[37889] コードギアス異聞 叙任のカレン FLAME−1 御披露目 |
- JIN - 2017年11月30日 (木) 22時48分
夜。エリア11総督府政庁。
そこに向かって慌しく駆け付けて来る正装姿の多くの男女。
「こんな急に発表とはどういうわけだ?」
「ナナリー総督が自分の騎士の任命式を執り行うとは?」
「まあ皇族方の任命でこの手は別に珍しい事ではないが」
「特に反対や抵抗が見込まれる場合だな。だから抜き打ちで一気に行う」
「確かギルフォード卿はエリア10だったな。あの時はコーネリア殿下が戦地でいきなりだったと聞くが」
「ユーフェミア殿下の場合も一気にという感じだったが、あの時の公表は叙任式の前にやっていた」
「あの時も大騒ぎだったがな」
「あの時の相手が今はナイトオブラウンズの一人で立会人となるのか」
「まさかまた相手はイレブンとかじゃないだろうな」
「ありうるな。あの総督なら」
「し、もうすぐ始まるぞ」
軍事補佐のナイトオブセブンに車椅子を押され、儀式場の一段上に進み位置する、盲目の少女総督。
その傍から離れ、右側の二人のラウンズと同じ位置に移るナイトオブセブン。
反対側の左側には、政治補佐のローマイヤらの文官層が並ぶ。
「皆様。至急の用向きで誠に申し訳ございません。誠に急な事ながら、私の騎士の叙任を始めさせていただきます」
「入場!」
ナイトオブスリーの号令と共に開く、正面扉。
その奥から現れる、深紅の騎士正装を着込んだ、ショートカットの一人の少女。
騒然となる場内。
「お、おい! 見ろ、あれを!」
「あれって確かシュタットフェルト家の…」
「しかし、彼女は確か」
「イレブンとのハーフで例のテロリストの一味に加わっていたはず…」
「そ、それも確かこの前の中華戦で捕えられたって…」
「処刑されてもおかしくないだろうが!?」
騒然の中、まるで周囲を嘲笑うかのように太々しさで傲然と歩む少女。
やがて歩みを止め、片膝を床に着く。
その前にスックと椅子から立ち上がる少女総督。
「カレン・シュタットフェルト。汝ここに騎士の制約を立て、私、ナナリー・ヴィ・ブリタニアの騎士として戦うことを願うか?」
「イエス、ユアハイネス」
「汝、我欲を捨て、大いなる正義の為に剣となり、盾となることを望むか?」
「イエス、ユアハイネス」
続いて「拝剣の儀」。
腰の剣を抜き、その件を相手に差し出す少女騎士。
それを受取ろうと身をかがめる少女総督。
まるで目を開けているように、差し出された剣を正確に掴み、正確に切っ先を肩に付ける。
その見事さにホウッとばかりに流れる感嘆の空気。
それを返され、再び鞘に納める少女騎士
「私、ナナリー・ヴィ・ブリタニアは汝、カレン・シュタットフェルトを騎士として認めます」
身を翻し、いかにも挑戦的な表情で周囲を睥睨するかのような少女騎士。
先例と同じく、一瞬漂う微妙な空気。
ただしその直後に響く、ナイトオブスリー、ナイトオブシックス、そして少し遅れてナイトオブセブンの拍手。
それにつられて響く拍手の渦。
実に微妙な音色を奏でながら。
改めて車椅子に座る少女総督。
その椅子に近づくナイトオブセブン。
それをすかさず遮る少女騎士。
「!?」
いかにも不敵で挑戦的な笑みを浮かべ、車椅子の後ろに回って、それを押して共に広間を出て行く。
「…」
それを複雑に見送るナイトオブセブン。
その後ろから近づく、ナイトオブスリーとナイトオブシックス。
政庁を退出して行く人々。
「おい。一体これはどうしたことだ?」
「皇族方の騎士選任権はいかなる対象にも適用できるって事だろ」
「それが国家反逆者であってもか?」
「そうだ。実際に重大な国事犯がそれで赦された場合もあるらしい。ずいぶん昔の話だが」
「そういえば宣誓の時に『ブリタニア』の名を使わなかったな。総督」
「いや。あれも違反していない。ああいう『個人名』を使った宣誓もルールの一つだ。ちゃんと名の中にも入ってるし」
「それにしてもあの女が何か仕出かしたら、総督の政治的立場は無くなるぞ」
「まあ。とにかくこれでシュタットフェルト家も一応は汚名返上となるわけか」
「やれやれ。果たしてこれは遊びか茶番か」
「それとももっと面倒な事かだな」
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