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一部内外コンクリート化粧打放し住宅を手掛けるに当たって、1999年の執筆であるが、ちょっと面白い資料があったので、【text打ち】でUPしてみる。
著作権の問題等あるかもしれない。 まぁ、建築技術向上の共有のためUPしてみます。抗議が有れば即刻陳謝して削除します。
なにぶん長い【新規打ち込みには】ので、3~4回に分けてUPします。
打ち放しコンクリートのクリヤー系保護仕上げに関する思いこみ・思い違い
大成建設㈱ 技術研究所 松橋俊一 氏
【1】はじめに
打ち放しコンクリート仕上げの歴史を振り返ってみると、マニアックな仕様から現在では市民権を得つつある仕上げになってきているように思える。クリヤー系保護仕上げに携わる人達の意識も変わり、技術も進んできている。しかし、価値観の違いや問題点も多い。一口にコンクリート打ち放しと言っても、その中には多くのバリエーションがあり、手間の掛け方も異なる。また、諸問題の解決手段も様々であり、決めにくい部分がある。コンクリートの施工については、多くのマニュアルや技術指導書があるので参考にしていただきたい。ここでは、打ち放しコンクリートのクリヤー系保護仕上げに関して述べてみる。現在でもクリヤー系保護仕上げの原理原則に関する思いこみや思い違いを見たり、聞いたりすることがあるからである。既によくご存じの方は読み飛ばしていただければ幸いである。 なお、ここでは打ち放しコンクリートの保護に使用されている撥水剤単独の塗りつけから、撥水剤で処理してからカラークリヤーで仕上げることも含めてクリヤー系保護仕上げと称している。
【2】思い込み・思い違い
2.1 好きと嫌いの間 日本人がコンクリートの質感をどう捉えているかのアンケートは見たことがないが、好ましくないと捉えている人が多数を占めているように思われる。そう考える理由の一つは、多くの人にとってコンクリートが人工物の象徴であり、自然を痛めつけているとのイメージがあること、もう一つは初期の打ち放しコンクリートの建物がひどく汚れたことが挙げられる。一方設計者には、打ち放しコンクリートが好きな人が多い。設計者に好きな人が多く、施主や利用者に嫌いな人が多いとすれば当然そこに摩擦が起きる。今程環境との調和が叫ばれていなかった、私が学生だった頃から、公園を含め、自然の中にコンクリートの建造物があると、嫌悪感を感じていた。そして社会人になり、コンクリートに関わるようになってからも、コンクリートをむき出しで使用されているのは好きではなかった。 しかし、打ち放しコンクリートを数多く見ることにより、建物が人工物としての存在感を主張している場合には、その造形性や重量感、艶がなく色むらを有するグレーの質感を好ましく思うようになってきた。ただし、汚れて見苦しくなっていなければである。 建築に関わる人達の英知と努力を集めて、良い打ち放し建物を作り、一般の人達に好きになってもらわないと、今のように打ち放しコンクリートのブームが繰り返すだけに終わってしまうように思われる。
2.2 好まれる色と打ち上がる色 コンクリートの色のイメージは、明るいグレーが一般的である。ところが現場打コンクリートの場合には、これより白っぽい色に打ち上がることが多く、プレキャストコンクリート(PCa版)やGRCの場合には、逆に黒っぽい色に打ち上がることが多い。黒っぽい色に打ち上がった場合には、表面を20倍のりん酸溶液で処理することなども行われているが、期待通りの色にならない場合もある。また、風雨に曝されると、次第に自然なコンクリートの風合いとなり、さらに風雨に曝され続けると、表面のセメント分が無くなり、細骨材である砂が目立つように変わっていく。このようにコンクリートは、施主や設計者が好む色には仕上がりにくいのである。これには大きく二つの原因が関係している。 一つはセメントが無酸素状態で水和すると、濃い緑色の水和物を生成する。PCa版では、鋼製型枠を用いるので、型枠面まで無酸素状態になりやすく、濃色となる。 一方、現場打ちコンクリートの型枠のせき板には、塗装合板が一般的に使用される。塗装合板の場合、塗膜は酸素を完全に遮断出来ないので、表面まで黒っぽく仕上がるのは稀である。ただし、地下室のように乾燥しにくい環境と、型枠の残置期間が数週間と長いという条件が重なると、合板の厚さ全体で酸素を遮断するようになり、濃色に打ち上がる。 もう一つは光そのものの性質である。光が多孔質体に当たると、反射、屈折、吸収等を生じる。可視光線の波長が0.4μm程度であることから、半波長程度の大きさの凹凸があると、反射吸収に大きな影響を与える。多孔質体の形状がサブミクロンオーダーで変化するだけで、色の明暗が異なることになる。コンクリートは、セメントゲルや結晶が成長し複雑に絡んで出来た多孔質体である。同一コンクリートを同一温度条件で養生しても、表面はサブミクロンオーダーまで同一とはならず、わずかなセメント水和物の組織の違いが色の差となって見えることになる。 このようにコンクリートは、元々均一な色に仕上がらない性質を有していると言える。したがって、色にこだわる場合には、プラントの選定、打設時期、せき板の種類鉄等の影響を十分に把握し、ある幅に入るように色を管理する必要がある。冬季に実施されるセメントの増量などは、仕上がりに大きな影響を与える。
2.3 撥水性と汚れ 何も表面処理していないコンクリートの汚れ原因は、コンクリートの吸水性に起因している。コンクリートの吸水は、大気中の土粒子等をコンクリート内部に取り込み、カビやコケ等の繁殖を促進する。 コンクリートにクリヤー系の塗装を施している場合には、ディーゼル車の排気ガス中に含まれるカーボンが付着しやすい。高耐候性塗料のように表面の撥水性が持続すると、この汚れが固着しやすい。このように、撥水性はカーボン汚れを引き起こすので、吸水せずに表面が水に濡れやすい状態を保持するのが最もよい。 撥水剤のみを塗りつけている場合、初期にはカーボンが付着するが、経年変化によりごく表面の撥水性が失われ、付着していたカーボンが洗い流されるようになる。しかしながら、内部に浸透した撥水剤の効果により、コンクリート内部への水の浸透は抑制されるので、何も処理していない場合よりも、はるかに少ない汚れの量となる。したがって、表面の撥水性が失われることは、今まで、撥水剤が浸透していさえすれば、むしろむしろ理想に近づいていると言える。また、撥水剤の場合には、塗装のように部分的に剥がれても見苦しくなることはないのも、特長の一つである。 なお、シーリング材から滲み出てくる油状成分があると、必ず著しい汚れを生ずる。近年、この油状成分をほとんど含まないシーリング材が出現してきているので、シーリング材の影響による汚れの発生は、抑制出来るようになってきている。
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[1353]2007年07月02日 (月) 15時55分 http://homepage3.nifty.com/rsa/ |
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2.4 クリヤー系保護仕上げの目的とコンクリート構造物の耐久性 クリヤー系保護仕上げの目的は、乾いたコンクリートの色を長期間保護するという意匠性の保護にある。コンクリート中の鉄筋の発錆を防ぐ効果、すなわち中性化防止や塩分の浸透防止は、あくまでも副次的な効果である。撥水剤を浸透させ、さらにクリヤーを塗り付けても、耐久性は1~3倍程度向上する程度と考えた方がよい。コレは塗膜が薄いので、コンクリートに必ず発生する微細なひび割れにも追従出来ないためである。このひび割れ部分では、撥水性は降雨の度毎に少しづつ失われてゆき、塩分(大気汚染物質の中にも少量含有されているが)徐々に内部に浸透しやすく、中性化も早く進行する。一旦鉄筋が腐食し始めるとひび割れの幅は広がり、その後の腐食は保護塗装がない場合とほぼ同じ速度で進むことになる。一部のカタログで記載されているクリヤー系の保護仕上げの躯体保護効果は、強調しすぎの感は否めない。打ち放しコンクリートの適用範囲についての留意事項を以下に示す。
・臨海部では打ち放しコンクリート造の建物は避けた方がよいが、どうしても実施したい場合には、コンクリート自体の遮塩性に期待するので、十分な被り厚さを取り、水セメント比が50%以下の密実なコンクリートを打設する。また、鉄筋に錆止塗装するなどの方法もある。当然コンクリート表面にはクリヤー系の保護仕上げは実施する。 メンテナンスを実施しにくい建物例えば高層ビルなどでは避けた方がよい。実施する場合は、メンテナンス上のリスクを負うことになる。
2.5 撥水剤とその浸透性 撥水剤はコンクリートの内部に浸透し始めて初めてその機能を十分に発揮する。一方、塗料は欠陥のない薄い膜を形成してその機能を十分に発揮する。しかし、多孔質体の塗料を塗り付けても、ピンホールの多い塗膜となってしまうことから、撥水剤と塗料との組み合わせが多用されるようになってきている。この場合の撥水剤の役割は、塗膜のピンホールや割れ及びコンクリートのひび割れなどから、水がコンクリート内部に侵入することを防ぎ、乾いた色を保護すること及び塗膜の剥がれを防止することにある。 撥水剤には、多くの種類があり、既存の多くの文献では有効成分毎に分けられていることが多い。このことから、その特長と使い方が今一つ解りにくいところがある。現在の撥水剤の主流であるアルキルアルコキシランは、反応して高分子化する架橋タイプであるが、油性で反応しない無架橋タイプの撥水剤が効果的な場合もある。以下に示す表のように使い分けるとよい。 今まで述べたように、撥水剤の浸透性は重要である。特に撥水剤を塗り付けてからクリヤーを塗り継場合には、コンクリートの表面に撥水剤の膜を形成すると塗り継塗膜との付着不良を生じることがあり、撥水剤の浸透性はより重要な問題となる。セメント水和物は、水と親しい性質を有している。一方逆に、撥水剤の有効成分は、油に近い性質を有している。撥水剤を石油系の溶剤に溶解して塗り付けると、溶剤が染み込んだ深さだけ撥水剤も浸透する。しかし、コンクリートの含水率が高いと、溶剤ごと浸透しないことになる。 石油系溶剤とは別に、水と油の性質を併せ持っているアルコール系の溶剤に、撥水剤の有効成分を溶解させて、コンクリートに塗り付けると、コンクリートと相性の良い溶剤の方が先行して内部に入り、相性の悪い撥水剤の浸透が遅れるようになる。煉瓦のように孔の径が大きい場合には、この遅れは少ないが、緻密なコンクリートやモルタルになると極端なケースでは溶剤だけが浸透することも起こりうる。なお、化学では上記の親和性の違いによる分離を利用し、クロマトグラフィという分析法が確立している。 この溶剤の違いによる浸透性の差を利用し、下記表に示すシラン系撥水剤を用いても、塗り付け対象となる材質に応じて、溶剤を使い分けることも出来る。具体的には、煉瓦やALC等ではアルコール形容剤を用いると、シランの内部への浸透が妨げられ、表面近傍にシランが析出して、孔を塞ぐ方向となり、内部に均一にシランを浸透させるよりも、吸水率をより低下させることが出来る。 しかし、アルコール系容剤を用いて、PAa版やGRCなどの綿密なセメント製品に塗り付けると、シランが表面に膜状に析出し、後に塗り継塗膜との付着不良を生じる可能性が高くなる。また、シラン中のメタノールの一部が溶剤のアルコールと置換し、その結果シランの硬化速度が極端に遅くなることも知られており、この観点からの注意も必要となる。 このように、綿密なコンクリートにシラン系の撥水剤を塗り付ける場合には、石油系の溶剤を用い、かつ乾いたコンクリートに塗り付ける必要があると言える。塗り付け時に所定量の撥水剤が塗り付け直後(試験して具体的な時間を決定)にコンクリートに吸い込まれることを常に確認するよう指導し、さらにコンクリートの含水率との関係を把握し、許容する含水率を決定すると良い。
表 撥水剤の種類と使い分け
撥水剤の種類 アルコキルアルコキシラン系の架橋タイプ
特長 ・溶剤の種類により、浸透性を変えることが出来る。 ・架橋するので、内部への浸透深さは、1回目より大きくならない。 ただし、ひび割れ部では、塗り重ねるほど浸透深さは増大する。 ・表面に膜を形成すると、その膜はしだいに固く脆(もろ)くなる。
対象 比較的吸水率の大きい物 (コンクリート、ALC、煉瓦、砂岩)
撥水剤の種類 油状、無架橋タイプ
特長 ・深く浸透するが、しだいに拡散する。 ・何回塗り付けても造膜しないので、必要に応じて何回も塗り付けることが出来る。
対象 吸水率が数%以下と小さい物 (花崗岩、せっき質タイル、特に緻密名コンクリート)
2.6 濡れ色の防止 多くの方法があることは、あまり知られていない。大別すると2種類に分けられ、顔料を用いる方法と樹脂そのものが硬化過程で不連続になるようにしている方法とがある。顔料を使用している場合には、顔料の分離を生じたり、濡れ色防止効果が低い傾向がある。こんなところにも、メーカー館の技術の差がある。
2.7 艶消しの手法 艶消しは艶消し剤という顔料の一種を添加することによって行われ、塗膜の表面に微細な凹凸を付け、光を乱反射させることによって行われる。艶消し剤の選択を誤ると著しい耐候性の低下を生じることがある。艶消しにすると、耐候性が低下するとよく言われるが、これは思い違いで、樹脂と艶消し剤との相性が悪いことが多い。
2.8 現場打ちコンクリートとPCa版の違い 現場打ちコンクリートとPCa版は同じコンクリートだから、同様に塗れ、同じような質感で仕上がると思っていたら大きな間違いである。前述したような色や吸い込みの差に加えて、PCa版では鋼板の凹凸をコンクリートが正確にトレースするので、鋼板の補修跡や錆落としの跡が見えたりすることがある。これらの跡には中途半端な規則性が見られるためにかなり目立つので注意が必要である。
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[1354]2007年07月03日 (火) 14時26分 |
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【3】理想のクリヤー系保護仕上げとは
歴史的には、クリヤー塗料の単独使用から始まり、撥水剤の単独使用、撥水剤とクリヤー塗料との併用、使用する塗料の高耐久性化、濡れ色防止効果の向上という経緯をたどってきている。 現在では、撥水剤の単独使用は一時的な保護で安価な仕様、一方撥水剤と塗料それも高耐候性塗料との組み合わせは、より理想に近い高級な仕様であるが、高価という評価が定着しつつあるように思える。自分自身もこのように評価していた。この塗装による方法は諸性能が向上し、一つの頂点に近づいているように思える。 しかし、最近になって撥水剤単独の使用は、その真価が十分認知されないように思えてきた。撥水剤単独使用の最大の特徴は、コンクリートの風合いをほとんど損なわないことにある。最近では、コンクリートが期待通りに打ち上がらないことが多いとされ、すぐにカラークリヤー仕上げという発想になってきているように思われる。 実際に撥水剤のみを塗り付けてから7年経過し、汚れも少なく、良好な仕上がりの感となっていた建物を観察する機会があった。撥水剤の効果を確認しようと、コンクリート壁面に水をかけると、直ちに濡れ色になり、しばらくすると乾いた色に戻った。一方、撥水剤を塗り付けていない部分では、濡れ色にするためには何回も水をかけなければならず、また、放置してもなかなか乾いた色に戻らなかった。これらのことから、撥水剤を塗り付けた部分では0.2~0.3mm程度の深さまでは吸水するが、この深さ以上は水が吸水しにくいことを示しており、内部に浸透した撥水剤はそれなりの効果を発揮していることが分かった。このような時点でもう一回撥水剤を塗り付ければ、コンクリートの表面に発生した微細なひび割れを伝って撥水剤が内部まで浸透し、耐久性を向上させることが出来る。その後は10年毎に、洗浄と撥水剤の塗り付けを繰り返すのも一つのクリヤー系保護仕上げの理想形と思われる。ただし、撥水剤を塗り付けても数年経過すると、降雨時には表面が濡れ色になるので、このことが受け入れられればであるが。
【4】おわりに
クリヤー系の打ち放しコンクリート保護仕上げは、撥水剤単独使用と塗装系(撥水剤処理を含む)とがある。塗装系のクリヤー仕上げの優れた仕様は、完成の域に達しており、目的別に此処の銘柄などが選択出来るようになってきている。一方、撥水剤の単独使用は、耐久性に乏しいと思われていること、コンクリートの色調整が出来ない等から、どちらかというと、塗装系より低く評価されている。しかし、撥水剤の単独使用は、コンクリートの質感をほとんど損なわないことから、2年程度で再度撥水剤を塗り付けることが出来れば、コンクリートの表面の風化をも含めた自然な質感が得られ、かつ躯体保護性能も一段と向上すると考えられる。コンクリートの打設、養生のノウハウも蓄積されていることから、撥水剤単独使用の価値を見直す時期に来ていると考えている。 実はこのような私の考え方に、”思い込み・思い違い”があるかもしれない。そのような部分をご指摘いただければ幸甚である。打ち放しコンクリートの適性や造形美を生かし、優れた建造物が広まるように願っている。
打ち終わってみると、当たり前のことしか書いてないか? 【無酸素状態ではコンクリートは黒く打ち上がる】ってとこ位かな? まぁでも(*^_^*)
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[1355]2007年07月03日 (火) 17時41分 |