| [7] ハーレムコンクルード 第一章 全面対決 ④ |
- 陣 - 2025年09月20日 (土) 15時02分
(アンタレス兄様…)
それだけに、次兄の事も思い出さざるを得ないプリシウス。
四兄弟と従姉の世代において、当初ミラージュ家の後継候補と見做されていたのは、嫡流の伯父である先代の嫡女であったラフェルだった。 過去の先例からすれば、四兄弟の長兄であるダモクレスをラフェルに配し、次代に繋げるのが常道。それが当初の家中の大勢だった。
それが急遽替えられたのは、ゴットリープに陣取るラルフィント王国山麓朝の国王から突如捻じ込まれた、王女シンドラとの縁談。 その距離的な近さもあり、ゴットリープの山麓朝とは、百数十年前の創設時から数多くの逸話を生んできたミラージュ家。だがここしばらくはゴットリープ恒例の内紛その物に対し、距離を置いてきた。それだけにこの縁談は余りにも唐突。 一説には四兄弟側の関係者がラフェル主導の継承を嫌い、ダモクレスの立場を強化するために打った手とも言われている。 最終的にはラフェルが自ら身を引き、四兄弟の次兄であるアンタレスが婿入り、単独の領主となったダモクレスを補佐する体制を取る。
だが謙譲は必ずしも美徳ならず。これによってミラージュ家は、自ら引いたラフェルを含めての、地獄の季節に突入する。
そもそもの発端は、ミラージュ家とは反対側のラルフィント西北部に位置する、豪族レナス家の急台頭。 ミラージュ家と同様、山麓朝初代国王オルディーンの創業時において功績を挙げた家でありながら、その足跡は何故か長きに渡って消える。 一説には、バーミアに位置する雲山朝初代国王ギャナックの助命を進言した事から、それに関するスケープゴードにされたとも。
だが今からほぼ半世紀前。当時の領主オグミオスが山麓朝内部の抗争において功績を挙げ、更に雲山朝の英雄ダイストに対する唯一の対抗馬として注目された事により、一気に浮上。 ただそれを良く思わない向きからは、依然として先祖の咎を理由にして、暗に陽にの中傷や誹謗を受け続け、遂には不遇の死を迎えたという。
だが。三人の娘と有能な一人の婿を残して。
|
|