[13772] 題名:顕謗法抄
名前:FT
◇S3OiZExQd2
MAIL
投稿日:
2025/09/04(木) 19:50
p027.net182021176.tokai.or.jp (182.21.176.27)
「第一に八大地獄の因果を明し、第二に無間地獄の因果の軽重を明し、第三に問答料簡を明し、第四に行者弘教の用心を明す。
第一に八大地獄の因果を明さば、
第一に等活地獄とは此の閻浮提の地の下・一千由旬にあり此の地獄は縱広斉等にして一万由旬なり、此の中の罪人は、たがいに害心をいだく若たまたま相見れば犬と猨とのあえるがごとし、各鉄の爪をもて互につかみさく血肉既に尽きぬれば唯骨のみあり、或は獄卒手に鉄杖を取つて頭より足にいたるまで皆打ちくだく身体くだけて沙のごとし、或は利刀をもつて分分に肉をさく然れども又よみがへり・よみがへりするなり・此の地獄の寿命は人間の昼夜五十年をもつて第一・四天王の一日一夜として四天王の天人の寿命五百歳なり、四天王の五百歳を此れ等活地獄の一日一夜として其の寿命五百歳なり、此の地獄の業因をいはば・ものの命をたつもの此の地獄に墜つ螻蛾蚊蝱等の小虫を殺せる者も懺悔なければ必ず此の地獄に墜つべし、譬へばはりなれども水の上にをけば沈まざることなきが如し、又懺悔すれども懺悔の後に重ねて此の罪を作れば後の懺悔に此の罪きえがたし、譬へばぬすみをして獄に入りぬるものの・しばらく経て後に御免を蒙て獄を出ずれども又重ねて盗をして獄に入りぬれば出ゆるされがたきが如し、されば当世の日本国の人は上一人より下万民に至まで此の地獄をまぬがるる人は一人もありがたかるべし、何に持戒のをぼへを・とれる持律の僧たりとも蟻虱なんどを殺さず蚊蝱をあやまたざるべきか、況や其外山野の鳥鹿・魚鱗を日日に殺すものをや、何に況や牛馬人等を殺す者をや。」
(通解)
第一段として八大地獄の因果を明かし、第二段として無間地獄の因果の軽重を明かし、第三段として問答形式で料簡を明かし、第四段として行者の弘経の心構えを明かす。 第一段として八大地獄の因果を明かす。 第一に等活地獄とは。 この世界の地の下、一千由旬にある。この地獄は縦横の広さが等しく一万由旬ある。この中の罪人はたがいに敵愾心をいだく。もし、偶然出会ったなら犬と猿が出会ったように、それぞれ鉄の爪をもって互いにつかみあい引き裂きあう。血肉がなくなればただ骨のみとなる。あるいは獄卒が手に鉄杖を取って頭より足にいたるまで皆打ちくだく。身体はくだけて砂のようになる。または鋭い刀をもって細かく肉を裂く。しかし再び何度もよみがえる。 この地獄の寿命は人間の昼夜五十年をもって、[六欲天の]第一・四王天の一日一夜とする。四王天の天人の寿命は五百年である。その四王天の五百年を等活地獄の一日一夜とした五百年である。 この地獄の業因はというと、生き物の命を断つ者がこの地獄に堕ちる。螻ケラ・蟻アリ・蚊・アブ等の小虫を殺す者も懺悔しなければ必ずこの地獄に堕ちるのである。たとえば、針などでも水の上に置けば沈むようなものである。また、懺悔しても懺悔の後に重ねてこの罪を作れば、後の懺悔ではこの罪は消え難い。たとえば盗みをして牢獄に入れられたが、しばらくして後に許されて牢獄を出たけれども、また重ねて盗みをして牢獄に入れられたならば、今度は出ることが許されないようなものである。したがって今の時代の日本国の人は上一人より下万民に至るまでこの地獄をまぬがれる人は一人もいないであろう。いかに持戒の覚えのある持律の僧であっても、蟻やシラミなどを殺さず、蚊やアブをあやめないことはない。ましてその他の山野の鳥や鹿・江や海の魚を毎日殺すものや、それにもまして牛や馬や人を殺すものがこの地獄をまぬがれるはずがない。