[38019] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-21『陰謀』 |
- 健 - 2018年02月07日 (水) 19時52分
ライルは以前と同じく、有紗に加えて優衣と涼子も離宮へ連れて行った。今まで彼女達は軍艦の中にいた……本国で普通に基地に駐屯させれば何を言われるか分からない。ならば、ここの方が幾分か安全だ。
「ええ…分かりました。」
母のシェールも流石にもう慣れたか、諦めたか特に文句は言わなかった。母にしては珍しい…それとも、少し分かってくれたのか?そんな希望を持ちながら、ライルは部下達とも連絡を取る。そして……
「そうですか、やはりE.U.…しかもロンドン地下にあの天領と同じものが。」
軍学校を出て間もなく、自分を殴る形で叱った彼に連絡を取ったところ、やはりこれまでのエリアだけでなく、E.U.や中華連邦領内にも同じものが多数確認されているという。これで確定だ……あの『神を殺す契約』とやらに皇帝は絡んでいる。度々玉座を空けているという噂もそれが絡んでいるのかもしれない。
ブリタニア宮、玉座の間………ブリタニア皇帝シャルルと20代と思しき若い男が謁見していた。ワインレッドのマントを羽織り、騎士の正装をしているからには高位な騎士である事が伺える。しかし、この男…これでも30代後半なのである。あまりに若々しい容姿とその振る舞いから、若い貴族令嬢の人気は高く、貴婦人達の受けも良い。
レイシェフ・ラウ・ヴァリエール……かつて、『ナイトオブラウンズ』の一席『ナイトオブスリー』の地位に就いていた男だ。ある事件を気に辞退し、今は皇帝警護のKMF部隊『ロイヤルガード』とはまた異なり、皇帝お抱えの騎士団『セント・ガーデンズ』の団長だ。
「そうか……ライルめ、遺跡の事に気付きおったか。」
「は…まだあそこまではたどり着いてはおりませぬが、もはや時間の問題かと。」
レイシェフは内心、ライルを少々侮っていた。いくら優秀な部下を抱えていても、気づきはしないと。そうした情報に通じた人間と個人的な交流を持つだけでなく、彼自身も相当調べ回ったという。龍門石窟をきっかけにかなり疑いを深めていたようだ。
「いかがいたしましょう?」
「……お前に任せる。が、必要とあらば殺せ。」
あまりにあっさりと息子を殺せと命じた皇帝にレイシェフは一瞬だけ気圧される。だが…すぐに頭を垂れた。
「は。」
「いずれ、全ての人間は一つとなるのだ……あやつとて例外ではない。そして、お前の…」
「陛下…」
「そうだな………お前とビスマルクには感謝しておる。後、少しだな…」
「は、もうすぐ『優しい世界』が実現します。」
しかし、レイシェフはゼロが気がかりでもあった。中華連邦に新たな拠点を置いたという事は、まさかあのことを知っている?だとしたら、相手は侮れない。
「中華連邦を掌握されたのは痛手だな……あそこを潰されでもしたら、どうなるか。」
あそこは重要な研究データもある……ゼロがもしそうだとするのであれば、間違いなくそこを狙うだろう。
ノエルはシミュレーターであのE.U.のKMF部隊と交戦していた。ライルや例の機体にあった最新のデータを使っているだけあって、良い相手だ。おかげで何度死んだ事か…
「ヴィンセントでもこれだけやられる、か…何度死んだのかしら?」
これが実戦ならば本当に何度も死んだ事になっている。特に、あのエース機…シュテルンやソレイユ、恐ろしいKMFだ。それを相手に渡り合うライルやシルヴィオも恐ろしい……
流石にシミュレーターに長時間籠もっていたから、汗をかいている。スーツの裾をはためかせながらシャワールームへ行こうとした時…背後から顔に布を当てられた。
有紗は仕事を終え、一息ついていた。すると、屋敷のメイドの一人がお茶を入れたという。彼女は特に有紗に冷たいわけでもなく、普通に接している……警戒もせずに彼女が入れた紅茶を一口飲んだ途端…有紗は突然眠くなった……
く、薬…?誰が……な、ぜ……
ライルがいないこの頃合いを狙った計画は成功した。すぐに男達が入り、ライルお気に入りのイレヴンを抱える。更に、別の部屋からは他の二人のイレヴンも連れてきた。エリア11で採用したという姉妹だ……流石にあのハーフは手を出せない。何しろ相手の家柄が家柄だ………『ユーロ・ブリタニア』の貴族が実家であるというあの娘も同様だ。しかし、これだけの上玉に手を出せないというのも男としては心苦しい。
「まあ、報酬でたっぷりと楽しむとするか。」
貴族出身でも、とてもそうは思えないゲスな笑みを浮かべて男達は三人を連れ出した。
様々な研究チームの意見を聞き、KMFの改良や調整の意見を伺っていたライルの耳に信じられない報告が飛び込んだ。
「い、今……なんて?」
報告に来たのは親衛隊の隊員だ。
「で、殿下の侍女の娘と…あの姉妹……そして、ノエル・アーデルハイトが誘拐されました。」
な、何故?また?しかも……有紗は、優衣と涼子がいるのは………
「り、離宮だぞ?」
「は、はい…!」
ライルはすぐに全員に招集をかける。
「全員すぐに集めろ!!良いか、また有紗が攫われた!今度は離宮でだ!!」
警護隊がいるあの離宮でどうやって!警護隊に協力者…或いは離宮の人間?
真っ先に、シェールが浮かんだ。だが…ライルは流石にそれは否定したかった。
いくら、あの人でもそんな事はするまい!だって、母親だぞ?
そうだ……いくら自分勝手なあの人でも、息子がどんな顔をするかくらい、いい加減分かるはずだ。
|
|