覚書
小説に成りきれない雑文や、日々の語りなど。| 烈火の剣 | |
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| [51] 2004年04月13日 (火) 03時06分 烈火の剣 | |
この声が枯れるくらいに 君に好きだといえばよかった 会いたくて仕方なかった 何処にいても何をしてても ああ 季節は思ったよりも進んでて 思いをかき消してく 気付かないほど 遠く ―――もう二度と戻らない恋 痛みだけがちょっと動いた 「なに感傷に浸ってんだ?」 もう、すっかり耳に馴染んでしまった声。 自分にしては大変不器用な笑みを乗せて振り返れば、相手も苦く笑いを返した。 「ラガルト」 名を呼ぶ声色にためらいは感じられない。 「行くぜ」 そう言って、差し出してくる手のひらにも。 ―――そうであることが、当然であるようにするんだな。 冷たい風にさらされてひび割れた心に、暖かな潤いが戻ってくる。 「――――、」 ラガルトは青年の手を取り、名を呼び、抱き寄せて口付ける。 確かめるように、何度も、何度も。 「・・・な、ん、だよ」 呼吸の合間に上がる疑問は決して不機嫌なわけじゃない。ラガルトのこんな突飛な行動には、とうの昔になれている。 「いや、―――生きてると思ってさ」 「…当たり前だ」 「………生きてる」 噛み締めるように繰り返す言葉は、もう自分に向けられているものではないことがわかった。 ラガルト、全く、お前と言う奴は。 からかうような言葉、仕草、行動。そのどれもが、心に開いた穴を塞ぐ為のものだと、自覚していないだろう? お前が捨ててきたもの、それを満たす為だけの。 「は、………っ!マ、」 歯列をなぞる舌を軽く噛まれ、思わずラガルトが身を引いた。 「あのっ、な…」 「…覚えとけよ、ラガルト」 でも、そんな存在である自分なんて、許せない。自分をそんな存在におさめることは、許さない。 だから。 「それが、おれの味だ。覚えとけよ。」 目を瞠るラガルトの隙をついて胸元を掴み、首筋へ強い強いしるしを遺して。 「忘れるな」 視線を交わす暇を与えない素早い行動に、ラガルトが呆気に取られているうちに、青年は笑み一つ残して風の中に消えていった。 「―――――、」 宙に青年の名は飲み込まれて、ラガルトは数度口を動かしたあと――― 「ありゃあ、追わなきゃダメだねぇ…」 誰に言うでもなく呟けば、青年を追って走り出した――― 何処かの暗い場所へと投げ出されたって 何も見えなくなってしまっても 君の光だけは見失わない 心の深いところで繋がってる 言葉にはしないけれどもわかるよ 繰り返す輪廻の果て 出会った奇跡 永遠に続く… |
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