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覚書

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烈火の剣
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[42] 2004年02月05日 (木) 21時32分 烈火の剣
 必要な神将器も手に入れた一行は、打倒ネルガルの言葉のもと、最後の準備を整えにオスティア城を訪れていた。

 侯弟の客人たちとして迎えられた一行と、また別に密偵や暗殺者たちには専用の部屋があるという。
「この先に俺の部屋がある。しばらくの間、狭いが我慢してくれ」
 案内したマシューに、ラガルトはヒュウと口笛を吹く。
「すごいな、一密偵が城内に部屋を持つなんて。あんた、そんなに位が上なのか。こりゃあ態度を改めないといかんかな」
「…そんなんじゃねぇ。そら、さっさと行くぞ。」
 軽口には取り合わず、マシューはすたすたと歩き出した。
 その後をおずおずとジャファルが、後尾をラガルトがゆっくりついてゆく。

 決して複雑ではないはずのオスティア城を、3人は―――どのくらい歩いているのだろうか。
 3階まで上り、かと思えば下り、奥へ行って角を曲がっては引き換えし…、何かの仕掛けを操作しながらだということはわかるので、その手順をジャファルは逃さず記憶に書き込んでいる。
 角の向こうにマシューが消えた。追うジャファルが半歩、足を踏み出して…止める。
「…。」
 感じたのは、隠そうともしない剥き出しの殺気。
 1、2、…6。正確な数を打ち出して、ジャファルは顔を上げた。
 柱の陰、天井の裏、場所と照らし合わせて。
 小さく息を吸い込んで、腰に差した得物に手をやる。
 足を踏み込み、短剣を引き抜いた瞬間に。
   ぐっ、
 小さな飛礫がジャファルの頬に当たった。
 違和を感じ、振り向けば、いつの間にか自分の手首は強く捕まれていて。
 何をすると問うた瞳に、ラガルトは軽く首を振っただけだった。
 そして視界が赤いマントで覆われる。
「!!!!!!!」
 マントを突き抜けた数本の短剣が、寸でのところでジャファルの目前で止まる。もしも引き止められずに飛び出していたら、身を傷つけていただろう。
「マシュ―!!!どういうつもりだ!!!」
 思いは言葉にならず、まったく知らない声がそう叫んだ。
 柱の陰から出ていた赤髪の男は、大股で歩み寄り、マシューの胸座を掴んだ。
「どうもこうもない、クレスト。こいつは味方だ」
 ばさり。赤いマントを掛けられたジャファルは、それを取り去る手を思わず止めた。
「何言ってやがる!報告は受けてるんだ、レイラが…レイラはこいつに
「クレスト!!!」
 マシューの声が、男の言葉を両断した。
「おれはお前たちが何を言ってるのかわからねえ。何をしてるのか理解できねぇ。」
 冷えた瞳で、マシューは言った。回廊に潜む、オスティアに義を誓った密偵たちに向かって。
「おれ達の主は誰だ。主が認めた者を、手にかけるのか。それが義だというのか。あいつが、望むとでも!?」
 返る声は無い。
 マシューは警戒を解かぬまま、小さく息をついた。そしてようやっと振り返る。
「ジャファル。無事か。」
「………」
 凝視したままの彼に笑いを誘われながら、マシューはジャファルの肩を抱き寄せた。
「行くぞ」
 そのうしろで、「オレの心配はー?」などとふてくされる男がいたが、気にしないでおく。


「…嘘つき」
 ようやく辿り着いた部屋に入るなり、ジャファルが大きく呟いた。
 ラガルトは吹きだし、マシューはベッドに足を突っかけてよろめいた。
「オレを味方だなんて、思っていないだろう?」
 振り向けば、眉根にしわを寄せた少年が、上目遣いでこちらを見ている。
 マシューは深くため息をついた。
「…少なくとも、オスティアの敵ではないだろう。」
 今は。
 付け加え、マシューはジャファルの髪をくしゃくしゃになでつけた。
「理由はさっき言ったとおりだ。主君の命には絶対に従う、それがおれ達のルールだ。そこに感情なんて挟んでちゃあ仕事にならねぇ」
「………」
「わかったらそのシケた面をどうにかしろ。これからミーティングがあるんだ、休む暇はないぞ」
 撫で付け最後に手のひらで額を弾いてやって、マシューは入り口に立ったままのラガルトの肩を掴んでは部屋を出てゆく。
「………」
 何か、胸に、引っかかる。
 しかしそれは明確な疑問の言葉としては形を成さず、ジャファルは静かにそのあとを追うことになる。





ひ、ひとまずここまで。
そして落ちがラガマシュなのは想像に難く無く…。…。

  


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