[指名]以下の拙歌の付曲を、藤井有人さんにお願いします。
「秋風(あきかぜ)は海より吹きて」
江邑 民部
前奏曲 (紺碧の 海面(みなも)を照らす 夏の陽の 岬にひと り 釣りする少年――江邑)
1.人生の 黄昏時(たそがれどき)の
入口なのに 季節は夏
海(うみ)見ゆる アパルトマンに 横たわり
海風(かいふう)に 嬲(なぶ)られおれば 幻(まぼろし)浮かぶ
岬のはてに 魚(さかな)釣る 少年ひとり
聴いているのか *セイレンの 魅惑の歌を
それとも 夢を見てるか 海原(うなばら)を行(ゆ)く
*オデュッセウスの 果てぬ旅路を
間奏曲 (「秋風(あきかぜ)は 海より吹きて 笹山(ささや
ま)の 笹をどよもし 我をどよもす」――伊藤 整(せい))
2.夏よりも 季節は秋が
今ではぼくに 似つかわしい
海風(かいふう)に 誘われ秋は 来るという
笹山(ささやま)の 笹(ささ)鳴りくれば 心が響(どよ)む
*トリストラムと イゾルデの 嘆きの恋よ
*女神(めがみ)ウェヌスの 差配(さはい)なら 仕方がないさ
ところで 誰がするのか 黄昏(たそがれ)て行(ゆ)く
ぼくの旅路の 終(つい)の差配は
*
今もなお セイレンの 魅惑の歌は 鳴りやまず
海原を行く オデュッセウスの 果てぬ旅路が 蘇(よみが え)るのに
*セイレン: [ギ神](Siren):美しい歌声で近くを通る船人を誘い寄せて難破させたという半女半鳥の精
*:オデュッセウス:[ギ神]トロイア戦争におけるギリシャ側の大将で、ローマ名がユリシーズ
*トリストラムとイゾルデ:[アーサー王伝説]トリストラム(トリスタンともいう)はアーサー王の騎士の一人で、仕えていたマルク王の妃となるはずの王女イゾルデ(イズーともいう)と悲恋に落ちるが、女神ウェヌス(ヴィーナス)の差配で命を落とす