覚書
小説に成りきれない雑文や、日々の語りなど。| ベルウィックサーガ | |
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| [162] 2006年02月26日 (日) 21時30分 ベルウィックサーガ | |
| …あ、 と。 気がついた時にはきっと、手遅れだったのだ。 背を滑る、清らかな川のように美しく青い髪に目を奪われる。 鼻先を掠める、仄かに甘い香りと。 「どうかしたのですか?」 捉える、深い色の瞳に。 「――――――――――っ、いいえ、なんでもありません」 見惚れてしまっただなんて、どうして言えるのだろう。 「だったら良いのですが… 具合の悪い所があったら、すぐにおっしゃってくださいね」 心優しく美しいシスターがそう言い終えるや否や、遠くから彼女を呼ぶ声がした。 フェイは弾かれたようにそちらを返り見る。 「クレイマー、どうしたのですか?」 余裕の無い表情から、何か大事があったのかと察したシスターが、そう切り出した。 「えー、と。ディアンがさっき、アレックスの酒場でさ」 駆けつけたのだろう、血色の良い頬が一層赤味を増していて、体力に自信があるはずなのにその息は荒かった。 それでも、うっかり口を滑らせないようにとアレコレ考えながら言葉を選んでいる様子がおかしかった。 「…こんな時間に?」 「飯!飯食いに行っただけ! それに、こっちから手を出したわけじゃないんだよ。あんまり怒らないでやってくれよな」 ―――酒場、と聞いて顔色の変わったシスターに、クレイマーは大げさに両手を振って訂正する。 あぁ、ほら、やっぱり機嫌を悪くする! ここで説教をされてしまっては話が進められない。 「…私は別に いつも怒ってるわけでは…」 「わーかってるって。"心配"なんだよな?」 「………クレイマー。」 「ははっ じゃ、そうゆうことで。部屋には運んでおいたから、あとは頼んでいい?」 品行方性なシスターを軽くからかい、あとの説明は一切省いて本題を持ち出す。 それ以上の追求を防ごうと、立ち去ろうとしたところですかさず声をかけられる。 ―――お互いの行動をよく読みあった行動だ。 ぽつりと取り残されてしまったフェイは、会話の行く末を見守るしか出来ない。 「待って」 「ん」 「あなたも。」 シスターの伸ばした手が、クレイマーの日に焼けた腕を捕まえる。 彼女の白い指先には、赤く浮かびあったミミズ腫れの痕。 「………目ざといね」 「本職ですので。 "心配"なのは…あの人に限ったことではありませんよ」 肩をすくめて姿勢を正した彼に、イゼルナはハーフヒールの聖玉の力を分け与えた。 きっと、制止に入った際に受けたのだろう、他にもいくつかの痣や裂傷が、綺麗に治る。 「ありがと。 俺もあいつも…シスターには感謝してるんだ。 あんたがいるから、なんだってできる気がする」 「だからといって、無茶なことばかりしないでください!」 「あははは ほら、そうやって怒る。 早くディアンのとこにも行って、説教してきてやって」 「〜〜〜もうっ」 これ以上の会話は無用と判断し、顔を赤らめたシスターは肩を怒らせたまま踵を返してしまった。 去り際、巻き込まれる形になってしまったフェイへ、すまなさそうに会釈を一つ残して。 「…っと、悪かった。 もしかして、おしゃべり中だった?」 それからようやく、クレイマーがフェイに声をかけた。 今まで、自分のことなど目に入っていなかったのではないだろうか…フェイは苦くそう思う。 「あ、いえ、たまたま… すれ違っただけで」 「? そう?」 「…綺麗なひとですよね」 「そうだな」 ぽつり。思わず口をついて出た言葉をあっさり肯定されて、フェイはその先を何も言えなくなってしまった。 ――――何を言っているのか。 羞恥で顔が熱くなった。 こんなの、ただの、みっともない嫉妬だ。 わき目も振らずに名を呼ばれ、信頼されて、笑いあう彼女を。 羨ましいと思っているのだ。 自分は、彼女のようにはなれないと、思っているから。 「フェイ、腹減ってない?」 「え?」 うつむいたままの彼女に、突如投げかけられた言葉の意図は不明。 反射で顔を上げれば、クレイマーは力なく笑っていた。 「昼飯さ。ディアンのケンカに巻き込まれて食いっぱぐれちまったんだよな。 もしまだだったら、一緒に行かないか?」 「…私で いいのですか?」 「? フェイだから誘ってるんだけど。」 その言葉に、きっと他意はないのだ―――― わかってる、わかってるのに。 「はい、是非―――」 うれしい。 自然に、笑顔が浮かぶ。 よかったと、安心したようにクレイマーが笑うから。 自分の居場所を見つけられた気がした。 胸に巣食うわだかまりが、ゆるりと融けてゆく気がした。 心細そうに、自分の服の裾を掴んでくる手の小ささに、ふと気がついた。 気を張っている普段なら、決してそんなことはしないから、見落としていたけれど。 「クレイマー?」 視線に気づいたのだろう、彼女が見上げてくる。 その眼差しに。 ――――――あ、 と。 気づいた時は、きっともう、手遅れだったのだ。 …………えーと すみません。 ほんっとにあやまってばかりだな! ディアン関連で話し込む、イゼルナとクレイマーという図が、実は好きだったということに気づきましたよ。 「ディアイゼ」「クレフェイ」それだけだったら、私の中では頭打ちなのですが、お互いを絡めながら人間関係の描写を深めていく…のであれば、まだいけるかもしれない。 だけどそれって、公式からはどんどんズレこんだ内容であって、読んで下さる方がどこまでついてこれるのか。…。 小ねたから一体どれだけが表へ上がれるやら。あははははは |
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