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覚書

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ベルウィックサーガ
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[88] 2005年09月28日 (水) 19時10分 ベルウィックサーガ
 血と土煙の染み付く戦場から離れたかと思えば、戻る先は薄闇と黴た臭いの地下牢。
 気が滅入ったりなどはしない。するものか。
 生きて帰ってきたことを誇りに思う。
 再び、主君の刃となる時を待つだけだ。
 言い聞かせて、ラレンティアは今日も牢の隙間から覗く窓の彼方、薄く青い空を見上げた。
 つい先日まで、自由に空を舞っていたのが、こうしていると嘘のよう。
 仲間達と声を掛け合い、戦っていたのが…夢のよう。
 鉄格子に肩を預け、座を崩す。
 目を閉じると、太陽の名残が環を描いてまぶたに消える。

     カサ

 目を開けた。
 小さな音と、頬に、冷たい何かが当たって。
「なんだ!?」
 看守が驚きの声を上げる。
 ラレンティアが顔を上げると、小さな花束が窓から投げ込まれていた。
 頬に当たったのは、ひらりとこぼれた花びらの一枚。
「……え?」
「ラレンティア!!」
  ―――――――――嘘
 驚いて、声を返すことが出来ない。
「あ〜〜、駄目だったか。今、そっち行くから!」
 嘘。嘘よ、こんなの。じゃ無かったら、都合のいい…
 花束は看守が拾い上げ、しばらく上と下とを交互に見た後…やがて訪れるであろう騒がしい存在を待つことにしたらしく、手折られることなくその無骨な手に納められていた。
「入るぜ!」
 がしゃん、と開けられた鉄扉。入り込む光。
 ラレンティアは眩しさに目を細めた。
「元気か? って、まぁ一昨日会ったばっかりだけどさ」
 笑いながら、近づいてくる青年。息を切らせて。
「おい、傭兵がこんな場所へ――」
「あ、俺、昨日付けでシノン騎士団員になったんだ。よろしく。あ、コレ団員証」
 行く手を阻む看守に手早く証を見せ、彼はずかずかと入ってきた。
「拾ってくれたんだ、ありがと。やっぱカッコよくは行かないなー」
 笑いながら、花束を拾い上げた看守から返却してもらい、鉄格子の向こう側、座るラレンティアに視線を合わせ、しゃがみこむ。
「これ…  こんなんで喜んでもらえるか、心配なんだけど。ラレンティア、貴女に」
 ふわり、花の香りがラレンティアに捧げられる。
 ―――――――都合のいい……夢じゃ、無い…?
「クレイマー… どうして」
「貴女がいなかったら、バルムンクを取り返すことは出来なかった。
 それを、リース様は俺に授けてくれたんだ… 俺は、リース公子の部下になったんだ」
 貴女と同じだね。
 言って、クレイマーが笑った。
「――――――――ッッッ」
 きゅ、鉄格子を握るラレンティアの手に、力が込められる。
「だから、どうしてもお礼がしたくて… どんなものがいいか、すごく悩んだんだけど」
「…嬉しい 嬉しいわ、クレイマー。とても」
 あぁ、きちんと目を見て言いたいのに。
 声が、詰まって、なかなかすんなりと出てくれない。
「ホントか!!? …よかった」
 あぁ、きっと彼は今、極上の笑顔をしているに違いない。
  ―――…でも、駄目。
 だめ。ラレンティアは自分に言い聞かせる。
「…ラレンティア」
 そ、と握る手に、クレイマーの手が重ねられる。自分より年下なのに、力強く骨ばった、男性の手だ。
「あの時、貴女に声をかけてもらって…背を押してもらって、俺、すごく勇気が出たんだ。
 だから… 俺も、貴女に何か返したいって思った。
 今はここからあなたを出してあげることも出来ないけど…いつか…」
「………クレイマー」
「だから…その また。戦場で待ってる。」
 まったく持って色気もそっけもない台詞ではあるが、それが剣士として、竜騎士である彼女に対しての、精一杯の言葉であることを、ラレンティアは知っている。
「…はい。私も。」
 ようやく、顔を上げることが出来た。
 うまく、笑えているだろうか。
「じゃ! そういうことで!! また来るな!」
 目が合った、思ったその瞬間に、クレイマーは手を離して立ち上がって踵を返した。
「あ、」
 次に名前を呼ぶ前に、疾風の二つ名の通りの素早さで、彼はこの場を去っていってしまったのである。
「…何なんだ」
「さぁ…」
 看守達が顔を見合わせているが、そんなことラレンティアには関係ない。
 立てた膝に顔をうずめ、耳まで赤くなっていた。
  ――――――――可愛い…!!!!!!!!!
 …必死にこらえていたのは、そう叫びだしたい衝動である。
 おそらく隣にディアンが居ようものなら、彼を撲殺していたに違いない。
 ――――それに…
 それに、と思う。
 …可愛いだけじゃ、ない。
 不意に重ねられた手の、暖かさを思い出す。
 自分から触れた時にはまったく感じなかった熱だった。
    …うそみたい
 それでも、生まれ始めた鼓動は確かなもので、手余ししてしまう。
 どうしようかな。
 春の色で統一されたセンスのよい花束はきっとエルバートの口添えだ。
 モノトーンの牢の中、ひときわ暖かなその存在を見つめ、ラレンティアはクスリと笑った。

---------------------END.

えへ。やっちゃった。第2弾です。
捏造ですけれど、でもうちのクレイマだったらやりそうだなぁ、こういうの。エルバート兄さんの口添えで(笑)。
無意識で女の手を握るクレイマ萌え。(後でハッと気づいてバッと離してダー…っと。)
で、ラレ姐さんとしてはクレイマは萌えの対象だったのが、徐々に変わっていくという。
ていうか萌えの対象って何だよ。(笑)

[90] 2005年09月29日 (木) 09時45分 CAFE
ぎゃーーーー!!!ありがとうございます、ありがとうございます!!(嬉泣)とても大好きな展開になってきましたよ〜。私の竜姉さんもこういうイメージですよ♪わーい!!理解者がいて下さって嬉しい限りです♪♪やっぱり竜姉さん素敵だ!!
私の中では姉さん、フェイとからませてクレイマの事でフェイをからかったりしていたり…。フェイ↔クレイマ←ラレンティアになりつつある…(捏造もいい所ですね、失礼しました)。


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