| [970] 君の道と僕の道番外編 |
- 白瀬 - 2005年10月10日 (月) 18時01分
RES
逢いたかった むしょうに… 一人でいる時間が長かったから 今…今すぐに… 逢いに行くよ
雨の中、ロイは走っていた。 自分が濡れても傘はない。 耐えるしかなかった。 (わたしを誰が呼んだんだ?) 雨に濡れて重くなった髪をロイは掻き揚げた。 ポケットには一枚の紙。 それは自分への手紙だった。 もちろん、誰からのものかはわからない。 目の前に見える少女にロイは目をやった。 ロイはその少女を知っていた。 「アニタ…!」 「お久しぶりです。」 「翼がなかったから別人だと思ったぞ。」 ロイの言葉にアニタは「ひっどぉ〜い!」と顔を膨らませた。 しばらくして、いつものようにアニタは微笑んだ。 「今はね、毎日が楽しいの。 大天使様に開放してもらって、いつもエドと一緒にいられて…。 もう離れることはないんだって思うとうれしくてしょうがないよ。」 「そうか…」 「声が沈んでるよ?あ、もしかして…ヤキモチ?」
沈黙
「嘘だよ!そういえば…お姉ちゃん元気?」 「誰のことだ?」 「エルク!エルク・ヴェイツェルのことだよ!! 私はエルクの妹だったんだもん。」 その言葉にロイは驚いた。 姿が似ていない上に性格も全く違う。 そんな二人が姉妹だとは思えなかった。 ロイがそう言うと、アニタは「私が先に死んだからね。」 と笑いながら語った。 「巫女は汚れた者だから早く殺さねばってさ。 私は何も言えなかった。ただ…ただ悲しくなってきただけ。 どうしてそんなこと言うんだろうって。」 そう呟いたアニタの顔はとても悲しそうだった。 ロイは何も言わずにただ立っている。 「あ、そういえば雨降ってたんだっけ。 大佐さん、無能になっちゃうね。じゃ、私行くから。 いきなり手紙なんかよこしてごめんなさい。」 走りながらアニタは付け加えた。 「お姉ちゃんを守ってあげてね。」と。 ロイは小さく頷き、その小さな背中を見送った。
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