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覚書

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烈火の剣
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[17] 2003年07月11日 (金) 01時07分 烈火の剣
 バタバタうるさい足音、それから少年のわめき声と、しかりつける青年の声。いずれも聞き覚えのあるもので、しかし馴染みのない取り合わせで…、ウーゼルは自室からひょいっと顔を出した。
「………何をやっている?」
 どちらへとも無く訊けば、青年と、彼に摘み上げられている少年は、苦笑を浮かべ、こちらを向いた。
「これはウーゼル様。いえ、コソ泥がこちらへ忍び込んだものでして、捕らえた次第であります。」
 空いている右手で敬礼をして答えたのはオズイン。最近ウーゼルの近衛として配属された騎士だ。
「…コソ泥?」
 そして彼の逞しい腕に羽交い絞めにされている少年へと視線を落す。
「ははは、どもっ、殿!」
 ウーゼルの訝しげな視線を受け、乾いた笑いを浮かべたのは…マシューだ。
「―――その呼び方は止めろと何度言った。」
 呆れながら、ウーゼルは少年の額をぺちっと叩く。
「……は。あの、ウーゼル様、この者とは?」
「あぁ、オズイン。これは私の密偵だ。離してやってくれるか。」
「!!! そ、それは」
 オズインは慌てて手を離す。だから言ったでしょ、と可愛げ無く言って、マシューはひらりとウーゼルの横についた。
「まったく…自分の城内で捕まってどうする、マシュー。」
「へへ。でも、無事に帰ったんだからいいじゃないですか。」
「そう言う問題ではない。」
 声に少し怒気を含め、ウーゼルは腰を折ってマシューを抱き上げた。
「ヘクトルのところには?」
「行って来ました。ちゃんとお土産も渡しましたよ。」
「そうか。ではゆっくり話を聞くとしよう。 …オズイン!」
「は、はい!」
「一刻半後に、食事を持ってくるようメイドに伝えておいてくれるか。それまでは人払いを。」
「はっ」
 もう一度敬礼をして、忠実な騎士であるオズインは踵を返し立ち去っていった。
「…いっこくはん。」
「なんだ?」
「いえ…それで足りるのかな、と。」
「………お前な。」
 素朴に聞いてくる少年に、ウーゼルはがくりと肩を落とし…、ゆっくりと自室の扉を開けた。


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