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[209] 題名:Lady in Black - 黒衣の貴婦人III (14) 名前:XXX MAIL URL 投稿日:2024年04月27日 (土) 12時14分
支えられながら長い時間をかけてようやく次の“舞台”へと辿り着いた怜子はほとんど倒れ込むようにしてベッドに上に横たわった。
志藤はバックステップを踏んで、熟婦人のフルショットを眺めると、自らの露出した下半身に目を移した。
着衣の女。全裸の男。状況を鑑みて独りごちた。
「CFNMだな」
着衣セックスの経験はある。この女とも、別の女とも。淫らな衣装を纏わせて、という行為も当然に。
仕事着を纏わせたままセックスに入るのは、“昼の顔”からの落差を愉しむには適していた。いかがわしい連れ込み宿を利用していた頃は、仕事終わりの逢瀬という流れから、必然的にそうなっていたし。
無論、性欲を煽りたてるのを目的とした衣装を纏った姿もまたソソるものがある。自宅で情に淫するようになってからは、毎度とっかえひっかえ新たな下着を纏ってもてなしを受けている。
元は一人の男を巡る争いの中で、うら若き競争相手への対抗策。はるか年下の男の気を惹くための“武装”であったのだろう。ところが、次第に彼女自身も自らのゴージャスな肢体を着飾ること自体に悦を見出しはじめた。
毎度のチョイスは、単に男を愉しませる目的だけではなく、彼女なりのテーマを持っていたようにも思われた。男の欲望を誘うことを追求した漆黒のガーター・ストッキング。闘争への決意を表したダーク・レッドの下着。“白無垢”を彷彿とさせる純白のもの。
次第に“武装”は“舞台衣装”の色合いが強くなって。彼女はまるでステージに立つ女優のように、その肉身に纏った華やかな衣装に合わせて、自身の立ち振る舞いを変えて見せるのだった。もしかすると、そんな傾向をさらに煽ったのは、しばしば夜の営みにおいて男を共有する好敵手の存在であったのかもしれない。
そんなロールプレイに興じる中で、時折前提となっていたであろう二人のバランスに変化が見られるようになっていた。
元々は年齢や社会的立場とは反対に、女の方がはるか年下の男に従属する悦びをひたすらに露わにしていたが。この頃は、この女こそが主役のごとく振る舞って、裸体を晒した自分がその女王に服する性の下僕であるかのようなお遊びも見られる。もちろん、そうなったとて、結局のところ形勢は逆転されるのだが。各々が思いつくまま、それぞれの欲望に従って、それぞれの役割・攻守を交代しながら、泥んだ関係をさらに深めている。
今の彼女は、ヌラヌラと妖しい光沢を称えたフルボディストッキングを纏っている。前に幕では、先にイニシアチブを取ったのはこの黒き女王であった。だが、形勢は途中で逆転され、恥辱の舞台へと立たされて、“観客”を悦ばせる素晴らしい演技を披露することとなった。次の幕ではこの女をさらに追いこんで、徹底的に啼かせてやるのだ。
ここまでの成り行きからそんなシナリオがふと思いつけば、つい先ほど壮大な射精を遂げた牡肉がいっそう滾るのを感じて。
「本当にハマってきてるな」
その独り言は、どこまでも業の深い女の所業を嘲笑いながらも、それに引き込まれていく己にも向けられたものだった。
そんな考えを過らせながら、志藤はふと喉の渇きに気づく。室内には淫らな臭気と熱気が息苦しいほどにたちこめていた。
実際のところ、部屋の状態もそのように演出されていたのだった。午後、先にチェックインした際、志藤は“風邪を引くといけないから”と空調と加湿器の設定を弄っていた。夕食後、独り部屋に戻った怜子もさすがに気づいたであろう。しかし、部屋の状態は今もそのままになっていた。
それにしても。確かに部屋のコンディションも多少なりとも寄与しただろうが。互いが流した多量の発汗は、やはりセックスでの運動量によるものだろう。
互いに肉々しいカラダを密着させての交合。絶頂を迎える度に吹き出す汗。その凄まじい熱量。運動量もさることながら、性器を結合させて熱を分かち合うという内側深くからの発熱。
室内の、とりわけ二人の周囲は外の季節とはまるでかけ離れた有様――真夏の熱帯夜とでも呼ぶべき有様だった。
汗だけではない。黒を纏った婦人の方は、先の二度の“噴出”でも相当な水分量を消費していることだろう。そして、この後はさらに汗と脂、そして体液という体液を搾り出すことになるのだ。
「水分補給しておきましょうか」
志藤は踵を返して、テーブルへと向かった。先ほどコンビニで買ったミネラル・ウォーターのペットボトルを冷蔵庫から取り出してキャップを開けると、一気にほとんどを飲みきった。新しいペットボトルを手にベッドに戻ってきてベッドに上がると、身体を起こしていた怜子の陰部が肌色の何かで隠されていることに気づいた。志藤にはそれが何かすぐわかったが、敢えて直截的に口にはせず、
「すっかりお気に召したみたいで」
そう言って怜子の顎に軽く手を添えて、口移しで怜子に水を含ませた。
唇が離れると、怜子はボトルを受け取って、志藤同様に一気に水を流し込んだ。乱れた髪を手櫛で掻き分けながら、
「ひどい汗…」
「汗みどろになって交わるのは好きですよ。濃密に情を交わしてる実感が湧くじゃないですか」
志藤は薄ら笑いを浮かべながら、股間部にくっきりと浮かび上がった複雑な造りをなぞった。
そのモノの使用は志藤から指示したこともなければ、示唆したこともない。自分から調べない限りそのようなものを使用するという結論には至らないだろう。
怜子が前貼りを使い始めたのはつい最近――“無沙汰”に入る直前のことであった。無論、局部を隠すという本来の目的での使用ではなく。“ノーマル”なセックスの後、注がれた牡精を膣内に留めさせるのを目的として。
べと濡れの場所への貼着は少々心許ない気もしたが。行為後にわざわざ履き直していたショーツに求めた役割と同じものを期待したのだろう。もう一つの穴で結ばれるようになり、行為を妨げない機能性を求めた結果行き着いたらしい。
“どうしてそんなことばかり思いつくのか”とかつては若き情人の淫猥な発想力に困惑していた年上女は、今ではこちらの想像を凌駕する試みを見せてくる。今日一日、ここまで披露してきた艶やかな衣装の数々、淫らな立ち振る舞いに代表されるように。今となってはその真逆、今や彼女自身がかつての非難や呆れの対象の方に成り下がっている。いや、成り上がっていると言う方が正しいか。
姿を隠したそれとは対照的に、露わになったままのもう一つの穴が淫靡にヒクつく。まるで次の行いを唆すように。
怜子は四つん這いになって臀を向けると、ブリブリと物欲しそうに揺らした。
「Venus callipygeーー尻の美しいウェヌスか」
価値あるものを愛でるように妖艶な肉塊を撫でさすりながら、志藤が呟いた。
ラウンジで酒をやりながら聞かされたヴィーナスにまつわる逸話。怜子が先に部屋に戻って支度をしている間、志藤は何気なくそのことについてスマートフォンで調べていて、ばったりと行きついた言葉。それは官能の果実のような巨臀を形容するのにあつらえ向きの表現に思えた。しかも、持ち主の、豊艶で彫刻的な肉体美を考えれば尚更に。爛熟の愛人を”ヴィーナス“と呼ぶのにますますの悦を見出したのだった。
「また、そんなことを…よほど私のお尻が好きなのね」
満足気に女が返してきた言葉を聞いて、“そんな素養もあるのか”と感心して。
「これほど見事な、エロスの塊のようなヒップに惹かれない男なんて、いるとは思えませんね」
熱を帯びた分厚い臀肉をこねくり、ねちっこく撫でさすりながら、
「”bootylicious”。旨そうなほどに魅惑的なお尻」
続けて怜子の耳元で意地悪く囁いた。
「“あれ”以来、ますます美しく発達したように思いますし…何より、フェロモンが漏れ出しているように思うんですよ。ここから」
そう言って、窄みにくすぐりを入れると、双つの臀丘を拡げてみせた。
「ああぁ、そんなこと…」
怜子はわざとらしく否定して。
「いいえ、社長だって気づいているはずですよ。街中でも、オフィスでも、ふとした瞬間に。以前よりも熱い視線が向けられているのを」
この男の言う通りだ。再び関係を持つようになってから、不埒な“視線”を意識を意識することが増えた。そしてその過剰な自意識は、初めて“処女”をこの男に捧げて以来、強くなる一方で。もしかすると、この情人が口にしたように、自分では隠し得ない“何か”が分泌され男たちを誘っているのだろうか。
かつて己が誇った堅固な城壁が綻び、不埒な者たちに付け入る隙を許すことは、女王にとっての危機的状況のはずなのに。心理に湧き上がるのは切迫感とは程遠いーー優越と被服従の情感。
男たちの欲望を唆る我が肉体。その“主”となった男の強さへの絶対的な信頼。そして男に従属する悦び。もちろん、そんな心中を気取られないよう、社長としての振る舞いはこれまでと変わっていないはずだが。日を重ねるごとに深く濃厚なものになっていく男との関係においては、厚かましくも自らが抱えた“秘密”さえ淫情のシーズニングと化していた。
「残念ね。どれだけ熱いまなざしを注がれようと…もう既に“売約済”よ」