
Gehen wir!「小話掲示板」へようこそ。
エヴァに関するショートショートショート、つまり小話を自由に書きこんでください。
もちろんLASだけに限らず、エヴァネタだったら何でもOK。
作品に関する感想もお気軽に書きこんでくださいね。
[393] 題名:ごまめさんありがとー記念短編【よごれちまったかなしみに2】 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2010年11月08日 (月) 00時57分
「…有り得ないわ…」
驚愕のあまり私は手にした小皿を取り落としながら呟いた。
「…リツコ…それどういう意味…」
どうやら聞かれていたらしい。隣のヒラヒラフリル付きの可愛らしいピンクのエプロン…アスカからのプレゼントらしい…を着けた少々痛い女が頬を膨らましている。
「…言葉通りの意味よ…」
この女の手料理に何の期待もしていない私だが、流石にこれは驚きだ。
「…ねえミサト…何をどうしたらこの食材で作った味噌汁がトムヤムクン味になるの?」
…一応彼女の名誉…そんな物は無いとアスカは言いそうだが…の為に言っておくが、不味くはない。
子供向けでは無い事は確かだが、まあ激辛手前…大辛か。パクチーが入れば完璧にトムヤムクンだ。
「創意工夫よ創意工夫。」
「…工夫前に基礎を学びなさいよ…」
「え〜?国連謹製レーションパック期限切れにタバスコぶっかけて食べてた軍時代よりは進歩した筈だけど…」
…
まあ、確かに以前よりは進歩したとは思う。
依然としてカレーは個性的な味付けだが…粒胡椒をそのまま入れた地雷カレーや大根と竹輪が入ったグリーンカレーも見た目はともかく味は…
子供じゃ無理よね…
「…にしても凄いエプロンね…」
年甲斐も無くと台詞を続けそうになったが、私もネコマークのエプロンを着けている。人の事は言えない。
「アスカがこれ着なきゃ料理しちゃいけないって言うから着たの。」
…アスカなりの精一杯の嫌味だろうが…相手が悪いわよ。
「…まあ、不味くは無いけどこれ子供向けの味じゃ無いわね…ってミサト?アスカは確か…」
…ネルフ食堂のカレーを“辛過ぎ”と評して水を二回おかわりして食後にアイスクリームまで食べた少女の姿を思い出す。
「ええ、アスカは辛いの駄目なのよ、だからこっちはアスカ用」
「どれどれ…」
…これ味噌汁よね?
「ミサト…何で味噌汁かコーンポタージュ味になる訳?」
[392] 題名:今日も小雪の降りかかる 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年11月06日 (土) 21時41分
前に何処さんにしていただいた消毒のお返しです。
----------------------
意識を失ったシンジを、膝の上に抱えたまま、開け放したリビングの窓を見つめた。
「うーん、うーん。口がからくてすっぱいよう。なのにもっさりしてるよう。助けてよあすかー。」
「シンジ…しっかりして」
「もう僕はだめだよう。あすかだけでも生き残ってくれえ」
青い青い夏の空に、ひたすらな飛行機雲が白い軌跡をつけてゆく。
「…ねえシンジ…。ミサトって、どうして、どうしてああなんだろうね…!」
目をつむったシンジの睫毛に触れる。綺麗に生え揃って、弾力のある生まれたての若草の芽のようだった。
シンジを横抱きにして、遠くを見る。
あゝわたしたちはいつたい
いつまでかうしているのでせうか。
よごれつちまつたかなしみに
けふも小雪のふりかかる
よごれつちまつたかなしみは
だれひとりとしてかへりみず
よごれつちまつたかなしみは
からすの羽根浮く水たまり
あゝただ、ときだけが過ぎていきます。
「ちょっと。……よくもまあ、あたしに厭味を言うだけのために、そんな三流芝居をこなせるもんだわねっ!ああ!?」
ノンアルコールビールの空き缶をターン!とキッチンのテーブルに置いたミサトが叫ぶ。
ちっ。
「うっさいわね!ミサトがまた食料を無駄にしたってリツコに言い付けてやるから!」
「無駄とはなによ!ちゃんと食べてるでしょーが!
それに、シンちゃんをパペットみたいにして遊ぶなぁっ!」
「はん!食事のたびにあたし達を卒倒させる気ー!?
もう料理なんてすんじゃないわよっ!酔ったふりしてるけど、本当はしらふでしょ!
みさとさんの料理なんて食べたら最後、しんじゃうよ。
ほーらほら、シンジだってこう言ってるわー!アハハー!」
「ムっカっつっくー!!キー!あたしはこれからも意地でも作り続けるからね!
あんたら絶ーっ対残さず食べんのよ!」
「うぅ…。二人ともやめてよ…喧嘩はやめて…」
言い争う女二人の喧騒に、なんとかして調停せねばという植え付けられたかのような義務感が、僕に呻き声をあげさせた。
あゝ僕はいつたいいつまでかうして生きてゆくのでせうか。
ただ、ときだけが過ぎていきます。
くちが、からい。
グエー。(鳥)
[391] 題名:たったひとつの冴えわたるやり方 (にぎやかし歓迎投稿 激短) 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年11月03日 (水) 23時08分
あたしは弱い。シンクロ率ゼロのポンコツパイロット…。あたしが生きてる値打ちもないわ。
あいつは無敵。エース。ヒット率No.1。世界一強いエヴァのパイロット。世界一強い男。
世界一強い男。その妻。当然、夫よりつよい。これはだいたい万国共通のルール。すなわち世界一強い男の妻こそが真の地球上最強の人間。
なんだ。別に全然問題なかった。これからもあたしは人生を楽しみます。
完
[390] 題名:新人さんいらっしゃい。 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2010年11月03日 (水) 09時26分
祝銀世界さんSSデビュー
【新人さんいらっしゃい】
「…良く来た…」
ひっ!
こ…怖い…
あぁ、や、やっぱりネルフぢゃ無くて街金か何かよ絶対!
多分面接会場間違ったのね…黒服の強面が並んでる時点で何で気付かなかったのよ!私の馬鹿っ!
「では今ここに居る三人…志望の理由を述べろ。」
「使徒から人類を護る…その為です。」
は?使徒?
「…君は別室だ。次。」
「…アフリカのNGOで働いていました。その時噂でサードインパクトを防ぐ研究機関が発足したと知り止も絶ても堪らず此方へ来てしまいました。」
…あれ?ここやっぱりネルフの面接会場?
「…次。」
「え?あ!は、はいっ!わ、私はその…だ、大学で生体工学をま、学んでいましてその、こ、此方の充実した研究設備と優れた研究者の方々に惹かれましてその…」
「…推薦状は見た。優秀だな。」
「は、はい!あ、有難うございますっ!」
「…さて、二人に聞く。特技や趣味はあるか?」
「空手二段、特殊車両の免許は国内で取得しました。英語とフランス語が出来ます。片言ならスペイン語も。」
「茶道とお花を少し…研究の関係で危険物甲種を。ペーパードライバーですが車も乗れます。英語は日常会話程度なら。」
「では君達に聞く、もし君達のうちどちらかが重度の感染症となっていたとする。君達の対応を聞きたい。」
「行政機関若しくは軍、警察へ直ちに建物の閉鎖と内部の人間の隔離措置を依頼します。その後医療機関へ連絡、対応を待ちます。」
「え?疫病なら先ずは保健所じゃ…あ、そうか感染症なら二次感染を防止しな…あ、私も感染の疑いがあるか…概ね先の意見に賛成です。」
「宜しい。では最後の質問だ…」
あ、立った…でかっ!?
「君達は家族と世界…秤に掛けられるか?」
「セカンドインパクトで天涯孤独ですから護る家族はいません。」
「…判りません…」
「…では質問を換えよう。百人を救う為に君達は何人犠牲に出来る?」
うわぉ…ヘビーな質問…
「千人でも二千人でも。」
…は?
「その百人が次の一億人に繋がるなら例え五千人が犠牲となってもいい。もし世界が滅びるなら例え一万人に一人しか救えなくとも自分はその一人に命を賭けます。」
ち、ちょっと何を考えてるのこいつ!?
「あ、あたしはっ!犠牲なんか出さない様に頑張ります!犠牲なんか無いに越した事無いじゃありませんか!」
そうよ!誰が犠牲なんか望みますかっての!
「…良く解った。結果は後日通達する。本日はご苦労だった。」
◇◆◇
「碇…昨日の面接どうだった?」
「…合格だ。二人共に。」
「?と言うと?」
「一人戦自か内調の工作員が混じっていた。」
「懲りんな奴等も…」
「もう一人も恐らく。だが有能な人材なら使わねばな。」
「いいのか碇?」
「ああ、有能ならば相手は最後までカードは切らんよ、後は切り時さえ間違えなければ良い。」
「しかし…」
「我々には時間が無いのだ…例え毒でも使える物は使う。」
「うむ…そうだな…」
◆◇◆
ババババババ…ガタン!カッカッカッカッ…パサン!カッカッカッカッ…ガチャン!バルン!バババババババ…
「ん〜?手紙ぃ?どれどれ…ん!?」
ガサガサ…「あーハサミハサミ!」チョキン!
…
…
…
「落ち着け、落ち着け、見るわよ私!」
…
…
…
「…もう一回見よ…」
…
…
…
「い…い…いゃったあっ!」
[389] 題名:帰って来た綾波さん、すっとばす 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2010年11月02日 (火) 07時49分
…
…
…え?もうカメラ回ってる??
こほん。失礼しました。改めまして今晩は、綾波レイです。
さて、早速今日のゲストをお呼びしま
「レイ…誰に何話してるの?」
「…気にしないで下さい…電波です。」
「は?」
…今日のゲストはネルフ作戦部長、葛城ミサト三佐です…
「葛城作戦部長…折り入ってご相談があります。」
「あらぁめっずらし〜、レイが私に相談…相談…」
あら?顔色が…
「ね、レイその…相談って…やっぱシンジ君絡み?」
「はい。」
「はぁぁぁぁぁぁぁっ…で、なぁに相談って。」
「碇君とアスカが昨日話していたのですが…アレが来ないとか生はやっぱ」「だあ〜っっ!」
ドグワッチャ〜ン!!カランカラン…
…ちゃぶ台返しならぬデスク返し…
「ああああんのマセガキ共がああっ!ゆわぁっぱり出来てやがったかぁ!こんな事だと思った〜!どーも今朝からアスカの様子が変だと思ったのよ〜!」
?
「葛城作戦部長…それで葛城作戦部長は生がお好きなのですか?」
「げふうっ!?!!」
あ、倒れた。
***
「…で?アスカ一体どう言う事かしら?」
赤木博士…顔が怖い…
「え?ネットで注文した生牡蠣が未だ届かないってシンジに相談してたんだけど…」
ガタン!
あ、こけた…黒のレースか…
「あいたたた…」
「一寸リツコ大丈夫?」
「え、ええ大丈夫…にしても生牡蠣ですって?」
「そ。ミサトに向こう居た時オイスター食べに連れてかれてから好物なの。」
…そう…柿じゃ無くて牡蠣の事だったの…
「…で?」
「パイロット手当て出たんで奮発して注文しちゃった。そしたらシンジが生は危ないからカキフライか鍋にした方がいいんじゃって…ミサトは生が好きだって聞いてたし…どうしたのリツコ?」
「っっ!…頭痛い…」
?赤木博士…風邪かしら?
「ぬわぁんですってえ!?」
「あれ?ミサト居たの?」
「ミサト、貴女未だ安静にしてな…あ。」
「りりりリツコ…しししシンジ君…」
「ど…どうしましょ、私てっきり…その…」
「「?」」
***
モニターに映る地下独房の一室…
「僕が一体何をしたんだ…」
「あ、すねてるすねてる。」
「…どうやって誤魔化しましょう…」
「大丈夫、手は打ったわ。」
***
「碇君…」
「あ!綾波!?僕をここから出して!急に黒服の人達が来てここに閉じ込められたんだ!」
「聞いて…碇君、昨日アスカと牡蠣の話をしてたわね?」
「あ、うん。」
「牡蠣…別名海のミルク…亜鉛欠乏症に効果的な食品…」
「綾波?」
「貴方…葛城作戦部長の味覚を回復させたいの?」
「へ?」「答えて。」
「い、いやそんな事考えてなかったし。」
「そう…良かったわね…」
「?なんで?」
「ミサトカレー…もし味覚が回復した葛城作戦部長がアレを食べたら…」
「ゔ」
「…貴方にしか出来ない…せめて卵焼きぐらいまともに作れる様になるまで牡蠣を葛城作戦部長に食べさせるのを待って…」
「…判ったよ、綾波。」
「有難う…じゃ、解放してあげる…」
***
「…リ〜ツ〜コ〜」
「貴女卵焼きぐらいじゃない、まともに作れるの。いい機会よ、花嫁修行しなさいな。」
「とほほ…あたし生牡蠣大好物なのにぃ。」
***
「うーん…牡蠣頼んでなんで私が呼び出されたのかしら?ま、いいわリツコから何か知らないけど香水もらっちゃったし。あ、シンジのパパだ、碇司令!」
「セカンドパイロットか。調子はどうだ?」
「は、はい!問題ありません!(…げ、司令とおんなじ香り。)」
「…ならば良い…」
「行ったか…はあ、これどうしよう…」
***
「ミミミミサト大変よ!シシシンジ君とアアアスカが同じ香水の薫りなの!」
「ぬわぁんですってえ!?」
…?
[388] 題名:お弁当にまつわるレディーストーク ――みっしょん・いんぽっしぶる 名前:銀世界 MAIL URL 投稿日:2010年11月01日 (月) 23時15分
はじめましてです、「エヴァネタだったら何でもOK」という心の広いお言葉に釣られて投稿します。
小説やらSS自体は結構書いた経験があるんですが、エヴァ作品は初めてです、ドキドキ。
何かキャラがおかしかったら、パラレルワールドと思って下さい^^;。
いや、いろいろとパラレルな設定なんですが・・・旧チルドレン5人揃ってるし。
諸事情により、やたらアットホーム(?)な雰囲気の世界です、平和と言うか能天気と言うか。
=====================================
「何の用かしら、赤木リツコ博士?」
葛城ミサトが研究室のドアを開けて入って来た。
部屋の主・赤木リツコは黙って紙の束を突きつける。
「何これ」
「チルドレン達のここ最近の、シンクロテストや射撃、格闘演習、その他諸々の成績よ」
リツコの返答にミサトは首を傾げる。
何を今更見ろと言うのだろう?
綾波レイ、惣流・アスカ・ラングレー、碇シンジ、鈴原トウジ、渚カヲル。
5人それぞれの得手不得手はよく知っている。
それを踏まえた作戦をいつも立てている――つもりだ。
「今日は相対評価じゃなくて絶対評価をしてちょうだい」
リツコが回りくどい指示をする。
「あの、ちょっちわかりにくいんだけど」
「要は他の子に比べてどうこうじゃなくて、成績の変動を見ろってことよ」
それなら最初っからそう言ってよ、とブツブツ呟きながら、ミサトは渡された資料をめくって行く。
ここ最近と言いながらも、それなりの日数のデータが記されている。
「ん?」
アスカ、トウジ、カヲルの3人が、揃ってやけに調子の悪い日がある。
勿論、エースを自負しているアスカの落ち込みは他の2人に比べて控え目ではあるが。
それにしても、この3人の共通項というのはあるだろうか?
「ああ、その日ね」
リツコはミサトの視線を追って日付を確認すると、小さく頷いた。
「あの子達、お弁当の代わりに食堂使ったのよ」
「へ?」
オベントウノカワリニショクドウ。
よくわからない。
食事抜きと言うのならわかるが、食糧補給は出来ているではないか。
いや、むしろ出来たてを食べられていいんじゃないの?とミサトは疑問を口にする。
「人間の感情はロジックじゃないわ」
それにしても、これじゃ加持君がかわいそう、ああでもミサトがお弁当渡した日が命日になるからいいのかしら。
「リツコ、何ブツブツ言ってんのよ」
「この現象が理解出来ないっていうのは、さすがミサトだって思ったのよ」
この日は、シンジ君の提案で、お弁当を持ち込まずに食堂を使ったわけ、とリツコが説明する。
いつも食堂で弁当箱を広げている時、調理師さんの視線が痛かったのだそうだ。
――仕事取っちゃって悪いよ、やっぱり食堂使うからには注文しなきゃダメだ!
気遣いの人・サードチルドレン碇シンジの言葉は、紆余曲折を経て実行に移された。
セカンドとフォースが(珍しく)タッグを組んで猛反対したにも関わらず。
「で、何でそれが成績低下になるのよ」
「ミサト、あの子達のお弁当を作ってるのは誰か知ってるわよね?」
「もっちろん♪ 当たり前でしょ、私、シンちゃんとアスカとは同居してんのよ?
他の子のことだって2人から情報仕入れてるし」
様々なことがあった日々を経て、現在の弁当製作状況は以下の通り(葛城ミサト調べ)。
ファーストチルドレン・綾波レイ=自作(シンジ及び同級生の洞木ヒカリに指導を仰いだ結果)
セカンドチルドレン・惣流・アスカ・ラングレー=同居中の(本人は認めないが愛しの)シンジ作
サードチルドレン・碇シンジ=自作
フォースチルドレン・鈴原トウジ=委員長こと洞木ヒカリ――要するに愛しの彼女(未来の妻)作
フィフスチルドレン・渚カヲル=(何だかんだで言いくるめた果てに)絶賛片思い中の相手であるレイ作
「・・・ってことぐらいわかってんのよ」
「じゃ、あの子達のテンションが下がったのも理解できるでしょ」
「・・・なるほど」
しっかりして見せても、あの子達って結構単純なのねぇ・・・とミサトは呟く。
さすがにエースのプライドのあるアスカはその日も一定の数値を出しているものの、本調子には程遠い。
トウジがわかりやすいのは予想通りだが・・・
「それにしても意外だわ、カヲル君がここまで影響されるなんて」
「レイに作ってもらうまで、カヲルは随分苦労してたのよ」
現在、リツコはレイ及びカヲルの保護者として同居している。
そのため、自分に寄せられる好意を今一つ理解していないレイと振り回されるカヲルの図をずっと見てきたのだ。
シンジにべったりしようとするのを散々見せられた後に理解しろと言うのも無理があるが。
「この日、レイは影響なかった、と言うかちょっち記録更新してんのね。
負担が軽減されたから当然か。
シンちゃんは完全に平均値範囲内だけど」
「多分、手間に関して負担軽減したプラス面と、お弁当に関するアスカの反応を見られないことに関するマイナス面が相殺したのね」
「・・・あの2人、ほんと、さっさと素直になりなさいよね」
ミサトは小さく溜め息をつく。
「とりあえず、次の日からお弁当に戻しなさいって指示したわけよ。
食堂の職員の精神状態より、チルドレン達の精神状態の方が大事だもの。
世界の存亡がかかってるんだから」
と言いつつ、何だかんだでリツコは彼らに甘いのよね、とミサトは内心で微笑む。
「確かに、翌日から成績も戻ってるわね」
「その先を見て」
リツコに言われ、さらにミサトはデータを見る。
「あら、レイがじわじわと上げてるじゃない」
「カヲルがお弁当作り始めたのよ」
それ初耳、何で教えてくれなかったのよ。
ミサトは興味津々でリツコを見る。
「作ってもらってるお礼だって言ってね。
レイは最初、それならそれぞれ自分で作ってもいいんじゃないかって言ってたけど。
何だかんだで嬉しいんでしょうよ、自分のために作ってくれるってのは」
「ちょっと前はシンちゃんが作ってたけど、アスカが不機嫌になったもんねぇ」
――碇くんの料理を食べるのはやめるわ、その代わり、一緒にメニューを研究するの、同じ料理する立場で。
レイの一言に、食す専門のアスカはぐうの音も出なかったとか。
その「碇くんと一緒にメニュー研究」に危機感を感じたのも、カヲルが弁当作りに手を出したきっかけらしい。
もっとも、乱入する時に発した言葉により、レイからは冷ややかな眼差しを向けられることになったのだが。
――僕もシンジ君と一緒にメニュー研究するよ!!
自分の彼女と自分の親友が一緒に料理研究をしていようと全く意に介さないトウジは、それを聞いて一言「アホかいな」と呟いたとか。
「で、ここからが本題よ」
「料理研究でシンちゃんかカヲル君が、ヒカリちゃんに禁断の恋をしちゃったとか?」
「何わくわくしてるのよ」
書類を全部ミサトの手に渡していなければ、丸めて殴るところなのに、とリツコは思った。
「シンジ君の最近の状況よ」
「えーとどれどれ・・・うーん、安定してるように見えるけど」
「定規当てるか紙折るかして見てちょうだい、そのためにわざわざ印刷したんだから」
実行して、ミサトもなるほどと得心する。
1日1日を見れば「横ばい」と言える状況ではあるが、長期的に見るとじわじわと下降線である。
「で、まさかこれもお弁当が絡んでるんじゃないでしょうね」
「そうとしか思えないわ、下がり始めの時期が一致してるもの」
レイとカヲルが弁当を交換するようになってから、シンジの下降傾向は始まった。
おそらく、シンジ以外の全員が、誰かのお手製弁当を食べることになったからだろう。
いくらアスカのご機嫌さが励みになるとは言え、多くを望まないシンジといえども、やはりこの状況はじわじわと堪えてくる。
・・・というのがリツコの見立てである。
「それで、作戦部部長に命令よ」
「命令?」
アスカに、シンジ君のお弁当を作らせなさい。
「・・・それを言うために呼びつけたの?」
「保護者として責任持ってさせなさいよね、碇司令の命令でもあるんだから」
息子に、好きな女の子からのお弁当を食べさせたいという親心らしい。
だったら自分でアスカに命令しろ!とミサトは内心で叫んだ。
「嫁舅問題が発生したら困るから、司令も自分じゃ言えないしね」
ミサトの内心を読み取ったかのように、リツコが駄目押しをした。
「すぐに戦闘に差し障りが発生するとは思わないけど、なるべく早くね」
早く出来たら苦労はしないわよ〜!!とミサトは無言の悲鳴を上げた。
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チルドレン絡みの好きカプを3つとも盛り込んでいるにも関わらず、本人達が登場していないという(汗)。
リツコさんを解説役に据えたところ、ミサトさんが中途半端に鈍い人になってしまいました。
[387] 題名:あの子のことが僕は嫌い 18.(ワイド)ショー・オブ・ザ・コクーンズ 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年10月31日 (日) 22時32分
※「17.ちからくらべすべからず」の続きです
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「ね〜シンジってばぁ…」
「…。」
いつものように晴れ渡る青空のある日、登校してくる生徒たちは、目を疑うような光景に出くわした。
あの惣流が、碇シンジの機嫌をとっている!
「機嫌直しなさいよぅ。あたしそんなに気にしてないからさぁ…。ねっ?」
そう言いながら、早足でズンズン進む碇の肩にそっと触れた惣流の白い手を、なんてことだ。
碇は「ほっといてくれよ!!もう!」
そう叫んで、振り払った!
「きゃあっ」
「ぼく、先に行くし!」
そう言い捨てて、ほとんど駆け出した碇に向かって
「なによーーっ!」
と叫んだ惣流が、小さくなる碇の背中を見ながら、最後には
「なによぉ…もう」
って小さな声で囁いてた。
という話は昼過ぎまでにはほぼ全校全クラスに伝わっていた。
※
「なんや。お前ら離婚か。」
「ちがうっ!!」
「違うということは、つまりこれからも夫婦は続けるということですか?碇さん。コメントお願いしますよ」
「だから、結婚してない!夫婦じゃないってば!」
「ギョハハハハハハ!」
シンジをからかって2馬鹿が下品な笑い声をあげている。
っとに、バッカじゃないの!?ちっ。舌打ちしたくなる気分だわ。
「…アスカ、顔がこわい」
「なにぃ!」
「碇君のこと、睨み過ぎ。ね、何で喧嘩したの?」
「…ヒカリになら言ってもいいかな…あのね」
そこで気がついた。周りの連中が急にシーンとしてる。
興味ないような顔しながら、耳をそばだててる。
…どいつもこいつも…ホントに…。
「ヒカリ、こっち来て」
「うん」
窓から風が吹いて、教室の白いカーテンがたなびいている。
1番後ろの窓際のカーテンの中に二人で隠れた。
それを見届けた他の連中は諦めたのか、もとの各々の会話や遊びに戻った。
別にここに隠れたからって、どうってことはないんだけど、子ども同士の拒絶のサインなのだ。
ここにいる以上は構わないでということだし、それを無視して盗み聞きしようとしたりするやつは、クラスメイトとしてのルールからはみ出ることになるから恐れてしない。
日本人って変。でも、あたしはヒカリと二人でひそむここが気に入っていた。
*
「なんやねん、あいつら」
「カーテンの繭の中にこもって、二人きりでクスクス、ひそひそ…」
「これやから女ってやつはやなぁ…」
トウジとケンスケがカーテンに隠れたアスカ達を見ながらぶつぶつ言ってる。
僕はまた二人とも違う種類の不満を抱いた。
なんだい。アスカのやつ。あんな狭いとこで誰かと二人っきりになんてなるな。
*
「…それで?それで?」
「それで、シンジが部屋にこもっちゃって、『僕ってやつはー!』とか『うわー!』とか聞こえてきて、ドスンばたん暴れてて、急に静かになったと思ったら、また『アァー!』って叫んでるのが聞こえてきたりして、あたし、もう笑い死にするんじゃないかしらってくらい可笑しかったんだけど…」
「プクク…それで?」
「朝になって顔を合わせるとき、気まずいじゃない?
どーしよーかなーって思ったんだけど、いっそ、からかった方があいつも口応えして、元通りになるかなって思ったから『おはよー!エッチな変態シンジ!』って言っちゃったの…。」
「わ。やっちゃった?」
「…やっちゃった。そしたらあいつ、みるみるうちに傷ついた顔して、口きかなくなったわ…。」
「ホントに気にしてたのね…。」
「でも、おかしくない?
あたしが落ち込むならわかるけど、その、なんでしてきた方のあいつが被害者みたいに傷ついてんのっ!?」
「したって、ほっぺにチュウのこと?」
「不潔って言わないのね」
「それくらいならよろしい。まさか…もしかして、碇君たら、アスカなんかとキスしたから傷付いたのかしら…」
「なぁんですってー!?」
「キャハハハーッ!嘘うそ!」
繭からあがった笑い声に周囲の子達が一瞬目を向けて、またすぐに自分たちの世界に帰る。
何、話してるんだろ…。
つまんないこと、言うなよな。
*
ひそひそ。ひそひそ。
「…だからあたし、シンジのこと追いかけて、『ホントは、あたし全然気にしてないから大丈夫よ!』って言ってあげたの!なのに余計にへそ曲げて『ほっといてよ!』って言われたの!訳わからないと思わない!?」
「ん〜んむー!」
ヒカリが腕組みしてうなる。顔をしかめて唇を「んっ」て一文字にしてるわ。
「まず、碇君は、『エッチな変態シンジ』と言われて傷つきました」
「う、うん」
「つまり、『エッチな変態』と思われたくなかった。ということです」
「え…そ、そうなの??」
「碇くんの立場を、アスカと加治さんて方に置き換えてみたらどうかしら?」
「…。」
あたしの大好きなかっこいい加治さん。その加治さんにあたしは思わずキスしました。
その翌朝、「おはよう!エッチな変態アスカ!」と爽やかに挨拶されました。
…ギャーーーーーー!?
恥ずかし過ぎて隠れたあたしに加治さんは「どうした。俺本当は全然気にしてないから大丈夫だぞ」といいました。
気にしてよーーーーっ!!
って…加治さんはそんなこと言わないもん!
「じゃああたしどうすればいいの?」
「さあ…。しばらくほっといたらいいんじゃない?」
「そんな、冷たいわ」
「だって私、碇君じゃないから碇君の気持ちなんてわからないし」
ひそひそ。ひそひそ。
「洞木さーん。先生が呼んでるって」
カーテンの外から声をかけられた。
「あ、はーい。ごめん。また後でねアスカ。
碇君のことより、まず自分の気持ちを考えたほうがいいんじゃない?じゃね」
「むぅ〜…」
繭からヒカリが出てっちゃった。
風が吹いてカーテンがフワーッとはためいた。
青空が向こう側にあって、教室の茶色い床が覗く。せっかくのあたし達だけの世界は簡単にほどけて、現実に侵食される。カーテンの隙間から視線を感じたら、机によりかかったシンジが、口開けてこっち見てた。
イーっだ!!
広がったカーテンを掴んで、もう一度くるまった。
窓枠の桟に頬杖をついて、外を眺める。
青空と流れる雲と黄土色の校庭。
繭の中は気持ちいい。
周りには本当はたくさんの人がいるのに、ここだけ区切られたあたしだけの空間。
ここに好きな人といられたら中々なのよ。例えばヒカリ。
二人でここでおしゃべりしてるとき、とっても楽しい。
閉ざされてるのに光が満ちて白く明るい不思議な空間でするないしょ話。
こうして一人で隠れてるのもキライじゃないわ。
……シンジの気持ちじゃなく、あたしの気持ちねぇ…。はぁ。
*
不覚にも見とれてしまった。
白いカーテンと青空のコントラストと、風の向こうに一瞬見えた赤い髪を押さえるアスカ。
青い目でこっち見てた、綺麗な女の子。
もし僕に絵が描けたなら、ずっととっておけるのにな…。網膜の中にしか残らないよ。
「チクショー。カメラ構えてたらよかった…」
ケンスケがつぶやくのが聞こえた。僕と同じことを考えてたようだ。
イーっ!を僕に寄越したあとに、アスカはまた隠れちゃった。
ハロウィンの白い布おばけみたいだ。
もし、あの白いカーテンの中に僕も入れてもらえたら、君のこともっとわかるのかな。
僕のことわかってもらえるのかな。
今朝、君に言われて、キズついたんだぜ。情けないかもしれないけどさ。
*
掃除の時間。
あたしの持ち場の分が結構早く終わったので、教室に帰ってきた。
教室班の子達が数人、雑巾がけをしたり、机の列をまっすぐに整えてる。
ヒカリ帰ってきてる?
…あ、いたいた!
窓際の指定席のカーテンが膨らんでる。
「ヒーカリっ!」どしっ。
そう呼んで、軽く体あたりする。びっくりしたのか身じろぎしてる。くすくす。
ヒカリが詰まってないほうの、もう片方の空いてるカーテンをあたしは引き寄せ、くるまった。
そしてヒカリに身を寄せる。繭が二つ横並ぶ。だって今から話すことはさあ、いくら相手がヒカリでも、恥ずかし過ぎて顔を見ては言えないわ。
「あのさあ…ヒカリに言われて、自分の気持ちを整理してみたんだけどさ…」
「…」
「やっぱり、あいつがあんまり情けないからそこは腹立つのよ。」
「…」
「逆なのよ。自分からしてきたんだから、もっと堂々としててほしいの…。なのに変に気にしちゃってさ。あたしの方こそどうすればいいかわかんないじゃない!ねえ?」
「………(コクコク)」
「あたしは別に、シンジが急に変わっちゃっても、嫌じゃなかった。突然すぎてびっくりしただけなの。
シンジのこと、本気でエッチな変態なんて、思っちゃいないわ…。」
「ほ、本当!?」
………。
だれよ。あんた。
ひかりの
こえじゃ
ない
わよねぇ?
ザーーーーーーッと世界がノイズに満ちて、真っ暗になるかと思った。
貧血を起こしそうなのをこらえて、カーテンを、ばっ!!て、ひんむいた。
一度、落っこちた世界が、沸騰するような勢いで急上昇する。
視界が赤く染まる。
いえ、赤を通り越して七色だわ。
あたしの脳が状況を把握できないで、虹色のレインボウに次元がひずむ。
白いカーテンから恥ずかしそうに顔を出すシンジに向かって
「なんであんたがここにいるのよーーーっ!!!」
ってあたしは全力で叫んでいた…。
※
放課後。
「だからさ、カーテンの中にいたのは、アスカがいるのを見て真似したらどんなかなって思っただけでさ…」
「うるさい、うるさい、うるさーいっ!」
「でもよかったよ。アスカ本当は僕のこと嫌じゃなかったんだもの」
「いま、嫌になった!今!」
「そんなこと言うなよ。僕、堂々としてるだろ?ねっ」
「ばっ、馬鹿!あんた馬鹿よっバカァー!あーん!」
「あぁ待ってよ、アスカー!」
ほとんど走る勢いの惣流を、碇がなだめながら追いかけて校庭を横切るのを、下校する生徒達が見ていた。
2階の教室の窓から、見下ろしていたトウジが尋ねた。
「何や。あいつらもう再婚したんか」
「いつもに戻った。」
「違うわ。スズハラ。元々、結婚している人がよりを戻した場合、『復縁』って言うのよ!」
「おお、さよか。さすがイインチョやな!!」
「なんの知識だよ!」
トウジとケンスケとヒカリの三人が、カーテンのはためく窓際に並んでいた。
了
あとがき
ちょっぴし季節ネタ入れた。皆さんはハッピーハロウィンでしたか?
ごまめはとくに何もしませんでした。なんだあんなもん。日本人なら彼岸で十分だい。
[386] 題名:えらい上等なもんが出てきましたな!! 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2010年10月31日 (日) 22時29分
1週間ぶりにやってきたら、えらいこと上等なもんが!!!
元々無いごまめの立場がさらに無いやないか!!場を読んでちょうだい。(自分が)
[385] 題名:Bad Apple 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2010年10月24日 (日) 23時45分
私は夢を見た。
青い髪の少女に知恵の実を渡す夢を。
少女は人形。
無への帰還を求めるだけの誤って生まれた存在
少女は人魚。
只泳ぐだけの美しい魚
その痛みを知らぬ存在を憎み
その美しさに嫉妬して
私は心を与え痛みを教える。
人の苦しみを人形に与え
人の悲しみを人魚に刻む
私は名ばかりの魔法使い。何も出来ない只の魔女。
私は夢を見た。
金の髪の少女に毒の果実を渡す夢を。
少女は道具。
愛を捨て名誉を求めるだけの憐れな子供
少女は私。
只愛を求め夢見るだけの哀しい子供
その踊らされている事を知らぬ存在を嘲笑い
その私の写し身の様な存在を嫌悪し
私は赤い南瓜の馬車を与え
私はプライドと言う毒の果実を与える。
哀れ灰被り姫は屈辱に震え
憐れ雪のごとき白磁の肌の少女は只眠る
私は名ばかりの魔法使い。創られたシナリオを踊るだけの存在
たとえ楽園を逐われ踵を切られても
たとえ海の底に落とされいつか偽りの愛を失っても
心奪われた存在が心を忘れていても
私は今日もブリキの人形に偽りの心臓を与え、藁の案山子に嘘の心を渡し、臆病な獅子に偉そうに勇気を説く。
でも私は道に迷った少女を案内する事は出来ない。
そう、私自身が迷い子の少女の成れの果て。
私は夢を見る。
全てに絶望しても未だ立ち上がる男に救われた私は、人形を楽園へ還し、人魚に声と足を与え、継母に慈愛を教え、少女を王子の元へ送り届けるのだ。
ブリキの人形も、藁の案山子も、孤独な獅子も皆私の魔法で…
そう、これは夢。
嘘と知っても流された私の子供じみた願望。
目覚めて流す涙に貴方は何も言わず口付けした。
そんな貴方を
憎みたい。
*題名をニコニコ動画やYouTube等で検索されたし。*何処にとってのアルエ(大)の歌*こんなんで宜しゅうでっか?
[384] 題名:よごれちまったかなしみに 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2010年10月24日 (日) 14時16分
「む〜」
…さっきからアスカは昼寝しているシンジ君を玩具にして遊んでいる。
「…ずるい。何でシンジの癖にこんなに手がでかいの?あたしの薬指とこいつの小指が同じサイズなんて許せない!」
頬を小動物っぽく膨らませる少女を私は微笑みながらペンペンと観察する。
「…にしても起きないわね…ねーミサトぉ?シンジのバカ一体どうしたの?」
「知らないわよ?ただ私と一緒にお昼を食べ」「ストップ!」
…アスカ…顔が怖い…
「まさかミサト…あんた手料理なんか…」「出したわよ?」
あ、顔色が青に…
「キャー――ッッ!シンジシンジシンジ死んじゃ駄目死んじゃ駄目死んじゃ駄目ー―――っっっ!!」
「…失礼な…」
アスカの膝枕でヘラヘラしてたシンジ君が“トムヤムクン味の味噌汁”と呟くのを私は聞かなかった事にしてもう一本エビチュノンアルコールを開けた。