでは⁉️と、考えに至りました。
名前:ほのか
2021年09月18日 (土) 09時07分
p274 誤 解

T p276「アルカージイ、この人生では、ちょいちょいした不幸を忍ぶだけの、腕がなくっちゃだめだよ」とヴェルシーロフは微笑を浮かべながら、曖昧な調子でいった。「不幸がなければ、生きてる価値はないからね」

U p277「いや、まあ、待ってください」とわたしは饒舌の発作に駆られて、なお口を出した。「苦痛によって批判の権利を得るとは、なんのことです? 潔白なものは審判者となりうる、ーーというのがぼくの意見です」
「それじゃ、とても大勢の審判者をあつめるわけにゃいかんよ」

V p277 「お母さん、それだから肉親の愛は、非倫理的だというんです。つまり、なんの取柄もないのに愛されるから、愛というものは、功績によって獲得しなければなりません」
「またそのうちに手柄は立てるさ。けれどここでは、なんの理由もなしに、お前を愛してるのさ」

W p278 「アルカージイ」とつぜんヴェルシーロフが、きっぱりした調子でいいだした。「あすこにわたしの金なんか、一コペイカもないよ」

X p279 「わたしの考えでは、お前は決してそうばかじゃないけれど、ただ少々ナイーヴなんだね」と彼は冷笑的にいった。」

Y p280 「ぼくはお二人にこう明言しておきます」とわたしは調子をはりあげた。「もし世の中に、何かいまわしいものがあるとしたら、それはぼくひとりきりで、そのほかのものはみんな美しいんです・・・・・・」

Z p280 「・・・・・・ねえお母さん、ぼくこの前ここで・・・・・・ばつの悪いことをいいましたね・・・・・・お母さん、あれはぼくほらを吹いたのです。ぼくは真心から信仰を持ちたいと思っていながら、あのときちょっとから威張りをしたのです。ぼくは、ほんとうはキリストを愛しているのです・・・・・・」

[ p280 「キリストさまはなんでもゆるしてくださるよ、アルカージャ。お前の悪口もゆるしてくださる。いえ、あんなのよか、もっとひどい悪口でもゆるしてくださるよ。キリストさまはわたしたちの父です。キリストさまは少しも不自由なさることなしに、どんな深い闇の中にでも輝いていなさるんだよ・・・・・・」
⇄「感想文:《母と子》の優しさ溢れる会話ですね😃p274〜280つまり、第5章誤解の1 を、次回は、全て書き写しておきたいと考えてます😃

[351] 小説ドストエフスキイ文学の好きな、つまり、主人公あたりを、自分自身に置き換えて読むと、楽しく癒されますね♫
名前:ほのか
2021年09月19日 (日) 13時39分
p274
  第5章  誤 解

   1



p276

「アルカージイ、この人生では、ちょいちょいした不幸を忍ぶだけの、腕がなくっちゃだめだよ」とヴェルシーロフは微笑を浮かべながら、曖昧な調子でいった。「不幸がなければ、生きてる価値はないからね」
「おやおや、あなたどうかすると、恐ろしく退嬰主義者になりますね」神経的に笑いながら、わたしは叫んだ。
「なあに、そんなことはなんでもありゃしないよ」
「いや、なんでもなかありません! なぜあなたは驢馬に向かって、お前は驢馬だとまっすぐにいわないんです?」
「それはお前、自分のことをいってるんじゃないかね? わたしは第一、だれの批判をするのも好まないし、またできないよ」
「なぜ好まないんです、なぜできないんです?」
「大儀でもあるし、また障碍もあるのだ。ある一人の賢い婦人が、わたしに一度こういったことがある。ーーあなたは『自分で苦しむことができない性分だから』、他人を批判する権利がない、他人の審判者となるためには、苦痛によって批判の権利を得なければならぬ、とこうなのだ。少しぎょうぎょうしいきらいはあるが、わたしに適用するには、あるいは真理かもしれないと思ったので、悦んでその説に服したわけだ」
「いったいそんなことを、タチヤーナ叔母さんがあなたにいったのですか?」
「お前はどうしてそれを知ったんだね?」やや驚きの色を浮かべながら、ヴェルシーロフはわたしを見上げた。
「タチヤーナ叔母さんの顔つきで察したのです。急にぎくっとしましたからね」
 わたしは偶然いいあてたのだ。後で聞いてみると、この一句はほんとうに前の晩タチヤーナ叔母が、ヴェルシーロフと激烈な論戦をしながら、いったのだそうである。くり返していうが、概して、わたしがこうして歓喜の念に駆られて、多弁を弄しながら一同に向かっていったのは、ぜんぜん時宜をえていなかった。彼らはそのとき、それぞれ、自分自身の心配をもっていたのだ。
「しかし、ぼくには何一つわかりません。だって、あまり抽象的なんですものね。で、ここにこういう特質があるんです。アンドレイ・ペトローヴィチ、あなたは恐ろしく抽象的な話がお好きですが、それは利己的な特質なんです。なぜって、抽象的な話を好くのは、エゴイストにかぎってるから」
「それはちょいと気がきいてるね。しかし、しつこくしないでくれ」
「いや、まあ、待ってください」とわたしは饒舌の発作に駆られて、なお口を出した。「苦痛によって批判の権利を得るとは、なんのことです? 潔白なものは審判者となりうる、ーーというのがぼくの意見です」
「それじゃ、とても大勢の審判者をあつめるわけにゃいかんよ」
「一人だけはぼく、知っています」
「それはだれだね?」
「いまぼくとすわって話してる人!」
 ヴェルシーロフは妙な薄笑いをもらすと、わたしの耳のすぐそばまで身をかがめ、わたしの肩に手をかけてささやいた。
「その人間はお前にしじゅううそばかりついてるよ」
 このとき彼がどういう考えを持っていたのか、わたしはいまだに諒解できないのだが、明らかに彼はその瞬間、非常な不安におそわれていたらしい(後で思いあわせてみると、ある一つの情報のためだった)、この『その人間はお前にしじゅううそばかりついてるよ』のひとことはあまりに唐突で、あまりに真剣で、しかもなんともいえぬ奇妙な、もうとう冗談らしいところのない表情で発せられたので、わたしは神経的にぎくりと、全身をふるわせたほどである。わたしはほとんどふるえあがって、けげんな目つきで彼を見つめた。けれど、ヴェルシーロフは急いで笑いにまぎらした。
「やれやれ、ありがたい!」彼がわたしに何かささやいたので、母はぎょっとしていった。「わたしはまた何か・・・・・・ねえ、お前、アルカーシャ、わたしたちに腹を立てないでおくれ。そりゃ賢い人たちなら、わたしたちのほかにお前も大勢知ってるだろうが、もしわたしたちがいないとしたら、だれがお前をかわいがってくれます!」
「お母さん、それだから肉親の愛は、非倫理的だというんです。つまり、なんの取柄もないのに愛されるから、愛というものは、功績によって獲得しなければなりません」
「またそのうちに手柄は立てるさ。けれどここでは、なんの理由もなしに、お前を愛してるのさ」
 一同は急に笑い出した。
「お母さん、あなたはべつに撃つ気もなかったのに、鳥を殺したわけなんですよ!」わたしも同じように笑いながら、こう叫んだ。
「じゃ、お前さんは、ほんとうに何かひとに愛されるわけがあると思ってるのかえ」またもやタチヤーナ叔母がくってかかった。「お前さんは値打ちのないのに愛されてるどころか、いやいやながら愛されてるんだよ!」
「どっこい、ところで、そうじゃないんです!」とわたしは愉快そうに叫んだ。「ねえ、叔母さん、きょうだれかがぼくに向かって、お前を愛してる、といったかもしれませんよ!」
「それは冷やかしにいったのさ!」急にタチヤーナ叔母は、不自然なほど毒々しい調子で引き取った。それはまるで、わたしがこの言葉を発するのを、待ちかまえていたようであった。「そうです、心の優しい人間、ことに婦人は、お前の心の汚さだけにでも胸をわるくしますよ。お前さんの髪を分けた頭、薄地のシャツ、フランス人に縫わした服、そんなものはみんな胸糞がわるい! それはいったいだれが縫ってくれた服です、いったいお前さんはだれに養われてるんです。いったいだれがルレット遊びなどの金を、お前さんにくれるんです。まあ、恥ずかしくもない、だれから金を取っているのか、思い出してみるがいい!」
 母はもうすっかり、かっとなってしまった。わたしは今まで、母がこんな烈しい羞恥の色を現わしたのを、ついぞ見たことがないくらいである。わたしは腹の中がひっくり返ったような気がした。
「たとえぼくが金をつかうとしても、それは自分の金をつかうのです。他人に干渉される覚えはありません」顔を真っ赤にしながら、わたしは断ち切るようにいった。
「へえ、自分のだって? どうして自分のでしょう?」
「ぼくのでないとすれば、アンドレイ・ペトローヴィチのです。あの人はいやだなんていやしません・・・・・・ぼくはアンドレイ・ペトローヴィチの権利に属する金を、公爵から引き出していたのです・・・・・・」
「アルカージイ」とつぜんヴェルシーロフが、きっぱりした調子でいいだした。「あすこにわたしの金なんか、一コペイカもないよ」
 この一句は恐ろしく意味深長なものだった。わたしは即座に腰を折られてしまった。ああ、当時のパラドクサルな、混沌たるわたしの気持ちを思い起こしたら、もちろん、この場合何かしら『高潔な』発作を起こすか、それともぎょうぎょうしい一言でごまかすか、またはなにか別のやり方でうまくのがれてしまったはずなのだが、ふとわたしはリーザの眉をしかめた顔に、何かしらなじるような、毒々しい、当を欠いた表情、ーーほとんど冷笑ともいうべき表情を見つけたので、まるで悪魔にそそのかされたような気分になった。
「ねえ、お嬢さん」とわたしはとつぜん、彼女のほうに振り向いた。「あなたはしじゅう公爵の家へ出かけて、ダーリヤさんを訪問なさるそうですが、一ついかがでしょう、この三百ルーブリをあのひとに直接わたしていただけないでしょうか。これは今日あなたがぼくにあてこすりをいわれた金です!」
 わたしは金を取り出して、彼女に差し出した。ああ、この@@ヘイレツな言葉がこの時なんの目的もなく、なんの皮肉もなしに発せられたものだとは、だれがほんとうにするだろう? 実際、そういう皮肉なぞは、ぜんぜんありうべきはずがないのだ。なぜなら、わたしはその当時、まるで何も知らなかったからである。つまり、わたしは何かしら無邪気な皮肉を発して、彼女に一矢むくいるつもりだったらしい。たとえていってみれば、お前は娘のくせに、人のことに干渉したがる、そんなにぜひとも干渉したいなら『そんなに若い男の内緒に口が出したいなら』いっそあの公爵という若い男、ペテルブルグの将校に、自分で会ってみたらどうです、というくらいの意味だったのだ。
 けれども、わたしの驚きはどんなであったか。母はとつぜん立ちあがって、おどかすようにわたしの鼻先に指を立てながら叫んだ。
「おひかえ! おひかえ!」
 母のこういう所作をてんで予期していなかったので、わたしもおぼえず席をおどりあがった。驚いたというよりも、一種の苦痛、ーー悩ましい胸の痛手、ーーというべきものを覚えたのだ。わたしは忽然として、何かしら重苦しい、いまわしいものが生じたのを悟った。しかし、母はながく我慢していられなかった。とつぜん両手で顔を蔽い!足ばやに部屋を出て行った。リーザはわたしのほうを見向きもしないで、その後について行った。タチヤーナ叔母は三十秒ばかり、無言でわたしを見つめていた。
「いったいお前さんは、ほんとうに何かばかげたことをいうつもりだったのかえ?」深い驚きの表情を浮かべて、わたしを見つめながら、彼女は叫んだが、わたしの返事を待とうともせず、同じく二人の後を追って行った。ヴェルシーロフは親しみのない、ほとんど意地悪いほどの様子で席を立つと、片隅にあった帽子を取り上げた。
「わたしの考えでは、お前は決してそうばかじゃないけれど、ただ少々ナイーヴなんだね」と彼は冷笑的にいった。
「みんなが帰って来たら、お菓子のときにわたしを待たなくていいって、そういっとくれ。わたしは少し歩いて来るから」
 わたしは一人になった。はじめは不思議だった。それから、やがて侮辱を感じだしたが、ついに自分が悪かったということを、明瞭に見てとった。もっとも、はたして何が悪かったか、それはわからなかったけれど、とにかく、何かあるものを直感したのである。わたしは窓際にすわって待っていた。十分ばかり待った後、同じように帽子を取って、もと自分の部屋だった屋根裏へ行って見た。二人、つまり母とリーザが、今そこにいて、タチヤーナ叔母はもう帰ってしまったのであった。はたして二人はいっしょにわたしの長いすにすわって、何やらひそひそ話し合っていた。わたしが姿を現わすやいなや、すぐに話をやめた。驚いたことには、二人はわたしに腹を立てていなかった。少なくとも、母はわたしにほほ笑んで見せた。
「お母さん、ぼくわるうございました・・・・・・」と、わたしはいいかけた・・・・・・
「いいよ、いいよ、なんでもないよ」と母がさえぎった。
「まあ、お互いに愛し合って、決して喧嘩口論しないようにしたら、神様が幸福を授けてくださるよ」
「お母さん、兄さんは決してあたしを侮辱したりなさらなくてよ、あたしいっとくわ!」信ずるところありげに、情のこもった調子でリーザはいった。
「もしあのタチヤーナ叔母さんがいなかったら、何事も起こらないですんだんですよ」とわたしは叫んだ。「ほんとうに悪いひとだ!」
「ごらんなさい、お母さん! お聞きになって?」とリーザは母にわたしを指さして見せた。
「ぼくはお二人にこう明言しておきます」とわたしは調子を張り上げた。「もし世の中に、何かいまわしいものがあるとしたら、それはぼくひとりきりで、そのほかのものはみんな美しいんです・・・・・・」
「アルカーシャ、怒らないでおくれ、いい子だから。ただお前があれをやめておくれだったらねえ・・・・・・」
「それは博奕ですか? 博奕のことですか? やめますよ。お母さん。きょうが最後です。ことに今日は、アンドレイ・ペトローヴィチご自身が、公爵のとこに自分の金は一コペイカもない、と宣言されたんですからね。あなた方はぼくがどんなに赤面しているか、とても想像つかないでしょうね・・・・・・もっとも、ぼくはアンドレイ・ペトローヴィチとよく話をしなくちゃなりません・・・・・・ねえ、お母さん、ぼくこの前ここで・・・・・・ばつの悪いことをいいましたね・・・・・・お母さん、あれはぼくほらを吹いたのです。ぼくは真心から信仰を持ちたいと思っていながら、あのときちょっとから威張りしたのです。ぼくは、ほんとうはキリストを愛しているのです・・・・・・」
 実際この前、わたしたちの間にそんな話がはじまったのである。そのとき母はひどく悲観して、心配したものだ。いまわたしの言葉を聞きおわると、彼女はまるで子供でも相手にするように、にっこり笑った。
「キリストさまはなんでもゆるしてくださるよ、アルカーシャ。お前の悪口もゆるしてくださる。いえ、あんなのよか、もっとひどい悪口でもゆるしてくださるよ。キリストさまはわたしたちの父です。キリストさまは少しも不自由なさることなしに、どんな深い闇の中にでも輝いていなさるんだよ・・・・・・」
 わたしはふたりに別れをつげた。そして、今日ヴェルシーロフに会う可能の有無を考えながら、外へ出た。ぜひとも話さなければならないことがあったのだが、さっきそれができなかったのだ。ひょっとわたしの下宿で待ってやしないか、というような気がしてならなかった! わたしは徒歩で出かけた。昼からの暖気がそろそろ凍いてに変わりはじめ、外を歩くのがとても気持ちよかった。」⇄(読者感想文:やはり、救われますね😃自分自身を、ヴェルシーロフと置き換えても、アルカージーと置き換えても、アルカージーの母と置き換えても、楽しく読めますね😃すべてが赦されて、【癒しの本】‼️ドストエフスキー氏の著作は、全てにわたって、読者を、癒しの気持ちにして下さいますね😃《癒しの本》でありますね😋《ホッ‼️》ですね‼️嬉しい限りですね‼️ドストエフスキー氏が、作家として存在してくれることは、《宝物》でありますね‼️

[352] 『忠告』の嫌いなヴェルシーロフと、作者ドストエフスキー氏
名前:ほのか
2021年09月21日 (火) 09時51分
第5章 誤解 2

p282
「それにね。アルカージイ、そんなありがたい前々からの忠告などというものは、要するに、ただ他人の勘定で、他人の良心に侵入することでしかないからね。わたしもずいぶん、他人の良心に踏み込んだものだが、獲たところはただ爪弾きや、冷笑のみだ。爪弾きや冷笑なんか、意とするに足りないけれど、何よりかんじんなのは、こんなやり方では、何物をも獲ることができない、という点なのだ、どんなに侵入していっても、だれも他人のいうことを聴きゃしない・・・・・・みんなにきらわれるだけだ」

[355] アルカージー❤️好きだよ❤️人間の苦悩や心の動画を表現してくれてますね💕ですから😋』ドスト文学』は、『癒し文学』ですね😋
名前:ほのか
2021年10月07日 (木) 04時58分
ほのか
『第三編』まで、読み進みました。のんびりとというか、集中力が不足してくると、今度読もうと言うような、読み方ですね。

 読書としては、哲学書というか、一文の中に、複雑さが満載の心情を与える本であるので、それなりの速さになります。

 複雑な状況変化には、間を置くことで、つまり、楽しい読書を次の日に『お預け』にすることで、小説の心情風景や状況風景の捉え方を、私読者に、記憶を留め易くして下さいますね。

 面白い読み方と読書になっていますね😋

 そう言えば、『賭博者』を、前回読んでおいたので、賭博の場面には、『賭博者』の小説が、浮かんできて、解り易かったです。

[356] アルカージー=読者わたし本人と、置き換えていますね😋ますます、自分自身の自惚れですね😋《アルカージー=読者わたし自身のアバウト的考え方ですね😋》
名前:ほのか
2021年10月07日 (木) 05時00分
p367
『閑話休題』
「九日にわたる昏睡状ののち、わたしは生まれ変わったような気持ちでわれに返ったが、しかし性格はたたき直されなかった。もっとも、わたしが生まれ変わったというのも、広義に解釈すれば、むろんばかばかしいものだった。これがもし現在のことだったら、あんなふうではなかったに相違ない。理想、といって、つまり感情は(前にも幾百ペンとなくくり返されたように)、ただ彼らから完全に去ってしまうというにすぎなかった。しかし、もう今度こそは必ず去ってしまうので、以前のようなふうではない。つまり、このテーマを幾百回となく自分の宿題としながら、いつまでも実行できないでいた、ーーあんなふうではないのだ。復讐などはだれにもしようと思わなかった。みんなに侮辱はされたけれど、この点は立派に誓ってもいい。わたしは反感もなければ、憎悪もなしに去って行こうと思った。しかし、わたしは今度こそもう彼らのためにも、世界中のためにも左右されないような、ほんとうの自力を望んだのだが、わたしはもうほとんど世界中のだれとでも、和睦しかねないような気持ちになっていた! こうした当時のわたしの空想は、一個の思想としてではなく、当時のいなみがたい感覚として、記録しておくのである。わたしは病床に横たわっている間は、まだそれをはっきりした形にまとめたくなかった。
 ヴェルシーロフがあてがってくれた部屋に、無力な病人として横たわりながら、自分がどれほどまでに意気地なしになり下ったかということを、わたしは胸の痛いほど意識した。寝台の上に転がっているのは、人間ではなくて藁しべか何かのようだった。しかも、それは病気のせいばかりではない、それがどんなに情けなく思われたことか! すると、わたしの全存在の最も深いところから、反抗の感情がありたけの力でこみ上げてくる。で、わたしは無限に誇張された傲岸な、挑戦的な感情のために、むせ返りそうになるのだ。健康の恢復しかかった最初の数日間ほど、つまり、寝床の上に藁しべのように転がっていたときほど、傲岸な感覚に充ち満ちていた時代は、わたしの全生涯を通じて覚えがなかったほどである。
 しかし、わたしは当分のあいだ黙っていた。それどころか、何ひとつ考えまいとさえ決心した! わたしはたえず彼らの顔色をうかがい、それによって、自分に必要なすべてのものを視察しようと努めた。察するところ、彼らも好奇心をはたらかして、根掘り葉掘りきくまいと思ったらしく、わたしに対してはぜんぜんよそごとばかり話していた。それがわたしの気には入ったものの、同時に情けなくもあった。この矛盾はあえて説明すまい。リーザは毎日のように、ときによっては日に二度も、わたしのところへやって来たけれど、母よりは会う機会がすくなかった。彼らの会話の断片や、ぜんたいに彼らの様子からして、わたしはこう結論したーーリーザは恐ろしくめんどうなことがたくさんたまって、そのために家を留守にすることも、たびたびあったに相違ない。こうして、彼女に自分自身のめんどうが存在しうると考えただけで、わたしは何か侮辱されたような気がした。けれども、こんなことはみんな個人の純生理的な感覚で、くだくだしく書きたてる価値はない。タチヤーナ叔母もやはり、ほとんど毎日のようにわたしを訪ねて来た。決して優しくなったわけではないが、すくなくとも前のように悪口をいわなくなった。それがいまいましくてたまらなかったので、わたしはいきなり面と向かっていってやった。
「タチヤーナ叔母さん、あなたは悪口をいわないと退屈な人ですね」
「そう、じゃもうお前さんのところへ来ないから」と彼女は断ち切るようにいって、行ってしまった。わたしは一人だけでも追っぱらえたのを喜んだ。
 わたしはだれよりもいちばん母をいじめて、癇癪のはけ口にしていた。病後むやみに食欲が出て来て、食事が遅れると(その実、一度も遅れたことはないのだが)、わたしはやたらにぶつぶついった。母はどうしたらご機嫌が取り結べるかと、途方にくれていた。あるとき彼女は、わたしのところへスープを持って来て、いつものとおり自分でわたしを養いはじめた。ところが、わたしは食べている間じゅう、のべつぼやき続けた。すると不意に、自分のぼやいているのが癪にさわってきた。『おれの愛しているのは、この人ひとりだけかもしれないのに、その人をかえって苦しめている』けれど、癇癪の虫はなかなかおさまらなかった。とど、わたしはその癇癪のために泣きだした。すると、母はかわいそうに、わたしがうれし泣きに泣きだしたのだと思い、屈みこんで接吻しはじめた。わたしは一生懸命に我慢して、どうやらこうやら持ちこたえたが、まったくその瞬間は母を憎んだ。が、わたしはいつも母を愛していたし、そのときもやはり愛していたので、決して憎んだわけではない。ただよけいに愛しているものは、まず第一番に侮辱したくなるという、いつもよくある気持ちにすぎなかった。
 その時分、わたしがほんとうに憎んでいたのは、ただ医者だけだった。その医者はまだ若い男で、高慢そうな顔つきをして、ずけずけと無遠慮にものをいった。彼ら科学の人と称せられる連中は、ついきのうとつぜん何か特別なことを知った、とでもいうような様子をしている。そのくせ、きのうは別に何も変わったことなど起こらなかったのだ。しかし、『凡庸』『俗人』なるものは、いつもこうしたものだ。わたしは長いこと辛抱していたがとうとうふいに堪忍袋の緒を切らして、家のものがみんないる前で宣言してやったーーこの人が毎日てくてくやって来るのは、ご苦労千万な話だ、ぼくはこの人に世話にならないでも自分ひとりでよくなって見せる。先生、リアリストらしい顔つきをしているけれど、頭から足の爪先まで偏見のかたまりで、医学がかつて一度も、だれひとり治療したことがないのを知らずにいる。そのうえ、あらゆる徴候から推して、ひどい無教育ものらしい。『近ごろおそろしく鼻を高くしだした専門家や技師など、みんなそうなのだ』と。
 医者はかんかんに腹をたてたが(もうそれだけで、自分がどんな人間であるかということを、証明したようなものだ)、でもやっぱり往診に来ていた。わたしはとうとうヴェルシーロフをつかまえて、もし医者が往診をやめなければ、もう今度こそは前より十倍も、いやなことをならべて聞かせる、といった。ヴェルシーロフはそれに対して、あのときいったことの十倍はおろか、ただの二倍もいやなことをいうのは不可能だと、たったそれだけいった。私は彼がそういったのを、うれしく思った。
 しかし、不思議な人間もあればあるものだ! これはヴェルシーロフのことをいってるのだ。彼は、いな、彼のみがいっさいの原因であるにもかかわらず、ーーまあ、どうだろう、その当時、わたしが腹を立てなかったのは、この人だけなのである。それはたんに、彼の応対ぶりにごまかされたとばかりはいえない。わたしの考えでは、われわれはその当時、お互いにいろいろ話し合わなければならないことがあるが
・・・・・・しかしかえってそのために、むしろいつまでも話し合わないほうがいい、と感じていたのである。人生でこうした状況におかれたとき、聡明な人間にぶつかるということは、なんともいえない愉快なものだ! わたしはもうこの物語の第二編で、逮捕された公爵のわたしに宛てた手紙のこと、ゼルシチコフのこと、わたしにとって有利な彼の声明のこと、その他さまざまなことを簡単明瞭に、ヴェルシーロフがわたしに伝えてくれた事実を、ちょっと先まわりして述べておいた。わたしは沈黙をまもろうと決心していたので、ただ二つ三つごく簡単な質問を、できるだけそっけない調子で発したばかりである。彼はそれに対して明瞭正確に、余計なことはいっさいぬきにして答えてくれた。何よりありがたいのは、そのとき余計な感情を示さなかったことである。わたしはその当時、余計な感情を恐れていたものだ。
 ランベルトのことは緘黙していた。が、わたしが彼のことを考えすぎるほど考えていたのは、読者もむろん想察したことと思う。わたしは熱にうかされて、幾度もランベルトのことを口走った。しかし、囈言うわごとからさめて、あたりの様子をうかがったとき、ランベルトのことはいっさい、秘密の中に残されているのを、すぐさま見てとった。すべての人は、ヴェルシーロフさえ例にもれず、何ごとも知らずにいるのだった。そのときわたしは大いに喜んで、恐怖はたちまち消え去った。が、それはわたしの考え違いだった。彼はわたしの病中に早くも訪問をはじめたのだが、ヴェルシーロフはそのことをわたしに黙っていたので、わたしはもはや自分という人間がランベルトにとって、永遠の中に没してしまったものときめこんでいたのだ。このことを後で聞いたとき、わたしの驚きはどんなだったろう。にもかかわらず、わたしはよくこの男のことを考えていた。そればかりか、ーーたんに嫌悪を感じないで、好奇の念をもって考えたのみならず、一種の同情さえいだきながら考えたのである。それはちょうど、わたしの内部に生まれ出てきていた新しい感情や計画に相当する、新しい出口となるような、あるものを予感したような具合だった。手短かにいえば、わたしはそろそろ思案をはじめようと決心するやいなや、第一番にランベルトのことを考えることにきめたのである。ここに一つ奇妙なことがあるーーわたしは彼がどこに住んでいるのか、あのときどこの町で、一部始終が起こったのか、ころりと忘れてしまった。宿屋の一室、アルフォンシーヌ、狆、廊下、ーーこんなものは何から何まで覚えていて、今すぐ画にでも描いて見せられるが、どこで起こった出来事か、つまり、どこの町のどんな家であったことかーーそれをすっかり忘れてしまったのだ。しかも、何よりも不思議なことには、わたしがこれに気がついたのは、十分な意識を快復してから三日目か四日目のことで、もうそのときにはだいぶ前から、ランベルトのことを心配していたのである。
 こういった具合で、わたしが蘇生後に経験した最初の感覚は、こんなふうのものだった。わたしはただごく表面的なことばかり記述したので、おそらくかんじんなことはうまくつかめていないに相違ない。実際のところ、すべてかんじんなことはちょうどその時分、わたしの心の中ではっきりした形をとり、まとまっていたのかもしれない。まさかわたしだって、スープを持って来てくれないというようなことだけに、腹を立てたり、癇癪を起こしたりしていたわけではない。ああ、今でも覚えているが、そのころ長く一人きりでいるときなど、どんなにわたしは憂愁に悩まされ、ふさぎの虫に苦しめられたかわからない。ところが、彼らはまるでわざとのように、わたしがみなといっしょにいるのをいやがる、わたしの世話をやくとかえっていらいらする、ということを間もなく呑み込んで、だんだんわたしを一人ぼっちにしておくようになった。余計な優しい心づかいではある」

[358] 心が優しくなる、ホッとする文章群達 & 【彼はとつぜん莞爾と笑って見せた。】 対 【笑いかつ楽しむ小児は、それこそ天国からさす光である。これこそ人間がついには小児のごとく清らかに、純朴となる未来の啓示である。そこで、この老人の示した束の間の笑いに、何かしら子供らしい、言葉につくせない魅力に富んだあるものが、稲妻のように閃いたのだ。】
名前:ほのか
2021年10月07日 (木) 07時13分
p367

「第 三 編

p371

「2

p372
「そこには、雪のように白い見事な髭を生やした、白髪の老人がすわっていた。明らかに、もうだいぶ前からそこにすわっているらしい。彼は寝床の でなしに、母の足台の上にすわって、寝台にはただ背をもたせているだけだった。〜省略〜 彼はわたしを見つけても、身動きすらしなかった。ただ無言のまま、じっとわたしを見つめているばかりだった。わたしも相手を凝視したが、ただ違うところは、わたしがなみなみならぬ驚きの色を見せているのに、先方は泰然自若としていることだった。それどころか、この沈黙の五秒か十秒の間に、わたしという人間をすっかり、底の底まで見ぬいたかのように、彼はとつぜん莞爾と笑って見せた。というより、静かな声のない笑いさえ立てたほどである。〜
わたしはこう思う、ーー人間が笑うと多くの場合、見ているのがいまわしいような気持ちになるものである。人間の笑いには何よりもまず俗っぽい、当人の威厳に関するようなあるものが暴露されるものだ。ただし笑っている当人は、ほとんどたいていの場合、他人の受ける印象を、いっこうにごぞんじないのが常例である。それと同じわけで、一般にどんな人でも、寝顔がどんなか知らない。寝ているときでも、利口そうな顔をしている人もあるけれど、中には利口な人でさえ寝ているときには、恐ろしくばかばかしい、したがって滑稽な顔つきになるのもある。どうしてそういうことになるのか、わたしは知らない。ただわたしがいいたいのは、笑っている人というものは、寝ている人と同様に、大多数は自分の顔を少しも知らないということだ。きわめて多数の人間は、ぜんぜん笑うすべを知らない。もっとも、それはすべでもなんでもない。それは一つの天賦であって、わざとこしらえるわけにはいかない。ただ自己改造を行ない、自分をよりよい人間に発達させ、自分の性格中のよからぬ本能を征服することによって、笑いを作り出すことができる。その時にはこうした人の笑いも、よりよいものに変化する可能性を十分に備えている、といわなければならない。笑いのいかんによって完全に自分の正体を暴露する人もある。そのとき思いがけなく、その人間の隠れた真相を発見することができる。疑いもなく聡明な笑いでさえ、ときとするといまわしく感じられることがある。笑いは何よりもまず真実を要求する。ところで、人間のどこに真実があるか? 笑いは無邪気さを要求する。ところが、人間はたいていの場合、邪気のある笑い方をする。真実で邪気のない笑い、それは喜びである。ところが、現今どこに喜びが求められるであろう? また人間が喜び楽しみうるだろうか? (今どきの人間の喜びということは、ヴェルシーロフの説であって、わたしはそれを記憶に保存していたのだ)この喜びというものはーー何よりも人間の本性を完全に暴露する特質である。ある種の性格などは、長い間かかっても、容易に噛み砕くことができないけれど、もしその人が何かの拍子で、非常に真率な笑い方をすると、その性格の全部がとつぜん、たなごころを指すがごとく明瞭になる。ただきわめて高級な、きわめて幸運な発育をとげた人のみが、普遍的な笑い方をすることができる。つまり、とうていなむことのできない、善良な笑いを発しうるのである。わたしは知的発達のことを問題にしているのではない。人間の性格、人間ぜんたいのことをいっているのだ。こういうわけで、もし人間を見分けたい、人間の魂を知りたいと思ったら、その当人の沈黙している様子や、しゃべったり、泣いたりしている具合や、あるいはさらに進んで、高潔なる思想に胸を踊らせている状態に注意するよりも、むしろ笑っているところを見たほうがよい。笑い方がよかったらーーそれはつまり、よい人間なのである。ただしその上にもあらゆる陰影を観取しなければならない。たとえば、人間の笑いはどんなに楽しそうに、純朴らしく聞こえても、愚かしい感じを与えることは断じてゆるされない。もしほんの毛筋ほどでも、愚かしさが笑いの中に感じられたら、たといその人間が常住坐臥、たえず思想をまき散らしているにもせよ、どこか知恵の足りないところがあるわけだ。よし笑いそのものが賢そうでも、その当人が笑った後でなぜかふと、ーーほんの少しばかりでも滑稽に思われたら、その人にはほんとうの人格品位が欠けている、少なくとも十分でない、とそう考えてさしつかえない。またこういう場合もあるーーよしんばその笑いが普遍的であっても、なぜか俗っぽい感じを与えたら、その人間の本性も俗であるとみてかまわない。以前その人に認められていた高尚なものも、潔白なものも、わざとこしらえた付焼刀でなければ、無意識的によそから借りて来たものである。こういった人間は、必ず後日わるい意味の変化を生じて、『とくな』仕事をはじめるようになる。そして高潔な思想などは、若い時分の迷いとして、惜しげもなくほうり出してしまうに相違ない。
 この長たらしい笑いの講釈を、物語の進行を犠牲にしてまでここに載せるのは、考えあってのことなのだ。なぜなら、これは、わたしの生涯中、もっとも重大な思索の一つと信じているからである。〜省略〜
とにかく、笑いが最も正確な、魂の試金石であることだけは信じている。試みに小児を見たまえ、ーーただ小児のみが完全に見事な笑いのすべを知っている。そのために彼らは魅惑的なのである。泣く子供はわたしにいまわしい感じを与えるが、笑いかつ楽しむ小児は、それこそ天国からさす光である。これこそ人間がついには小児のごとく清らかに、純朴となる未来の啓示である。そこで、この老人の示した束の間の笑いに、何かしら子供らしい、言葉につくせない魅力に富んだあるものが、稲妻のように閃いたのだ。わたしはすぐさまそばに寄った。」

[362] 気づき1
名前:ほのか
2021年10月14日 (木) 10時04分
 未だ、小説の筋道は、わかりませんが、主人公アルカージイは、乱暴者のランベルトが、『何故、あんなに、乱暴者で酷い性質であるのかの、《探求》に、入ってるんじゃないかと、思ってます。読者私は、類推してます。全く、違う方向に、小説が、運んでいくかもしれませんが、主人公アルカージイとしては、人間の謎解きとして、なんとしても、DNAなのか、育った環境なのか、わざとわるい不作法な人間をしてるのかを、学生時代に、強くいじめられ、しかも友達なランベルトという人間の探求に向けて、小説は一応進み、解決を一応して、それから、主題の塊を示唆して、小説は終わると思ってますが。

[363] 気づき2
名前:ほのか
2021年10月14日 (木) 10時06分
 ハードカバーの本を複数持ってるので、この本『未成年』も、御多分に洩れず、色彩豊かに、色鉛筆やら鉛筆での、書込みが多い、私読者の読者風景ですね。

 次のページへ向かう時の、《ひらりと〜》、次ページを開いた時の、真っ白なページの快感は、最高ですね。次のページも、汚いのかなっと、思ってしまっているのでしょうね。初めて読むので、書き込みはゼロですから、美しい真っ白なページが現れてくれてます。

 そういえば、何回か、『未成年』に、挑戦はしていると、思うのです、その時も、私の読み方は、書込みの量は半端じゃ無いので、その時は、文庫とかだったかもしれませんね。この、はーどかばーでは、初めて、書込みのないページへと、進んで行ってます。

[364] 緊張感のある場面です😋
名前:ほのか
2021年11月01日 (月) 08時19分
 p560くらいを、読んでいます😋

 緊張感と、アルカージイの正義感と、ソコーリスキー老公爵の優しさに、嬉しさいっぱいの私読者です。

 義理の姉アンナと義理の兄、二人ともヴェルシーロフの子供ですが。アルカージイは、闘おうとしてますね😃

 ソコーリスキー老公爵は娘アフマーコヴァ婦人の、手紙の事も知っているようです。
 ですけれど、アルカージイの、義理の姉と老公爵がボケているから、遺産を全て自分娘に。しかも父である老公爵を病院入れるようにという手紙を書いてしまった娘。

 ですが、父親ソコーリスキー老公爵は、二人の女の人、アルカージイの義理の姉と老公爵の娘が、仲良くなれば良いなっと、思ってますね😋

 嬉しい老公爵の優しさに、読書で触れられて、とっても、読者私は嬉しいです♪♫🎶


 場面を、そのままに、置いておいて、今日の読書は完了ですが。


 そろそろ、大詰めですね😃

 次は『悪霊』を、読みたいと、『未成年』を、読みながら、考えてました。

 アルカージイが、空想した物語り『悪霊』という、位置付けですね。

 アルカージイが、主人公スタヴローギンとなりますが。

 空想して、アルカージイ、つまり、ある意味作家ドストエフスキー氏でありますが、空想して空想して‼️《とんでもなく飛躍して》描かれた作品ということにしましょう😋

 【主題】さえ、結局描く事が出来たら、小説としては、良いですからね😋
 あらゆる読者が、少しでも興味を惹くようにっと、《飛躍》して、描かれてしまいますね😋


 喜怒哀楽の高低差が巨大になればなるほど、サービス精神旺盛の、作家は、読者を、ドキドキさせたり、嬉しがらせたり、感動させたり〜するのでしょうね♪♫🎶

 小説としておかしくなければ、不自然でなければ、ドキドキさせる高低差のある、そして、真実いっぱいの作品は、読者を、血液逆流& 順流させて、人間を生き生きと、活気付けてくださいますね😃

 結局、読んだ読者が、プラス思考になり、作家ドストエフスキー氏の主題を読み取れば、よいのですから😃

[365] 『未成年』595ページを、読了しました😃ドストエフスキイ作品で、最も面白いかもですね♬
名前:ほのか
2021年11月04日 (木) 07時21分
 その後に、『創作ノート』と、『偉大なる罪人の生活』が、ありますね。

 後から、楽しみに、読みたいですね😃♪

[366] 『未成年』結論風と、多忙のため、しばらく記述しません。
名前:ほのか
2021年11月12日 (金) 07時36分
『未成年創作ノート』と、『偉大なる罪人の生涯』を、超特急で、読みました。

 『未成年 創作ノート』の、p617から、最後のp622までが.作家ドストエフスキイ氏の、結論でありますね。

 一言で言えば、《自然と端麗さの重要性》であり、【自然=端麗さ】の必要十分条件でありますね。世の中の人も、その中に!埋没すべきである〜息をすべきであると言う作家ドストエフスキイ氏の説ですね‼️  
 自分勝手流の理解です。

 ふと♬おもったのですが、
『人間』は、『色彩』という個体じゃないもの⁉️⁉️⁉️⁉️⁉️
 っと、思ってしまいました🎶

 つまり、『感覚』というか
『色彩』♫固定してない物😋
 つまり、『風通りの良い物』😃

 『未成年』のその後の書き写したいページは沢山あったのですが。書くことが出来たら、相当その後😋

[354]★再開します★(ページ主より)
名前:Seigo
2021年10月06日 (水) 16時47分
こんちは。
ページ主のSeigoです。

ほのかさんをはじめ、皆さん、来訪・投稿、ありがとうございます。

予定より遅れましたが、諸事情によりしばらく中断となっていたページの更新等を、今日より、復帰して、再開することとなりました。

今後も、よろしくお願いします。

[360] \(^o^)/
名前:ほのか
2021年10月07日 (木) 07時34分
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*

[361] (@_@)
名前:(@_@)
2021年10月07日 (木) 07時39分
宜しくお願い致します😋

[326]朗報です
名前:ほのか
2021年08月13日 (金) 21時56分
『猟人日記』の中山省三郎訳に対する宇野浩二評です。「原くんが、ある時、ロシア語は、西欧の言葉より、却って日本語の方に直しいい」と、云った事がある。そして、ロシア語が最も語 が、豊富だとすると、日本語もロシア語ほどでなくてもかなり豊富な語 を持っている点では西欧に負けないかと思う。

[300]『スチェパンコヴォ村とその住人』
名前:ほのか
2021年07月29日 (木) 09時48分
米川正夫訳 河出書房新社

@p40
「彼自身も私の到着によって、瀕死の危地から救い出されたかのようであった。まるでわたしが、彼のあらゆる疑惑を解く鍵を持って来たばかりか、彼および彼の愛するすべての人々の、生涯かわらぬ幸福とよろこびをもたらしたかのようであった。《事実、彼は自分一人だけ幸福になるのを肯んじなかったに相違ない。》」⇄(感想文:《〜》は、いい言葉ですね😃)

Ap40
「わたしは快く叔父の顔を眺めていた。彼の気ぜわしそうな問いに対して、わたしはしばらく勤めにつかないで学問の研究がしたいむねを答えた。《学問の話になるやいなや、叔父は急に眉をしかめて、並々ならぬものものしい顔つきをした。》⇄(感想文:どのように、すすむのだろう?)

Bp40
「前にも言っておいたが、《彼は「学問」という言葉に対して、ぜんぜん私欲を超越した純な尊崇の念をいだいていた。》」⇄(感想文:😃《私欲を超越した純な尊崇の念》の言葉が良いですね🎶)

C「「もう少し待ってごらん。お前ちょっと待ってごらん」と、彼は両手を揉みながら、早口にいい出した。「今にいい人に会えるから!お前にいっとくが、それは本当に珍しい人で、学問のある人だ、科学者なんだ。《あれは永久に残る人なんだ。ね、いい言葉じゃないか、『永久に残る』って、》わたしがお前に紹介して上げるから」」
これはフォマーがわたしに説明してくれたのだった、待ってごらん、わたしがお前に紹介して上げるから」」⇄(感想文:どんな人物が出てくるだろう!?どんな人物!?と、ワクワクと、期待しますね。)

[301] p42〜p45
名前:ほのか
2021年07月30日 (金) 07時24分
@p42〜p45
「じゃ、何かね、お前たちまでフランス語をならってるのかい?」とわたしはほとんどびっくりして叫んだ。
「いんにゃ、旦那様、まだ今のところ神様のお恵みで助かっとりますだ」と話好きらしい一人の百姓が答えた。赤毛の頭のうしろに大きな禿があって、顎にはうすい長い山羊ひげが垂れていたが、口をきくたびに、まるで生きもののように縦横に動き廻るのであった。」

Ap42
「まだ今のところ神様のお陰で助かっておりまするよ」
「いったいあの人がお前たちに何を教えるんだい?」
「あの人は教えるのでござります!旦那様。なんのことはない、わっしらのいう『金の手箱を買うて、銅銭一つ入れる』ようなものでござりますよ」
「いったい、銅銭とはなんのことだい?」
「セリョージャ!お前は思い違いをしてるよ、それは言いがかりだ!」と、叔父は顔を真っ赤にして、恐ろしくまごつきながら叫んだ。「それは、この連中が馬鹿なもんだから、あの人のいったことを勘違いしたのだ。あの人はただその・・・・・・銅銭なんてことはありゃしないよ・・・・・・お前なんぞに、そんなことがすっかりわかってたまるものかね。何もそんなことをいって、のどを痛くすることはいりゃしないよ」と彼はなじるような調子で、百姓にいった。「馬鹿、お前のためを思ってくれたものを、よくわからないくせに大声でわめくなんて!」
「何をいうんです。じゃフランス語は?」
「それは発音のためだよ。セリョージャ、ただ発音のためなんだよ」と、叔父は何か哀願するような声で言った。「あの男も自分で発音のためだといってたよ・・・・・・それにね、これにはちょっと特別な事情があるのだが、お前はそれを知らないのだ。だから、その判断ができないんだよ。責めるのはいつでもできるから!」
「いったいお前たちはどうしたんだ!」彼はかっとして、再び百姓のほうへ向きながらこう叫んだ。「お前たちはあの人に向かって、何もかもすっかりいったらよさそうなもんじゃないか。『それはいけません。フォマー・フォミッチ、それはこうこういうわけです』といってさ!だって、お前たちだって舌を持っているじゃないか」
『旦那様!猫の頸に鈴を吊すことのできる鼠が、どこにおるでございましょうか?あの方のおっしゃるにゃ、わしは貴様のような不潔な百姓に清潔ちゅうことを教えてやるのだ。いったいどういうわけで貴様のシャツは汚いのだ?ってね。けんど、旦那様、わし等は汗の中で暮らしてるんですもん、きたねえはずでござりますよ。毎日着替えるわけにゃめえりませんからね。綺麗にしたからって、生まれ変わるわけのものじゃねえ、きたねえからって、それが身の破滅になる理屈はござりますめえ」
「つい二、三日前にも打穀場こなしばへお見えになってね」ともう一人の百姓がいい出した。見たところ!背の高い痩せぎすの男で、つぎ当てだらけの着物をまとい、思いきってひどい木の革靴をはいていた。これは大方いつも何か不平をいだいて、胸の中に毒々しい皮肉な言葉を蓄えている、といったふうな種類の人間らしい。彼は今までほかの百姓のうしろに隠れて、陰気らしく沈黙を守りながら、皆の話を聞いていたが、その顔からは、しじゅう一種曖昧な、苦々しげな、悪ごす
そうな薄笑いが去らなかった。「打穀場こなしばへお見えになりまして、『お前たちは、太陽まで何露里あるか知っとるか?』ときかれるでございます。そんなことだれが知りますもんで。そりゃ旦那衆のなさる学問で、わしらの知ったことじゃごぜえません。『いや、貴様らは馬鹿だ、自分のためになることを知らん。でも、おれは天文学者だ!天の星をすっかり知っとるぞ!』とおっしゃりましてな」
「ふん、いったい太陽まで何露里あるといったかね?」とつぜん叔父は活気づいて口を入れた。そして、『さあ、なんというか見ていな!」というような顔つきで、わたしに瞬きして見せるのだった。
「へえ、なんでもたいそう遠いようにいわれました」こんな質問を予期していなかった百姓は、気のない調子で答えた。
「でも、何露里といったのだ、いったい何露里だ?」
「そりゃ旦那様こそよくごぞんじでいらっしゃリましょう、わしら無学な人間でごぜいますから」
「うん、そりゃおれは知っているけれど、お前だっておぼえてるだろう?」
「へえ、何百露里とか何千露里とか、なんでも大層な数をいわれましたよ、馬車三台でも運びきれねえくらいで」
「そ、それだよ、それをおぼえなきゃいかんよ、お前!たぶんお前はまあ一露里ぐらいなもので、手でも届くように思っていたんだろう?ところが大違い、地球というやつはね、いいか、まるで丸い玉のようなものだ、わかったか?」両手で空に玉の形を描いて見せながら。叔父は語りつづけた。
 百姓たちは苦笑いした。
「そうだ、まるで玉のようなものだ!それが宙にひとりでに懸っていて、太陽のまわりを歩いてるんだあ。太陽は一つ所にじっとしているので、動くように見えるのは、ただお前たちにそう思われるだけなんだ。こういう理屈なんだよ!これを発見したのは、
カピタン・クックという船乗りなんだ・・・・・・いや、だれが発見したのかなあ」と叔父はわたしの方へ向きながら、半ばつぶやくように言い足した。実はね、わたしも自分では何一つ知らんのだよ!お前、太陽まで何露里あるか知ってるかい?」
「知ってますよ、叔父さん」これらすべての光景に驚きの目を見はりながら、わたしはこう答えた。「ただね、ぼくはこう思うんですよ。むろん無知というやつは、やはりだらしのないことですけれど、しかし一方から見て・・・・・・百姓に天文学を教えるというのも・・・・・・」
「そうだ、そうだ、本当にだらしのないことだ!」叔父はわたしの表現が非常に適切に思われたので、うちょうてんになってこう引き取った。「立派な思想だよ!まったく、だらしがないのだ!わたしはいつもそういってたんだ・・・・・・いや、わたしは一度もそういったことはないけど、心のなかで感じていたんだよ。お前たちも聞いたか?」と彼は百姓らに向かって叫んだ。「無教育ということは、やっぱりだらしのないことなんだ!汚いことなんだ!それだからこそフォマー・フォミッチも、お前たちに教えようとしたんだよ。あの人はお前たちにいいことを教えようと思ったのだ、ーーそれはけっこうなことだよ。それは、お前、もう勤めるのと同じことで、どの位でも授ける価値があるんだよ。学問というやつは、ありがたいものなんだ!いや、よろしい、よろしい、機嫌よく帰ったがいい。わしは嬉しい、本当に嬉しいよ・・・・・・安心するがいい、わしはお前たちを見捨てやしないから!」
「どうか守ってくださりませ、お前さまは生みの親でござらっしゃるから!」
「どうかわしらの世を闇にしねえでくださりませ」
こういって、百姓らは足もとに身を投げた。
「ま、ま、そんなことは馬鹿げてるじゃないか!神様や陛下さまを拝むのはいいが、わたしにそんなことをしてくれちゃ困る・・・・・・もう行きなさい。身持ちをよくしていれば、自然と人にかわいがられるようになるよ・・・・・・そのほかのことは、なんでもその・・・・・・なあ、お前」百姓たちが行ってしまったとき、急にわたしのほうへ振り向いて、満面によろこびの色を輝かせながら、彼は話しかけた。「百姓というものは、優しい言葉をかけてもらうのが好きなんだよ。しかし、何か土産をやっても悪いことはあるまいなあ。あれらに何かやろうと思うんだが、どうだろう?お前どう考えるね?お前の来たお祝いに・・・・・・何かやったものかどうかしらんて?」
「叔父さん、ぼくこうして見ると、あなたはまるでフロール・シーリンそこのけの、慈悲深い人なんですね」
「いや、そんなことをいっちゃいけない、そんなことをいっちゃあ・・・・・・あれはなんでもないことなんだよ。わたしは前からあれたちに何かやりたいと思ってたんだ。「だが、わたしが百姓どもに学問のことを教えるのが、どうして、お前おかしいんだね?
なに、あれはね、お前、お前に会った嬉しさにああいったんだよ。セリョージャ。わたしはただほんのちょっと、あれらが、百姓どもが、太陽までどれくらいあるか知って、ぽかんと口をあけるのが見たかったのさ。百姓が口をぽかんとあけるのを見るのは、お前、なかなか愉快なもんだよ・・・・・・なんだかあ、こう、あれたちのために喜んでやりたいような気がするんだ。ただね、お前、わたしがここで百姓と話をしたということを、客間のほうへ行ってしゃべっちゃいけないよ。わたしはわざと見られないように、あれらを厠のうしろへ廻らしたんだ。どうもあちらじゃ具合が悪いんだよ。ちょっと尻擽ったいような話なんでね。それに、あれたちも内緒でやって来たのだから、わたしはどっちかというと、あれたちのためにああしたんだよ・・・・・・」⇄(感想文:小説をそのまま書きたくなりました🎶)


[302] ドストエフスキイ氏‼️最高です‼️全てが好きですね。世界中の作家の中で唯一の重箱の隅をつついても、好きですね。全てを教えて下さる〜🎶♬♪
名前:ほのか
2021年07月31日 (土) 08時56分
【主人公わたし】に、読書をしながら、心を掴まれてしまいますね。まるで、作家ドストエフスキー氏に、心を掴まれた如くにー♫」

[303] 『罪と罰』マルメラードフとソーニャ!?エジュヴィーキンのナスチャ
名前:ほのか
2021年08月01日 (日) 22時13分
@p62
「5 エジェヴィーキン

一人の小柄な男が部屋に入って来た、というより、なんだか妙に窮屈そうな恰好で戸口をすり抜けて来た(そのくせ、戸口は非常にゆったりしていたのである)。彼はまだ入口の辺から身をかがめて、ペコペコお辞儀をしながら、お世辞笑いに白い歯を剥き出し、さもさももの珍しそうに、一座の人人を見廻すのであった。それは、頭の禿げた、あばた面の小柄な老人で、盗み見するように、小さな目をきょろつかせ、かなり厚い唇に曖昧な薄笑いを浮かべていた。彼はだれかのおさがりらしい、くたびれきった燕尾服を着ていたが、そのボタンはたった一つだけ、危く糸いっぽんにぶら下っているきりで、あとの二つか三つは、すっかりとれてなかった。穴だらけの長靴と油じみた帽子は、そのみじめな服によく調和している。彼は鼻汁をかみ散らした格子縞の綿ハンカチを手に持っていたが、それで額やこめかみの汗をしきりにおし拭っていた。家庭教師はやや顔をあからめて、ちらとわたしのほうへ視線を投げた。その目つきには何かしら挑むような、傲慢な影がこもっているように思われた。
「町から真っすぐにまいりました!いきなりあちらから真っすぐにまいりましたので!何もかもすっかりお話ししますが、まず初めにご挨拶をさせていただきます」入ってきた老人はそういいながら、いきなり将軍夫人のほうへ歩いて行こうとしたが、途中で足を停めて、また叔父のほうへ振り向いた。
「あなたはもうわたしの根性骨を、よくごぞんじでいらっしゃいますが、わたしはやくざ者でございますよ!だって、入るといきなり、すぐに家中で一番おもなお方を見つけ出して、そのほうへ一番に足を向けるんですからな。つまり、こうして来ると早々、ご厚情とご庇護を得ておこうという魂胆でしてな。やくざ者でございますよ、あなた、やくざ者でございますとも!奥様、ご後室さま、どうかあなたのお召物に接吻させてくださいまし。その尊いお手を私風情の唇で穢すのは、恐れ多いことでござりますからな。
 おどろいたことに、将軍夫人はかなり気持ちよく彼に手をさし伸べた。
「それから村一番の美女、あなたにもご挨拶申し上げます」
と彼はペレベリーツィナ嬢に向かいながら言葉をつづけた。
「なにぶんこういうやくざもののことですから、なんともいたしかたございません!もう一八四一年の年に、わたしが勤めのほうを免職になったその時から、やくざ者という折紙がついてしまいました。それは!ヴァレンチン・イグナーチッチ・チホンツェフご八等官をもらって、佐官相当官になられた時のことで、あの方は八等官になられるし、わたしはやくざ者に任官されたわけでございます。わたしという人間は、あけすけの底なしにできているので、なんでも白状せずにおられませんでな。なんともいたし方がございませんよ!今までは正直に世を渡ろうと思って、一通りやってみましたけれど、これからなんとかほかの手を考えてみなければなりませんて。さて、アレクサンドラ・エゴーロヴナ、おいしい林檎のようなお嬢さん」テーブルのまわりを廻って、サーシェンカのほうへ近寄りながら、彼はまた言葉をつづけた。
「どうかあなたのお召物に接吻させてくださいまし、お嬢様、あなたのお体からは林檎だとかなんだとか、いろんなおいしい物の匂いがいたしますよ。それから、今度は命名日のぬしにお祝いを申し上げます。ほら、坊っちゃまに弓と矢を持ってまいりましたよ。朝じゅうかかって自分で造りましたので、家の餓鬼どもも手伝ってくれましたよ。みんなで、これを射て遊びましょう。あなたが大きくなって、将校さんにおなりになったら、トルコ人の首を斬っておやんなさい。タチヤーナ・イヴァーノヴナ・・・・・・あっ、あの方はここにいらっしゃらない!あの方にもお召物を接吻させてもらうつもりだったに。プラスコーヴィヤ・イリーニチナ、残念ながら、あなたのお傍まで皆様をおし分けてまいることができません。さもなければ、あなたのお手ばかりか、おみ足にまで接吻させていただくところでございます、ーーこんなふうにな!アンフィーサ・ペトローヴナ、心からの敬意をあなたに捧げます。つい今日も、あなたのことを神様にお祈りしましたよ、両膝ついて涙を流しながら、お祈りをいたしましたので。それから、ご子息のこともやはり祈っておきました。神様が官等や位や才能を、ーーことに才能を授けてくださるようにってな!ついでながら、イヴァン・イヴァーヌイチ・ミジンチコフにも、うやうやしくご挨拶を申し上げます。どうか、あなたにお望みどおりのものを、神様が授けてくださいますように。だって、あなたはいつも黙りこくっておいでなので、何を望んでいらっしゃるやら、とんと見当がつきかねますでな・・・・・・
ナスチャ、ご機嫌よう!うちの雑魚ざこどもがお前によろしくいってたよ。毎日お前の噂ばかりしておる始末だ。さあそこで今度は、ご主人にあらためて、うやうやしくご挨拶を申し上げます。町からやって来たのでございますよ、あなた、町から真っすぐにまいりましたので。ときに、これはあの大学で勉強しておいでになった、確か甥ごさんでいらっしゃいましょうな?初めて御意を得ます、どうぞお手を」
 どっと笑い声が起こった。この老人がわれから好んで道化の役を演じているのは、想像するに難くなかった。彼の到来は一座をすっかり浮き立たせた。その当てこすりを感じなかった者も大分いたけれど、彼はとにかく一座の人にほとんどぜんぶ挨拶をして廻った。ただ家庭教師だけは(老人は彼女をただナスチャと呼び捨てにして、わたしを面食らわせた)、顔をあからめて、眉をひそめた。わたしは手を払いのけようとした。すると、老人はただそればかり待ちかまえていたようなふうで、
「なに!わたしはただあなたのお手を握らせていただこうと思っただけですよ。それも、もしお許しがあればというので、何も接吻しようと申すのじゃありませんよ。いったいあなたは接吻するかとお思いになりましたので?いや、とんでもない、今のとこ、ただ握手しようというだけのことでございますよ。あなたはきっとわたしをおかかえの道化だと思っておいででしょうな?」笑いを含んだ目つきでわたしを見つめながら、彼はこういった。
「い、いや、とんでもない、ぼくは・・・・・・」
「そう、そう、そうでしょうとも!もしもわたしが道化だとすれば、そこら辺にまだもう一人だれかいるはずですて、まあ、あなたわたしを尊敬してていただきたいものですな。わたしはまだあなたの考えていらっしゃるような、そんなやくざ者じゃありませんよ。そりゃことによったら道化者かもしれません。わたしは奴隷だし、女房は女奴隷ですから、一にもおべっか、二にもおべっかというわけでさあ!そういうわけなんですよ!なんといっても、何やかや得とくになることがありますからな、餓鬼どもの牛乳代くらいにはなりまさあね。何ごとにつけても、せいぜいお砂糖を余計に入れて、うんとたまくしなくちゃなりませんよ、その方が体のためにもよろしいからな。これはな、あなた内証で申し上げるんですよ!いつかまた、お役に立つことがあるかもしれませんて。運命の神様にいじめられたので、それでわたしは道化者になったんで」⇄(感想文: 《何ごとにつけても、せいぜいお砂糖を余計にいれて、うんと甘くしなくちゃなりませんよ、》の文章に、フムッと、読者私は、納得⁉️吹き出してしまいました。なかなか、このように、行動するのは、頑固な私読者は出来ないなぁ〜っ♪と、新しい行動様式の発見をしたような気分になる!!フムッっと、読者私は、感想をふと口にしたのでありました😃


Ap64
「ひひひひ!まあ、このお爺さんの剽軽ひょうきんなことといったら!いつもああしてみんなを笑わせるんですよ、」とアンフィーサ・ペトローヴナは黄色い声でいった。

「でも、奥様、馬鹿者でいたほうが、世の中が暮らしようございますよ!これが、もっと早くわかっていたら、若い時から馬鹿者の仲間入りをして、今頃は賢い人間になれていたかもしれないのに、あまり早く悧巧者になりたがったせいで、今じゃこうして、老いぼれの馬鹿者になってしまいましたよ」
「ちょっとおたずねしますが」とオブノースキンが口をいれた。彼は「才能」云々の言い草が気に入らなかったらしく、わざと大ふうにゆったり肘掛けいすにもたれかかったまま、まるで虫でも調べて見るように、例の柄付き眼鏡て老人をじろじろ見廻していた。「ちょっとおたずねしますが・・・・・・ええと、君の名前はなんといったっけ?・・・・・・」
「ああ!わたしの苗字はまあ、エジュヴィーキンといったわけでございますが、そんな苗字なんかあってもしようがございませんよ。もうこれで足かけ九年、無職でぶらぶらしながら、自然の法則にまかせて暮らしているような有様なので。それに子供、子供ときたら、まるで、ホルムスキイの家族そのままでございますよ!ちょうどあの俗に申す、『金持ちにはべこが殖え、貧乏人には餓鬼が殖え』るというやつでな・・・・・・」


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<<<<<今回は、再び、小説の文章を、楽しく転記させて戴きました>>>>>

 (追伸)名前の多さに。ふぅ〜。それから、いろんな人間がいて、私読者の知らない想像もつかない性格や行動形式や行動結果の原因やら、の世界を見れて、小説は、楽しい限りですね。自分自身は経験は目の前の事象を自ずと歩んでるわけですが。あまりに、理由も何もわからないままにですね。多分、必要条件ふうに、人生をこなしてきているのでしょうね。一方、小説では、種々様々な登場人物が、色々な、形式の行動と色々な内容の苦悩とか喜怒哀楽を心身に抱えていて、それらを小説で知るのは、世界地図の都市を知るくらい、楽しい事ですね。『ふぅ〜〜ん』と、人間の巨大さと人生の巨大さと人間の緻密さやら何やら、知らなかった感情や人生形式の数々を知ることが出来て、私読者は、歓喜ですね😃

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[304] 小説を、読んでると、他の小説の登場人物に性格とかか、似てると思って読んでしまいますね。
名前:ほのか
2021年08月03日 (火) 10時46分
@p69
「実は、ことの起こりはこういうわけなんだ。一週間ばかり前に、ーーそうだ、一週間以上はたっていない、ーーわたしの元の上官だったルザベートフ将軍が、奥さんと奥さんの妹さんをつれて、この町を通過したついでに、ちょっとしばらく足を停められることになった。わたしはこの報知にびっくりして、好機逸すべからずと、急いで飛んで行って挨拶をしたよ、食事にご招待したわけだ。すると将軍は、もし都合がついたらと、約束してくだすった。実に上品な立派な方で、まったくのところ、あらゆる美徳に輝いておられるといっていいくらいだし、おまけに大一流の名士なんだ!同行の義妹の方も親切に世話をしておられるし、ある一人のみなし児
を、素晴らしい青年と結婚させなすったこともある(この男はいまマリーノフで弁護士をしているが、まだ若い男だけれど、実に全宇宙的な教養を持っているんだ!そこで、家じゃ当然、大騒ぎが持ちあがって、やれコックだ、やれ焼鷄だ、やれ、オーケストラだと、歓迎の準備で夢中になってしまった。わたしはむろん嬉しいものだから、まるで命名日でも来たような様子をしていた。ところがね、それがフォマー・フォミッチの気に入らない。わたしが命名日の主のような、嬉しそうな顔をしているのが気に入らないんだ!じっとテーブルに向かったまま、ーー今でもまだ覚えているが、あの人の大好きなクリームをかけたゼリーが出たところだったっけ、ーーむっつりと黙りこくっているかと思うと、いきなり跳びあがって、『わたしは侮辱された、侮辱された!』というじゃないか。『いったいどうして侮辱されたんだね、フォマー・フォミッチ?』とたずねると、『あなたはいまわたしをないがしろにしている。あなたはいま将軍に夢中になってしまって、わたしより将軍のほうが大切なんです!』むろん、わたしはいま手短かに掻いつまんで話しているんで、ただほんの要点を伝えるにすぎないんだよ。しかし、そのほかにあの男がいったことをもしお前がすっかり知ったら
・・・・・・一口にいえば、わたしは魂の底まで揺すぶられたような気がした。いったいどうしたらいいんだろう?わたしは当然意気沮喪してしまった。わたしはこのいきさつにすっかり気持ちをめちゃめちゃにされて、まるで濡れしょぼけた牝鷄みたいに、悄然となってしまったんだ。そのうちに、やがて晴れの当日がやって来た。ところが、将軍は使いをよこして、都合がつきかねるからと、辞退の挨拶だ。ーーつまり、お見えにならないことになった。わたしはフォマー・フォミッチに向かって、『さあ、フォマー、安心してくれたまえ、お見えにならんよ』というと、その返事はどうだったと思う?ゆるしてくれない、いやだいやだの一点ばりだ!『あなたはわたしを侮辱した』で、どこまでも押して来るじゃないか。わたしはいろいろああもいい、こうもいってみた。『駄目です、勝手に自分の好きな将軍連のところへいらっしゃい。あなたはわたしなんかより将軍連のほうが大切なんだから。あなたは友情の絆を断ち切ってしまったんです』とこうなんだよ。なあ、セルゲイ!そりゃわたしだって、あの人がどうして腹をたてるのかちゃんとわかってはいるのだ。わたしはけっして無神経なでくの坊でもなければ、のらくらの穀潰しでもないんだから、つまり、あの人ががわたしのことを思ってくれるために、その一心が過ぎて、ああいうふうにするのだということは、十分に察しているんだよ、ーーあの人は自分でもそういっているが、ーーあれはわたしのことで将軍にやき餅を焼いているんだ。わたしの好意をなくするのが心配なものだから、わたしを試験しようとしているわけなんだ。わたしがあの男のために、どれだけ犠牲を払うことができるか、そこを突きとめようと思っているんだ。だが、あの男はどこまでもいい張って聞かないのさ。『駄目です、わたしはあなたにとって将軍も同じことですよ。わたし自身があなたにとって閣下の地位にいるんですからね!あなたはわたしに対する尊敬を証明してくださらない限り、断じて和睦をするわけにはいきません『いったいどうしたら、きみにその敬意を証明することができるんだね、フォマー・フォミッチ?』『わたしをまるいちんち閣下と呼んでください。そうしたら、わたしに対する尊敬を証明したことになりますよ』わたしは雲の上から足を踏みはずしたような気がしたよ。わたしがどれくらい度肝を抜かれたか、よろしく察してもらいたいよ!『そうです』とあの人はいうのだ。『これはあなたにとっていい教訓になるでしょう。ほかの人間だって、あなたの好きな将軍連を束にしたよりか、もっと気が利いてるかもしれないのに、むやみと将軍をありがたがるなんて、気をつけたらいいでしょう!』さあ、このときわたしもいよいよ堪忍袋の緒を切らしたんだ。これは今となって後悔するよ!みんなの前で立派に侮悟の意を表するよ!が、その時は我慢しきれなくなってこういった。『フォマー・フォミッチ、いったいそんなことができると思うのかね?え、どうしたってそんなことは無理だろうじゃないか。きみを将軍に昇進さすなんて、そんな権利がわたしにあると思うかね?いったいだれがそういう任命をするのか、考えてみるがいい。それにどうしてきみのことを閣下なんて呼べるんだ?だって、それは人間の運命の厳粛さを蹂躙するようなものじゃないか!将軍は国家の誇りともなるべきもので、戦場で命がけの戦いをして、名誉の血を流した人なんだからね!きみのことを閣下なんて、そんなことはいえるわけがないよ!』ところが、あの人はいっかな後へ退こうとしない!そこで、わたしはこういった。『フォマー、わたしはきみの望みをなんでもかなえてあげる。現にきみは、わたしの頬ひげが愛国的精神に背くといって、無理やりに剃れ剃れといい張るものだから、わたしはこの通り剃り落としてしまった。顔をしかめながらも、とにかく剃り落としてしまった。そればかりじゃない、きみの望むことなら、なんでもそのとおりにするから、ただ将軍の位だけは思い切ってもらいたい!』『いや、わたしは閣下といってもらうまでは、けっして和睦しません!それは、あなたの道徳的修行のためにも、有益なことなんです。それはあなたの自尊心を和げることになりますからね!』とこう来る。そういうわけで、もうかれこれ一週間ばかり、いや、まる一週間もわたしと口をきこうとしないで、家へやって来る人ごとに腹をたてているんだ。お前のことにしても、学者だという話を聞くが早いか、ーーもっとも、これはわたしが悪いのだ、つい前後の考えもなく、口をすべらしてしまったのさ!すると、お前がこの家へ乗り込んで来たら、もうけっしてこの闇を跨がないといい出すじゃないか。『してみると、もうわたしはあなたにとって学者じゃないんですな』とこういうんだよ。やがて、今にコローフキンのことを聞き込んだら、それこそまた騒ぎだ!さあ、一つお願いだから裁いておくれ、ーーこれについて、いったいわたしのどこが悪いんだろう?それとも、思いきってあの男に、『閣下』といったものだろうか?ねえ、いったいこんな有様でやっていけると思うかね?第一、なんだってあの男は罪もないパフチェエフを、きょう食事なかばに追い出してしまったのだ?そりゃ、まあ、パフチェエフは天文学を考え出しはしなかったに相違ない。だが、そんなことをいえば、わたしだって天文学をを考え出しはしなかったし、お前だってそんなものを考え出したわけじゃないだろう・・・・・・え、これはなんのためだろう、いったいなんのためだろう?」
「それは、お前がやっかみ屋だからだよ、エゴールシュカ」
またもや将軍夫人が、口をもぐもぐさした。
「お母さん!」と叔父はさも情けなさそうに叫んだ。「あなたはわたしを気ちがいにしておしまいになりますよ!・・・・・・あなたのおっしゃるのは、ご自分の言葉じゃなくって、人の言葉の口移しですよ。お母さん!それじゃわたしは結局あなたの息子じゃなくて、でくの坊の、間抜けの、提灯男になってしまいますよ!」
「叔父さん、ぼくは、こんな話を聞きましたよ」今の話で、ものもいえないほどあきれ返ったわたしは、とうとう口を出した。「ぼくはパフチェエフ氏から聞きましたが、ーーもっとも、本当かどうか知りませんけれど、ーーフォマー・フォミッチはイリューシャの命名日をやっかんで、おれも明日は命名日の祝いを受けるんだと、いい張ったそうですね。正直なところ、これはあの人の性格を完全に物語る事実で、ぼくをすっかり驚いちまったんです。だもんだから・・・・・・」
「誕生日だよ、お前、誕生日の祝いで命名日の祝いじゃないんだ。誕生日なんだよ!」と叔父は早口にわたしをさえぎった。「あの男の言い方もちょっと間違ってはいたが、しかし実際はほのとおりなのさか、明日はあの人の誕生日なんだよ。もっとも、まずだいいちにあ・・・・・・」
「誕生日でもなんでもありゃしないわ!」とサーシェンカが叫んだ。
『どうして誕生日出ないんだ!」叔父はぎょっとして声を筒抜けさした。
「誕生日でもなんでもないのよ。お父様!それは、お父様がでたらめをいってらっしゃるだけよ、ーーフォマー・フォミッチの機嫌をとろうと思って、自分で自分を足してらっしゃるんだわ。だって、あの人の誕生日はもうこの三月にすんだんですもの、ーーねえ、覚えてらっしゃるでしょう、あたしたちその前に修道院へお詣りに行ったところ、あの人は馬車の中でも、みんなをじっと落ちついて座らせなかったじゃありませんが、ーークッションでよこっぱら。おし潰されてしまったって、のべつわめき通しにわめいて、おまけにみんなをつねりちらしたじゃありませんか。叔母さんなんか意地悪く二度もつねられたもんだわ!それから誕生日になって、あたしたちがあの人のところへお祝いに行ったら、あたしたちのあげた花束にツバキの花がないといって、ぷりぷり腹をたてたじゃありませんか。『わたしの趣味は上流社会のものだから、椿が大好きなんです。それだのに、あなた方はわたしのために温室の花を剪るのを惜しがったんです』なんかって、まる一日ふくれっ面をして、駄々ばかりこねちらして、あたしたちと口もきかなかったくらいよ・・・・・・」
 もし爆弾が部屋のまん中に落ちて来たとしてもあ、このだれはばからぬ大っぴらな反抗ほどには一同を驚かせ、あきれさせはしなかったろうと思われる、ーーしかもそれはいいだれあろう、まだ祖母の前では大きな声です話も許されていない、年歯もゆかぬ小娘の仕業ではないか。将軍夫人は驚きと怒りのために口もきけなくなり、腰を持ち上げて身を反らしながら、われとわが目を疑うように、大胆不適な孫娘をじっと見つめていた。叔父は恐怖のあまり麻痺したようになってしまった。
「なんという増長のさせ方だろう!お祖母さんをいじめ殺すつもりなんですね!」とペレペリーツィナは叫んだ。
「サーシャ、サーシャ、気をおつけ!お前いったいどうしたというのだね、サーシャ!」将軍夫人とサーシェンカのほうへかわるがわる飛んで行って、娘の口を止めようとあせりながら、叔父はこう叫んだ。
「あたしもう黙っていられませんわ、お父様!」不意に椅子から踊りあがって、じだんだを踏み、目を輝かしながらサーシャはわめきたてた。『もう、黙っていられませんわ、あたしたちはみんな、フォマー・フォミッチのお陰で、あのいやらしいやくざなフォマー・フォミッチのお陰で、どんなに長い間つらい悲しい思いをしたか、知れないんですもの!だって、フォマー・フォミッチは、あたしたちをみんなめちゃめちゃにしてしまうんですもの。それというのも、はたの者がのべつあの人に向かって、あなたは賢い人だ、寛大で高潔な学識の深い人だ、ありとあらゆる徳行を一緒に合わせた集成曲だ、なんていうものだから、フォマー・フォミッチは馬鹿みたいに単純に、其れをすっかり本当にしてしまったのよ、ほかの人だったら気のさすような
ご馳走を後から後からあの人の前へ運んで行くと、フォマー・フォミッチは自分の前へ置いてもらったものを片っ端から平らげて、また後をねだるんですからね。今に見てらっしゃい、あの人はあたしたちをみんな食ってしまってよ。それはだれのせいかというと、みんなお父様が悪いのよ!フォマー・フォミッチは本当にいやないやな人間ったらありゃしない。あたし明けすけにいってしまうわ、だれだって怖かないんだから!あの人は馬鹿で、わがままで、薄汚い引きったれで、下品な人情のない暴君で、陰口屋で、嘘つきなのよ・・・・・・ああ、あたしだったらきっと、きっと今すぐあの人を屋敷から追い出してやるんだもの!」
『ああ!・・・・・・」と将軍夫人は一声をさけぶと、ぐったり長いすに倒れてしまった。
『アガーフィヤ、いい子だから、後生だから、わたしの香水瓶を持って来ておくれ!」とオブノースキナ夫人は叫んだ。
「水を、水を早く!」
『水だ、水だ!」と叔父は叫んだ。「お母さん、お母さん、落ちついてください‼️膝をついてお願いします、どうか落ちついてください!・・・・・・」
「あなたのような人は、パンと水だけで暗い部屋へ押しこめて、外へ出さないようにしなくちゃ・・・・・・あなたは本当に人殺しですよ」ペレペリーツィナは憎悪に身を顫わせながら、声を殺してサーシェンカを叱りつけた。
『パンと水だけで押しこめられたってかまやしない。あたしなんにも怖くないわ!」これもやはり夢中になって、前後を忘れた様子で、サーシェンカはわめき返した。あたしのお父様を守ってあげるのよ。だって、お父様はご自分で守れないんですもの。あの男はいったい何者なの?あなたのフォマー・フォミッチなんか、八裂きにしてやりたいくらいよ!あいつに決闘を申し込んで、2 ピストルでいきなりその場にたおしてやりたい・・・・・・」
「サーシャ、サーシャ!」と叔父は絶望の叫びをあげた。
『お前がもうひと言いったら、わたしの身はもう破滅だ、それこそもう取り返しはつかないんだよ!」
『おとうさま!」いきなり矢のような乳のそばへ
駆け寄り、涙目に泣き濡れながら、固く父の体を両手に抱きしめて、サーシャはこう叫んだ。「おとうさま!ねえ、いったいお父様のように優しい、立派な、陽気な、賢い人が、そんなことで自分の身を破滅させていいものですか、お父様が、あんな穢らわしい恩知らずのいうことを聞いて、あんな者の玩具になって、自分で自分を他人の笑いぐさにする法があるでしょうか?お父様、あたしの大事なお父様・・・・・・」
彼女はしゃくり上げて泣きながら、両手を隠すと、そのまま部屋を駆け出した。」
⇄(感想文: 《ちょっとした、ズレている人もちょっとは、いるんだな!?っと、思って安心しましたね。ぱっと見は、あってて、正しいしほうみたいだけど。一ミリの感覚的ズレは、地球の南極と北極が逆転するくらいに、思想の差が存在致しますね。しかー!し、話しても説得しよーと思っても、頭脳の中の一万個の細胞の中に、さのひとーつが、存在してないなら、全くその人間には、『感覚』を、伝えることや、理解して、意思疎通は難解なのですね😃 叔父さんの娘サーシェンカは、『白痴』のアグラーヤの様ですね。😃

[307] 『カラ兄弟』のゾシマ長老や『白痴』のムイシュキン公爵の優しい心を思い出しますね🎶
名前:ほのか
2021年08月03日 (火) 16時09分
p74
 恐ろしい騒ぎが始まった。将軍夫人は気を失って倒れていた。叔父はその前に膝をついて、両の手に接吻していた。ペレペリーツィナ嬢は、二人のまわりをうろうろしながら、わたしたちのほうへ毒々しい、けれども勝ち誇ったような視線を投げるのであった。オブノースキナ夫人は、将軍夫人のこめかみを水で冷やしながら、例の香水瓶をいじくりまわしていた。プラスコーヴィャ叔母は身を慄わして、さめざめと涙にくれていた。エジェヴィーキンはどこか身を隠すところはないかと、都合のよさそうな物陰をさがしていたし、家庭教師は恐怖のあまりとほうに暮れ、真っ青な顔をして立っていて。ただ一人、以前と変わらぬ様子をしていたのは、ミジンチコフだった。、彼は立ちあがって窓のそばへ近寄り、この場の有様に一顧の注意も払わす、じっと窓外を眺め始めた。
 不意に将軍夫人は長いすの上に身を起こし、きっと身を反らして、もの凄い目つきでわたしをじろじろ見廻した。
「出て行け!」片足をとんと踏み鳴らして、彼女はこうわめいた。
 白状しなければならないが、これはわたしのまったく思い設けぬところだった。
「出て行け!この家から出て行け、とっとと行ってもらおう!なんだってあんな者がやって来たのだ?あいつの匂いがしても承知しないから!出て行け!」
「お母さん!お母さん、何をおっしゃるんです!だってあれはセリョージャですよ」恐ろしさに全身を慄わしながら、叔父はへどもどしてつぶやいた。「だって、お母さん、これは家へお客に来たんじゃありませんか」
「セリョージャってだれのことだえ?馬鹿なことを!わたしはなんにも聞きたくない、出て行け!これはコローフキンです。きっとコローフキンに違いないと思う。わたしの勘に間違いはないから。この男はフォマー・フォミッチをいびり出そうと思ってやって来たのだ。そのためにわざわざ呼び寄せられた人間です。わたしはちゃんと虫の知らせがあります・・・・・・出て行け、ヤクザ者!」
「叔父さん、そういうことなら」と、わたしは高潔な憤懣の情に息をつまらせながら、いい出した。「そういうことなら、ぼくは・・・・・・失礼します・・・・・・とわたしは帽子に手をかけた。
「セルゲイ、セルゲイ、お前は何をするのだ?・・・・・・やれやれ、今度はまたこれが・・・・・・お母さん!これはセリョージャじゃありませんか!・・・・・・セリョージャ、冗談じゃないよ!」
わたしの後を追っかけて、わたしの手から帽子を引ったくろうとあせりながら、彼は叫んだ。「お前はわたしのお客さんだから、残ってくれなくちゃ駄目だ!なに、あれはただちょっとああいってみるだけなんだよ」彼は小声につけ足した。「あれはただ怒った時にあんなふうなんでね・・・・・・ただ初ちょっとの間だけ、どこかへ隠れていておくれ・・・・・・しばらくどこかへ隠れていておくれ・・・・・・しばらくどこかへ引っこんでたら、なんでもありゃしない、すぐ収まってしまうよ。お母さんはゆるしてくださるよ、ーーそれはわたしが誓ってもいい!しんはいい人なんだけれど、ただあんなふうに口がすぎるだけなんだよ・・・・・・今も聞いていたとおり、お母さんはお前をコローフキンと取り違えたんだが、後できっとゆるしてくださる、請け合いだ・・・・・・お前、何用だ?」ちょうど部屋へ入って来て、恐ろしさにわなわな慄えているガヴリーラに向かって、彼はこうどなりつけた。
 ガヴリーラは一人きりではなかった。屋敷づとめさの下男で、年頃十六ばかりの素晴らしく器量のいい少年が、彼といっしょに入って来た。後で聞いたところによると、その美しい顔だちのために、屋敷へ引き上げられたとのことである。名はファラレィといった。彼は何か特別の衣装を身に着けていた。組紐で襟を縁どりした赤い絹のルバーシュカに、金モールの帯をしめ、黒いふらしてんの広いズボンを着け、赤い折返しのついた山羊革の長靴をはいていた。この衣装は将軍夫人自身の道楽なのである。少年はさも悲しそうにおいおい泣いていた。涙の玉が後から後からと、大きな空色の目から転がり出すのであった。
「これはまた何ごとだ?」と叔父はどなった。「いったい なにごとが起こったのだ?早くいわんか、この悪党!」
「フォマー・フォミッチが、ここへ来いとお言いつけなりましたので、ご自分も後からついていらっしゃいます」ガヴリーラは悄然と答えた。「わたしは試験に呼ばれたので、こっちの方は・・・・・・」
「こっちの方は?」
「踊りをやっておりましたんで」とガヴリーラは情けなさそうな声で答えた。
「踊りをやった?」と叔父はぞっとして叫んだ。
「踊りをーーやりましたんで!」とファラレィは啜り上げながらわめいた。
「コマーリンスキイをかい?」
「コマーリンスキイなので!」
「それをフォマー・フォミッチが見つけたのかね?」
「みーつーけました!」
「いよいよとどめを刺しやがった!」と叔父は叫んだ。「もうおれの首はないぞ!」と彼は両手で自分の頭をかかえた。
「フォマー・フォミッチのおいでです!」ヴィドプリャーソフが、部屋へ入って来ながらこう披露した。
 扉がさっと開いて、度肝を抜かれている人々の前に、フォマー・フォミッチが自分の姿を現した。」⇄(感想文: 叔父は、『カラ兄弟』のゾシマ長老か『白痴』のムイシュキンの性格でしょーね。

[308] 『閣下』
名前:ほのか
2021年08月05日 (木) 07時08分
p105
「9 閣下
セリョージャ!もう万事おわった、いっさいは解決したよ!」彼は妙に悲劇的な声で、半ばささやくようにいった。
「お父さん」とわたしはいった。「何かどなり声が聞こえていましたが・・・・・・」
「どなり声、そりゃどなり声も聞こえるだろうよ。ありとあらゆる声でどなったんだからな!お母さんは気絶なさるし、何もかも上へ下への大騒ぎだ。しかし、わたしはすっかりはらをきめて、どこまでも主張を通すんだ。わたしはもうだれも
恐れやしない。セリョージャ、わたしにだって性根があることを、やつらに見せてやろうと思って、わざわざお前を呼びにやったんだよ・・・・・・わたしの心はうち砕かれたのだ、セリョージャ・・・・・・しかし、わたしはどこまでも、厳正な態度をとらなくちゃならない。とるべき義務がある。正義は情実によって曲ぐべきではなからね。「ですから、叔父さん、いったい何ごとが起こったんです?」「わたしはフォマーと別れたいんだ」叔父は断固たる調子でいった。
「叔父さん!」とわたしはうちょうてんになって叫んだ。「それ以上にいい考えはありませんよ!もしぼくがいくらかでもその決心のお役に立てば、いつでもぼくを使ってください」
「ありがとう、感謝するよ!しかし、今はもういっさいが決定してしまったんだ。今フォーマーを待ってるところなんだよ、もうさっき呼びにやったのでね。あの男かわたしか、二人に一人だ!
われわれは別れなくちゃならない。明日にもフォーマーがこの家を出て行くか、さもなければ、誓っていうが、わたしは何もかも捨ててしまって、また軽騎兵へ隊入っていくかだ!たぶん採用して、大隊くらい持たしてくれるだろう。こんなシステムなんか、おしまいだ!これからは何もかも新規蒔直しさ、なんだってお前はフランス語の手帳なんか持ってるんだい?」ガヴリーラのほうへふり向きながら、彼は猛然と叫んだ。「うっちゃってしまえ!ひっさぶいて、踏みにじって、焼いてしまえ!俺がお前の主人だ。おれが命令するんだから、フランス語なんか勉強することはならん。お前は俺は命令に背くわけにはいかないぞ、お前の主人はおれで、フォーマー・フォミッチじゃないんだからな!
「やれやれ、ありがたいことで!」とガヴリーラは口の中でつぶやいた。
 これはどう見ても、もう冗談ごとではないらしかった。
「ねえ、セリョージ!と叔父は深い感情をこめながら、言葉をつづけた。「あの連中はわたしに不可能なことを要求するんだ!お前はどうかわたしを裁いてくれ。これから公平無私な裁判官として、あの男とわたしの間に立ってくれ。お前は知らないだろう、お前は知らないだろうが、あの連中はとんでもないことをわたしに要求するばかりか、とうとうそいつを、正式に持ち出したんだ、すっかりあけすけにいってしまったのだ!しかし、それは人間愛に背くことなんだよ。高潔な正義感に悖もとることなんだよ・・・・・・すっかりお前に話して聞かせるが、まず初めに
・・・・・・」
「ぼくはもうすっかり承知していますよ、叔父さん!」とわたしはあいてをさえぎりながら叫んだ。「ぼくはほぼ察しがついています・・・・・・ぼくはいまナスターシャ・エヴグラーフォヴナと話をしたんですよ」
『お前、今そのことをいっちゃいけない、一口もいっちゃいけない!」叔父はおびえたように、あわててわたしの言葉をさえぎった。
「後でわたしが自分の口からすっかり話して聞かせるが、今のところは・・・・・・おい、どうした?と彼は入って来たヴィドプリャーソフ
に声をかけた。「いったいフォーマー・フォミッチはどこにいるんだ?」
 ヴィドプリャーソフがやって来たのはフォーマー・フォミッチは、ここへ来るのはいやだとおっしゃいます。こっちへ出向いて来いなどと要求するのは、あきれ返った失礼なやり口だといって、大変お怒りなっていらっしゃいます』という報告を持って来たのである。
「あいつをここへ連れて来い!引っぱって来い!力ずくで引っぱって来い、」と叔父はじだんだを踏みながらわめいた。
「ヴィドプリャーソフは、今まで主人がこんなに怒ったのを見たことがないのでびっくりして引きさがった。わたしも驚いた。
「こういう性格の人がこれほどまでに腹を立てて、これほどまでの決心をしたところを見ると、何かよくよく重大なことが起こったに相違ない』とわたしは考えた。
 叔父はしばらくのあいだ、自分自身と闘うようなふうで、無言のまま部屋を歩き廻っていた。
「だがな、その手帳を破るのは、見合わせるがいい」とうとう、彼はガヴリーラに向かってこういった。「そして、お前もここで待っておいで。またなにか用があるかもしれないから。ーーそれから、セリョージャ」わたしのほうへふり向きながら、彼はこうつけ加えた。「わたしはどうやら、あまり大きな声でわめきすぎたらしい。すべて物ごとは、男らしく威厳を保ってやらなくちゃならない。どなったり怒ったりしながらじゃ駄目だ。そうだとも。ねえ、セリョージャ、お前はここを遠慮したほうがよくはないだろうか?どうせ後ですっかり話して聞かせるからーーなんと思う?お願いだから、わたしのためにそうしてくれ」
「あなたは怖くなったんですか、叔父さん?後悔したんですか?」とわたしはじっと相手の顔を見て見つめながらいった。
「違う、違うよ、お前!後悔なんかしやしない!」と彼は前に倍して熱心な調子で叫んだ。「もうこうなったら、なんにも怖いものはないよ。わたしは断固たる処置をとったんだ!あの連中がわたしに何を要求したか、それをお前は知らないのだよ。それはお前も想像がつかないくらいだ!あんなことにわたしが同意しなくちゃならないというのか?とんでもない、わたしはやつらに証明して見せてやるんだ、いったん蹶起した以上、立派に証明して見せるとも!わたしだっていつか証明して見せなきゃならんじゃないか!だがね!セリョージャ、わたしはお前を呼んだのを後悔してるんだよ。お前までここにいて、言わばあの男の屈辱の目撃者となったら、ホォマーだって、ずいぶん苦しいだろうじゃないか。実はね、わたしは恥ずかしい思いをさせないように、上品な態度で、あの男の同居を断ろうと思うんだよ。もっとも、恥ずかしい思いをさせないように、などと、口ではいってみるものの、なにしろ事柄が事柄だからいくら言葉を綺麗に飾ってみたところで、やっぱり癪にさわる話だからな。おまけに、わたしは、教育のないがさつ者だから、自分でもいやになるようなことを、無考えにいってしまうかもしれないんだ。なんといったって、あの男はわたしのためにいろいろ尽くしてくれたんだからな・・・・・・セリョージャ、ここをはずしておくれ・・・・・・だが、もう、あの男を連れて来たようだ、連れて来ている!お願いだから、はずしておくれ!後で何もかも話して聞かせるから。後生だ、出て行っておくれ!」
 叔父がわたしをテラスへ引っぱり出した瞬間に、フォーマーは部屋へ入って来た。しかし、わたしは今さら後悔する次第だが、その場をはずしてしまわないで、テラスに残っていようと決心した。そこは真っ暗だったから、部屋からわたしを見つけることはできないわけだ。わたしは立聞きすることに腹を決めたのである。
 わたしはけっして自分の行為を弁解するわけではないが、この三十分間テラスに立ちつくして、堪忍袋の緒を切らさずにいたのは、とりも直さず、受難者の苦行を成就したものだと思う。それはあえて断言することができる。わたしの立っていた場所からは、よく話が聞こえたばかりでなく、中の様子まで手に取るように見えた。ドアがガラスばりだったのである。そこで、拒絶すれば力ずくで引きたてる、という威嚇のもとに出頭を命ぜられたフォーマー・フォミッチが、どんな形相をしていたかは、よろしく読者の想像にまかせる。「大佐、ああいう脅迫がましいことを聞いたのは、あれはわたしの耳の間違いでしょうな?」フォマーは部屋へ入りながら、金切り声でわめきたてた。「本当にあんな命令をお伝えなさったのですか?」
「そうだよ、そうだよ、フォマー!落ちついてくれたまえ」と叔父は勇気を振るってこう答えた。「まあ、掛けたまえ。一つまじめに兄弟として、隔てなく話したいことがあるんだ。さあ、掛けてくれたまえ、フォマー」
 フォマーはものものしい態度で、肘掛いすに腰をおろした。叔父は何から切り出したらいいかと、いかにも思い惑う様子で、不揃いなせわしない足どりで部屋を歩き廻っていた。
「まったく、兄弟として話したいんだ」と彼はくり返した。
「どうかわたしの気持ちを察してくれたまえ、フォマー。きみも子供じゃないし、わたしも子どもとは違う・・・・・・一口にいえば、わたしたちは二人とも相当な年輩なんだからね
・・・・・・ふむ!ねえ、フォマー、わたしたちはある点でどうしても折り合わない・・・・・・そう、まったくある二、三の点でね。だから、フォマー、いっそ別れたほうがよくないだろうか?きみが高潔な人間で、わたしのためを思ってくれるのは、よくわかっているんだが・・・・・・しかし何もくどくどいうことはない!フォマー、わたしは永久に君の親友だ。それはあらゆる聖者のみ名にかけて立派に誓うよ。ここに銀貨で一万五千ルーブリある。これはきみ、ぼくの身の上ありったけだ。これはわたしが家族のものを盗むようにして、なけなしのはした銭をかき集めてこしらえたものなんだ。遠慮なくとってくれたまえ。わたしとしては、きみの生活を保証しなければならない、その義務があるんだ。ここにあるのは、ほとんど全部が手形で、現金は幾らもないんだよ遠慮なくとってくれたまえ!きみは私にたいして、夢にも借金などすることにはなりゃしない。きみが今まで尽くしてくれたいっさいのことに対しては!永久に報いることができないほどだからね。そうだ、まったくそのとおりだ。わたしはそれを感じているよ。もっとも、今では一ばん重要な点で、二人の意見がくい違っているけれどね、明日か明後日か・・・・・・それとも、いつでもきみの都合のいい時に別れようじゃないか。フォマー!ここから一番近い町へ越してくれたまえ。道のりは僅か十露里しかない。あの町には教会のうしろにある取っつきの横丁に、青い鎧戸のついた小さな家がある。司祭の後家さんが住んでいる気の利いたかわいい家で、まるできみのためにわざわざ建てたような気がするくらいだ。その後家さんが売物に出しているから、わたしがその家をきみに買ってあげよう。この金は別としてだよ。あれなら、すぐ目と鼻の間だから!あそこに落ちついてくれたまえ。静かに文学や科学の仕事をしていたら、やがては名声を博するようになるだろう・・・・・・あの町の役人たちはみんな揃いも揃って上品で、愛想がよくって、欲のない人たちばかりだし、坊さんもなかなかの学者だよ。日曜祭日ごとに家へ遊びに来るようにしてもらうと、ーーそれこそわれわれの生活は楽園みたいになってしまうよ、望みかね、どうだね?」
『ははあ、こんな条件でフォマーを追い出そうというのか!』とわたしは考えた。『叔父はぼくに金のことを
隠していたんだ』
 長いあいだ深い沈黙が一座を領していた。フォマーは雷にでも打たれたように叔父をみつめていた。こちらはその沈黙とその凝視のために、ばつが悪くなって来たらしい。」

[309] フォマー・フォミッチとミジンチコフという住人代表
名前:ほのか
2021年08月05日 (木) 10時42分
【少し喜劇的〜】と言えば、喜劇的人物と言うことになる叔父様だけと。悪人にフォマー・フォミッチとミジンチコフは、確定ですね。ミジンチコフは、叔父様のこと、彼が結婚すると、彼的自分勝手な哲学では、叔父が不幸になると決めて、叔父のためとは、少しは心はあるかもしれないですが。

 言葉、単語が、人それぞれ、地球上の人間の数だけ、意味合いが、異なってしまいますね。意味を、それぞれ人間が個ごに自分流に捉えて頭の中で考えてますね。

 結局、言葉の会話は、ほとんど、お互いに真意は、理解されてないのではないでしょうか。

 言葉の会話は気休めとも、考えられなくもありません。

 哲学的言葉の、
「徳性」「徳行」「自尊心」「高潔な精神」「恭順」「清廉潔白」など、
理解の仕方が、人間の数だけ、存在しますね。


 感覚的な感覚の気分いい、悪いという言葉は、気分いい、悪いであっていて、天にも昇る気持なら、天にも昇る気持という、ワクワク感の人類共通の感覚は存在するでしょうね😃ケーキと紅茶を飲んで、お酒で乾杯したくなる気分ですね😋


【一見、平和的】⇄フォマー・フォミッチ、ミジンチコフ
【一見、自分流には、正義〜奉仕と、信じきってる。しかし、自分ための哲学で他者のこころはどうでもいいと、理解してるのに、あえて、悪行動してるなら、悪人】⇄フォマー・フォミッチ、ミジンチコフ

=*==========*=
⑴自分流の哲学T⇄フォマー・フォミッチ
⑵自分流の哲学U⇄ミジンチコフ
=*==========※=


⑴T〈貧乏など、人生に不満が集約されてる人間のフォマー・フォミッチ 対 叔父の清廉潔白な感じる心を持った人間〉の、互いの心の思考の隙間をどーしても埋められない悲劇というか、喜劇というか、日常というか、真実である有り様の列記であるお話であるなぁ〜と、みじかな気分で感じました。

⑵U〈『結婚』たとえば、その目的や内容などを、斜めに曲げて、自己の都合の良いように解釈した〉、ミジンチコフという登場人物。単語の自分流の解釈の哲学ですね。
 相手の心を、自分流哲学で解釈してるけど、ふ相手は、無機質の装飾品や飼い犬とか、で、人生を癒された方が、幸せだし、純粋かも。ミジンチコフという、形式だけの一瞬間だけの楽しみを相手に与えて、善をしているという、敢えて、自身が誤解を積極的にするよーな生き方哲学でありますね。ミジンチコフには、真剣な心がないから、悪人というレッテルを貼ってもよいでしょうね。ただ、叔父様のためを思うという結果論は叔父様にとっては、良い事かもしれません。


【総まとめ@読者わたし】


⑴T フォマー・フォミッチ
@相手のこころを、知識の羅列と、綺麗な単語、つまり、正義とかで、矢継ぎ早に、説得して、相手の心を木っ端微塵にする人ですね。強制的に、自分流哲学を教え込むやり方のフォマー・フォミッチですね。相手が恐怖で心が怯えるほどに、自分流哲学で説くのですね。相手の心の中に溜まる恐怖心の悲惨さは、悲劇ですね。フォマー・フォミッチが、心の中で意識してるのか、してないのか。やはり、悪さを意識してると考えますが。      叔父様のような善人を、手玉に取ってしまってるのですね。
 叔父様という、紛れもない『聖者』は、どのような心の持ち主かと言いますと、微細な心の細胞までが、『境遇の悪い人、不幸な人』の可愛そう過ぎ感情に、全身全霊で反応してしまうのですね。『相手をちょっとでも傷つけてしまったのではないか」かどうかとか気になって仕方がありません。相手の『正義』と、聖者の叔父様の考えてる『正義』は、全く異なるのに、天と地ほど異なるであろうのに、叔父様は自分基準で、物事を考えるので、相手を美しいこころのきれいな人間と理解してしまうのですね。
 相手を、一ミリたりとも傷つけたくないし、相手の単語に、辞書上にある通りの筈の解釈をしてしまいます。相手は中が空っぽの単語であるだけの、ただその形式の会話や単語であるのに。
 相手が自身を清廉潔白と宣伝すれば、その事は、凄い叔父は反応して信じて、その言葉を発した相手を褒め称えますね。相手が正義感を沢山持ってると相手自身が言ったのにもかかわらずに言えば、叔父様は、その通りに受け取り、感激する有様ですね。〜〈相手の幸せを、自分の幸せより、大事だと考える人なのですね。相手が傷付くのを極度に恐れる善人ですね。叔父様は‼️〉〜

Aお金を、捨てるフォマー・フォミッチ。ミジンチコフが、「ですが、破ったりしてませんね」と、笑ったミジンチコフは、冷ややかな目でみてました。しかし、叔父が、この行為『お金を、人生の価値と考えてない』というフォマー・フォミッチの態度と受け取り、この高貴さに感動したのでした。が、フォマー・フォミッチは、「お金を破ってないという行為に、フォマー・フォミッチの嘘を、見抜きましたね。一方、そうされた叔父に与えた心の感動が、フォマー・フォミッチと、別れる気持ちを砕いてしまい、フォマー・フォミッチに、再び、心を砕き、美辞麗句に翻弄される叔父を、ミジンチコフは、確信していたのでしょうね。『白痴』のナスターシャは、ロゴージンにもらった大金を、ストーブに、投げ入れたのに。それと、比較して、ミジンチコフは、指摘が鋭いですね。こころのやさしい叔父は、気がつきませんね‼️

B息子可愛さのあまり、閉じこもりで、奴隷になってしまう親は、少し気をつけなければ、ならないかもですね。叔父と同じで、「良かれと、サービス大勢や、言葉尻を捉えて、叔父のような感激」が、主従逆転という事を生じさせるかもですね。もともとの従が、賢く、主を感謝してればいいけれど。フォマー・フォミッチのように、巨大化したら、大変ですね。


⑵U ミジンチコフ
『結婚』という単語を振りかざして、真実を伴わない結婚をしようとする自分流偽哲学を披露するミジンチコフという、スチェパンコヴォ村の住人の一人
 得を、してはいけない。相手が、損をしてるので。相手がいないなら。個人の得を追求は、構わないが。
 太極的に、宇宙規模的に、地球規模的に、眺めたら、〈なんとなく、おかしい〜〉という感覚は、おかしいのである‼️多分。小さな子供が、感覚で、思考をするとすれば、そのおかしさは、真実であるだろうと、感覚を信じますね。つまり、ミジンチコフは、おかしい。という結論ですね。相手を本当に、幸せにしてるのかという事と、周囲も、幸せになるしてるのかという事がありますね。正義という思考が、まちがってるミジンチコフ。

[312] 【308】のあと〜 作家ドストエフスキー氏自体の小説ですね!興味深く深いですね‼️
名前:ほのか
2021年08月08日 (日) 22時10分
「金ですと!」なんだかわざとらしく弱々しい声で、とうとうフォマーはこう口をきった。「それはどこにあるのです、その金はどこにあるのです? それをもらいましょう、すぐここへ出してもらいましょう!」
「さあ、これだよ、フォマー、家じゅうのなけなしの金をかきあつめたもので、ちょうど一万五千ある。手形と債権でねーーまあ、自分で見てくれたまえ・・・・・・そら!」
「ガヴリーラ! その金を取っておくがいい」とフォマーは、つつましやかな調子でいった。「お前の老後の役に立つだろう、ーーいや、待ってくれ!」何かしら並はずれた黄いろい調子を声に響かせながら彼はわめき出した。「いけない! そいつを、その金をまずわしによこせ、ガヴリーラ! わしに貸してくれ! わしに貸してくれ! その千万金をわしによこせ。わしがこの足で踏みにじって、引き破って、唾を吐きかけて、そうして、まき散らしてやるんだ。わしがこの金を穢して、値打ちをなくしてやるんだ!・・・・・・わしに、わしに金を提供するなんて! わしを、この家から出すために買収するなんて! いったいそれは、わしがこの耳で聞いたことだろうか? いったいわしがこんないいようもないほどの生き恥をさらすことになったのか? さあ、これがあなたの千万金ですぞ! ごらんなさい、これ、これ、このとおりです。フォマー・オピースキンはこういうふうにするんですぞ、大佐、今までご存知なかったら、見せて上げましょうわい!」
 こういいながら、フォマーは紙幣の束をすっかり部屋じゅうへまき散らした。ここに注意すべきは、彼が自分で広言きったように、一枚の紙幣も破ったり、唾を吐きかけたりしなかったことである。ただ、少しばかり揉みくたにしたばかりで、それもかなり用心深く手加減をしたのである。ガヴリーラは飛んで行って、それを床から拾い集め、やがて、フォマーが出て行った後で、大事そうに主人に引き渡した。
 フォマーの行為は叔父を棒立ちにさせてしまった。今度は叔父のほうが口をぽかんと開けて、彼の前にじっと無意味な目つきをして立っていた。その間にフォマーはまた肘掛いすに腰をおろし、言語に絶した興奮に耐えかねるという格好で、はあはあ息を切らしていた。
「きみは高尚な人物だ、フォマー!」やっとわれに返って、叔父はこう叫んだ。「きみはありとあらゆる人間の中で、もっとも高尚な人物だ!」
「それは自分で知っていますよ」弱々しい声であったが、筆紙に尽くし難いほどの威厳を示しながら、フォマーは答えた。
「フォマー、どうかわたしをゆるしてくれたまえ! わたしはきみに対して一個の卑劣漢だよ、フォマー!」
「そうです、卑劣漢です」とフォマーは相槌を打った。
「フォマー! わたしはきみの高潔心に驚くというよりも」と叔父は感激に駆られながら、言葉をつづけた。「どうして自分がああまで粗野な、盲目な心持ちになって、あんな条件できみに金を提供する気になれたかと、それが不思議なんだよ! しかし、フォマー、きみもたったひとつだけ、考え違いをしている。わたしはけっしてきみを買収したんでもなければ、きみにこの家を出てもらうために、その代償を払ったのでもない。わたしはただただきみに金を持ってもらいたいと、そう思っただけなんだよ。それはきみに誓っていい! わたしは膝を突いて、きみの前に膝を突いて、ゆるしを乞うてもいいくらいに思っているよ、フォマー。もしお望みなら、今すぐにでも膝を突くよ・・・・・・ただ望みならばだ・・・・・・」「わたしはあなたの膝なんかいりませんわい、大佐!・・・・・・」「しかし、困ったなあ! フォマー! 考えてもみてくれたまえ! わたしは興奮して、夢中になったものだから、つい前後をわすれて・・・・・・どうかいってくれ・・・・・・いったいどうしたら、この侮辱を拭うことができるか、ちゃんと名ざしていってくれたまえ! 教えてくれたまえ、ひと言洩らしてくれたまえ・・・・・・」
「だめです、だめです、大佐! わたしは断言するが、明日にもさっそくこの家の閾で自分の靴の塵を払い落として、永久に去ってしまいます」
 フォマーは肘掛けいすから体を持ち上げにかかった。叔父はぞっとした様子で、また彼をひき止めに、飛んで行った。
「いや、フォマー、きみを行かせやしない、断じて行かせやしない!」と叔父は叫んだ。「靴だの塵だのと、何もそんなことをいうわけはないよ、フォマー! きみを行かせやしない。それでなければ、わたしがきみの後を追って世界の果てまでついて行く。きみがゆるすというまでは、どこまでも離れやしない・・・・・・まったくだよ、フォマー、わたしはそのとおりにするから!」
「あなたをゆるすんですって! あなたに罪があるんですか?」とフォマーはいった。「しかし、そのほかにも、あなたはわたしに対して罪を犯しておられるのをごぞんじですか? あなたがここで、わたしに一片のパンを与えてくださったそのことすら、今となってみると、わたしに対して罪を犯したことになったんですよ。それがおわかりになりますかな? わたしがお宅で今まで頂戴したパンの一きれ一きれを、今たった一瞬間で毒に変えてしまわれた、それがあなたにおわかりですか? あなたはいま、そのパンのことでわたしを非難なさった。もうわたしが食べてしまったパンの一口一口に対して、わたしを責めるような口吻をお洩らしになさった。あなたはたったいまご自分の口で、わたしがこの家に奴隷として、下男として暮らしておったということをーーわたしはあなたのぴかぴか光る靴を磨くぼろ切れにすぎないということを、証明なさったのです! ところが、わたしは根が正直者だから、つい今の今まで、自分はこの家に親友として、兄弟として暮らしておるのだと、思いこんでおりましたぞ! また現にあなたご自身も蛇のように巧みな言葉で、何百ぺんも何千ぺんも、この兄弟としての関係をわたしに誓われたじゃありませんか! なぜあなたはそんな秘密の罠を作ったのです? わたしは馬鹿なものだから、まんまとそれにかかっんたのです。なぜあなたは暗々裡に狼穽を掘って、今その中へわたしを突きおとすような真似をしたのです? なぜ、その前にこの棍棒か何かで一思いに、がんと打ち倒してくれなかったんです? なぜ、最初から雄鷄の頸でもしめるように、わたしの首を捩じ切ってくれなかったんです・・・・・・つまり、早い話が卵を産まない鶏としてですな・・・・・・そう、まったくそのとおりだ! わたしはこの比喩をどこまでも固守してますぞ。これは地方的生活から取材したもので、現代文学の顛末な調子を帯びてはおりますが、あえてこの比喩を固守します。というのは、その中にあなたの非難の無意味さが完全に現れておるからです。わたしがあなたに対して罪があるのは、ちょうどこの仮定された雄鷄が卵を産まぬというそのことによって、軽薄な飼い主の気に入らんかったのと同じような関係ですからな! 大佐、とんでもないことですぞ! いったい親友や兄弟に金で勘定をすまして
よいものですか、ーーしかも、それはなんの勘定でしょう? さあ、ここが肝腎のところですぞ。『さあ! 愛すべき兄弟よ、わたしはきみにたいへん恩になった。きみはぼくの命を救ってくれた。ここにこそぼくのユダの銀貨がある。これをきみにあげるから、わたしの目に触れないところへ行ってくれ!』これじゃあまり幼稚すぎるわい! あなたはわたしに対して、礼を失した行ないをされたんですぞ。わたしはただあなたの幸福を全うさせたいと、地上の楽園的な気持ちをいだいているのに、あなたはわたしが、黄白のみに渇しておるなどと考えて、わたしの心を粉々に打ち砕いてしまわれたのだ!あなたはまるで、悪戯っ子が根っこ遊びでもするように、高潔このうえもないわたしの感情を弄ばれたのです! 大佐、わたしはもうずっとずっと前から、このことをすっかり予想しておりました。だからこそ、わたしは初めからあなたのパンに喉をつまらせておったのです! だからこそ、あなたの羽根蒲団におし潰されそうな気がしたのです。そうです。温めいたわってくれるのではなくて、押し潰しそうだったのです! だからこそ、あなたの砂糖や菓子はわたしにとって甘くなく、胡椒のような味がしたのだ! いや、大佐! どうか一人で呑気にお暮らしなさい。フォマーは袋を背負って、悲しい道をたどらしてもらいましょう。もうそれに決まったのです。大佐!」
「いけない、フォマー、いけない! そんなことはさせない、そんなことをさしてよいものか!」もうすっかりぴしゃんこにされた叔父は、呻くようにこういった。
「そうなんです、大佐、そうなんですよ! 本当にそうします、それが当然な方法なんだから。わたしは明日にもこの家を去ります。あなたはご自分の千万金をまき散らして、わたしのたどって行く道をーーモスクワまでの街道を、すっかり紙幣で敷きつめておしまいなさい。わたしは傲然と、侮蔑の微笑を浮かべながら、あなたの紙幣を踏んで行きましょうわい。大佐、この足があなたの紙幣を踏みにじり、泥濘の中へおしこんでしまうのです。フォマー・オピースキンは、ただ自分の高潔な精神のみで充ち足りる男なのです。わたしはいったことをちゃんと証明して見せました!さらば、大佐!・・・・・・」
こういいながら、フォマーはまた肘掛いすから身を起こそうとした。
「ゆるしてくれ、ゆるしてくれたまえ、フォマー! 忘れてくれたまえ!・・・・・・」と叔父は哀願するような声でくり返した。
「ゆるしてくれですと!なんのためにわたしのゆるしが要るのです? まあ、仮りにわたしがあなたをゆるすとしましょう。わたしはキリスト教徒だから、ゆるさないわけにはいきません。今でもほとんどゆるしておるくらいです。しかしご自分で考えてごらんなさい、ーーもしわたしが今たとえ一分間でも、あなたの家に踏みとどまるとしたら、それは多少とも健全な常識判断と、高潔なる精神に合致するでしょうか? だって、あなたは現にわたしを追い出そうとしたんですからな!」
「合致してるよ、フォマー!うけ合って合致してるよ!」
「合致しておるんですと? しかし、いまわたしたちはお互い同士平等でしょうかな? いったいあなたは分からんのですか、ーーわたしはいわば自分の高潔な精神であなたを粉砕するし、あなたはその卑劣な行為で自分で自分を粉砕なさった。あなたは粉砕された人間であって、わたしは高揚された人間です。それだのに、そもそもどこに平等というものがあります? この平等なしには、親友関係は存立し得んじゃありませんか? わたしがこんなことをいうのは、哀心より悲痛の叫びを発しながら直言するのであって、けっして高みから見おろしながら勝ち誇っていうのじゃありませんぞ。もっとも、あなたはそんなことを考えておられるかもしれませんがな」
「なに、それはわたしのほうこそ、哀心より悲痛の叫びを発してるんだよ、フォマー、まったくのところ・・・・・・」
「しかも、その人がだれかというと」峻厳な調子を感激に変えながら、フォマーは言葉をつづけた。「わたしが夜も寝ないくらいにして、ためを思いつづけたその当人なんですぞ! よく寝られない夜な夜な、わたしは寝床から起きあがって、蝋燭に火をともし、こう独りごちたものです。『いまあの人は、お前を頼りにして、穏やかに眠っておるが、フォマー、お前は眠らずにいて、あの人のために頭を働かすがよい。ことによったら、あの人の幸福のために、またなにか考え出すかもしれんからな』こんなふうに、フォマーは夜も寝ずに考えておったのですぞ、大佐! ところが、それに対する大佐の酬いはこの始末です! しかし、もうたくさんだ、たくさんだ!・・・・・・」
「でも、フォマー、
わたしはその埋め合わせをするよ、また、お前の友情をとり戻すだけのことをして見せるよーーかならず!」
「埋め合わせをするんですと? しかし、その保証はどこにあります? わたしは、キリスト教徒として、あなたをゆるすばかりか、あなたを愛しさえもするつもりです。しかし、人間として、高潔なる人間として、わたしは心ならずも、あなたを軽蔑せずにはおられません。そうするのが義務です。なぜといって、ごらんなさいーーくり返して申しますが、ーーあなたは自分で自分を穢したけれども、わたしはこの世で最も高潔な行ないをしたのですからな。え、いったいあなた方の仲間でこういう行ないのできる人間がありますか? こんな大枚な金額を拒絶するような人が、だれかあるでしょうか? ところが、みんなに軽蔑されている乞食同然のフォマーが、偉大な徳行に対する愛のために、みんごと拒絶したのですぞ! いや、大佐、わたしと肩を並べようと思ったら、あなたはこれからたくさんの功業をたてんけりゃなりません。しかし、あなたはわたしに対して同等な人間らしく、『あなた』という言葉さえ使えないで、まるで下男あつかいに『お前』呼ばわりされるんですからな、どんな功業もたてられそうにないですわい・・・・・・」
「フォマー、しかし、わたしはただ心安だてに、きみという言葉を使っていたんだよ!」と叔父は悲鳴をあげた。「それがきみに不愉快だなどとは、まるで気がつかなかった・・・・・・ああ!もしそれがわかっていたら・・・・・・」
「あなたは」フォマーはつづけた。「あなたはわたしを将軍として『閣下』と呼んでくださいとお願いした時、この些細なつまらない頼みさえ実行ができなかった、というより、実行することを欲しなかったんですからな・・・・・・」
「しかし、フォマー、それはいわば人民として、最高の官位を僣することだからね、フォマー!」
「最高の官位を僣するんですって! あなたは何か書物の中の言葉を暗記して、鸚鵡のようにそればかりくり返しておられる! あなたはおわかりにならんかもしれないけれど、あなたは、わたしを『閣下』と呼ぶのを拒絶して、わたしの要求の原因も知らぬくせに、癲癇病院おくりにしてもいいほどの気まぐれな馬鹿者あつかいにされたが、それはわたしを侮辱し、わたしの名誉を毀損する行為ですぞ! そりゃわたしだってわかっております。わたしはそんな官位とか、地上の光栄だとかいうものを軽蔑しておるのですぞ。もし徳行の光に照らされなかったら、そんなものなどそれ自体なんの価値もありゃしない、ーーこう悟っておるわたしが、無意味に閣下と呼んでもらいたいなどという気を起こしたら、それこそわたしのほうが滑稽に感じられるに相違ありません。徳行を伴わぬ将軍の官等なんぞ、千万金を積んでくれても、受けとりゃせんです。ところが、あなたはわたしを気ちがい扱いになさった! わたしはあなたのためを思えばこそ、わが自尊心を犠牲にしても、あなたやあなたの好きな学者連から気ちがい扱いにされる惧れがあるのを、甘んじて許容したのですぞ。わたしはただあなたの知性を照らし、あなたの徳性を啓発し、あなたに新しい思想の光を浴びせかけるために、将軍の尊称を要求したのです。それというのもほかではない、向後あなたに将軍などというものを、この地上における最高の精神のように考えさせまいと思えばこそです。高潔な精神を伴わぬ官等などは無に等しい。したがって、すぐにそばに徳行に輝く人間が控えておるのに、将軍の来訪をありがたがって騒ぐ必要はないということを、あなたに証明したかったのですわい! ところが、あなたはいつもわたしに大佐の官等を自慢しておられるものだから、わたしにむかって『閣下』というのが容易ならぬことに思える。原因はつまりここにあるのです! ここにこそ原因を求めるべきで、最高の官位を するとかなんとか、そんなことが問題じゃありませんぞ! いっさいの原因は、あなたが大佐であって、わたしがただのフォマーにすぎんということです・・・・・・」
「違う、フォマー、ちがうよ! 誓っていうが、それは考え違いだ。きみは学者だ。ただのフォマーじゃない・・・・・・わたしは尊敬しているよ・・・・・・」
「尊敬しているんですと!よろしい!・・・・・・もし尊敬しておられるとならば、一つ聞かしてもらいましょう。わたしは将軍の官等に相当する人間か、或いは違いますか、あなたのご意見は? 即刻きっぱりした返事を聞かせてください。相当しますか、しませんか? わたしはあなたの頭脳を見たいです、その発達の程度を見たいです」
「そりゃ正直な点からいっても、無欲恬淡なことからいっても、頭脳からいっても、この上もない高潔な精神からいっても、十分に相当するよ!」叔父は傲然とこういいきった。「相当するのなら、なぜあなたはわたしに『閣下』といわないんです?」
「フォマー、なんならいってもいいがね
・・・・・・」
「いや、わたしは要求します! わたしは今こそ要求しますぞ、大佐、どこまでも固執しますぞ! あなたはそれがいかにもつらそうに見えるから、なおのこと要求します。この犠牲はあなたにとって功業の第一歩になるでしょう。なにしろ、わたしと肩を並べるためには、これから、いろいろの功業をたてんけりゃならんのですからな、ーーそれをわすれちゃいけませんぞ。あなたは自己を克服せんけりゃなりません。そうしたら、わたしも初めてあなたの誠実を信じますわい・・・・・・」
「明日にもさっそく『閣下』というよ、フォマー!」
「いや、明日じゃいけません、大佐。明日のことはいうまでもないはなしで、あなたが今この場で、わたしに『閣下』といってくださるのを要求するんです」
「よろしい、フォマー、わたしはいつでもかまわないが・・・・・・しかし、それはどういうわけなんだね、フォマー、いますぐでなくちゃならないなんて・・・・・・」
「なぜ、今じゃいけないんです? それとも恥ずかしいんですか? そんなことじゃあ、あなたが恥ずかしいなぞと思っておるのじゃわたしは気持ちが悪いですからな」
「いや、よろしい、フォマー、わたしにはその用意ができている・・・・・・わたしはむしろ誇りとしているくらいだ・・・・・・ただどうしたものだろうね、フォマー? なんのきっかけもなしに、いきなり、『こんにちは、閣下!』なんて、そんなことはいえないじゃないか・・・・・・」
「いや、『こんにちは、閣下』じゃない。それはもう侮辱的な調子ですね。それじゃ冗談か道化芝居じみて来る。わたしはそんな洒落を許すわけにいかんです。反省しなさい、大佐、今すぐ反省しなさい! その調子を棄てんけりゃなりません!」
「いったいきみは、冗談をいってるんじゃないだろうね、フォマー?」
「エゴール・イリッチ、第一にわたしは
『きみ』じゃなくって、『あなた』です、ーーこれを忘れないでください。そしてフォマーじゃなくて、フォマー・フォミッチです」
「いや、フォマー・フォミッチ、まったくのところ、わたしは嬉しいよ! 心底から嬉しく思うよ・・・・・・ただなんといったらいいのだろう?」
「あなたは言葉の終わりに『閣下』とつけるのに困っておいでですな、ーーそれはもっともなことです。それならそうと、早く率直にいってくださればよかったものを! それは恕し得べきことですよ。ことに著述家でない人が、上品なことばづかいをしようと思う場合は、なおさらですな。じゃ、あなたは著述家ではないのだから、わたしが力をかして上げましょう。さあ、わたしについて、いってごらんなさい。『閣下』・・・・・・」
「じゃ、閣下」
「いや、『じゃ閣下』ではいけない、ただ『閣下』です! だから、大佐、わたしはその調子を棄てんけりゃならないといっておるんですよ! それから、こういうことを申し出ても、侮辱を感じはなさらんだろうと思いますが、あなたはそれをいいながら軽く頭を下げ、同時に上体を前へかがめながら、相手に対する尊敬の情と、命に応じてどこまでも飛んで行く、という心がまえをを示してもらいたいものですな。わたしは自分でも将軍たちと交際したことがあるので、その辺はすっかり知り抜いておりますよ・・・・・・さあ、『閣下』・・・・・・」
「閣下・・・・・・」
「『わたしは最初、閣下の精神を理解しなかったことについて、いまようやくご寛恕を乞う機会が到来したのを、ことばにつくし難いほど喜ばしく感じまする。向後は一般の福祉のために、自己の薄弱な意志にいささかも仮借をくわえないということを、あえてお誓い申し上げます・・・・・・』まあ、これくらいでたくさんでしょうかな!」
 かわいそうに叔父はこの寝言をひと言ひと言、一句一句くり返さなければならなかったのだ! わたしは外に立ったまま、自分が悪いことでもしたように真っ赤になった。わたしは憤慨のあまり息がつまりそうだった。
「さて」と拷問官は言葉をつづけた。「あなたはいま急に、胸が軽くなったような気がしませんか? 何か天使でも心の中へ舞いくだったような感じがしませんかな?・・・・・・その天使があなたの体内に 宿っているのを感じませんか? 返事をなさい!」
「ああ、フォマー、なんだか本当に気持ちが軽くてなったようだよ」と叔父は答えた。
「あなたは自己を克服した後で、いわば心臓が聖油の中にでも浸ったような気がするでしょうな?」
「そうだよ、フォマー、本当に油の上でもすべるように、万事すらすらと
・・・・・・」
「油の上でもすべるようにですと?ふむ!・・・・・・もっとも、わたしはその油のことをいったのじゃない・・・・・・が、まあ、どちらでもよろしい! 大佐、義務を履行するということは、そうしたものなんですぞ! これからもせいぜい自己を克服なさい。あなたは自尊心が強い、底の知れないほど強いですよ!」
「なるほど自尊心が強い、今こそわかったよ、フォマー!」叔父は溜め息つきつきこう答えた。
「あなたは利己主義者、陰気くさい利己主義者ですぞ・・・・・・」
「わたしが利己主義者だということは間違いないよ、フォマー、それはまったくだから、自分でもわかる。きみという人を知ってから以来、このことを悟ったよ」
「わたしはいま父親として、優しい母親としていいますが・・・・・・あなたはすべての人を身辺から退けてしまって、優しい仔牛は二匹の牝牛の乳房を吸うということを、忘れておいでになるのですぞ」
「それもそのとおりだよ、フォマー!」
「あなたはがさつです、あなたは他人の心へ乱暴にとび込んで行く人です。あなたは利己的な態度で人の注意を自分に向けさせようとされるから、だれだって紳士といわれるような人たちは、尻に帆をあげてあなたのそばから逃げ出したくなるのですよ!」
 叔父はもう一度深い溜め息をついた。
「他人にもっと優しく、注意ぶかく、愛情をもって向かうようになさい。人のために自分を忘れるようにしたら、その時は人もあなたのことを思い起こしてくれるでしょう。自分も生活し、人にも生活させるーーこれがわたしの原則ですわい! 堪え忍べ、働け、祈れ、希望を持て、ーーこれこそわたしが全世界の人類に一気に吹き込もうと思っておる真理!この真理を守っていかれれば、その時こそわたしはまず第一番に自分の哀心をあなたに開いて見せて、あなたの胸に顔を埋めて泣きもしましょう・・・・・・もしその必要があればですな・・・・・・ところが、一にもおれ、二にもおれ、万事につけておれ様の一点ばりですからな! あなたのおれ様なんかそのうちには飽き飽きしてしまいますわい、失礼な申し分ながら」
「ほんとに話上手なお人だ!」とガヴリーラは感服しきった調子で言った。
「それはほんとだよ、フォマー、それはわたしもよく感じているよ」と叔父はすっかり感動して相槌を打った。「しかし何もわたしが悪いというわけじゃないよ、フォマー。わたしはもともとそんなふうに教育された人間で、兵隊どもといっしょに暮らしてきたんだからな。誓っていうがね、フォマー、わたしだって、感情は持っていたんだよ。連隊と別れる時に、わたしの大隊にいた軽騎兵たちは、ただもうおいおい泣いたものだよ、わたしのような人間はまたと二人ないといってね・・・・・・そのときわたしも考えたものさ、おれだってまだ全然しようのない人間でもないらしい、ってな」
「また利己主義が顔を覗けましたぞ! またあなたの自尊心の尻尾を押えましたぞ! あなたは軽騎兵どもの涙を吹聴しながら、ついでにわたしに非難の矢を向けたんです。お前はだれの涙も自慢することができないだろう、というわけで。それくらいのものはないわけでもないんだが、ーー、けっしてないわけではないんだが」
「あれはつい口がすべったんだよ、フォマー、つい我慢しきれなくって、昔の楽しかった時代を思い出したのだ」
「楽しい時代は天から降って来るものではなくて、われわれが自分でつくるものですぞ。それはわれわれのこころにあるのです、エゴール・イリッチ。なぜわたしはいつも幸福なのか、それをご存知ですか?いろいろな苦しみがあるにもかかわらず、常に満足して、精神の平静を保ち、だれにもうるさがられずにおるのは、どういうわけだと思います? もっとも、馬鹿者でおっちょこちょいの学者どもは別で、この連中はわたしも容赦せんし、また容赦しようとも思わんです。わたしは馬鹿が大きらいだ! いったいあの学者とは何者です? 『科学の人』だって! あんなやつの科学なんか、大風呂敷のまやかしもので、学問でもなんでもありゃしません。え、いったいあいつはさっきなんといいました? あいつをここへよこしなさい! 学者どもをみんなここへよこしなさい! わたしはなんでも反駁してみせますわい! 高潔なる精神なぞということは、改めていうまでもこともないくらいだ・・・・・・」
「もちろんだよ、フォマー、もちろんだよ。だれもそれを疑う者はありゃしないよ」
「たとえば先ほども、わたしは卓越した頭脳と才能、驚くべき博識、人間心理の知識、現代文学に関する造詣を披露して、才能ある人間はつまらんコマーリンスキイの話から、高尚な会話のテーマを展開することができるという事実を、いとも鮮やかに示したではありませんか。ところが、どうです? 彼らのうちだれか一人でも、わたしの価値を実質どおりに評価してくれましたか? どうして! みんな顔をそむけてしまった! あいつはもうあなたに向かって、わたしがなんにも知らぬ人間だといいふらしたに相違ない。ところが、あに図らんや、やつの前に坐っていたのはマキャヴェリか、メルカダンテ(サヴェリオ、十九世紀の作曲家)そこのけの大人物だったかもしれないのだが、ただ貧乏の悲しさに、無名の境涯に甘んじておるにすぎんです・・・・・・いや、あれはそのままですますわけにいかん! それから、またコローフキンとかいう人間のうわさが聞こえたが、それはいったいどんなしろ物です?」
「それはね、フォマー、賢い人間なんだよ、科学の人なんだよ・・・・・・わたしはその人を待ちかねているんだ。これこそきっと間違いなく立派な人間だよ、フォマー!」
「ふむ! 怪しいものですな。たぶん本をしこたま荷鞍につけた現代の驢馬でしょうて。そういう手合いには魂なんかありゃしない、心というものがないんですよ、大佐! 徳のない学問なんか何になります?」
「違うよ、フォマー、違うよ!その人が家庭の幸福を論じた話しぶりを、きみに聞かしたいくらいだったよ! それこそ自然に心が生きて、踊り出すくらいだからね、フォマー!」
「ふむ、どんなものか見てやろう。そのコローフキンも試験してやるのだ。しかしもうたくさんです」とフォマーは肘掛けいすから身を起こしながら言葉を結んだ。「しかし、まだすっかりあなたをゆるすわけにはいきませんよ、大佐、なにぶん血のにじむような侮辱を加えられたんですからな。が、すこし祈祷でもしたら、神様が辱められた心に平安を送ってくださるかもしれませんて。このことを明日はもう一ど話すとして、今は失礼さしていただきます。わたしは疲れて、よろよろして来ましたよ・・・・・・」
「ああ、フォマー」と叔父はあたふたし始めた。「きみは本当に疲れたようだ! ああ、そうだ、何か元気のつくようなものでも食べてみたら? わたしがすぐにいいつけよう」
「食べるもの! はははは! 食べるものですと!」フォマーは嘲るような高笑いで答えた。「まず人に毒を飲ませておいて、それから何か食べたくないかとたずねるとは? 魂の手傷を茸の煮付けや、砂糖漬の林檎なんぞで癒そうというのですか! あなたはなんという憐れむべき唯物主義者でしょう、大佐!」
「いや、フォマー、わたしはまったくのところ、心底から・・・・・・」
「まあ、よろしい。その話はたくさんです。わたしはあちらへ行きますが、あなたはこれからさっそくお母様のところへ出かけて、膝をついて涙を流しながら、ゆるしを哀願なさい、ーーそれはあなたの義務ですぞ」
「ああ、フォマー、わたしは始終そのことばかり思っていたんだよ。今もきみと話をしながら、やはりそのことを考えていたようなわけでね。わたしは夜が明けるまででも、お母さんの前に膝をついてる覚悟だよ。しかし、フォマー、考えてもみてくれたまえ、いったいお母さんはわたしになんということを要求なさるんだろう。あれは不公平じゃないか、残酷じゃないか、フォマー! どうか本当に寛大な気持ちになって、わたしをすっかり幸福にしてくれたまえ、よく考えて解決してくれたら、その時は・・・・・・その時は・・・・・・誓って!」
「いや、エゴール・イリッチ、それはわたしの知ったことではないです」とフォマーは答えた。「わたしがその話に少しも立ち入らないということは、あなたもご存知のはずじゃありませんか。よしんば、仮りにあなたが、わたしをこの事件の原因のように思いこんでおられるにせよ、わたしは誓ってもうしますが、そもそも初めから局外に立つことにきめておるのです。これはただ母堂の意志一つであって、しかもご母堂はむろん、あなたのためを思っておっしゃるのですぞ・・・・・・さあ、早くお行きなさい、とんで行って恭順の意を示し、それによって、事態を収拾することが肝要です・・・・・・こういう状態で日を暮してはいけない!わたしは・・・・・・わたしは一晩じゅうあなたのために祈っておりましょうわい。わたしはもう大分まえから、眠りというものがどんなものか、覚えがないくらいですぞ、エゴール・イリッチ。では、さようなら! 爺さん、お前もゆるしてやるよ」彼はガヴリーラのほうへふり向きながら、こういい足した。「お前の振舞いが正気でなかったということは、わたしにもちゃんとわかっておる。またわたしが何かお前の気になりさわるようなことがあったら、これもゆるしてもらいたい・・・・・・さようなら、皆さんご機嫌様。どうか皆さんに神様の祝福がありますよう!・・・・・・」
 フォマーは出て行った。わたしはすぐ部屋の中へとび込んだ。
「お前は立聞きしていたんだね?」と叔父は叫んだ。
「そうです、叔父さん、立聞きしました! よくもあなたは、よくもあんなやつに、『閣下』などといえましたね!・・・・・・」
「どうも仕方がないじゃないか、セルゲイ。わたしはむしろ誇りとしているくらいだよ。高尚な功業をたてるためには、そんなことなんかなんでもありゃしない。だが、なんという高潔で、無私無欲な人物だろう!セルゲイ、ーーお前も聞いてたろう・・・・・・どうしてわたしはあんな金を提供するなんてことができたんだろう。われながら気が知れない!ねえ、おまえ! わたしはあんまり激していたものだから、つい夢中になってしまったんだ。あの人を理解しなかったんだ。わたしはあの人を疑って、あの人を悪く思っていたんだからな・・・・・・とんでもないことだ! あの人がわたしの敵になるわけがない、ーー今こそはっきりわかった・・・・・・お前も覚えているだろう、ーーあの人が金を拒絶したとき、じつに高潔な表情をしていたじゃないか!」
「よろしい、叔父さん、いくらでも腹に足りるだけ自慢なさい。ぼくはもう帰ります。このうえ辛抱はしきれない! ただ最後に一つ伺いますが、いったいあなたはなにをぼくに要求なさるんです? なんのためにぼくを呼び寄せたんです。何を期待していらっしゃるんです? もう何もかもおしまいになったとすれば、ぼくはもうあなたに用はないんだから、これでお暇いとまします。こんな場面を我慢して見ているわけにはいかない!今日にもすぐに立ってしまいます」
「セリョージャ・・・・・・」とおじはいつものくせであわて出した。
「ただほんの一、二分でいいから待っておくれ。わたしはこれからお母さんのところへ行って・・・・・大事な、重大な、偉大な仕事を片づけて来なくちゃならないんだ!・・・・・・その間のお前は自分の部屋へ帰っててくれ。ガヴリーラにお前を夏の離れへ案内させるから。お前、夏の離れって知ってるかい? 庭のまん中ににある建物だよ。もうちゃんと指図をしておいたから、お前のカバンもそちらへ運んだはずだ。わたしはお母さんのところへ行って、是が非でも詫びをかなえてもらうつもりだ。思いきって、あることを決行するんだ、ーー今こそわたしもどうしたらいいかわかった、ーーその後でさっそくお前のところへ行って、何もかも洗いざらし話してしまうよ。胸中を一さい吐露してしまうよ。そうすれば・・・・・・やがていつかわたしたちにも幸福な時がやって来るよ! 一、二分、たった一、二分だけ待ってくれ、セルゲイ!」
 彼はわたしの手を握って、あたふたと出て行った。どうも仕方がないので、わたしはまたガヴリーラといっしょに、自分の部屋をさして出かけた。」⇄(感想文:最後まで、よんでしまったのですが、フォマーの形式的言葉に、人の良い叔父が、叔父自身の深さで、フォマーを、理解してしまうために、完全に、『〜言葉〜』に、騙されるというか、叔父も認識しているんだけれども、弱者と思って、フォマーを、過大評価してしまったり、ファマーの発する形式的言葉に騙されようとするのか、騙されてしまうのか、【わたし】【勿論作家ドストエフスキー氏】の如くに、イライラしますね。このような言葉には、読者私も、手も足もがんじがらめになりそうですね。コローフキンが、多分、良い😃

[316] 1
名前:ほのか
2021年08月10日 (火) 04時11分
コローフキンは、人間キリスト 後のほうで、ボロボロでよっばらったあというコローフキンという人物が出てくるが、フォマーという『キリスト教』を体現した人物に対して、『人間キリスト』を、体現した人物としてコローフキンが、登場したのだと、ふと、思ってしまいました。強制的な会話のフォマーに対して、小説のp118では、「その人が家庭の幸福を論じた話しぶりを、きみに聞かしたいくらいだったよ!それこそ自然に心が生きて、踊り出すくらいだからね、フォマー」の、叔父がフォマーに、悟す会話に、表出されていると思ってしまいました。 

[317] 2
名前:ほのか
2021年08月10日 (火) 04時12分
【キリスト教という体現されたフォマー  対 人間キリストという体現されたコローフキン】

[318] 3
名前:ほのか
2021年08月10日 (火) 04時15分
【ドストエフスキーの《秘密の罠》⇄『スチェパンコヴォ村とその住人』】からの、発想ですが、読者私は、ドストエフスキー作家の小説には、《作家自身の思想や心情の秘密が、検閲に引っかからないようにという細心の作家の注意力で、色々な場所に、散りばめられて、いるのではないかと、《秘密の罠》という語句でわたしの心は、ワーップしてしまいましたね😃自然発生的にです‼️これから、評論集で、何か『スチェパンコヴォ村とその住人』の記載があれば、アップしたいです♪あるかなッ⁉️

[320] 4
名前:ほのか
2021年08月10日 (火) 04時18分
「巧言令色少なし仁」⇄宗教に勧誘する時の方法⁉️
 いろんなところで、いろんな機会で、「巧言令色」で、信者を集めてるのかっと‼️ふと、思ってしまいました。あるいは、日常生活に存する甘い言葉も要注意でありますね。自身をうっとりさせる言葉とか、自身を嬉しくさせる言葉も、日常生活では、要注意でありますね。とんだところへ、意識が飛んでしまって、読者私は心が忙しくて大変でありますね。〜  感想文には向かないかもっと、ふと、思ってしまいました。読者私の止まらない記述ですが。それこそ、太極的ではなくて、自分用の感想文なのかなぁっと〜。控えればいいのに‼️ふむっ‼️

 話は戻り、例えば、叔父がフォマーと会話をしたとしたら、「正しそうな事が、8割あって、2割の重大な間違い」があるのですね。

 その2割は、フォマーの会話の中にある色々な圧力っぽいものですね。普通の注意が8割で、8割以上の注意しなければならない2割の事象ですね。

 フォマーの会話は、圧力的で。しかも、一見正しそう。一方的会話。相手の事を考慮しないのでへ理屈は正しいっぽい。
 
 他者を思い遣る事=生きている事‼️という心情を持つ優しい人物叔父には、うってつけの効き目のあるフォマーの一方的会話ですね。
 
 叔父は、フォマーという人間のの環境とか、フォマーの会話のなんかおかしさ、それらの背景を重々に理解しならも、溜息が自然とこぼれるけれども、しかし、結局、フォマーに、「イエスマン」の態度を取らざるを得ないを選択をしますね。

 事態収集のためには、この方法しかなかったのですね。『功業』という、フォマーの語った『功業』と結びつけて、『功業』をしたと自身に言い聞かせ、「わたし」にも話していた優しい叔父‼️は、『心臓の油』の様に、ワザとというか。
 フォマーの功業と、優しい叔父の功業は、意味が違ってます。

 前者は辞書上の功業。自分自身を高めるための行動をするという功業ですね。
 後者は、相手、つまり、フォマーを高めるための、こちらがとる行動という功業ですね。溜息をつきながらも、相手と意見がっても、相手の意見が間違ってると思っても、溜め息をつきながらでも相手の意向を飲むという事が相手を傷付けないかなっという事から発した「イエスマン」の行動という功業ですね。自分自身叔父は我慢、溜息だけ。相手フォマーは満足となる功業。

 本来、叔父にとっての優先順位は、フォマーにより、傷つけられたナスチャを救う事。

 小説の文章の中に、「どうも仕方がないじゃないか、セルゲイ。わたしはむしろ誇りとしているくらいだよ。高尚な功業をたてるためには、そんなことなんかなんでもありゃしない。」と、言ってますね。

 〈功業〉は、叔父にとっては、自分の進歩ではなくて、相手の考え方にもちょっとおかしいが一理あるから、「イエスマン」になってしまった叔父自身受動的功業、間接的功業の慰めでもありますね‼️

 優しい叔父がフォマーの会話から逃れ、第一義的なナスチャを救うための行動に向かうためには、「イエスマン」にならざるを得なかったのですね。
「そんなことなんかなんでもありゃしない」と発言した叔父は『閣下』と言ったり、フォマーを正しいと溜め息をつきつつも、言いました。

 叔父の行動は、ある意味弱者フォマーを救うための唯一の妥協というか、同意というか、方法だったのですね。功業となったのですね。相手のための功業。まっ‼️このような複雑な駆け引きは、叔父の受動的な消極的な功業と名付けられない事もありませんね。

《注意》読み直してみると、『功業』は、やはり、積極的な功業であるなぁーと、意見を変えましたね。フォマーとの会話を早く切り上げるための「イエスマン」でありましたが、〈ナスチャを救うための、そのために、行動を早く起こすために、フォマーとな会話を「イエスマン」によって、早く切り上げる事が、ナスチャを救うという行動である。即ち、功業になるという事ですね。。やはり。←注意完」


 話の発端は、フォマー追い出す原因は、フォマーの〈ナスチャへの暴言〉であったのでしたね。

 ナスチャを救うという事が、第一義的に最優先でしたね。

「ただほんの一、二分でいいから待っておくれ。わたしはこれからお母さんのところへ行って・・・・・大事な、重大な、偉大な仕事を片づけて来なくちゃならないんだ!」

 〜こんなに飛んで、読者私は、夢中ですね。ドストエフスキー文学に‼️読者私は、小説を細かく検証し過ぎるので、間違ってるかも知れないし、自分勝手な自分のための読書にしてしまうので、読書は向かないのかもと、ふと、思ってしまいました。感想文も偏った自己流となるでしょうね。

[325] 訳者は、工藤精一郎よりも、米川正夫訳が、ドストエフスキーらしさ‼️
名前:ほのか
2021年08月13日 (金) 21時51分
卑劣な男⇄卑劣漢
がさつでめくら⇄粗野で盲目
エナメル靴をみがく下男にすぎなかった⇄ぼろ切れ
ずるがしこい言葉⇄巧みな言葉

〜などです。左側が工藤訳 右側が米川訳

米川訳で読了致しまして、『スチェパンコチヴォ村とその住人』は、最高でした。

[311]お知らせ・2、近年注目しているドストエフスキーの言葉
名前:Seigo
2021年08月08日 (日) 19時57分
ページ主のSeigoです。

ほのかさんをはじめ、皆さん、来訪や投稿、ありがとうございます。
ほのかさんが最近読んでコメントしてくれている『スチェパンチコヴォ村とその住人』(登場人物のフォマー・フォーミッチ・オピースキンとロスターネフのキャラが、なんとも面白い)は、今後またあらためて読み直したいと自分も思っているドストエフスキーの長編小説です。

諸事情により先月の中旬からページの更新が出来ていませんが、先日から、常時、ネットにアクセス出来るようになったので、今後、引き続いて、ぼちぼち投稿を行います。(今日、先ほど、ページ内の音楽ボードにも、曲を投稿しました。)

なお、ページの各コーナーの更新の再開は、今月の下旬ぐらいになる予定です。


   ※  ※  ※  


「人の一生は――贈物です、人生は――幸福です。そのそれぞれの瞬間が幸福になりうるものなのです。」
( 書簡より。)

上のドストエフスキーの言葉は、近年そして最近、自分が注目しているドストエフスキーの言葉。2年前にコーナー「ドストエフスキーの名言」に新たに加えた言葉。自身の人生体験に基づいたドストエフスキーの実感のこもった言葉だと思う。日々ありがたく受けているプレゼントや恩恵に、気付き、日々刻々、ありがたいという思い、感謝の念を持つ、ということでしょうか。『白痴』のムイシュキン公爵がはっきりと説明せずに述べた自己中心的自閉的利己的な意識過剰の生き方に代わる「賢い生活」(ページ内の「H
<「人生」「生きること」について>」
内の言葉20)の内実は、この言葉がヒントになるのではないかと自分は考えている。この言葉にあやかりたいと思う今日この頃だ。)


[296]お知らせ
名前:Seigo
2021年07月25日 (日) 15時53分
ページ主のSeigoです。
こちらのボードになかなか書き込みをしていなくて、恐縮です。

さて、
一身上の都合でページ内の各コーナーの更新や投稿が、先週木曜日から今後もしばらく(来月まで?)できませんので、了承下さい。一方、今日のように、当ボードには時々、書き込みをするかもしれません。
その他のコーナーに宇部商のコーナーがありますが、県大会で、昨日、準々決勝で敗退したことは残念でした。



ほのかさんをはじめ、皆さん、来訪や投稿、ありがとうございます。

それでは、今日は、ここまでです。

[299] 夏季休暇ですね♫
名前:ほのか
2021年07月27日 (火) 04時37分
夏季休暇ですね♫



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