昔々のお話
まだ魔法が混沌としていた頃
その中で魔力ともう一つ
不思議な力を持ち合わせた一族がいました
彼らの一族はその力を恐れられ
関わる者は禁忌と 彼らは異端とされました
次第に純粋な魔力を持つ者との仲が悪くなり
争いが起ころうとしていたその時
純粋な魔力を持つ1人の勇者が
彼らに和解を求めました
“死者を見たくはない
人間とは自分と違う者を受け入れることが苦手なんだ
だから一一一一”
一族の長がその勇者を出迎え 話を聞き答えました
“いいでしょう
その変わり私達一族は闇の中で暮らします
私達への干渉は一切しないと約束して下さい”
その言葉に勇者は寂しそうに微笑んで去っていきました
その一族は永遠に和解せず
闇の中で生きると誓ったのです
闇の中で一族は生き続けました
その長い年月の間に彼らの魔力は薄れ
不思議な力だけが残りました
ただ1人 あの長の血を引く者以外は一一一一・・・
決して綺麗とは言えないけれど、それでも何処か安心する町。
「抜け出すのが目的だったからなぁ・・・今までは」
噴水の前で、アイスを買ってくると喜々として行ってしまったリリーを待ちながら、呟く。昨日食べたら美味しかったのよ、と微笑んで、近くもないのに走っていってしまった。もう何分経つんだろう。溜息をついて、噴水の脇に座り直す。この動作が何回行われたことか、もう数える気も起きなかった。小さいと言っても一つの町なのだ。噴水からあのアイスパーラーまでどの位だっただろうか、溶けないのだろうか、やはり自分も行った方が・・・後悔先に立たずである。もう一度溜息をついて空を見上げた。
「いい天気だな・・・」
「ジェームズ~ッ!!お待たせ!!!」
「お帰り。あれ?結局ソレになったの?」
少し息が切れ気味になっているリリーの腕の中にあるのはアイスではなく何かの飲み物。
「うん。店員さんに聞いてみたら間違いなく溶けるからやめておけって。ジュースにしたの。」
「そりゃぁそうだろうね。今日は暑いし・・有り難う」
「いいえ~。こんな素敵な噴水見せて貰えたしね。遠かったけど来て良かった~!!」
ジェームズの隣に座って手足をうんと伸ばす。それから買ってきた飲み物を飲みながら色々な話をした。
あたたかい町。隣に居る女の子のせいかもしれないけれど、優しい感じのする町。決して綺麗ではないけれど、でも安心できる町。マグルの町だって捨てたモノじゃない。むしろずっと・・・
「ジェームズ?どうかしたの?」
「え・・?あ、ううん。何でもないんだ。さて、そろそろお昼食べようか」
「そうね。あ!あそこは!?可愛いお店!!」
リリーが指差したのはなんともファンシーで可愛いお店だった。その方向をみてジェームズが苦笑して答える。
「どこ・・・ってあそこはケーキバイキングじゃ・・」
「いいんじゃない?さ、行きましょ!!」
「えぇ!?ちょ・・リリー!!待っ・・・」
ジェームズの声は 不可解な水の音と共に
途中で途切れた。
「シリウス!シリウス!」
「ん~?どうかしたか?」
「この子何ていう名前?初めて見た!!」
同時刻、シーナとシリウスはいつものように部屋でのんびりすごしていた。ベッドで悪戯グッズを広げているシリウスに、シーナがいつにないはしゃぎようで一匹のふくろうを指差し尋ねる。
「こいつはアルタイルだよ」
茶色の羽根が交じっているふくろうを指して答えた。
「こっちの子はっ?」
「こっちはペルセウス。」
もう一匹は同じ様な模様で、アルタイルよりは少し小さなふくろう。シリウスは全く持って無関心なのだが、シーナは二匹の名前を覚えると、水をあげてみたり話しかけたりしている。しばらく部屋に居た後、シーナのふくろう便を届けるために二匹とも飛んでいった。
「ねえ、他にもふくろうって居るの?ベガとアルタイルとペルセウスと」
「んと・・・あとペテルギウスと、リゲル・・かな。俺の知ってる限りだと。」
相変わらず悪戯グッズを品定めしながらシリウスが答える。
「みんな星の名前なんだ」
「ん。じーさんがつけたんだよ全部・・・」
「シリウスの名前も?」
「ああ。ふくろうと同じ扱いっぽいけどな・・・」
「あら、そんなこと無いんじゃない?」
シリウスのセリフをサラッと否定するシーナ。シリウスはベッドから顔をあげて、“何でそう思うんだよ”と目で訴えた。
「だって、シリウスって一一一・・・」
一一噴水に
一一・・リラ?
一一噴水の前にあなたのお友達が二人居る
一一・・・え・・・・・・
一一ピーターはこの前海外に行くと言っていたし・・・リーマスは今自宅だわ。さっき手紙が来た。ジェームズとリリー・・・?
「シーナ?」
「・・・シリウス、ジェームズの家ってどの辺り!?」
「え?」
唐突にされた質問と出てきた名前にシリウスは少し驚く。シーナがあまりにも真剣に聞いてきたので、何も言わず答えた。
「此処とは全く反対方向だよ。キングズ・クロス駅から・・・北の方向へ」
ゆっくり北の方を指差してシリウスが言う。
「その近くに、噴水ってある?」
「・・・いや、ポッター家に噴水はないよ。周りは森で囲まれてるし・・・」
何も聞かずに答えてくれるシリウスに感謝しながら、シーナは考えを巡らせる。
「・・・そう言えば・・・」
シーナの沈黙を破ったのは記憶を辿っていたシリウスの声だった。
「何?」
「この前手紙で、森の抜け道の話をしたんだ」
「抜け道?」
「ああ。1本そういう道があって、そこを通ると小さなマグルの田舎町に出るって・・・大きな噴水があるって書いて・・・ってシーナ!?」
シリウスが言い終わる前にシーナは部屋を飛び出す。シリウスは慌てて後を追おうとするが、シーナの姿はもうなかった。
「ジェームズ・・・?何処行っちゃったのよ~ッ」
そんなにケーキバイキングが嫌だったのか、等と考えながら、リリーは懸命にジェームズの姿を探す。何が起こったのか全く分からなかった。いきなり自分を追う声が途切れて、次の瞬間ジェームズはリリーの目の前から消えてしまったのだ。
「ジェームズ~!女の子を置いてどっか行くなんて卑怯よッ!!出てきなさいよ~!!!」
噴水の周りをうろうろしながら大きな声を出すも、空振りに終わる。ふと背後に気配を感じて振り返れば、そこには息を切らせたシーナがいた。
「ジェー・・・ムズは・・・ッ・・・?」
「シーナ・・・あなたどうして此処に・・・」
目を見開いてシーナに駆け寄る。シーナは質問には答えず、もう一度言った。
「ジェームズはいないの・・・?」
「それが・・・急に消えちゃって・・・」
「此処にずっといたの?二人とも・・・」
もう一度質問すると、リリーは心配そうな表情のまま頷く。シーナは“そう”と答えて息を整えようとした。そこにリリーが詰め寄って言う。
「シーナ、どうして此処にいるの?ジェームズは何処に行っちゃったの!?」
「必ず・・・帰ってくるよ。少し悪戯してるだけなのよ・・・」
「・・・タチが悪いわよ。そんな悪戯」
リリーの言葉に苦笑する。
「そういうことにしてあげてよ。・・・じゃ、私もう行かなきゃ」
「もう帰っちゃうの?」
「ん。勝手に抜け出してきたから・・・じゃあね」
まだ辛そうに呼吸しながら、シーナはリリーに手を振る。
「いつか教えてくれる?」
「うん。いつか」
リリーの言葉にもう一度微笑むと、シーナは走っていった。
一一・・・シーナ、昔話を思い出すんだ
「・・・ライラ・・・」
走りながら、頭にかすめた言の葉の主の名を口にする。ただ無我夢中に走りながら、ジェームズの無事だけを祈った。
“ねえ、どうして勇者は寂しそうに笑ったの?”
“長は光に焦がれてしまったのよ。”
“光?”
“そう、そして勇者も闇に焦がれた・・・”
“なあに?それどういう意味?”
“それは異端だから口に出してはいけないの”
そう、光に焦がれた長は一一一一・・・・・・
**********to be continued?************
久々です~・・・最近なかなかこれ一つに集中出来る時間がなくて・・・;ちょっといつもより短めだけど、まあいつも内容薄いので同じですか・・(汗)ジェームズが危機にさらされました。そして前後の昔話。・・・すっげぇ伏線張っちまった・・・。“勇者”は皆さん誰のことかきっとご存じかと。(本人じゃないですが繋がりが)やっとハリポタの話に繋がりそうです。いや、あんまり繋がらないか・・・(どっちじゃ)。
前回読んで下さった皆様に感謝v次回もお楽しみに!
つ、次はヒカカゲ・・・?