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エヴァに関するショートショートショート、つまり小話を自由に書きこんでください。
もちろんLASだけに限らず、エヴァネタだったら何でもOK。
作品に関する感想もお気軽に書きこんでくださいね。
[363] 題名:ごまめの歯ぎしり シンジのシはシビアのシ 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年08月07日 (土) 00時42分
エヴァンゲリオンをテーマに面白いことを考える方はたくさん、たくさんこの世におられることと思いますが、私も思いついたことをしたためさせていただきたいと思います。つまらないです。多分。こんなシンジ君どっかにおらんかなあと思って書きました。どなたか使ってくれませんか。
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(乗るきっかけ)
リツコ「余計なことは何も考えなくていいわ。この書類の、ここと、ここと、ここにサインと判子を押すだけでかまいません」
シンジ「承知してたまるかっ。何の書類だよそれ」
(自覚しています)
ドドーン。と初号機のよって華麗に使徒が倒されました。
アスカ「やるわねサードチルドレン」
シンジ「当たり前でしょ。忘れてるかもしれないけど、僕はただの板前じゃないんだよ」
(こんなんでもいいのに)
「あの…どうぞ召し上がって下さい」
ずず
シンジ「ぬるい。お茶入れ直して。ミサトさん」
(こんなんでもいいのに2)
あーなみさん「私が死んでも代わりはいるもの」
シンジ「自分で自分をそう思ってるから、周りからその程度の扱いしか受けられないんじゃないかな。」
あーなみさん「私が死んでも代わりはいるもの」
アスカ「そう。あたし、今を生きるのに精一杯だから、自分が死んだ後のことまで考えないわ」
あーなみさん「私が死んでも代わりはいるもの」
シンジ2回言う「だから大事なのはどう生まれたかってことじゃなくて、どう生きるかってことなんじゃないかな。」
(電話がかかってきた)
リツコ「レイの秘密、知りたくない?」
シンジ「あ、関心ないですね。他の人を当たってください」
リツコ「キャッチセールスじゃないわよ!」
(おとうさん)
ゲンドウ「乗るなら早くしろ。でなければ帰れ!」
シンジ「そのとおりですおとうさん!一生ついていきます!」
ゲンドウ「…うそん」
(クライマックス)
ミサト「ヒトのもうひとつの可能性。それが使徒なのよ」
シンジ「そういうことは考えても考えてもキリがないから考えないほうがいいです。疲れてますね。ミサトさん」
ミサト「お願いだから少しはだまされてくれてちょうだい」
(クライマックス2)
カヲル「ありがとう。君に会えてうれしかったよ」
シンジ「ありがとう。君の気持ちは無駄にしないよ。存分にやってくれ。君、二号機操れるし。自分でやって。ここで見ててあげるから」
カヲル「最後ぐらい優しくしてよ…これは、涙?」
(ここだけは同じ)
アスカ「本当に人のことを好きになったことがないのよ!その自分も好きだと思ったことないのよ!」
シンジ「・・・そのとおりだ」
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つまらなくってすみません。
あーなみさんにはシンジその@のセリフを是非言ってさしあげたいごまめでした。
所詮ごまめなんで、ごまめの歯軋りなんて誰も聞いちゃいないよね!!と大手を振って去ります。
読んでくれた方いたら、ありがとうございました。
幸福があなたに訪れますように。ガリガリ君の当り程度のやつ
[362] 題名:あの子のことが僕は嫌い 11 ただで起きるな(シンジ視点) 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年08月06日 (金) 23時41分
今日は、アスカにカレーを作ってあげる。
普通のカレーじゃない、ちょっと珍しい外国のカレーだ。タイのグリーンカレーって言うんだ。
昨日、リツコさんがレシピやスパイスが入った、簡単に作れるセットをくれた。
「本当はお店で食べたいんだけど、忙しくて行くヒマがないから、こんな手作りキットばかり買っては満足しているの。でもそれも貯まる一方。もったいないからもらってくれたらありがたいんだけど」
「いいんですか?」
「アスカが炊くご飯は硬めなんでしょ?案外、こんな料理があうと思うわ」
「そういうもの…ですか」
「妥協をしてうまくやって行くことは大切だけど、いっそのこと創意工夫でお互いの違いを楽しんでしまうのも悪くないと思うわ」
「…?」
よくわからなかった。
「一種の賭けみたいなものだけどね。シンジ君の自己責任で使うか使わないか決めてね。これでまた喧嘩しも責任は負えないわよ」
そういって微笑んだ。リツコさんが笑うのって、わざとらしさがなくて割と僕は好きだ。
そうなんだ。今日はアスカがお米当番の日だ。
また喧嘩をしたら嫌だし、おかずを変わったものにしたら気がそれていいかもしれない。
お米当番か…。どうせなら料理もしてくれたらうれしいんだけどな…。
僕に料理を作ってくれるアスカ。想像したら照れ臭い。そうあってくれたらな。
ありえないけど。
とりあえず仕込みをはじめよう。
「シンジ、やるわ。」
すごく不機嫌そうなアスカがやってきた。
「あ…うん」
お米の研ぎかたを教えてあげた。
なんだか色々イヤミらしきことを言ってるけど、ごめん。正直なところ耳に入らない。そんなことより、肩がむき出しになった、どうなってるんだろうコレ?カタヒモが何重にもなった袖のない服を着てる。
(タンクトップって言って怒られた。キャミソールっていうらしい。どっちでもいいと思う。)
下はショートパンツを履いてる。相変わらず目のやり場に困る。
二人でキッチンに立つ。なんでもないようでいて、僕たちは今、近づいているのかな。
炊飯器のセットをしたアスカは「何よ。全然カンタンじゃない」
ぶつぶつ言ってる。カンタンなら文句いわなきゃいいのに。でもなんだかアスカぼんやりしてる。
僕はカレー作りの続きをする。
味見してみた。これは…少し辛い?
やっぱりいつものカレーとは違うなあ。でもご飯にあわせるんだしこんなものかな。
「アスカ、ご飯にしよう」
なんだかんだ言ったって、喜んでくれるんじゃないかな?僕は期待した。
食べてみた。うん、悪くないよ。
ところが。
「はンにゃーーっ!!」
一口食べて、三秒ぐらいしてからアスカが、なんていうかその、可愛い動物みたいな悲鳴をあげた。
ちゃりーん。スプーンが落ちる。
「ハにゃァァァァー!ヒャーー!!」
うそ。そんなに辛い?!
両手で口を押さえて、スリッパを履いた両足をバタバタさせてる。
ごめん!ごめん!とにかく謝って水を手渡した。
必死に飲んでる。うわ!
アスカが泣いてる…。青い目が涙で潤んで、涙をポロポロこぼしている。…明るいところで君の涙を見てしまった…。
コップに口をつけたまま、「ふぅうぅー…」潤んだ目で、うなりながら僕をにらんでる。悪いけど怖さ半減だ。自分のお皿と僕を交互に見る。なんとなく言いたいことが伝わった。
「うん、僕、結構辛いの平気みたい」
コップが空になってたので、水を注いであげた。
しゃべれるようになったアスカは、やっぱりめちゃくちゃ怒ってる。
「あんたは…想像力ってもんがないわ!」
ズバリ言われた。グサッときた。
僕とアスカは別の人間。
当たり前だ。そのとおりだ。なのになぜか、物凄いさびしさに心臓を掴まれた。なんとなく、根拠もなく、僕が好きなものはアスカも好きで、僕が平気なものはアスカも平気なんだろうと思っていた…。
「わかった…。その通りだよ。ゴメン。」
「…そう思うんなら、次からは、あたしに相談して…」
アスカは、涙をこぼして、ため息をつきながらささやいた。なんだかお姉さんぽかった。
はっと気付いた。次からは。そうか。次があるんだ。心のなかに明かりが見えた。
リツコさんの言葉が急に蘇った。
「うん。そうする。料理も、お風呂の湯加減も、みんな聞くようにするよ」
創意工夫ってやつだ。
「あの、もしよかったら料理も一緒にすれば、わからないことが無くなっていいね」
そうさ。これも創意工夫だ。
アスカはなんだか戸惑ってるみたいだ。
でも、怒ってないよね。
「ちょっと待ってて」
辛さをゆるめるココナッツミルクは全部使ってしまったんだよな。代わりに牛乳でいけるかな。仕上げに生卵も落としてと。どうかな?
食べてくれた。
やっと二人で晩ご飯だ。
なんだかんだ言って二人でもりもり食べた。
次は何を作ろうか。
あれ。何が原因で僕たち喧嘩してたんだっけ?
まあ、いいか。
了
※前回の「10.ただで起きない」と比較されたら、女子のほうが抜け目ないということが伝わったりするのではないでしょうか。むしろ伝わってほしいな。それにしても毎日酷暑ですね。南国の料理が食べたくなります。エヴァの世界が常夏ならば実は味噌汁よりもトムヤムクンとかフツーに食べてるんでしょうかね。お米は年中収穫できるし。庭にはさながら柿のようにマンゴーを植えていたりするんでしょうか。それはそれでよさそうだ。
[361] 題名:あの子のことが僕は嫌い 10 ただで起きない 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年07月25日 (日) 22時11分
あのあと、シンジにお米の研ぎ方を教わることになった。他に人材がいないから、仕方なくあんたに教わるだけだから。光栄に思いなさいよね!厭味たーっぷりにそう言ってやったのに「ハイハイ」って軽く流された。ムカつく!もっと傷ついた顔しなさいよね!
お米を炊くのなんて、全然簡単だった。水加減をどうしたらあたしの好みになるのかも教えてくれた。知ってるなら最初からやんなさいよ!
スイッチをいれた。炊飯器が唸りをあげる。
…もしヒカリだったらどうするかしら。鈴原が柔らかいお米が好きって言ったら、きっと、いそいそと合わせてあげるんだろうな。あたしには難しい。好きなものは好き。嫌なものは嫌。我慢が出来ないってわけじゃないけど。シンジに我慢してやる必要なんてないのよ。ばかだし。
はぁ。こんなあたしを好きになる人なんているわけない。ラブレター寄越すあいつら、何を見てるっていうの。あたしの事を何も知りもしないくせに。何が「好き」よ。お安いものね!
あたしの本当の「好き」はずっと昔に死んでしまってどこかに行った。
ヒカリや加持さんのことは好きだけど、あの好きとは違う。なんだろ。大切だけど、なんだか軽い。あの好きに比べたら。
もし、加持さんが本当にあたしを愛してくれたなら、あの好きをもう一度取り戻せるような気がしてるの。少しタバコ臭いとことか、太い腕とか、あたしは確かに、幼い頃に知っていたと思う。だからあたしは加持さんに振り向いてほしい。
「アスカ、カレー出来たよ」
シンジに言われて、ハッと我に帰った。
「何?このカレー」
スープみたい。しゃばしゃばしてる。
「南国ふうカレー。リツコさんに教えて貰ったんだ。」
「…それに、なんで緑色なのよ!?」
「グリーンカレーって言うんだよ。アスカの好きな硬いめのご飯に合うと思って」
「…そんな気を遣うんなら、最初からあたしの好みにあわせなさいっての。」
やっぱり馬鹿だ。あたしはむくれた。
「ごめん。つい、その、アスカ相手だと我慢出来なくて…」
「どーいう意味よ!」
「でも、せっかくだから食べてよ。わざわざ材料揃えたんだ」
うれしそうね。
ご飯が炊けたあと、二人で食事にした。
確かに、硬めのご飯とスープみたいなカレーは合うかも……?……遅れて、強烈な辛さが襲ってきた。
防衛線を突破し、臨界に達し、全てが飽和した。
この馬鹿バカおばかシンジ。辛さを緩めるココナッツミルクを用意するのを忘れたんだって。水水水。
罵りたいけど辛くって口が開かにゃい…泣けてきた。
また「アスカごめん」教のこぼんさんみたいになって謝るシンジ。うー。あんたは結構平気みたいね?
「うん、僕、結構辛いの平気みたい」
しゃべってなくて目で訴えただけなのになんで分かるのかしら?もっと水ちょうだい。黙ってついでくれた。
あ、なんか喋れるようになってきた。
「いい?あんたとあたしは違うの!別の人間なの!ケホッ。辛さの耐性も、ご飯の好みとかも、なにもかもあんたと一緒なんてことはありえないんだからね!」
シンジはぐっと何かを飲み込んだように見えた。
「あんたは…想像力ってもんがないわ!ケホ」
「わかった…そのとおりだよ。ごめん。」
「そう思うんなら、今度からあたしに相談して…」
ああまだヒリヒリするわ。
シンジは、それを聞いてなんだか嬉しそうだった。
「うん。そうする。料理も、お風呂の湯加減も、みんな聞くようにするよ」
…?なんだか変な具合。
「あの、もしよかったら料理も一緒にすれば、わからないことが無くっていいね」
いい顔して笑ってる。あたしがぽうっとしてるのは、この辛さのせいね。
ココナッツミルクの代わりに牛乳と生タマゴを入れて、余り辛くないのをシンジが作ってくれた。刺激がなければ食べられる。
食べてるとだんだん体が熱い。知らない国の料理にはときめく。二人で汗をかきながら、初めての料理を食べる。なんだか楽しかった。これで貸しができたから、当分、お米の硬さはあたし好みにしてやろう。
*追記*
ミサトが、グリーンカレーを味噌汁に混ぜてるのを見たときに、あたしの主張する「想像力」は常識という限界を前提としているということを知った。ていうかこれ以上、非常識なものの面倒みないわよ!使徒でじゅうぶんだわ!!
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管理人様 赤ちゃん誕生おめでとうございます・・・☆
でんでん内容は赤ちゃんと関係ござりません
[360] 題名:あの子のことが僕は嫌い 9 家族編 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年07月10日 (土) 21時19分
あのあと(何がカウンセリングルームよ)リツコの研究室でお説教。
二人とも、椅子に座ったリツコの前に立たされてる。テストと職務についてキツーイお灸を据えられたあと「いいこと。世の中には食べたくても満足に食べられない人達だっているというのに」なんて、まるっきりテンプレート化したお母さんのお説教ね!
横でうんうん。と腕組みしながら頷く私達も一体なんなんだか。
「食料を無駄にしてるわけじゃないわ!嗜好の問題よ!」
アスカは相変わらず違うと思ったところでは反論してくるわね。
「どっちかが妥協しなきゃ仕方ないじゃないの。シンジ君、合わせてあげられないの?」
「…。」
あらら。床を見つめて口を一文字に結んでる。よほど譲れないのね。この子は結構頑固なのよ。
「じゃあ、あたしがご飯を用意し「やめて」「イヤです」
…間髪いれず即答なのね。
「食料を無駄にしない、という話をしてるのよ。ミサト。」
追い討ちですか!
「…おかずはアスカに合わせてるんだから、ご飯くらい好きにさせてくれたって…」
シンちゃんがぼやく。
「ぼそぼそ言ってんじゃないわよ!はっきり言えば!」
「はっきり言っても怒るじゃないか!」
「じゃあ、アスカがご飯を担当したときは、アスカの好みの硬さにしたらいいんじゃない」
「あたしお米の炊き方なんて知らないわ!」
「シンジ君に教わればいいじゃない。それともあたしが教え「いい。シンジにする。シンジがいい。」
セリフ被りすぎだっつの。
…シンちゃん、なに妙に赤くなってんのかしら。平静を装ってるけど。落ち着きなく手をにぎにぎしたり意味なく腕を振ったりしちゃって。うれしいのを隠せない犬の尻尾みたい。
とりあえず解決かしら。炊飯器をもうひとつ買ったりするのはごめんだわ。リツコもやっと二人を解放してあげた。
「はー。大の大人が三人も、なんてしょうもない喧嘩につきあってるのかしら!」
「仲がいいわね」
「そう?シンちゃんが一方的にやられてる気がするけど」
「ちゃんと主張してるじゃない」
「主張しないと全ての権利を踏みにじられるから仕方なくそうなったんじゃないかしら」
「…ミサトも十分その手伝いをしている気がするわ」
なんか言った?
でも、アスカが来てからシンちゃん変わったわね。
人の顔色ばかり窺っていると思ってたのに。アスカのせいで、自分を出せるようになったのかしら。
「でも本当に仲良いです。こんなことで喧嘩できないですよ。特に他人同士だったら気を使って、思っていても言えないです。言われても言い返せなくってストレスをためたりするのが普通です」
しみじみと伊吹マヤが繰り返す。
「こんなささいなことで、こんなに根の深い喧嘩が出来るなんて、家族以上かも。」
「…そ、そう?」
「もう本当にすごいです!」
…伊吹さん。悪気がないのはわかるんだけどそれ以上褒めないであげて。しょうもなさがいっそう引き立つから。
「葛城さんの薫陶のおかげですね!」
なはははは!はあ…。
家族以上ね。そんなものを望んだつもりはないけれど。私が思っていた以上のスピードと思ってもいなかった方向にシンジ君たちは進んで行く。これが子どもと暮らすってことなのかしら?
あの子達の持つエネルギーに、いつか圧倒されてしまうかもしれない。悪くはないかもね。
「つまりは幸せな喧嘩ってことね。それにしても、いつシンジ君はアスカのことを……だって気付くのかしらね?」
「ん?…今、なんて?…リツコ、お願い。もう一回言って。」
とりあえず完
気が向けば続き書きます。
読んで下さった方、いらっしゃったならば、ありがとうございました!作者
[359] 題名: 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年07月08日 (木) 22時45分
ミサトさんの階級まちがえました。。。
[358] 題名:あの子のことが僕は嫌い 8 ゆずれない編 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年07月08日 (木) 22時39分
最近、碇君と二番目の子がおかしい。
いつもは、なんだかんだとセカンドがしゃべり、碇君が相槌をうっているのだけど、それがない。ずっと二人とも黙っている。
テストのためにプラグスーツに着替え、ネルフの中を移動している間、二人とも、お互いがまるで始めから存在していないもののように振る舞っている。
この感じはいやな感じ。
わたしはこの感じを知っている。司令が、副司令と話しあっているとき、私が隣に立っていても、まるで存在しないもののように思われている。わたしは物。置物。人形のよう。
何が気持ちよくて何が気持ち悪いのか、わたしにはわからないけれど、錆びた赤茶色い水に触れたような感じ。冷たい石の壁に体を押し付けたような感じ。息が苦しい感じ。
でも何をどう言葉にしていいのかはわからないので、黙ったままでいた。
『どうしたのアスカ。あまり調子が良くないみたいね』
葛城一佐がマイクごしに話しかけた。今はシンクロテストの間の中休み。パイロットは全員プラグの中。
「…やってるわよ!」
セカンドが答えた。
『…ま、調子のよくない日ぐらいあるわよねん。ドンマーイ!アスカ』
「…」
セカンドは沈黙で答えていた。
『シンジ君と喧嘩したの?』
赤城博士が急に尋ねた。
「んな!なんてこと言うのよリツコ!」
「そうですよ!関係ないじゃないですか!」
碇君とセカンドがはじめて今日一緒に口をきいた。
『いいじゃない。今は中休みよ』
『あらーん?動揺するってことは図星なのかしら?』
「…ふん!シンジが全〜部悪いのよ!」
「なに、勝手言ってんだよアスカ!!」
碇君が金切り声をあげている。
「だってそうじゃない!あんたはあたしの言うこと聞いてればいいのよ!バーカ!」
「腹立つなあ!馬鹿馬鹿言うな!」
『二人ともやめーい!ここをどこだと思ってるの!』葛城一佐が一喝した。
「…」
「…」
「…アスカのせいで怒られた」ボソッ
「なんですって!聞こえたわよシンジ、あんたって本当にちぃっさい男ね!!」
今、なぜかセカンドの言葉にわたしは熱い感じになった。操縦桿を握る手に力が入った。碇君をひっぱたいた時の感じと同じ。
『またなの!やめーい!』
『喧嘩の原因はなんなの?二人とも』博士が尋ねた。
「…」
「…」
『ここで言いにくいことなら、カウンセリングルームでもいいのよ?』
「…シンジが悪い」
「だから、なんで!『シンジ君は黙ってて。教えてくれるかしら、アスカ?』
「…て……のよ 」
『聞こえないわ。なに?』
「だから!!
あたしは、ご飯は固めのほうが好きだからそうしてって言ってるのにシンジが柔らかいのがいいって言い張って全然言うこときかないのがいけないのよーーーっ!!!」
「それぐらいいいじゃないかあ!!いつもいつもいつもお米といでるのは僕なんだからな!僕好みの炊き方して何が悪いんだよーーっ!!!」
碇君とセカンドの二人が叫んだ。
葛城一佐と赤城博士と伊吹さんと青葉さんと日向さんと整備士さん達と下層部のオペレーター達全員が、動力を失ったように突っ伏したのがわたしにはよくわかった。
「…そ…そんなくだらないことで…」
葛城一佐が突っ伏している。
「『ご飯が硬いか柔らかいか』で我々の未来が決まってしまうというのか…!?」
青葉さんがさめざめと両手で顔をおおっている。
「二人とも、後でカウンセリング室…いえ説教部屋にいらっしゃい」
赤城博士のこめかみに静脈が浮いている。
セカンドが抗議をしている。そっちが聞かせてって言ったんじゃない!と。
わたしにはわからない。
でもさっき感じた、冷たい息の詰まる感じは無くなっていた。お腹が温かい。
そう、わたし、たのしいのね。
了
[357] 題名:あの子のことが僕は嫌い 7 七夕と青信号 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年07月06日 (火) 22時36分
「シンジ、あれ何?」
学校の帰り道、商店街の近くを通ったとき、アスカが尋ねた。
「あれ?あれは七夕の笹飾り。」七夕の伝説の内容も、簡単に説明してあげた。
「ふーん。これが笹なんだ。でも恋人を引き裂くなんて、そのテンテイって父親もひどいわね…」
「そうかもね…」
天帝に引き裂かれた恋人同士。か…。何故か母さんを思い出した。でもあの父さんじゃ似合わないや。
「じゃ、この音楽は?」
「えっ?」
「青信号のときに流れるこの悲しそうな曲」
「これは『通りゃんせ』だよ」
信号を渡りながら、これも説明してあげた。歌わされたのは恥ずかしかった。
「何ソレ!不気味な歌詞ね!!」げぇっ。て感じの顔をして驚いてる。
「はは…」
「じゃあさ、そのテンテイとテンジン様は、同一人物なの?」
「そ…そんなの知らないよ…」
「そお?1日だけは会わせてやるとか、用の無い者は通さないとか、偉そうなところがそっくりだわ!」
そう言われればそうかな…?父さんはどちらかといえば彦星より天帝や天神さまの方がぴったりだ。皆がびくびくしながら道や橋を渡るんだ。ついおかしくなった。
「何笑ってんの!あんた変!」
アスカは怪訝そうに僕を見ていたが、次の信号のメロディが途切れた。
信号は点滅していた。
「あーっ!信号、赤になっちゃうじゃない!走るわよ!シンジ!」
そう言うが早いか、アスカは僕の右手を掴んでダッシュした。僕も一緒に走る。
信号をなんとか渡りおえたとき、汗ばんだ僕の手の平の中には、アスカの小さな白い手があった。
僕はびっくりしたんだ。
間が抜けているかもしれないけど、アスカと本当に手を繋げたことよりも、こうして誰かと手をつないでる僕に。
もしかしたら初めてじゃないだろうかって。
覚えていないくらい小さな時にはあったかもしれない。
でも、先生のところに預けられてから、誰かと手をつなぐことなんてあっただろうか。
それに、想像していたよりアスカの手がずっと小さいことにびっくりした。少し冷たくて、しっとりしてる。
アスカが小さく身じろぎして僕の手のなかからすりぬけようとする。逃がしたくなくてとっさに掴んだ。
指先をほんの少し。
何してるんだ!怒られる!そう思ったけど、体が言うことをきかない。
アスカが僕の手を振りほどいて「何よ!気持ち悪い!離せヘンタイ!」とか怒鳴るはずだ。
怖くなって固まったけど、何も起こらない。
よくよくアスカを見つめたら、僕から顔をそむけて、うつむいている。
長い睫毛と赤い髪の間から覗く耳しか見えないけど、真っ赤だった。それに、指先から手の震えが伝わってきた。アスカは小さく震えていた。
そんなアスカは僕よりも頼りなげだった。女の子らしかった。カーッと顔が熱くなった。
「ご…ごめん」
「……」
アスカは黙ってる。
でも僕の手は糊付けされたみたいにアスカの指を離さない。信じられないくらい柔らかい手。
「…そ、その、もう少しこうしてたい。…家に着くまででいいから…」
「だ、だめかな…」
そう言いながら手を緩めようとした。かなり苦労した。僕の右手は離れたくないと言ってるから。
「あ」
アスカがぎゅっと手を握り返してきた!
嬉しいってこういうことなのかな?
生まれて初めて知った気がした。
さみしい子どもとしての僕と、コンプレックスだらけの男としての僕の心と、両方が嬉しかった。本当の嬉しさって、頭で受け止めるものじゃないんだ。心臓とか胸とかお腹とか、体じゅうをいやでも駆け回る熱い生き物みたいなんだ。顔も耳も熱かった。知らなかった。
僕らは手を繋いで帰った。
たくさんしゃべった。
ありがとう。って、思った。
この子のお祝い。の『通りゃんせ』と恋人に会える彦星と織り姫の七夕。
僕には、天の川の天帝と天神様が同一人物でもいいや。って思えた。
このあとしばらくの間、アスカのテンションが上がりっぱなしで、ワガママが6割増しぐらいになり僕を蹂躙しまくった。うかつだった。僕は知らないことだらけだ。
行きはよいよい。帰りはこわいってこういうこと?
でも、ありがと。アスカ。
アスカ:「…『通りゃんせ』って本当はラブソングにアレンジできるんじゃないかしら?」
了
※彦星と織姫は本当は夫婦らしいですね。こないだ知りました。
「恋人」のほうが可愛いのでそっちをとりました。
[356] 題名:あの子のことが僕は嫌い 6 エスカレーターの風景 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年07月02日 (金) 21時05分
「このエスカレーターは一体いつ撤廃するんでしょうね。最近は高速エレベーターしか使われてないじゃないですか」
昇りのエスカレーターに乗り込んだ伊吹マヤがつぶやいた。
「長いし、遅いし、転落防止のカバーもついていないから、実際のとこ危険ですし…」
「一種のビューポイントかしらね。パンフレットにも写真が使われているし。それに」
隣に立つ赤城リツコ博士が携帯電子端末の画面を指で操作しながら答えた。
「レトロなマシンにはロマンがあるのかもしれないわ」
再生ボタンをクリックした。
俯瞰された映像が再生される。エスカレーターを舞台にした、中学生の小さなドラマが映しだされた。
「えっ?これなんですか?うわ!シンジ君わかりやすいですね〜!アスカもシンジ君を意識しまくってるのバレバレじゃないですか。わざと無視して…あらっ!加持さんやりますね。そりゃニコニコ笑いたくなりますよね。シンジ君たらこんなに急いで駆け上がって!きゃー二人とも可愛い…」
リツコの操作する携帯端末を覗き込みながら伊吹ははしゃいでいる。
「そしてリョウちゃんが何故こんなところに立っていたかというと」
画像が早送りされ別のカメラに切り替わった。
「葛城三佐がやってきましたね」
「待ち合わせね。多分」
「二人ともエレベーターに直行ですね」
「エレベーターの中の映像は二人の秘密だから見ないでおいてあげた方がいいわね」
「ほんの僅かな間でも密室を求めるんですね…。フケツ。あら!?急に碇司令が現れましたよ。」
「本当ね。司令ったら、下りのエスカレーターに乗ってたみたいだわ。いつの間に?」
「…まさか、シンジ君に見つからないよう、しゃがんで隠れてたんですかね?」
「…きっと、息子に無用のプレッシャーをかけたくなかったのよ。いい具合に、シンジ君はアスカの方ばかり見てるし。」
それか、急に現れた息子に戸惑いまくったか。こんなとき、どんな顔をすればいいのかわからない人なのよね…。
…先輩たら、今すごく微笑んでるわ。困ったような、でも見守るような。こんな表情もされるんですね…
しかし前々から思っていたけど、司令は一体何を考えて生きているのかしら。
「司令はエスカレーター派なんでしょうか?だから撤廃しないんですかね」伊吹が小首を傾げた。
そうね。私もエスカレーター派だわ。
誰も利用しない決まった時間、あの人はエスカレーターを降りてくる。私は昇りのエスカレーターに乗る。部内の人間の目を気にせずに、堂々と見つめられる貴重な時間。
昇って、降りて、すれ違うまでのほんの僅かな時間だけど。私のデート。そのひとときを小さな小さなとっておきのデザートみたいにして、私は毎日働いている。女って愚かね。でも、楽しいのよ?
長い長いエスカレーターにまつわる恋の景色が三つ。
ああ…そんな風に微笑まれる先輩も、素敵すぎます…マヤうっとり…
退屈なエスカレーターも、悪くないかも…。
いや四つ。
了
[355] 題名:あの子のことが僕は嫌い 5 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年06月26日 (土) 22時09分
気がついた
アスカを嫌いなのは他の人がいるときだ
僕とアスカ二人だけのときは…
エスカレーターでアスカにキャッチされた。僕はまるでサッカーボールみたいだった。めちゃくちゃ怒られたけど、そのあとすごく可笑しくなって、帰り道はずっと二人で笑ってた。それに、なんだかアスカは機嫌がいい。
夕暮れのなか、並んで帰った。西日が黄金色に街を照らす。街も僕らも不思議な色に染まる。
アスカの白い腕が前後に振られるのと、僕の腕が振られるのと、歩いてるうちにだんだんタイミングがあってくる。
おしゃべりしているうちに(ほとんどアスカがしゃべってるんだけど)もし、この手を握ったらどうなるのだろうと思った。
横に見えるアスカの白い頬は夕日を浴びて薔薇色に見える。
こうして二人でいるときのアスカは嫌じゃない。むしろこうしていたいようなくすぐったい気持ちになって落ち着かない。それが嫌なのかな。つまり、その、アスカがいけないんじゃなくて、むずむずするような気持ちになるのが嫌なのかも。僕って実はわがままなんだろうか。
あのいらいらは、アスカが僕のそばにいたら起こらないんだ。
じゃあ、アスカをもっと僕の方に引き寄せたら、完全におさまるのかな。この手をぎゅっと握ったら、つらくなくなるんだろうか。
手だけじゃなくって、ほっぺたにも触って、しがみついて、どこにもいかないよう僕の中に閉じ込めてしまえたら。
「…。」
僕は立ち止まった。なんだかものすごく恥ずかしくて気持ち悪いことを考えてる気がする。こんなことトウジやケンスケには絶対言えない。今、僕の顔は青いのか赤いのかわからなかった。
この間、アスカは先に進み、隣に僕がいないことに気がついて戻ってきたようだった。
自分の考えにとらわれていた僕の目の前に、アスカの顔が現れて白い手の平をヒラヒラさせたかと思うと、星が出た。デコピンをくらった。本当に痛いんだよ!
「いてぇっ!何すんだよアスカ」
「あんたが道の往来でボケボケーってしてるからでしょ!一体何考えてたのよ!」
「そ…それは…」
君をつかまえて閉じ込めてしまいたいと考えてた
今度こそ僕は赤くなった。
「シンジったら変!」
青い大きな瞳がひそめられる。くるりと前を向いて先に行こうとするアスカ。
「待ってよ!」
「イーだ」
夕日は薔薇色から紫色に変わろうとしていた。アスカのもつ鮮やかな髪の色や制服に不思議な光があたって、幻想的だった。でもそこにはたしかな生命力と現実感があった。それはアスカが生きていて、笑ってるせいかもしれなかった。
アスカを追いかける。
まだおでこはヒリヒリする。ちょっと涙が出た。現実の痛みと一緒に今、目の前にいる君と笑えてることの方が大切なのかもしれないと思った。
僕の中にあるわからない暗い渦よりもずっと。
…でも、手は握りたいな。やっぱり。
了
[354] 題名:あの子のことが僕は嫌い 4-2 後半です 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年06月25日 (金) 18時59分
チン♪
変にレトロな音をさせてエレベーターが到着し扉が開いた。シンジはどこ?いない…。
周囲を見渡し、誰もいないのがわかると、さっきのような寂しい気持ちがまたやってきそうになった。
はっと音のする方を見た。
だん!だん!たん!だん!
足音がした。そっちの方に駆け寄ってエスカレーターの正面に立ったとたん、ぶわぁっ!て音がしそうな感じで急にシンジがあたしに向かって階下から生えたみたいに上昇してきた。
「きゃあぁ!」
「はぅあぁ!」
シンジのおでこがあたしの胸とお腹の境目に激突するように突っ込んできた。
シンジの頭をとっさに掴んだけど後ろに押し出される。倒れる!ダダダッと後退して突進するシンジの力を逃がし、背面に力をいれて自分とシンジを支えた。一体何ごとよ!
気がついたらあたしのお腹に顔を埋めてしがみつくように、あいつが覆いかぶさっていた。あいつの両手があたしの背中で交差されてあたしの肩甲骨を触ってる。あたしはあいつの頭を左右からガシッとつかんでる。あいつは膝を床について、あたしはなんとか立っていた。シンジの頭って丸いのね。
!?
シンジの吐く息がブラウス越しに肌に伝わってきた。暖かい。湿ってる。胸のあたりが震えるような、ものすごく恥ずかしい気持ちになって思いきり怒鳴った。
「はなれろー!馬鹿シンジー!」
顔中口にして怒鳴った。そしたら文字どおりこいつは飛び上がった。
そのあとは「アスカごめんアスカごめんごめんごめんアスカごめんアスカ…」ってお経唱えてんのかあんたわ!ってくらいの勢いで謝ってきた。あたしは立って、シンジはなぜか床に膝立ちのままだ。謝らせている構図としては日本の礼式にしたがっていて完璧といえるのだろうか。
「早く地上に着こうと思って、その、駆け上がって、エスカレーターの手摺りを掴んで昇ってきた…」
だからこいつは急に階下から生えてきたのか。
手摺りを掴んで自分を持ち上げるみたいに二段飛ばしで駆け上がったら、そりゃ勢いもつくわ。派手なことするわね。
「危ないじゃない!なんでそんなに急ぐのよ!」
「だってアスカが待ってるからじゃないか!」
赤い顔をしてシンジが叫んだ。
あたしの顔が燃えてる。耳まで熱いのがわかる。
目の前の男の子が顔を赤くして、「へへっ」って感じで上目使いであたしに笑いかけてる。
バカバカバカバカバカ!
あたし、なんで怒ってたのか忘れちゃったじゃない!!
了
※場内アナウンス※
エスカレーターで走るのは大変危険です。嫌いな人が待っていても、決して真似をなさらないようお願い申し上げます。