覚書
小説に成りきれない雑文や、日々の語りなど。| 烈火の剣 | |
| 現在このタイトルは、54 pointです。【投票する】 | |
| [47] 2004年03月23日 (火) 03時32分 烈火の剣 | |
「もういい…黙ってろ、お前は」 呆れた主君の声が、熱を帯びて耳に落とされる。 ゾクゾクする物を感じながら、それでもマシューの口元には笑みが刻まれたまま。 「わかりました。その分、若さまが一杯喋ってくださいね。声…聞かせてください」 「………そぉいうことをっ 黙れといっとるんだ」 いい加減にしろと、怒気を込めながら、乱暴に唇を塞ぐ。 最初に教えたのはマシューだったが、しかしこんな荒っぽい方法ではなかったはずだ。 全く、なんでも我流にしちまうんだから…、 楽しむ以外の何物でもない感情を抱きながら、マシューは腕を伸ばしヘクトルの首を抱き寄せ、呼吸の合間に舌を絡ませる。 「…あ…、…んんっ」 その全てを飲み込むかのように、ヘクトルも激しく答えて。 頭の中が真っ白になる。 目を閉じて、行為に没頭する。 シャツの中に滑り込む熱い指、下衣に潜り、マシュー自身を取り出して。 「やぁ…、若さま……」 快楽のままに零れる言葉は甘さしかない。 そんな自分の声にすら酔える、この男相手ならば。 身を翻し、腰を突き出して、求めることができる。 「若さま…っ、おれ…も…、……もォ」 我慢できない衝動を告げ、ねだり、 「しかたねぇなぁ」 答えてくれる、低い声が背後から肩に噛みついて。 己の先走りをなすりつけた指を、餓えに埋め込んでゆく。 「…まだ足りないか?ん?」 言葉が出ない、必死に首を横に振って答える。 足りない、こんなんじゃ。おれが求めているのは、欲しいのは。 「あげます…若さま…おれの……全部、あげますから…」 だから、あなたのすべてをおれに。 「ざけんな… おまえはとっくに」 俺のものだってぇの。 不敵に笑いながら、 ヘクトルはズボンのベルトを外した。 吐き出して。熱を吐き出して。 身の中へ。外へ。何度繰り返したかわからない。 それでも全然足りなくて、餓えていて、自身へ唇を付けると、止めろと引き離されて、代わりに再び唇を重ねられた。 最初とは違う、ただただ優しくて甘いキスに、全身からちからが抜けて、くたりと倒れこんだところに、そっとヘクトルが圧し掛かる。 マシューは薄く笑いながら、すみませんと一言告げてその背に腕を伸ばし、しがみつくように抱きしめる。 応じたヘクトルは、キスを唇から額、こめかみへと落としていく。 首筋を跡が残るほど吸い付かれて、マシューは小さく声を上げた。 ―――あぁ。離せない、この広い背中は。 「若さま…、すきです」 熱に浮かされて、ふわりと言葉が宙に舞った。 「すきです…すきです」 子供のように、何度も何度も、うわごとのように呟くマシューの様子を、ようやくヘクトルはおかしいと気付く。 「…マシュー?」 味わうことに夢中になっていたその肌から頭を上げて、ヘクトルはマシューの顔を覗き込んだ。 「……どうした?」 ほんとに、どうしたというのだろう。マシュー本人にさえわからない、 頬を伝う、幾筋もの熱い涙の理由。 暖かく抱きしめる強い腕 涙を吸い取る優しい唇 髪を梳く、不器用な指先 その全てが。その全てを。 喪った。捨ててきた、あの男へ。 ―――どうしておれが、背徳を覚える? あぁ。 嫌だ。 若さまと一緒にいるときはせめて、意識の欠片にさえ存在させたくないのに、あいつのことなど。 どうして、 いつの間に、 こんなに、…? 「マシュー?」 違う、あいつの声はもっとハスキーで 「おい、マシュー」 あいつの指は冷たくて 「どうしたんだよ」 冷たい髪が、雨のようだといったら 見たことも無いような笑顔をして――― ”あいつも同じことを言ってたよ” 「や…」 嫌だ 「らがると」 おれだけを 無意識。 けれどそれは紛れること無い本心であって―――― 闇に飲まれたその名前に、口にしたマシューこそ、心臓を冷やした。 「っ、おれ!!!!」 一気に思考が冷める。 今、自分は、何を言った――――――――!? 跳ね除けられたヘクトルはまだ呆然としたまま、で。 「あ、…、・………」 告ぐべき言葉が出てこない。浮かばない。 惑っている間に、ヘクトルの瞳に火が点く。獲物を狩る野獣のそれだ。 ダンッ、 感じたのは衝撃、壁に叩きつけられた。 次に来るべき拳に目を閉じる。 ギシ、ベッドが軋む。 「―――――――――――――――――、」 沈黙に。 マシューが恐る恐る目を開けると。 シャツだけを羽織った主君が、乱暴にドアを叩きつけて部屋を出る、ところで―――――― 「わ、」 「しゃべるな」 最後に告げたのはその一言。低く低く、冷たい声色。 それだけでマシューはその場に縫いとめられる。 大きな足音が遠ざかる、聞こえ無くなっても、まだ、 圧し掛かる背徳、それは一体、誰に対しての? …ヘクマってそういえば…初書き…?ていうか禁物自体…。 ぬるくてイタくて大変申し訳ない上にやっぱりラガ落ちかよ!!!なのですが…もしもご覧でしたらその、餓えてらっしゃる楽園の方へ…(びくびく) |
|