| [12] ハーレムコンクルード 第一章 全面対決 ⑨ |
- 陣 - 2025年09月28日 (日) 23時11分
「ご苦労だったな。へリオード殿の御様子はどうだった?」
「は。相変わらず御壮健でした」
ミラージュ城中央の間。
中央の上座に座る、甲冑姿の美丈夫。このミラージュ城の現在の当主代行にして総指揮官ラフェル。
ミラージュ家の本来の嫡子であり、その背後にそびえる肖像画に描かれた、偉大なるリフィル女大公の再来とも言われる、稀代の大女傑。
その威厳あふれる姿は、敵も含めて魅了しない者はいない。それに反発した前夫のアンタレスも、それに対する反発と言えなくもない。
(はあ…)
何度見ても溜息を付くしかない、プリシウス。
「おいおい。どうしたプリシウス?」
いつのまにかラフェルの近くの席に座ってる、オレステス。
「見惚れてたってやらんぞ。もう俺のだからな」
それに対し、場を弁えろとばかりに、ジロッと横目で睨み付けるラフェル。それに対し、軽く笑って肩を竦めるオレステス。
(かなわないなあ…)
いつもの事ながら、そう思うしかないプリシウス。
一見、軽薄そうながら、籠城戦の重苦しさを巧みに緩和している三兄。そしてそれを察し、一見は厳し気ながら、口元に微笑を浮かべているラフェル。
(これこそ夫婦ってものだよなあ…)
それだけではない。
詳しい事は知らないプリシウスだが、この二人が前夫の生前から愛人関係にあったのは誰もが知っている。
だが当時のオレステスは妻帯しておらず、またアンタレスも多くの愛人を持っていた以上、倫理的に非難される筋合いは全く無い。
むしろアンタレスに批判的な者の多かった城内では、オレステスが控え目だったのもあって、むしろ当然と容認される空気ですらあった。指揮官としてラフェルの心身の安定と健全が何よりも重要だったというのもある。
もちろん。だからと言って容認できないのがアンタレス。その女や部下たちも不満を持つ、自分たちの直接の主に対しての直接の軽視であり、侮辱であると。
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