[13834] 題名:顕謗法抄
名前:FT
◇PFZXO0GhIQ
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投稿日:
2025/09/17(水) 16:57
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第八に大阿鼻地獄とは又は無間地獄と申すなり欲界の最低大焦熱地獄の下にあり此の地獄は縦広八万由旬なり、外に七重の鉄の城あり地獄の極苦は且く之を略す前の七大地獄並びに別処の一切の諸苦を以て一分として大阿鼻地獄の苦一千倍勝れたり、此の地獄の罪人は大焦熱地獄の罪人を見る事他化自在天の楽みの如し、此の地獄の香のくささを人かぐならば四天下・欲界・六天の天人・皆ししなん、されども出山・没山と申す山・此の地獄の臭き気を・をさへて人間へ来らせざるなり、故に此の世界の者死せずと見へぬ、若し仏・此の地獄の苦を具に説かせ給はば人聴いて血をはいて死すべき故にくわしく仏説き給はずとみへたり、此の無間地獄の寿命の長短は一中劫なり一中劫と申すは此の人寿・無量歳なりしが百年に一寿を減じ又百年に一寿を減ずるほどに人寿十歳の時に減ずるを一減と申す、又十歳より百年に一寿を増し又百年に一寿を増する程に八万歳に増するを一増と申す、此の一増・一減の程を小劫として二十の増減を一中劫とは申すなり、此の地獄に堕ちたる者・これ程久しく無間地獄に住して大苦をうくるなり、業因は云わば五逆罪を造る人・此の地獄に墜つべし、五逆罪と申すは一に殺父・ニに殺母・三に殺阿羅漢・四に出仏身血・破和合僧なり、今の世には仏ましまさず・しかれば出仏身血あるべからず、和合僧なければ破和合僧なし、阿羅漢なければ殺阿羅漢これなし、但殺父・殺母の罪のみありぬべし、しかれども王法のいましめきびしく・あるゆへに此の罪をかしがたし、若爾らば当世には阿鼻地獄に墜つべき人すくなし但し相似の五逆罪これあり木画の仏像・常塔等をやきかの仏像等の寄進の所をうばいとり率兜婆等をきりやき智人を殺しなんどするもの多し、此等は大阿鼻地獄の十六の別処に墜つべし、されば当世の衆生十六の別処に墜つるもの多きか又謗法の者この地獄に墜つべし。
(通解)
第八に大阿鼻地獄とは。 またの名を無間地獄という。欲界の最底にあり、大焦熱地獄の下にある。 この地獄は縦横八万由旬である。外に七重の鉄の城がある。地獄の極苦はしばらく省略する。前の七大地獄並びに別な一切の苦をもって一分とすると、大阿鼻地獄の苦はその一千倍勝る。この地獄の罪人が大焦熱地獄の罪人を見れば、他化自在天が楽しんでいるように見える。この地獄の臭いのくささを人が嗅ぐと、世界中・欲界・六天の天人はすべて死んでしまう。しかし出山・没山という山がこの地獄の臭気をさえぎって人間界へ来させないのである。したがって世界の者は死なないようである。もし仏がこの地獄の苦を細かく説かれたなら、聴いた人は血を吐いて死んでしまうので、くわしく仏は説かなかったのであろう。 この無間地獄の寿命の長短は一中劫である。一中劫というのは、この人の寿命を無量歳として、百年に一寿を減じ、また百年に一寿を減じていくうちに、人寿が十歳の時になるまで減じることを一減とする。また十歳から百年に一寿を増し、また百年に一寿を増していくうちに、八万歳に増すまでを一増という。この一増・一減の時間を小劫として、二十の増減を一中劫という。この地獄に堕ちた者はこれほど長期間無間地獄にとどまり大苦を受けるのである。 業因はというと、五逆罪を造る人がこの地獄に堕ちる。五逆罪というのは一に殺父・二に殺母・三に殺阿羅漢・四に出仏身血・五に破和合僧である。今の世には仏はおられない。したがって出仏身血はない。和合僧もないので破和合僧はない。阿羅漢もいないので殺阿羅漢もこれまたない。ただ殺父・殺母の罪のみがある。しかし王法の戒めが厳しくあるのでこの罪は犯しがたい。もしそうであるなら、今の世では阿鼻地獄に堕ちる人は少ない。ただ似たような五逆罪はある。木画の仏像や堂塔等を焼いたり、かの仏像等の寄進した所を奪い取ったり、率兜婆等を切って焼いたり、智者を殺したりするものが多くいる。これらは大阿鼻地獄の十六の別のところに堕ちるのである。したがって今の世の人々の多くは十六の別の小地獄に堕ちる者が多いのである。また謗法の者もこの地獄に堕ちる。