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[29] ゆく秋のあはれ
大滝 - 2021年11月05日 (金) 15時33分

ゆく秋のあはれを誰にかたらまし
           良寛
NHKの「100分で名著」でドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」
をやっていた。「カラマーゾフの兄弟」は二十歳の時に読んで以来、僕

の人生に決定的な影響を与えた。その後10年ごとに読みかえしている。
今読んでも、その時のテーマは解決していないように思える。

神は存在するのかしないか。
「神はいないとするイワン(西洋合理主義の象徴)の主張はごくまっと
うであり理にかなっているように思える。世界は悲惨が満ち溢れている

のに、どうしてこれを神が造ったといえるのか。これがイワンの不信の
核心だった。なかでもイワンが最も悲惨な例としてアリョーシャ(神は

ありとする宗教の象徴)にぶつけるのが幼児虐待の問題。イワンがこれ
でもかと例を挙げていく。トルコ人がブルガリアで、妊婦の腹から短剣

で赤ん坊をえぐり出した話、無邪気に笑う赤ん坊の頭をピストルで粉み
じんに打ち砕く話、夜中のうんちを知らせなかったといって幼い息子に

殴る蹴るの虐待をするロシアの「教養ある両親」の話、そして最後に、
飼い犬に石をぶつけて怪我をさせたという理由で、少年をひと晩仕置き

部屋に閉じ込め、翌朝、素っ裸にして猟犬の群れのなかに放り込んで
嚙み殺させた地主の話…

この地主の話を念頭に置いて、イワンはアリョーシャに最後通牒を突き
つける。「さあどうだ…こいつをどうすればいい?銃殺にすべきか?道義

心を満足させるために銃殺すべきか?言ってみろ、アリョーシャ!「銃
殺にすべきです!」とアリョーシャ。」

神が存在するのであれば、なぜこの悲惨な状態を放っておくのか?今で
も理不尽で悲惨な状態が世界には満ち満ちているのに神が存在している
とすれば神は一体何をしているのだというのがイワンの考えであると思
われる。アリョーシャが、「銃殺すべき」と答えたのは、宗教者であるア

リョーシャさえも神に対する不信の念があるのではないか? 戦争とか
自然災害とか犯罪とかで、いとも簡単に、理不尽に、生命が奪われていく。
この悲惨な状態が頻繁に生じているこの世に神は存在するのか?

親鸞は、「善人なおもって往生すいわんや悪人をや」というけれど、悪人
はやっぱり地獄に落ちるべきだろう。真底、地獄に堕ちることの恐怖を

味わなければこの世から悲惨な事件はなくならないのではないかと思
える。死んだら天国?甘いぞ!親鸞も「地獄は一定すみかぞかし」と
いっているではないか?矛盾しているけれど…

「カラマーゾフ」は、老齢となったいまでも、いろいろなことを考えさせて
くれる。



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