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これらの演出は中国国民に対する秋波として受け取られた。この儀式を観覧し
ていた、「中国人インバウンドが口々に、『やはりここ（沖縄）は俺たちの領
土だった』と発言していた」。
中国は現在、「偉大な漢民族の復興」を主眼に、力による海洋進出を実行して
いる。
同時にこの朝貢の史実をもって沖縄を属領と見なしているのだ。
そればかりか尖閣諸島（沖縄県石垣市）を核心的利益と主張し、「武力の発動
も厭いとわない」と国際社会に公言している。
沖縄県民には知られていないが、２０１８年秋、中国国営放送はこのイベント
を中国全土に放映し、「琉球沖縄の廃藩置県の際は救援を求められたが、力が
なく救援できなかった。今なら可能だ」とナレーションを入れていた。
さて、古社寺保存法に基づいて「沖縄神社」となり、１９２９年に国宝に指定
された第４代首里城の祭神は源為朝とその息子・舜天、さらに数代の琉球王で
あった。
為朝は平安末期の武将である。身長２メートル超の巨漢なうえ気性が激しく、
また剛弓の使い手で剛勇無双を謳われた。
生まれつき破天荒な為朝をもてあました父の為義は、為朝が13歳のときに九州
へ追放したが、為朝は配下を集めて軍団を編成。その３年後、16歳で九州を平
定し鎮西八郎と名乗った。
鎮西八郎は保元の乱で崇徳上皇方に参加し（総大将は父為義）、強弓と特製の
太矢で大奮戦するものの天皇方に敗れ、伊豆大島へ流罪となった。
そこでも国司に従わなかった八郎は大暴れ、伊豆諸島を支配下においた。その
結果、追討され、自決したとされる（１１７７年）。
その為朝には息子がいた。密かに琉球へ渡航して本島北部の運天港に上陸、南
部へ進軍し当地の豪族の娘と結ばれて男子をもうけた。
それが初代琉球王・舜天であるというのだ。
為朝は幼少の舜天と妻を遺していったん琉球を離れたが、これが永遠の別れと
なった。岡山へ渡った為朝は、金剛福寺の僧をたよって仏門に入り当地で亡く
なったとされる。
墓は岡山県井原市門田町金剛福寺にある。為朝については、日華事変に於ける
各県出身兵士の奮戦を記した『軍人わしが国さ』（伊藤金次郎著１９３９年）
上巻に、「（沖縄出身兵士は）大いに為朝伝説以来の武勇を発揮した」という
記述があることからも、沖縄で信仰されていたことがわかる。
かつて沖縄では、旧家の長男の名前に「朝」の字を付けたほどだ。源為朝にあ
やかろうとする県民の願望の表れであった。
１９２２年、運天港近くの高台に東郷平八郎元帥揮毫の「源為朝公上陸之趾」
石碑が建立された。
ところが沖縄戦と27年間にわたる米軍統治で情勢は一変する。
戦後、為朝を主とする祭神は首里城から約４キロ離れた小屋に仮安置されてお
り、実質的には放置状態にある。