[680] 2024/10/05/(Sat)14:46:35
|
名前 |
Seigo
|
タイトル |
ドストエフスキーが描いた登場人物の特徴のこと(5) |
本文 |
次のモーム氏のドストエフスキー論は、ドストエフスキーの小説の登場人物の特徴とそのテーマをよく指摘している。
ドストエフスキーの人物は、自然の暗黒な力と共通なものをもっている。彼らは普通の人間ではない。情熱的で、極端に精神的で、痛ましいほど敏感で、極度の苦悩を経験することができ、何事についても並はずれていて尋常ではない。彼らは神のために悩み苦しむ。その行動は、まるで精神病院の狂人のそれである。だが、彼らの常軌を逸した行動は何かふしぎな意味をもっていると考えられ、そして彼らが、かように(=このように)苦悩を通して自己の本性を暴露しているのは、じつは人間の魂のもつかくされた奥底と、そのおそるべきさまざまな力とを明らかに示しているのだ、ということをしみじみと思わないではいられない。 [サマセット・モーム『読書案内』(西川正身訳・1997年岩波文庫刊)の中の項「ドストエフスキー」より。]
たしかに、ドストエフスキーの小説の登場人物は、世間の常識を逸脱した真面(まとも)とは言えない人物や変人が数多く登場してくる。ドストエフスキーは、彼らの振る舞いや心の動きを描いて、その苦難や苦悩や苦闘、その悲劇や挫折や克服や再生など、その過程と帰結を示すことで、人間の本性や悪性善性を抉(えぐ)り出し浮き彫りにしていった作家だと言えるだろう。
 |
|
|