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[4257] - 投稿者:EICH
わかきこひふる
或る日 氣が付いた
灰色だ
見廻せば 坦々とした色 其んな世界 他に色は無い 灰色
嗚呼、判ら無かつたなあ
何時(いつ)からなのだらうか 其の時にはもう 既に色は消えてゐた
何処へ行つたのだらう
知つてゐた
眼の隅には何時(いつ)も 綺麗で 仄かに光つて居り 且つ何やら力に満ちて居り 大きくは無く 寧ろ小さい Pink色をした 箱が在つた
どうやら 色は此の中らしい 見るからに 繊細で 脆さうな たつた一本の指で 壊れて終(しま)ひさう
此の箱には 触らずに 置かう 見てゐるだけで 仕合せだから
さうして只見て楽しむ為に 其の箱を残す事に決めた 中には色が在ると 知り乍(なが)ら
知り乍ら
* * *
限界だ
どうして此れ以上 色を失つた世界に 耐へられようか 箱を開ければ 色は帰つてくる筈
だけれど
だけれど
慎重に扱へば 箱を残せるかも知れ無い
だけれど
箱を見てゐる時が 何時(いつ)よりも仕合せ
だけれど
此の灰色の世界で 何時(いつ)まで暮せば良い
色が欲しい だけれど あの箱は だけれども 色が欲しい 色が欲しい あゝ
箱を開けよう
成功すれば 箱は手元に残る 失敗しても 色が帰つて来る
もう 箱を 開けて終(しま)はう
さうして 目の前に在る 美しい Pink色の 繊細な箱に ゆつくりと 手を 伸ばした。
(
2016年03月21日 (月) 07時27分 )
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