| [11] ハーレムコンクルード 第一章 全面対決 ⑧ |
- 陣 - 2025年09月21日 (日) 13時47分
(あれには驚いたよなあ)
驚いたで済む話ではない。 細かい事は未だに知らされていないプリシウスだが、これは一族の総意でなく、当主正室であるシンドラ王女の側付たちが独断で行った暴挙らしい。もちろんミラージュ家とレナス家を決定的に激突させるための、ゴットリープの謀略なのは言うまでもない。 現在の慣習として、これは完全無欠の宣戦布告。それこそ皆殺しにされても文句は言えない。最低でも当主夫妻の首は差し出さなければならないくらいの。 非情なようだが、またそれでなければ使者を出した方の収まりも付かない。使者を引き受ける人間がいなくなってしまうからだ。
独断の暴挙に対する批難と実行犯の処分は行った。だが当主夫妻までの引き渡しは断じて出来ない。 まず直接命じたわけでもないダモクレスは断じて論外。また山麓朝の側が最終的に負けるとまでは言えない以上、シンドラを引き渡すわけにもいかない。 責任を巡る問題については、当主であるダモクレスが即座に断を下す。戦時の指揮者として、本来の嫡流でもあるラフェルに全権を譲る。自分とシンドラは謹慎として、城内の奥に自ら幽閉の形を取る。もちろんこれには自分自身でシンドラの監視を行う意味もある。
ミラージュ側が以後の長きに渡る籠城戦に耐えられた最大の要因は、この最初における責任と権限の所在を素早く行ったからといっても過言ではない。 同時に、それに対するレナス家が、その複雑な内部事情から最長子の長女ネメシスと嫡男クリエートの共同指揮の形を取らざるを得なかったのも大きい。それを察したミラージュ側も、その弱点を巧みに突いての、あらゆる抵抗を試みる。
但しミラージュ側としても、当初は決して一枚岩だったわけではない。一番の不安要素は、よりによって新指揮官の夫でもあるはずの、次男アンタレス。 ただでさえ格上の妻に不満がある所に、今度は直接指揮される立場になったのだ。家の存亡の前に、男としての意地と面子がどうしても先に出てしまう。自分の方が上だと考えていれば尚更。周囲の迷惑も困惑もお構い無しに、反対のための反対を繰り返す。 それやこれやで結局、籠城戦の指揮はラフェルが、騎兵を含む城外での遊撃戦はアンタレスが担当する事で妥協。気まずい互いの連絡役はオレステスとプリシウスが行う事となる。
そしてある日。ミラージュ家中の主導権を握るべく、大勝を狙ったアンタレスが城外で壮絶な戦死。その代わりとして、かねてからラフェルを崇拝していた、三男のオレステスがラフェルの再婚相手に。 かくてようやく城内は明確に一本化を果たす。
これが今までの流れである。

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