[13806] 題名:三島由紀夫と英霊の聲 ①
名前:霞ヶ関リークス
◇F0RzX/K5nI
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投稿日:
2025/09/11(木) 17:38
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天皇制批判の問題となった作品から読み解く天皇の存在
その昭和天皇が戦後半年もたたない、まだ戦火が覚めやらないうちに発せられ
た人間宣言。これについて語るには、三島由紀夫の傑作『英霊の声』をどうし
ても引き合いに出さなければなりません。
この『英霊の声』は、発表以来、天皇制批判の問題をめぐって多くの物議をか
もしています。
特攻隊で戦死した英霊の声が最後に、「などですめろぎはひととなりたまひし」
と絶叫し、それと同時に川崎青年も絶命して果てるという、鬼気迫る場面で物
語は終わります。
絶命した川崎青年は、まったく別人の顔に変貌していたという、不気味な物語
です。これは芥川龍之介の作品の『ひょっとこ』の最後の場面に、たぶん三島
由紀夫はヒントを得たのだと思います。
では、この『英霊の声』を少し長くなりますが紹介します。
「陛下の御誠実は疑ひがない。陛下御自身が、実は人間であったと仰せ出され
る以上、そのお言葉にいつはりのあろう筈はない。高御座にのぼりましてこの
かた、陛下はずっと人間であらせられた。
あの暗い世に、一つかみの老臣どものほかには友とでなく、たったお孤りで、
あらゆる辛苦をお忍びになりつつ、陛下は人であらせられた。清らかに、小さ
く光る人間であらせられた。
それはよい。誰が陛下をお咎めすることができよう。だが、昭和の歴史におい
てただ二度だけ、陛下は神であらせられるべきだつた。何と云はうか、人間と
しての義務において、神であらせられるべきだつた。
この二度だけは、陛下は人間であらせられるその深度のきはみにおいて、正に、
神であらせられるべきだつた。それを陛下は二度とも逸したもうた。
もっとも神であらせられるべき時に、人にましましたのだ。
陛下はただ人間と仰せ出されしとき、神のために死したる霊は名を剥奪せられ、
祭らるべき社もなく、今もなお虚ろなる胸より血潮を流し、神界にありながら
安らぎはあらず。
日本の破れたるはよし。農地の改革せられたるはよし。社会主義的改革も行わ
るるがよし。わが祖国は破れたれば、破れたる負ひ目を悉く肩に荷うはよし。
わが国民はよく負荷に耐え、試練をくぐりてなほ力あり。
屈辱を嘗めしはよし。抗すべからざる要求を潔く受け容れしはよし。されど、
ただ一つ、ただ一つ、いかなる強制、いかなる弾圧、いかなる死の脅迫ありと
も、陛下は人間なりと仰せらるべからざりし。