[38128] コードギアス 戦場のライルB2 BERSERK-29『ギアス…前編』 |
- 健 - 2018年04月17日 (火) 13時02分
ライルは久しぶりにある人物と出会っていた。グレイブ・ガロファーノ……本国のKMFパイロットだ。もっとも、現在は情報部転属で所謂窓際に追いやられたようなものだが。
「わざわざすみません。」
「皇族がへりくだらない、しかも庶民相手に。」
「いえ…それでも、貴方の実力もありますし……」
「それでも、ですよ。」
有紗とレイは困惑し、顔を見合わせた。随分とライルはこの男性を慕っているようだ。
「あの、失礼ですが貴方は?」
レイの質問に男性が敬礼をする。
「失礼しました。情報部のグレイブ・ガロファーノです。」
「レイ・コウガ・スレイダーです…ライル殿下の騎士を任ぜられました。」
「お噂はかねがね、そちらのお嬢さんも…」
「は、はい。飯田有紗です…」
すると、グレイブは微笑んだ。
「隅に置けませんね、これだけの美人が側にいて…オマケにこの前の件。」
「有紗はその件の被害者です……傷に塩を塗るような発言はおやめください。」
「おお…これは失礼。」
「…だ、大丈夫です。」
そう言ってはいるが、本当にそうだろうか?レイはとてもそうは見えなかった。
「二人共、外してくれないか?彼と二人だけで話したいことがあるんだ。」
二人だけ?有紗どころか私まで?
「すまない……」
一言謝罪され、レイは有紗と共に退室した。そして…
「有紗、大丈夫?」
「………今でも、怖いって…思うの。」
やはり、無理をしていた。あの姉弟のことに今回の件の後始末、母の件でライルはも相当無理をしていたようだが、こちらも精神的な意味では相当無理をしている。
「ライル様にお願いして、少し休暇を取れるように聞いてみましょう。あの人にも休息は必要なんだから。」
そう、騎士として仕える以上は主君の事も考えないといけない。戦場では彼と共に戦い、よく信頼してくれているのは分かる。でも……
何かしら?ここ最近…ライル様が私達全員に1%の疑い、というのかしら?そんな感情を抱いているような気が………
これが当たっているとして、本人がそれを意識しているのか気付いていないのかは分からない。だが、そうだとしたら原因は一体何だろうか?
「それで、グレイブ様……あの遺跡のことですが。」
「ええ…苦労しましたよ。機情のコンピューターにまで入り込んだんですから。」
エリア11で機密情報局が何か妙な動きを見せており、しかもどういうわけかアッシュフォード学園が拠点だというし…『ブラックリベリオン』後に皇帝はエリア11。それに皇帝の妙な研究に没頭している噂もあるし、玉座を空けることが多い。
「これら全てに因果関係があるとしたら、と思ったのですがどうでしたか?」
「大将、良いか?」
ノックがすると、ヴェルドとコローレも入った。
「どうだった?」
その問いにヴェルドが「ああ。」と頷いた。
「エリア11だけじゃねえわ……中華連邦やE.U.にも同じような遺跡がゴロゴロあった。」
「そちらの先客様は?」
コローレがグレイブを見ると、ライルが紹介する。
「グレイブ・ガロファーノ様……聞いただろう?軍学校を出たばかりの私を殴った男がいたと。それが彼だ。」
「ああ、あの…」
「おかげで彼はパイロットとしての道を断たれた。私が弁護したというのに……大方あの女だろうよ。」
全く、忌々しい女だ!あの場で私はあくまでも先輩としての叱責だと主張したのに、あの女は!!
あんなものと血が繋がっているとは!!ええい、忌々しい!!
「殿下、怒るのは後に…」
「あ、ああ……コローレの方は?」
「軍の一部予算流出の件ですが、『プルートーン』が関与しています。ただ、不可解なのです…オイアグロ・ジヴォンが当主になってから、『プルートーン』は予算が充実しているからこんな小細工をする必要はないはずなのです。」
何?もし、その通りならばオイアグロの意向から『プルートーン』が離れている?一体、誰だ?オルドリンが『プルートーン』の存在を知っているとは思えないし…
「それで、問題はこれです。」
グレイブが資料の束を出した。
「これは?」
「あの遺跡と機情を徹底的に洗い直した結果、ちょっと妙なものが出てきたんです。」
資料を開くと、そこにはあの天領の紋章とそれに関連する絵画までがあった。エリア24周辺にもやはり存在している……
中華連邦やE.U.にもあるということは、あの紋章は世界規模で広まったもの……宗教?
だが、そこで……
「……ギアス?」
そこにはこの紋章と合わせて文章があった。超常の力…ギアス。
「なんだよ、これ?こんな訳わからんものに皇帝陛下が関わってるってのか?」
「私もそれが信じられないんです。」
グレイブがヴェルドの問いに答え、コローレも唸る。その間にライルは資料をめくる。
「発現ギアス…『意識操作』、『対象の誤認識』、『読心』……本当に超能力の研究を行っているような機関があるとでも………『コードR』?」
聞き慣れない単語だ。しかも、そのすぐ側には
「クロヴィス兄様……バトレー?」
ゼロに殺されたクロヴィスと側近のバトレーの顔があった。その横には緑の髪の少女が映っている。しかも、その少女の顔は……
これ以上は危険だ。ライルは資料を閉じる。
「グレイブ様、ありがとうございます。ヴェルドとコローレも……この件は我々四人の間だけのことで。」
「え、ええ…」
「もしかして……俺らやばいことに関わっちまった?」
「かもしれない。」
ヴェルドとコローレの言うとおりだ。自分達は恐ろしいことに足を踏み入れてしまった。これ以上彼らを関わらせることは出来ない。
三人が退室した後……ライルはもう一度資料を見る。『コードR』の重要要素となっている魔女と称される少女C.C.……まるで、V.V.のようにイニシャルでの呼称。本名ではないのだろう。
更にいくつかページを戻すと、確かにいた。古い絵画……まるで人々を導く修道女か魔女…そういえば、ユリアナとリュウタへの土産でもとE.U.で街へ繰り出した時、『森の魔女』と銘打った本があったのを思い出した。興味があって買ってみたが、挿絵の魔女はこの少女と瓜二つ。
どういうことだ……只の他人のそら似?だが、五、六十年も前の写真にもこの少女が確認…………
ライルは立ち上がり、机の中からもう一度読もうと思っていた森の魔女の本を取り出す。そして、挿絵の一つには魔女とそれに導かれる人々の絵があった。おとぎ話か民謡の一部だと思っていた。だが……こうなると話が変わる。
『森の魔女』と機情の確保対象、この絵画や壁画にある魔女、そして『コードR』……このC.C.が全て同一人物だとしたら、この魔女は所謂不老不死……クロヴィス兄様は考古学などについてはシュナイゼル兄様からも高い評価を得るほど精通している。
ライルは勘と培った理論で一つの仮説を組み立てた。おそらく、『森の魔女』、『灰色の魔女』と称されるこのC.C.は同一人物……何十年、何百年も前から存在する不老不死の魔女であり、E.U.や中華連邦でも遺跡や絵画になるほどに歴史に刻まれる存在………ギアスと称される能力にも関わり、クロヴィスは壁画や神根島の調査の過程で彼女を知り、その不老不死を調べて皇帝に献上、継承権争いで優位に立とうとしていたのだろう。
だが、機情或いは皇帝は既に彼女の存在を知りしかもエリア11にいることを知っていた。ギアスの詳細は知らせずに機情に確保を命じた。アッシュフォード学園が拠点なのは、おそらく何らかの形でルルーシュと会っているから……だが、もしもこのギアスという力が実在するのであれば。
仮説の域を出ないながらももう一度資料に目を通すと、ギアス発現者のリストもいくつかあった。その内の三人の人物にライルは目を大きく見開いた。
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