| [170] 岩田明子氏著 「安倍晋三実録 」（文藝春秋 2023/6/21）より |
- 明烏 - 2023年11月28日 (火) 01時18分
岩田明子氏著 「安倍晋三実録 」（文藝春秋 2023/6/21）という本があります。
「安倍氏に最も食い込んだ記者による「安倍評伝」の決定版!
「回顧録」で明かされなかった肉声をふんだんに収録。暗殺前夜も電話で話した、20年間の取材の総決算! 」という著書です。この本には、著者が取材した森友事件についての記述があります。例えば、以下のようなものです。
「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに､もちろん事務所も含めて、一切関わっていないということは明確にさせていただきたいと思います。 私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきりと申し上げておきたい」
二〇一七年二月十七日の衆院予算委員会の場で安倍はこう答弁している。 民進党の福島何事が質問に立ち、昭恵が名誉校長に就任したことや、当初は籠池が「安倍晋三記念小学校」の名前を付けて寄付金を募っていた事実を問うた時のことだ。
全国にテレビ中継される中で「総理や議員も辞める」とまで踏み込んだ安倍の強気の発言は、瞬く間に波紋を呼んだ。以降、この発言は安倍の責任を問う場面で幾度となく報じられる。
一年後に財務省による改竄が発覚した際には、この発言をした安倍への“忖度”が財務省職員を突き動かしたと指摘された。 学園との交渉記録の中で、昭恵や政治家の名前が出てくる箇所が削除されていたからだ。実際、安倍との答弁で森友問題は一気に政治問題化し、野党は勢いづ
いた。安倍は自分で自分の首を絞める事態に陥ったのだ。
当時、私はすぐさま安倍を取材して真意を問うている。
「なぜ、あのような答弁に踏み切ったのですか。 歴代総理を見ても、鉄壁の答弁をするか、そうでなければ、「分からないので調べます」とかわすかのどちらかでした。 総理自らが退路を断ち、選択肢を狭めるような答弁をするのは異例ですし、迂闊にも感じます」
すると安倍は、ピシャリと私を制止する調子でこう言い放った。
「私は国有地払い下げには何も関わっていない。だから、はっきりさせておかないと」
安倍は自信に満ちあふれていたが、その答えを聞いても、私は腑に落ちなかった。だが、 後に安倍は「実は過去に成功体験があった」と、この答弁の背景を語っている。（同書 １９４〜１９５ページ）
この部分は、世間で喧伝された安倍総理が国有地の払い下げの介入に関与しなかった、少なくとも安倍晋三氏はそのような認識を全く持っていなかったことを示しています。
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| [171] 松井一郎も「政権が転びかねない」 |
- 暁烏 - 2023年11月28日 (火) 20時28分
松井一郎も「政権が転びかねない」
岩田氏の著書の続きです。
二〇一七年に森友問題が過熱し始めていた頃、私は東京・紀尾井町の「ホテルニューオータニ」で、大阪府知事の松井一郎や市長の吉村洋文、大阪維新の会の議員らを取材していた。
「安倍さん、大変やなぁ。野党が束になって飛び掛かってもビクともせんかった安倍政権が、 大阪の一人のおっさんで、こてーんと転びかれない状況やね」
煙草の煙を燻らしながら、松井はこう口にした。傍にいた吉村は「ただ、籠池に違法な行為があるならば、それを看過するわけにはいきませんね」と呟いていた。
その後、大阪府大阪市はそれぞれ、森友学園が運営する幼稚園への補助金を不正に受給した詐欺容疑で籠池を刑事告訴している(籠池は同年七月に大阪地検特捜部に逮捕され、その後起訴。 二〇二三年二月に懲役五年の実刑判決が確定した)。この時の吉村の冷静な話しぶりと実行力には驚いたが、むしろ私の印象に残っているのは松井の発言の方だった。 第2章で述べたように、二〇一二年に松井は橋下徹とともに野党時代の安倍に維新との合流を持ちかけてる。それから五年、マスコミや野党だけではなく、安倍にシンパシーを感じていた政治家までもが、森友問題が安倍政権を転びかねない」 苦境に追いやると見ていたのだ。
しかし、安倍は頑なな姿勢を取り続けていた。二月十七日の予算委員会の場では、熱烈な安倍の支持者だった籠池のことを「教育に対する熱意は素晴らしい」と評価していたのが一転。 わずか一週間後に安倍は「教育者としてはいかがなものか｣「非常にしつこい」と突き放す答弁をしている。こうした安倍の発言が籠池の恨みを買い、 国有地売却をめぐる昭恵や財務省との関係の暴露へと駆り立てたとも指摘されている。（以下、略）
（同書 p１９７から１９８）
この文章は、二つの部分で、示唆に富む内容を含んでいます。以下は、あくまでも筆者の個人的な感想である事は、お断りします。
大阪地検特捜部が籠池夫妻を起訴した罪状は、国有地は関係なく、あくまでも補助金の不正受給を訴因とする詐欺罪です。あれほど騒がれた国有地の不正取得は、全く取り上げられていません。
そう考えると、大阪府の吉村知事（当時）の「ただ、籠池に違法な行為があるならば、それを看過するわけにはいきませんね」という発言は、その後の起訴事実に沿ったものになります。
当初、大阪維新の会と近い関係にあった籠池泰典氏が、国会の答弁などで大阪維新の会の松井一郎代表を批判する発言を行い、維新の会の代表だった松井代表が反論をしたのは有名です。言い換えると、この段階で、籠池泰典氏は大阪維新の会に喧嘩を売った形になります。逆に、維新の会にしたら、このような「掌返し」には、かなり憤りを感じたと思われます。
しかし、大阪維新の会（あるいは、日本維新の会）は、大阪では絶対的な力を持っています。現に、大阪府の知事も大阪市の市長も維新の会の人間で占められています。特に吉村知事は弁護士でもあり、法律の専門家です。籠池泰典氏にも言い分はあったとは思いますが、維新の会に喧嘩を売った事は、学校法人の許認可権や監督権を有する大阪市や大阪府に喧嘩を売ったのと同じことになります。
大阪府や大阪市としては、行政法上、認められている監督権に基づき森友学園の運営を徹底的に調査し、そこで何か法律上の瑕疵があれば、それを根拠に刑事、民事、行政上の対応をすれば良いことになります。
特に、当時、既にメディアの報道は過熱しており、大阪地検特捜部が捜査をはじめていました。大阪地検特捜部は、何としても籠池泰典氏を有罪に持ち込みたいと考えていたはずです。
余談ですが、サステイナブル補助金の一件では、籠池夫妻は有罪の認定を受けていますが、判決文の理由中には、民間業者の共犯が認定されているのに、起訴すらされていません。これは、大阪府や大阪市が、告訴から外したのか、それとも大阪地検特捜部が起訴しなかったのかは不明ですが、不明朗なものを感じます。
このような当時の状況を考えると、籠池泰典氏が大阪維新の会（あるいは、日本維新の会）に喧嘩を売ったのは、ほぼ自殺行為だったと言えるでしょう。
（続く）
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| [172] 続き |
- 暁烏 - 2023年11月29日 (水) 20時59分
岩田氏は、こうも書いています。
「私の印象に残っているのは松井の発言の方だった。 第2章で述べたように、二〇一二年に松井は橋下徹とともに野党時代の安倍に維新との合流を持ちかけてる。それから五年、マスコミや野党だけではなく、安倍にシンパシーを感じていた政治家までもが、森友問題が安倍政権を転びかねない」 苦境に追いやると見ていたのだ。」
実は、森友学園への捜査は、森友学園潰しを目的として、安倍晋三氏が松井一郎氏に頼んで、維新の会が動いた、という噂があります。これは、もちろん、確たる証拠があってのものではなく、松井氏と安倍氏が二千十二年に維新との合流を持ちかけるほどの近い関係だった、ということからされた憶測にすぎません。
余談ですが、私が籠池泰典氏とお話をした時も、籠池氏が安倍晋三氏には強い反発を伺わせる発言をされていたのを記憶しています。確かめた訳ではないですが、籠池氏もこれに近い考えをお持ちだったのではないか、と想像しています。
しかし、松井氏の発言を聞く限り、安倍晋三氏の関与を伺わせるような内容は含まれていません。また、安倍氏の示唆がなくとも、維新の会には、「喧嘩を売られた」籠池氏を「潰す」だけの十分な動機はあります。
するご、松井氏の発言は、上の憶測を否定する間接証拠にはなりうるとは考えております。
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