嫌いだった
だから思ってもみなかったのよ
あの出会いから始まった色々な出来事が
こんな結末に結びつくなんて
「ねえ、君の名字の二文字目って何?」
「・・・・・・は?」
会ったのは高校の入学式だった。
突然後ろの席から掛けてきた声がこれだ。
「お・・・だけど」
「そっか・・・俺朝菜だから仕方ないのか」
「あの、あんた何言ってんの?」
「いや〜久々に出席番号が1番じゃないからさ、気になって」
そういって笑う。
黒髪青眼なんて珍しい。
クウォーターかなんかかな。
「で、君の名前は?」
「・・・碧霧だけど」
「名前だよ、下の名前」
なんとなく、教えたら名前で呼ばれる気がする。
でもこのままずっと付きまとわれるのもイヤだ。
「・・・美郷・・・。」
「へぇ・・・俺は朝菜由紀っていうんだ。よろしくな、美郷」
「はぁ・・・」
ほら、やっぱり。
でもまぁこれで付きまとわれることはないかな。
とか思った私がバカだった。
その日からというものの、隙あらば付きまとわれる生活に陥ってしまったのだ。
「あはは!それで付きまとわれてんの!?美郷ってばマヌケ〜」
「うるさい。なぁ朝陽、朝菜って中等部にいた?」
友人の中野朝陽と一緒にお弁当を食べている時に尋ねてみる。
この学校、香橋学園は姉妹校を色んな所に持っている
かなり大規模な学校だ。
うちの学校は一応幼稚科からのエスカレーター式で
私や朝陽のように中等部からの子もいれば
初等部からの子もいて。
「知らないなぁ・・・結構かっこいいんでしょ?中等部にいたんならチェックしてる筈なんだけど」
「朝陽・・・。でもまぁ目立つ奴だしなぁ・・・高等部からかな」
「でも美郷が興味示す奴なんて。私も会ってみたいな」
「あぁ。真幸が既に収穫済みだぞ。会ってくれば?」
「真幸・・・早いわね」
真幸とは梓真幸、朝陽と同じで中学の時からの親友だ。
顔が広くて、あいつと知り合いじゃない男はいないという
なんだか訳の分からない肩書きを持っている。
「あれ?朝陽、美郷。弁当食ってんの?」
突然茂みの方から聞き慣れた声が聞こえる。
振り返れば、そこには真幸本人がいた。
「噂をすれば、だな」
「ねぇ真幸〜朝菜君収穫したってホント?」
「朝菜?ああ、今ね。美郷付きまとわれてるんだって?学年総代のくせにマヌケだなぁ」
「朝陽と同じ事言うな」
コンビニ弁当の唐揚げを口にほうり込みながら
正面に回ってきた真幸に蹴りを入れる。
「あはは。でも朝菜っていい奴だよ。かっこいいしな!」
「いいなぁ。ねえ真幸!私も会ってみたい!」
「ダメ〜朝陽は俺のだし」
「勝手にやってろバカップル」
さっさと最後の一口を食べて、ベンチを立とうとする。
「待ってよ〜美郷〜ッ!美郷が一番好きだからッ!!」
「え!?朝陽、俺は!?」
「そうね、私も朝陽が一番好き」
「ゲッ!こいつノッてやがる!」
笑いながら、色んな話をして
楽しい一時を過ごしていれば、案の定朝菜が来て
朝陽は大喜びだったけど。
「というわけで、学級委員立候補する人挙手〜ていうかぶっちゃけうちのクラス総代がいるんで、学級委員の枠はあと一人ね〜」
ホームルーム。
担任の先生がなんとも強制的に学級委員を決めるという内容。
・・・だから、朝菜の前でそういうこと言わないでよ
とか言えるはずもなく。
面倒くさいだとかいうブーイングの中
やはり後ろから声をかけてきた。
・・・徹底無視。
「ねえ美郷。総代って誰?」
「・・・・・・」
「美郷〜」
「総代は美郷だよ」
「え?そうなんだ。じゃぁ先生〜俺立候補!」
「・・・真幸・・ミンチにしてやる」
「あ、怖い。朝陽〜助けて〜」
「男が女に助けを求めるな!」
クラス中がどっと爆笑する。
結局他に立候補者がいなかったから
学級委員のもう一人は朝菜になった。
「よろしくな。美郷」
「あんたなんで私に付きまとうの?」
「・・・美郷が泣いてたから」
「は?」
少し ぎくりとしたのは
心当たりがあったからで
自分がずっと隠してきた気持ちが
こんな奴にばれてるかもしれないって
イライラすると同時に、不安になった。
その“不安”が 何を示しているのかは
分からないけれど。
ただ
そのせいで
忘れようとしていた出来事がフラッシュバックしてしまった。
ガタンッ
「・・・美郷?」
「気分悪い。帰る」
「ちょっ・・・美郷!ごめん、俺・・・」
「別に、あんたが悪いんじゃないよ?私が勝手に思い出しただけだから。じゃぁね」
朝菜が少し目を見開いた。
その時自分がどんな顔してたかなんて
想像もつかないけど
酷い顔だったと思う。
自分の居場所がなくなった気がして
無性に悲しかった
あの頃。
***********to be continued?*************
すみません・・・思った以上に話がこじれて前後編に・・・。番外編2は由紀と美郷の馴れ初め話です。これが終わったら次は茜の話の予定なので、少しでも明るくしたかったのですが・・。後編は真紀と早紀が出てくる予定。そして由紀視点なんかも。頑張ります。由紀像(笑)はオエビにありますが、美郷像は全然なんですよね・・・。私自身検討つきません(オイ)腰までの黒髪に黒眼かな・・・。口調は真紀と似てます。ていうか真紀の口調は美郷のが移ったらしいです。そしたら真紀のは完璧男言葉に・・・。まぁあれはあれでかっこいいのでオッケーですが(いいのか)なんっか今日は構成が浮かばなかった・・・。頭痛い・・・。以上。では。
前回読んで下さった皆様に感謝v次回をお楽しみにvチャット中の紫珠葉でした☆