[623] 2024/01/30/(Tue)09:25:41
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名前 |
ほのか
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タイトル |
《意地悪い人に注意‼️ 婦人 対 百姓女》という言葉の使い方‼️注意‼️ |
本文 |
p375
「・・・・・・しかし、わたしはのべつ寄り道をしているのだから、もう一度ちょっと寄り道をしよう。傍観者氏よ、わたしがコルニーロヴァを獄中に訪れたことについて、その論文の中で諧謔を弄しながら、意地悪くわたしを冷笑している。「彼は事実この立場(すなわち妊婦の立場)にみずからをおいて、獄中に繋がれたある婦人のもとに通い、その温良さに一驚を喫して、自分の『日記』の数号にわたって、彼女の熱心な弁護者となったのである」とわたしのことをいっている。第一、なんのためにこんな「婦人」などという言葉をつかったのか、この下品な調子はなんのためか? 傍観者氏は彼女が婦人ではなく、朝から晩まで働き通している単なる百姓女にすぎないことを、ようく知り抜いているはずである。彼女は煮炊きをしたり、床洗いをしたり、もしわずかの暇があれば、賃仕事などをしているのだ。わたしが獄中に彼女を訪ねたのは、月にほんの一度ずつで、話をするのも、十分か、多くてせいぜい十五分くらいなもの、それも乳呑み児をかかえた女被告人にあてられた、共同監房の中なのである。よしわたしが好奇心をもってこの女を凝視し、その性格を究めようと努めたにもせよ、そこにいったいどんな悪いことがあって、嘲笑や諧謔の対象とならなければならないのか? しかし、もうわたしの逸話に立ち戻ろう。」 ⇄ 米川正夫 訳
「しかしわたしはどうもいつも本題からそれてばかりいるので、ついでのことにここでもう一度ちょっと脱線させていただく。「見まもる人」はわたしが獄中のコルニーロヴァを訪ねたことに対して、その論文の中でユーモアたっぷりに、しかも意地の悪い調子でわたしを皮肉っておられる。ーー「彼は事実そうした立場(つまり妊娠した婦人の立場)に身をおいて」とわたしについて言っている。「わざわざ獄中のある婦人のところへたびたびかよい、そこ温順な心根に強く心を打たれ、その『日記』の何号かを通じて彼女の熱心な弁護人となったのであった」まず第一に、ここでわざわざ「婦人」という言葉を使ったのはどういうわけか、それにこのいやらしい調子はなんのためか? それが婦人などというものではなく、なんの変哲もない百姓女、朝から晩まで仕事に追われている働き手であることを、「見まもる人」は非常によく知っているはずではないか。彼女は台所仕事に追われ、床を洗い、おまけにちょっとした暇を見つけては、賃仕事の縫い物までもしているのだ。わたしが獄中の彼女を訪ねたのはかっきり月に一度の割合で、面会の時間も十分か、長くてもせいぜい十五分くらいのものであり、それもたいていは乳飲み児をかかえている未決の女囚のための雑居房でのことであった。かりにわたしが好奇心をいだいてこの女囚を観察し、その性格を見きわめようとしたとしても、ーーそこのどこに嘲笑をあびせられ、からかわれなければならないほどのいけない点があると言うのだ? しかしわたしのちょっとした話に立ち戻ることにしよう。」 ⇄ 小沼丈彦 訳
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