覚書
小説に成りきれない雑文や、日々の語りなど。| 烈火の剣 | |
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| [37] 2003年12月05日 (金) 03時42分 烈火の剣 | |
今なら…今なら、自分だけのものにしてしまえるような気がした。 過去に縛り付ける記憶も、未来へ馳せる希望も忘れ去っているなら、今の自分だけを見させることができると―――――― 「…止めた」 とん、軽く胸を突き放し、マシューは唇を拭った。 「…マシュー?」 だってそんな理由、情けなさ過ぎる。 「お前の記憶が戻るまで、続きはお預けだ。」 「なんだそれ。」 思わず、ラガルトが笑った。 「選択肢を消すしかないなんて、そこまで自分に自信無いなんてかっこ悪いだろ」 「?」 何のことを、言っているんだろう。 「選ばせてやるよ。それでも」 お前は俺を選ぶだろう。 …選んで欲しいと、思ってしまうから。やっぱり今は、お預けだ。 「マシュー、おれは」 言い募るラガルトを笑顔で制して、マシューはそのまま姿を消した。 「……何だあれ。」 火照る顔を片手で覆って、ラガルトはずるずると壁に背を預けた。 カッコよすぎるだろ…。 どうして思い出せないのだろう、忘れてしまったのだろう。 きっと自分は彼を好いていたに違いない。触れた唇の甘さだけが、いつまでも消えなかった。 懐かしいと…ぽたり、水を落すように、そう感じた。 その奥にあるであろう、火のような熱を思い、目を閉じる。 「…………マシュー」 あんたしか、居ないと思うよ、おれには。 いつぞやのネタの続き、というか断片。 こんなこと言っといて、ラガさんの記憶がホントに戻ったらどうするのですかマシューさん…? |
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