|
名前:ほのか
2021年12月06日 (月) 15時30分
p28
引用開始 「われわれのサークルで一番古いのは、リプーチンであった。これはもう中年の県庁役人であったが、大の自由主義者で、町でも無神論者で通っていた。二度目の細君は若い綺麗な女で、彼はこの女の持参金に目をつけてもらったのである。そのほか、彼は三人のだいぶ大きな娘を持っていた。家族の者は彼の前にセンぶくしてしまって、まるで押籠めも同様な暮らしをしていた。彼は恐ろしいシマツ屋で、ために俸給で小さな家も買い込めば、ちょっとした財産もこしらえていた。落ちつきのない男であるうえに、官位もごく低いところなので、町でもあまり人に尊敬させられず、上流ではてんで相手にされなかった。そのうえ、彼はあまねく知れ渡った中傷家で、一再ならずひどい目にあったことがある。なんでも一度はある将校、二度めはれっきとした一家の主人であるさる地主にやられたのである。しかし、わたしたちは彼の鋭い機知と、好奇心の強い性質と、一種特別な毒々しい快活な態度が好きだった。ヴァルヴァーラ夫人は彼を毛嫌いしていたにもかかわらず、彼はいつも巧みに夫人に取り入るのであった。
|