| [1068] 銀の花 漆黒の零【弐】 |
- 空猫 - 2005年11月27日 (日) 14時28分
RES
死神としての出せる力全てを込めて、星夜は走っていた。 瞬歩を使えばいいのだが、ピンチの時というのは、頭の回転がストップするものである。 「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!」 角を曲がって、零番隊の隊舎の中へ。 目指しているのは、兄である零番隊隊長、砂月 風雅(ふうが)の執務室。とは名ばかりの、昼寝部屋である。 風雅は別に怖くない。遅刻どころか忘れていたとしても、 「強く言わなかったからだ。悪かった」 と謝るだろう。 だが怖いのは、一緒にいるかもしれない副隊長のほうなのだ。
一心不乱に走っていると、人間の後姿を見つけた。 片方は、風雅である。だが、もう片方は・・・。 霊圧の接近を読み取っていたかのように、冷たい目でこっちを見ていた。 「ごめんなさい!!遅れました!!」 兄ではなくその人物に謝るかのように、星夜は頭を下げる。 「そう謝るな。自分はそんなに怒ってないから」 そう言うと、満面の笑みで、星夜の兄・・・砂月風雅は振り返った。 ペパーミントグリーンの目と、整った顔立ち。只者ではない、鍛えられたものの表情・・・それが浮かべれらた顔には、貴族特有の儚さなどは、一切見て取れない。だが、どこか優雅な感覚のする表情。隊長各の羽織は、190ぐらいの身長に恐ろしいほどなじんでいる。百年は生きているのに、23歳ぐらいの外見。彼が死神ということだ。 それとは正反対に、もう一人の・・・さっきからこちらを向いていた人物は、はとても不機嫌そうだった。 黒い髪のポニーテールに、白い肌。神か何かのような整った顔立ちは女のようだが、目つきの鋭さと表情、そして体つきが、彼を男だと示している。175ぐらいの身長、細身の体。17歳程の外見だが、彼は零番隊一の古株である。 並みの隊長以上の強さだが、零番隊所属である故に、副隊長どまりの美男子・・・神厳 煌(かんげん こう)だった。 「オイ星夜、遅れすぎなんだよ」 怒りを露にして言うと、そのポニーテールを揺らし、彼は歩き始める。 それをみて、星夜は不思議に思う。 いつもならば、「てめェには学習能力がねぇのか!!」と怒鳴り、説教を始めているところである。ところが今日は、一言のみである。 「兄さん・・・?」 理由を聞こうと話しかけると、少し笑い顔の風雅は答える。 「今日の神厳は、急いでるんだ」 「何で・・・?」 「大事な人に会うからな」 「・・・・・・・?神厳に、大事な人なんているの?」 「まぁ、な」 神厳とは裏腹に楽しそうな風雅は、それっきり口を閉じてしまった。 どうしたのかと思いながら、星夜も後に続く。 零番隊から一続きである、砂月家の中へ。 そして更に、その中の小さな建物のほうへ。 「兄さん・・・?ここって、立ち入り禁止区域だと思うんだけどさぁ・・・」 「あぁ。そうだ」 「って、そうなの!?いいの?こんなところに来て」 「いい」 そう言いながら、風雅はこちらを向かない。 星夜に見えるのは、彼の羽織と緋色の髪だけ。 「いいって、どういう・・・」 「この建物の持ち主に呼ばれているからだ」 「建物の持ち主・・・?」 いきなり、前を歩いていた風雅の足が止まった。 何かと見ると、神厳が戸の前で止まっている。 「中・・・入るの・・・?」 「それがどうした」 そう言いながらも、神厳はこちらを向かない。星夜のことを嫌っているからだけではない、何かを探しているのだ。 無言で何かを取り出すと、神厳は戸に手をかけて言った。 「入るぞ」 「入るって、ちょっと待って・・・。心の準備が・・・」 「開いた」 そう言うと、スタスタと中に入る神厳。 「え・・・・・・?」 何故、神厳が禁止区域の鍵を。というか、何故ここに入るのかが分からない。 この建物周辺は、立ち入り禁止区域ではなかったのか。 「もう、何がなんだか・・・」 そう言って悩む星夜に、苦笑気味の風雅が声をかけた。 「時機分かる」 「分かるって・・・」 風雅に手を引かれて、星夜は中に足を踏み入れる。 普通の建物だった。 禁止区域には見えない、ただの書庫のような。 だが次の瞬間、星夜は思わず立ち止まり、目を大きく見開くことになった。足も、動かない。 中には、見たことのない人物がいた。 耳より少し長いぐらいの、無造作に切られたさらさらの黒髪。15歳ぐらいだろうが、その服装はその外見年齢と大きくかけ離れている。 死薄装。そしてその上には、右胸に「羅」左胸に「死」そして背に「零」と、赫で描かれた漆黒の羽織。全てが黒で統一されていて、首と並んで白いのは・・・顔につけてある、狐の面。 「星夜、だろ?」 そう聞いて来たのは、見た目と同じく性別の分からないような声。声変わり前の少年のもの、だろうか。 思わず、数歩後ろに退く。 会ったことはなくとも、この人物の話は聞いていた。 「砂月時亜。お前のご先祖様ってとこだ。よろしくな」 「とき、あ・・・」 「そして、《零》(ゼロ)」 「嘘・・・」 砂月時亜。風雅の何代か上の当主の、双子の片割れ。 砂月家の子は代々一人だが、双子だけは別と見なされている。 何故なら、上の者のみが、予知能力を持っているから。 それ故に、当主にはならぬ者・・・。だが、並ではない強さを持ち、隊長の上と言われる《零》と呼ばれる者・・・。 その人物が前にいるのを、星夜は絶句して見るしかなかった。
〜らく書き〜 さっぱり意味不明です。・・・まぁ、細かい事は次の話ででもお教えいたします。 オリキャラのみでしたが、多分次回もになります。 神厳・・・モデル丸分かり・・・。いいじゃないですか、好きなのだから。(開き直り) 色々と複雑そうな時亜ですが、今後は変人っぷりが目立ちそうです。 それでは〜。(逃避)

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