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陽だまりの詩
生えなくなって どれくらいたつのでしょう 塗った薬も 今朝 空になってしまった 窓辺に揺れる 目を覚ました若葉のように 長い時を超え 期待をしてきたのに
どんなに言葉にしても 足りないくらい わたし望んできた 頭包んでくれる それは フサフサでした
心も折れ 芽を摘まれた若葉のように 長い時を超え 今頃気づくなんて どんなに言葉にしても 足りないくらい みんな悪口を言い すべて言いふらし まるで火だるまでした
凄いはずなの 優秀なの 出来る人よ バカにしないで そんな私 小さくない 努力してきた バカにされたくないから 人の上に立ち、えらい、凄い 私 どんなに大きくなっても言われた そんな 傷つけないで 私、ガラスのハート モロイ 取扱い注意 やさしい 頭いい 思いやりあるわ 小さくない そんな私のこと 心から なによ失礼すぎる 瞬時に怒り沸いて まるでティファールでした
菜の花燃える 二人最後のフォトグラフ 送るからね と約束は果たせないけれど もしも今なら 優しさもひたむきさも 両手に束ねて 届けられたのに
それぞれ別の人 好きになっても あなた残してくれた すべて忘れないで 誰かを愛せるように 広い空の下 二度と逢えなくても生きてゆくの
こんな私のこと 心から あなた愛してくれた 全て包んでくれた まるでひだまりでした
あなた愛してくれた 全て包んでくれた まるでひだまりでした
『ひとつ屋根の下2』の挿入歌 おそらく、別れてから少し時間が経ったくらいの頃を歌っています。 会わなくなった日々が徐々に日常になって、「逢えなくなって/どれくらいたつ」のかもわからない。恋人に出した手紙も「舞い戻」り、もう連絡の手立てもない。 別れてからしばらく経ち、連絡もとれないからいよいよ付き合っていた時期は過去になって遠ざかるのです。
別れたくらいだから、きっと別れの最後のほうは辛い時期だったに違いない(と私は思わずにいられない)。 しかし、恋人との日々が過去になってようやく、気付きます。
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「あなた」が「残してくれた」ものすべてを「忘れない」まま、別の「誰かを愛せるように」生きていくのだというのです。もう会うことはなくても。
失恋を前向きに受け入れ、過去をなかったことにするのではなく、別れた恋人と過ごした日々を通して成長した自分としてこれから生きていく。
「ひだまりの詩」は、やぶれた恋を受け入れて感謝しながら、この「広い空の下」、ひとりで歩み出していく少し孤独な、しかし前向きな歌なのでした。
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勝てなくなって どれくらいたつのでしょう 出した妙手も いま悪手(あくしゅ)になりさがった 曲がり四目(まがりしもく)で 目をなくしたザル碁のよに 長い読みを終え 今ごろ気づくなんて
どんなにコミもらっても足りないくらい あなた潰(つぶ)してくれた すべて負かしてくれた まるで クソジジでした
路地裏にある ふたり訪ねた囲碁クラブ 「待ったダメね」と 約束 はたせないけれど もしも今なら ハネツギもホウリコミも 先手とひと目で 読みきられたのに
それぞれ別々の死や 活きになっても あなた残してくれた すべて殺さないで 勝利を譲れるように
広い盤の上 いい手浮かばなくても活きてゆくの こんな私のこと初めから あなた許してくれた すべて教えてくれた まるで 先生でした
あなた許してくれた すべて教えてくれた それは 神様でした
2022年09月25日 (日) 10時30分
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