”アウェーの闘いに徹した桐光”
なんという闘い、今更の戦評などを超越した魂の闘いであった。桐蔭VS桐光はこれまでも、ライバル心・プライドをぶつけ合う真っ向勝負の闘い。しかし桐光はそれほどナイーブではなかった。試合は前半から終始自陣に引きこもる桐光に対し、桐蔭は伝統のショートパスとドリブルでの仕掛けで攻める展開。しかし桐蔭もたっぷりと人数を掛けた桐光ＤＦにスペースを与えてもらえない。繋ぎでボールを失い、ロングボールでＦＷを走らせるカウンターにさらされる。夏までの闘いとは少々変えたフォーメーションに加え、実戦が一ヶ月ぶりである影響なのか桐蔭も精度にやや欠いた。立ち上がりの先制決定機をものにしていれば試合は全く違った展開になっただろうが。そしてこの繰り返しとアクシデントが最後に桐蔭の運命を変えてしまう。
桐光はロングボールのカウンターか、この中で得たセットプレーで高さを生かした空中戦しかない。前半の失点はその典型。ますます自陣に引きこもる上、桐蔭のメンタルをも揺さぶろうと明らかな時間の浪費に出る桐光（前半から!）。
後半桐蔭は、司君と松山君の投入でベタ引きの桐光をスピードと動きの質の変化での崩しを試みる。チャンスが多く生まれるが、どうしてもゴールを割れない。残り１０分切り、ついにパワープレーに木村君をＦＷ投入。それでも単純なクロスだけでなく、裏を描いたショートパス交換を織り交ぜた攻撃で打開を試みる。それが土壇場で結びつく。サイドを崩されあわてた桐光のＧＫがバックパスを手で処理するミス。ＦＫ後の混戦を執念でまさに全員でゴールにねじ込んだ！感動で壊れかけるモウリーニョ。同点になっても尚出てこない桐光、落ち着いて逆転を狙い攻め続けるも延長戦に突入。しかしこの後半の闘いで、桐蔭にとっては致命的な誤算が重なってしまった。いやある意味この闘いの前から始まっていたのだが。後半投入され良質な動きで貢献していた松山君が二度の接触プレーで負傷し岡山君と交代、ここで交代枠を使い切ってしまう。延長戦にはここまでロングボールの対応に奮迅してきた平原君の脚が悲鳴を上げ、木村君をＤＦラインに下げざるを得なくなった。桐蔭には高さにも対応できるＣＢ要員として中島君も佐藤君も残っていたのだが。木村君をそのまま前に残しスリーバック気味にする手もあるが、ここまで出色の出来だったとはいえ本来ボランチの村山君一人に負担をかけるにはリスクが大きすぎた。一人少ないに等しい状況でも攻めた桐蔭。しかし桐光は狙い通りＰＫ戦に持ち込んだ。そして２年前の悲劇が繰り返されてしまった。
桐蔭の誤算、それはこの最後のアクシデントだけでなく、本来先発の司君をベンチスタートせざる得なかった事で松山君の負傷交代含め実質２枠を使う状況になったこと。そして今日の戦況なら尚更使いたい中村君や藤澤君といったメンバーを欠いてしまっていた事。様々な要因が絡み合ってしまった。
試合後、モウリーニョはもう一つの顔に戻りこの１年
運び続けたグッズをクラブハウスにしまいながらなんともいえない気持がこみ上げた。新チームでの１年、選手は本当に精一杯闘ってくれた。イギョラ、プリンス、インハイ予選、本大会。その闘いで見せてくれた華麗なアタッキングサッカーをこのメンバーではもう見る事が出来ない。しかもこんなにも早く終焉が訪れるとは。この冬、三ツ沢でそして国立で見られるはずであったのに。３年生にとっては何の慰めにもならないが、せめて最後がホームで、そして本当に数多くの桐蔭サッカーを応援してくれる方々の大声援の中で終わったことだろうか。モウリーニョ自身、このＨＰに
向かっている今も気持ちの整理がつかないでいるのだが、早くこの現実と試練を受け止めこれからに向け歩を進めてほしい。心から本当にありがとう、そしてお疲れ様。君達の見せてくれたサッカーをモウリーニョはけして忘れない。