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[443] 題名:あの子のことが僕は嫌い 22 チョコとバームクーヘン 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2011年02月14日 (月) 22時42分
ラボに戻ったら、机の上に見慣れぬ物体があった。
「これは何?マヤ」
「手作りチョコレートです!シンジ君達がバレンタインにくれたんです。それは先輩の分です」
「まあ…」
三粒の丸いチョコレートが、薄紙に包まれて、レース模様の透明の袋に入っている。
茶色いミルクチョコと、ピンクの苺チョコと、緑色の抹茶チョコ。形が不揃いなのは、手作りゆえね。
「普通のがシンジ君で、苺がアスカで、抹茶がレイの作だそうですよ」
「レイも作ったの?!」
「そーは言っても、あの子達、ほっとんどクラスメイトの洞木さんの指示に従ってただけよーん」
ミサトが自分のカップ片手に現れた。
「コーヒーちょーだい!」
※※
「最初はさ、アスカがシンちゃんと二人きりでチョコを作ろうとしてたんだけど、やり方がイマイチわからないから、洞木さんを呼ぼうってことになって。そしたらシンちゃんが、せっかくだからレイも呼ぼうって言い出しちゃったのよね〜」
「うわ。アスカ、荒れませんでした?」
「そりゃあもう!当たり散らして大変だったわよ!でもさ、機嫌直してもらうために、シンちゃんに『アスカ様のためだけの最高チョコ』を作って貰ってたから、結果オーライなんじゃないの〜。ん。チョコ、甘いっ!苦いコーヒーがあうわねん」
「ミサト、あんまり甘いものは食べないのに」
「ま、こういうのはトクベツっしょ!」
「なんだかんだ言って保護者してるわね?」
「あたし別になんにもしてないわよ?」
「葛城三佐がそうやって、惜しみなく子ども達に自分の家のキッチンを使わせてあげるところ、私には真似できないかも…。私なら、どちらかと言えば、キッチンを汚されるのが嫌だし、本音では億劫に感じてしまう気がします…」
恥ずかしげにマヤが言った。単なる「ずぼら」と「潔癖症」の性格の差のような気もするけど、それがミサトの美点であることに異義を唱えるつもりはないわ。
チョコレートを口に含んでころころと転がす。ほろほろと甘い。
「…あの子達、司令にもあげたのかしら?」
「さあ…」
「シンジ君が司令室の前でうろうろしてましたけど、結局渡せなかったんじゃないでしょうか?レイに託してるのを見ました」
「そう…」
※※
三色のチョコレートか…。
幼い頃を思い出す。
私は母さんの膝に座っていた。
たくさんの色つきのチョコをテーブルの上に散らした。あれは、マーブルカラーのチョコだったかしら?
赤いチョコ、黄色いチョコ、緑のチョコ、懸命に色ごとに分ける私を見てた母さん。
「ねえリッちゃん。このチョコをお母さんだとしてみましょうか?」
「え〜!それ、なあーに?」
「黄色いチョコはね、優しいおかあさん。
緑のチョコは、おシゴト頑張るおかあさん。
赤いチョコは、怒りんぼうのおかあさん。
どれが好き?」
「怒りんぼのおかあさん、いやー!赤いチョコたべないっ」
「ふふ、そうね。いやよね。でもね、どれもチョコレート。どれもおかあさんなのよ。どうする?」
微笑みながら、幼い私を困らせる質問をしてたっけ。母さん。
※※
あれはきっと、マギの構想だったんでしょうね。
母として。科学者として。女として。三つに分割した赤木ナオコの人格を移植したOS。世界最高のスーパーコンピューター。
「司令は、シンジ君のチョコを召し上がったんでしょうか?」
マヤが私に尋ねる。
初号機を格納したブリッジの前に、司令がたたずんでいる。
私のいる場所からは、あなたの背中が小さく見えるだけね。
「どうかしらね」
よく見えないけれど、手に小さな袋を持っている気もする。
もしそうなら、今、あなたの葛藤の激しさは、常人には及びもつかないことでしょう。
「司令はよく、ああやって初号機の前に一人でたたずんでらっしゃいますよね。やはり、人類の未来に思いを馳せてらっしゃるんでしょうか?」
「そうね。いえ…、違うと思うわ」
「え…?」
私は白衣のポケットに両手を突っ込んで、少し離れたところから、初号機を見つめるあなたの背中を見つめてる。
あなたが見つめてるのは、私ではなく彼女。
母さん。
私は母さんみたいに、自分を分けることが出来ないわ。
彼女を見つめるあなた。
そのあなたを見つめるわたし。
わたしを好きな母さん。
あなたを好きな母さん。
母さんを好きなわたし。
彼女から生まれたレイ。
レイを見るあなた。
レイを見るわたし。
嫉妬なのか、悲しみなのか、怒りなのか、切なさなのか、それでも燃えさかろうとする愛なのか。心の名前をひとつに絞れない。
何層にも何層にも重なり、繰り返されてしまい、全てをすっぽりと包み込んでしまっている。分かつことなんてとても出来そうにない。
私の心は、何層にも積み重なったバームクーヘンのようね。あのケーキの形を思い浮かべた。真ん中が空洞で、からっぽなとこも私みたいよ。肝心の自分自身がお留守ね…。
私は司令に何を渡そう?
バレンタインにバームクーヘンでも、問題ないと言ってくださるかしらね。
「ああいうときの司令はね。デートしてるのよ」
了
あとがき
大人の女の恋の話。のつもり。
[442] 題名:何処タン 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2011年02月14日 (月) 22時41分
面白かった?よかったですわー。「こうみえていつも胃が痛いんでつよ。何処さんの作品のほうが人々に愛されてそうです。
ところで「メランコリック」また続きを書いてもいいですか?
新たな不幸が浮かんだのです。
[441] 題名:ごまめさんの作品が面白い件について語る人々2 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2011年02月13日 (日) 23時59分
T・S氏
「オチのキツさに爆笑や、よお判っとるわなあ。本場仕込みの香りやな、オタフクソース風の」
K・A氏
(引き吊った笑顔で)「ま、まああくまでお、お、お話だし、あ、あは、あはは…」
H・H嬢
「…他人よ他人、私そんな…」
M・I嬢
「?何かおかしい所あった?」
某オペレーターズ
「「俺達の出番は!?」」
某司令&副司令
「碇…部下の右往左往がそんなに面白いか?」
「ああ。」
「…この悪党め…」
「…ふっ…」
[440] 題名:ごまめの歯軋り /ある舞台裏 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2011年02月12日 (土) 18時47分
夢のない黒いギャグです
-------------------
コンコン
「失礼します!」
「はい」
「どうぞ」
ガチャ バタン
「あら、あなたなの」
「…先輩がた!このたびは本当にありがとうございましたっ!」
「普通じゃん」
「…は?ふ、普通とは…?」
「あなた、語尾に"ニャ"とかつけるのじゃないのかしら?」
「い、いえ、あれはその…」
「やってみせればぁ?ここで見ててあげるから」
「は…はい。では、恐縮ですが、やらせていただきますっ。え…えーと。スー…
『すっごくお世話になっちゃったね!アリガトにゃ☆』」
ペラリ
ファッション雑誌のページをめくられる。
「…あ、このページのスカートかわいい」
「そうなの?どれ?」
「………あ、あの……」
「あら、いたの」
「……。」
「あーあ。衣裳ねぇ。そういえばさ、あんた、新しい衣裳、三枚も作って貰ったそうじゃん」
「いえ!一枚は制服ですし、スーツが二種類あるのは、その、話の展開上、やむなくと申しましょうか…」
ガン!
びくっ!
「……私、スーツは一枚だけよ。前とかわらない…」
「そーよね。あーあ。着たきり雀。ま、あたしは一応二枚あったけどさ。い ち お う ね。」
「にゃ…にゃは…」
「ニャハだぁ?…あんた何が可笑しいわけ?」
「いえそんな!その、先輩にしか着こなせない、超セクシィな衣裳だと思います!」
「プっ」
「あんたまでナニ笑ってんのよ!」
「いえ、ものは言いようと思って。クスクス…」
「…ふん。まあいいけどね。結局、あれはあたしであってあたしじゃないしぃ。それにしてもさ、あんたホンットうまくやったわよねー。まさにあんたを持ち上げまくり崇拝されまくりの、劇中のアダナどおりの扱いよね!異常なくらい!」
ガン!ガン!
「!(ビクッ!)」
「…サービスもあそこまでされたら嫌味だわ…1番馬鹿にされているのは、実は私なのじゃないの?…ぐぅぅ…ギリギリ…」
「…そ。そんなぁ…」
「そーよね。持ち上げるだけ持ち上げられたら、後は落ちるだけよね〜」
「なんですってっ?」
「ところで、あんたそこそこ人気あるみたいじゃん」
「(ソコソコ?!)…は、はい!先輩がたには及びもつきませんが…っ!ありがたいっす!」
「あなたの売りは、何?」
「はいっ!あちきの1番のチャームポイントは、やっぱりこのメガネです!」
「ほかは?」
「はいっ!あとは、この、オサゲと、カチューシャが売りですかね!」
「メガネに、オサゲに、カチューシャねぇ…。」
「はいっ!」
「ちょっとさ、パーツに頼りすぎじゃなーい?」
「……!(ごくっ…)」
「それはちがうわ。」
「え…」
「彼女、素のままでは到底勝負できないから、パーツでごまかさなきゃ、やってられないのよ。」
「!!!!!!!」
∀∀∀
◆女子トイレの片隅。
「う…うっうっう…どうして、どうしてあそこまで言われなきゃいけないのさぁ…グスッ…えぐえぐ。あちし、ただ一生懸命頑張っただけなのにぃ…グス…」
カラカラ、カラカラ。
個室の便座に腰掛けて、トイレットペーパーを引き出しては涙を拭い、鼻をかむ少女。
「…!?」
誰もいないと思っていたが、よく耳を澄ませば、何か聞こえる。自分と同じ、啜り泣きみたいな。
「クスン…クスン…うっ、ひ〜…ん…」
「…誰かいる?」
かすれた鼻声で尋ねた。
∀∀∀
「キミだったの…」
「あんたこそ…やっぱり、楽屋に挨拶に行ったの?」
「うん。すっげー怖かったよ」
「あたしの先輩はイメージどおりだけど…」
「第一の姉さん、怖い。マジ怖い。優しそうなのは役でだけだね…」
「あんたは何言われたの。…え?そんなこと言われたんだ…」
「キミは?」
「あたしの今回の衣裳は、『見えそうで見えない、だけど見えるスーツ』だって…流行りのラー油ねって言われた…。
それに…、あなたは所詮、ただのお色気要員なんだから、間違っても自分達と同じ女優だなんて思わないでねって…グス…」
「ひどい…荒れてるよね…」
「どうしよう、あたしもう、次までがんばる自信ないよ。脚本的にもどうなるかわからないし」
「そんなこと言わないで。あちしがいるじゃん。…役では仲良くすることなかったけど、二人でがんばろーよ。ねっ。」
「…うん…アリガト…」
「…ね、メアド交換しよ?」
「うん。それにしても、あたし達、ひどい顔ね…」
「あは、本当!顔洗おうか」
「うん!」
了
※だれが誰だなんて全然書いてませんよ。誰のことだと思ったんですか?あなたにそんな気持ちがあるから、そう見えたんですよ。
↑クレームをつける方へ↑
※職場や学校で泣かされてもくじけるな。得るものや人はどこかにいる。
[439] 題名:綾波さんすっとばす特別番組 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2011年02月05日 (土) 11時19分
綾波さんすっとばす特番
皆様今晩は、綾波レイです。
本日は節分特集号、『笑ってはいけないネルフ』をお贈りいたします。
挑戦者はこの方々…
『エントリーナンバー一番、乗ってる機体は紫色、皆様ご存知この方、碇“メランコリック”シンジ君』
「…逃げちゃおっかな…」
『エントリーナンバー二番、関西弁の憎い奴、鈴原“掴みはOK”トウジ君』
「何やサ●ケみたいなセットやな…ほんまここジオフロントかいな…蓬莱の肉まんに釣られて来たんやが…」
『エントリーナンバー三番、マニアとオタクの境界はどこ?違いの判るのは本人だけ、相田“銀塩最高”ケンスケ君…』
「…どうせ弄られるんだよ、諦めが肝心たぜ碇、鈴原」
『…良く来た。ようこそネルフ本部へ』『『『ブハッ!?!!』』』
『碇君、鈴原君、相田君、アウト…』
『い、いやだってこれあり得ないよ!?』
『似合いすぎや…鬼のコスプレ…』
『勘弁してくれ…』
スパパパパーン!
『『『痛ー!』』』
…では全員アウトで、三人には罰ゲームかサスケチャレンジの二択を選んで貰います…
『『『ゲェッ!』』』
『…このダーツで…』
『選択肢それ!?』『何じゃそら!?』『嘘ぉ…』
『さ…投げて…』
『碇、おまい最初投げい。』
『そうそう』
『な、何で僕が!?』
『さ…早く投げて…』
『『イーカーリッ♪イーカーリッ♪』』
『とほほ…って綾波、あれたわしとかパジェロとか書いてあるけど…』
『たわしは碇司令髭ジョリの刑』
『『ブハッ!?』』
『鈴原君、相田君、アウト…』
スパパーン!
『『痛ー!』』
『あ、あかん…二回目や…』
『マジ痛い…でもたわしは危険だ…』
『パジェロはペーパー歴六年伊吹さん運転のバジェロでラリーコース…』
『うわぁ…』『さ、最悪や…』『勘弁して…』
『そしてこの真ん中が…』
『ハァイ♪私、葛城三佐コースよぉん♪』
『『ブハッ!?』』『げ…』
『鈴原君、相田君、アウト…』
スパパーン!
『『痛ー!』』
『や…』『…止めなさいよしなさいいい加減にしなさい三連コンボ…』
『加持さん…何ミサトさんの格好してるんですか…』
『あらん嫌だわシンジくぅん♪アタシ葛城ミ・サ・トよぉん♪』
『では碇君…投げて…』
『うう…い、嫌だなぁ…』
『一番マシなのはパジェロやな…』『パージェロッ!パージェロッ!』
『止めてよもう…碇シンジ、投げます!』
スターン!
『…あれ?』
『うわぁこらほっそい所当ておったぁ!』『何て書いてあるんだ?』
『…鬼ごっこね…』
『『『げえっ!?!』』』
『チイッ!』
『碇…そんなに息子に髭ジョリしたかったのか…』
『え?父さんが鬼じゃ…』
『いいえ…鬼ごっこの鬼はこの方…』
『嫌ーっ!』
『こ…』『この声は…』『まさか…』
『な、何でよあんなの当たる訳無いってミサト言ったしゃない!だからこの格好にしたのに!』
『ま、当たっちゃったのは仕方ないわね〜♪』
『そうそう…クスッ』
『さ、さてはミサト、リツコ、あんたら図ったわねぇ!?』
『『さぁ、何の事かしら?』』
『ムッキー!ムカつくムカつくムカつくうっ!』
『何してるの…早く出てきて…』『わ、解ったわよ行くわよ行けばいいんでしょ!リツコぉミサトぉ覚えてらっしゃい!』
ジャーン!
『キャーッ!?カ、カーテン急に落とすなあっ!』
『『ブハッ!』』
『ア、アスカ!?何その格好!?』
『い、嫌ー!こっち見るなHスケベ変態!』
『鈴原君、相田君、アウト…』
『に…似合いすぎや…』『…虎縞ビキニのアスカかよ…』
スパパーン!
『『痛ー!』』
『〜馬鹿シンジ〜、よくもこのアタシをこんな恥ずかしい目に合わせてくれたわぬぇ〜…』
『アスカ…判ってるわね、この台詞を言うのよ。』
『え?あ…う…ま、マジ!?』
『マジ。』
『『『?』』』
『ゔ…うゔ…い、言うわよ、言えば良いんでしょ!こうなりゃヤケよ!シンジッ!“お仕置きだっちゃぁー!”』
『うわわわわっ!?』
『『ブハッ!』』
『鈴原君、相田君、アウト…』
スパパーン!
『『痛ー!』』
『に…似合いすぎやホンマ…』『…碇〜、強く生きろ〜…』
『逃げるな馬鹿シンジ!あんたのせいでこんな恥ずかしい目にあったんだから責任取りなさ〜いっ!』
『ア、アスカ!?何でさ!?あ、当てたのは悪いけど、そ、それボ、僕が全部悪い訳じゃ無いだろ!?』
『う、うるさいうるさいうるさいっ!!あんたが全部悪いっ!』
『そ、そんなぁー!』
『…まるで痴話喧嘩…』『プッ』
『鈴原君、アウト…』
スパーン!
『痛ー!ケンスケハメおったなぁ!?』『す、済まんトウジ…プッ』
『相田君、アウト…』
『し、しまったぁ!?』
スパパーン!
『痛ー!』
『助けて〜!』
『逃げるなこら!あ!そこの二馬鹿何見てるのよこっち見るなあっ!』
…ではここでCM入ります…
◇我ながら酷い話◇
[438] 題名:あの二人がお笑い番組に出演したようです。 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2011年02月05日 (土) 09時44分
ワハハハハハハ!
では次の挑戦者、どうぞー!
エントリーNo,2、スーパーボケとウルトラ突っ込みのお笑い新世紀、ご存知美少女二人組“アソレアス”!
パチパチパチパチ!
「どーもー♪惣流アスカでぇ〜すっ!」
「綾波レイです。」
「しっかしアレよねー、いよいよ私達女子が待ちに待った一大イベントが間近よね〜♪」
「?」
「…何きょとんとしてるのよあんた…いよいよ二月よ!二月と言えば!」
「…水戸の梅祭り」
「…渋い所でボケたわね…」
「私はボケてない…」
「くっ!これだから天然は…良い事レイ、日本において胸に秘めた想いに悩む乙女の救済の日、女子の為の女子による一大イベントと言えば!」
「…節分?」
「鬼は〜外♪福は〜内♪ってな訳あるかー!」
「節分…豆まき…鰯の頭と柊…恵方巻き丸かじり…」
「だからレイ、もうそれはいいから。二月と言えばバレンタインデーじゃない!」
「おお。」
「『おお。』って何よ『おお。』って…」
「知っている…バレンタインデー…お菓子メーカーの陰謀…時に寂しい男に止めを差す礼儀としての社交習慣…義理と下心の籠ったチョコレートを如何に渡すかが」
「ストップ!スト〜ップ!あんた危ない発言は止めなさいよ全くもう!」
「…危ない?」
「日本中のチョコとえんどーい野郎共と本気勝負な乙女達を揃って敵に回す必要は無いの!にしても…あんたそんな話一体誰に聞いたのよ…」
「葛城三佐と赤木博士」
「〜あんの年増ズは〜…」
「…で、そのバレンタインデーが何?」
「あ!そうそうレイ、あんたチョコレート誰に渡すの?」
「マギに調べて貰ったら碇司令と冬月副司令には渡すべき」「そんな事にマギ使うな!」
「…駄目?」
「あんた少しは自分で考えなさいよ!渡したい相手いないの!?」
「じゃあアスカは誰に渡すの?」
「ゔ…そ…それはそのあのうにゃうにゃむにょむにょゴニョゴニョ…」
「…考えるに、司令には渡した方が良いんじゃあないかしら。」
「え?あぁ…でもねぇ…うぅ…あ、あの髭にか…で、でも将来を考えれば…」
「そう…上司のご機嫌取りは大事…」
「え!?あ!う、そ、そうよねそうそう、じ、上司だものと、当然よね!」
「で…伊吹さんが『上司には毎年共同でチョコレートを買って贈っている』と言っていた…」
「?で?」
「私とアスカで共同名義でチョコレートを贈れば…」
「おお!成る程!」
「じゃあ二人で分担しましょう、碇司令はアスカ、冬月副司令は私」
「ふむふむ」
「葛城三佐にアスカ、赤木博士に私」
「…レイ、あんたバレンタインデーの意味知らないでしょ…まあいいわ。で、次は?」
「青葉さんにアスカ、日向さんに私」
「うんうん。」
「伊吹さんにアスカ、加持査察官に私」
「…あんたミサトに睨まれるわよ…アタシが代わりに渡しておくわね。」
「じゃあ碇君にわた」「あ、大丈夫私が代わりに渡しておくから。レイは安心して私に任せといて!そ、レイと二人共同名義でちゃ〜んと『義理』ってでっかく書いて渡したげるから!」
「…『書く』?ボールペンで?」
「…あんたつくづくウルトラ無知ね、ホワイトチョコでチョコレートに書くのよ!」
「?こんな小さい物に?」
「チロルチョコレートなんか渡すなぁ!」
「「失礼しました〜♪」」
[437] 題名:ザ・天然2爆弾 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2011年01月19日 (水) 22時30分
銀世界さんの「ザ・天然」シリーズに便乗してみました
銀世界さんの「天然を装ってヒトの神経逆撫でするシンジ君」はツボでした。何処さんのネタもちょっとだけ。ひどめです。
---------------------
「はい、じゃあ何か質問は〜?」
ネルフに社会科見学にやってきた、第壱中学の有志の生徒達。
通常ならありえないことだが、どこかで何かの企みが動いているのか…。
案内役の伊吹マヤが、格納されたエヴァを見下ろすガラスが正面にある、エキジビションスペースで生徒達に問いかけた。
生徒達はさわさわくすくすとはしゃいでいたが、やんちゃな子が一人さっと手を上げて、
「は〜い!伊吹さんはぁ、彼氏いるんですかあ!?」
と質問した。
途端に、キャー!と歓声をあげる生徒達。
「それは、秘密でーす!」
にこやかに答える伊吹マヤ。
キャキャ
「どうしてぇ〜?ネルフにはカッコイイ人いないんですかぁ?」
キャキャ
「はーい。ネルフには、イケメンなんて、ただの一人もいませーん!」
***
赤木リツコ@社内恋愛中
「!」
葛城ミサト@社内焼けぼっくい中
「!」
アスカ@同僚パイロットうにゃうにゃ
「!」
綾波さん@碇君がどうたら
「!」
青葉と日向@常日頃、机を並べている同僚
「「!」」
整備班@マヤちゃんの振袖がどうとか言ってた名前すらない馬の骨
「「「「!」」」」
***
「…あら?どうしたの壱中の生徒の皆さん?どうして急にシーンとしちゃったの…?」
小首をかしげる伊吹マヤ。
(※静かなのは生徒だけではありません)
「…いえ…なんでも…」
どうするよ。
言っちゃいけないこと言わせちゃったんじゃないの
わたし達…。
固まる子ども達。
「そうですよね〜!身近なところにイケメンなんて、ほんとに一人もいないですよねー!」
うんうん。と頷きながら、一人はっきりと同意したおさげ女子。
「い、委員長!?なんでやー!」
ジャージ@混乱する関西人
「そうよねー!」
「「ねー!」」
ハモる常識人が、二人。
「いいぞ…その調子だ…皆悩むがいい!ふはははは!」
ほくそえむ眼鏡少年@一人キャンプが趣味
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ごまめ@きっと嫌われてるよねごめんさい
[436] 題名:AEOE@WEST 13 Just after that day.<後編> 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2011年01月19日 (水) 22時21分
※ギャグのくせに色気を出してシリアスパート※でも基本的にろくでもないギャグなんでご注意※ [AEOE@WEST 9 アスカ、来阪]のアスカ視点です※前編は下にある
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あたし一体、何やってるのかしら。
馬鹿みたい。
当てもなく街をうろついた。
どこに行っても雑然としていて、年配の男の人はみんななぜかキャップをかぶってる。おばさん達が異様に元気で、似たような仲間と一緒にべらべら喋りながら街を悠然と歩いてる。若い女の子は、みんなやたらと原色の服を着てる。若い男はジャージ姿が多い。派手めのジャージ。鈴原は故郷のユニフォームだからジャージを愛用してたのか。
だんだん日が暮れる。
商店街のシャッターが閉まっていく。
駅に行って、都市の国連事務所に向かえば全てが終わるのに、なぜかぐずぐずとこの街から足が動かない。
誰かが、誰かを呼ぶ声がした。
「ヘレーン!ヘレンちゃーん!どこぉー!」
どこの誰か知らないけど、おばさんやお婆さんに、一生懸命探されてる子がいる。
もしかしたら人間じゃなくてペットかもしれないけど、誰も見てはくれないあたしとは雲泥の差ね。
あたしは自嘲した。
すっかり暗くなった。明るい場所を目指したら、街外れのコンビニに辿り着いた。
早く、早くこの街を出ればいいのに。あたしは何をしているの。
植え込みの陰に座った。
自分をそっと抱きしめる。
すっかり痩せぎすになった腕。
この腕を、あいつがなぞったんだ…。それをうれしいように感じている自分が、情けなく、気持ち悪くもあった。
もう何も考えたくない…
自分を抱きすくめて、うつむいた。あいつみたいに。
***
「お姉ちゃん、どっから来たんや?ひとり?なら、わしらとカラオケでもいかへん?」
物好きなナンパ野郎が声をかけてくる。たいていの人はあたしの包帯まみれの姿を遠巻きに眺めるだけだった。でもまれに物好きが声をかけてきた。
もっとも、あたしの顔に巻いた包帯を見たらびっくりして去っていくけど。
…今度のやつはしつこいわね。
しきりに誘ってくる。
!手首を掴まれた!
しつこいわね!
向こうずねを蹴ってやった。
「痛っ!なんで蹴るねん!」
男達が声を荒げた。
前から感じていたけど、鈴原が話す方言は、怒鳴るのに向いてる。一瞬、恐怖を感じて萎縮する。野蛮だわ!
女性に対して使っていい言葉じゃないわ!何よ!
キッと睨んでやろうとしたら、突然、視界を遮られた。
「…!」
「お、おおお…何やお前ら」
ザッ。
地面を擦る足音をさせて、男の子二人が、あたしを庇うように、ナンパ野郎に向かい合って立っていた。
見覚えのある、ポロシャツとTシャツ姿の背中が並んでいる。
「何か用ですか。僕の連れなんですけど」
シンジ?
こいつ、こんな声出せたんだ。
怒りを抑えたような、ちょっと相手を威圧するような声。
知らなかった。
知らなかった…。
「すまんけど、こいつ、わしらの連れなんですわ。相手してくれんでも全然かまわへんのやけどな!」
鈴原が、ヘラヘラしてるようで、でも凄みのある感じで男達に話している。
「わしら何にもしてへんで!なんやねん。男連れなら最初からそう言えや!けったくそ悪いのう・・・。」
ナンパ野郎が悪態をつきながら、去って行った。
「…」
呆気にとられたように二人を見上げてたあたしに、シンジが振り向いた。
「アスカ…!」
あたしの知ってる、シンジの声があたしの耳に響く。
コンビニの明かりに照らされて、いつもと同じ、困ったような、不安なような、濡れた黒い瞳であたしを心配そうに見つめていた。頬と腕は傷だらけ。あたしがつけた傷。
「大丈夫?何もされてない?」
差し出されたシンジの手を、放心したままつい握った。そうしたら強く引っ張られた。
「…ぁ」
立ち上がったあたしに、シンジが話しかける。
「帰ろう」
***
あたし一体、何やってるのかしら。
「ヘレンちゃん、さやえんどうのな、スジとって。」
「この、しっぽのほうをつまんでな、スーッとやったら、ほらとれた。そうそう。上手やわ。」
鈴原のおばあさんが、あたしを台所仕事にかりだす。
「今夜は散らし寿司にするからな。うんと美味しいのこさえたるわ」
ガラガラガラ。バタン。
「こんにちはぁ。さいとうさんちの庭でとれたマンゴー、おすそ分けに来たで。」
「あら、いらっしゃい」
なんでこんなに毎日毎日、人の出入りがあるんだろう。
なんで皆してあたしのことをヘレンって呼ぶのよ!ヘレンってどこのどんな女よ!と鈴原に詰め寄ったら、「お前は知らんやろうけど、こっちではな、日本語のうまい金髪のべっぴんのことを『ヘレン』と呼ぶんや。」と、かわされた。トロイのヘレンという神話もあるぐらいだから、美人の呼称としては確かに頷けるけど。
「年寄りの言うことや。聞き流しといてくれ」と言われた。
今でも、突発的にシンジに対する怒りが沸き上がり、視界が真っ赤になるような気分になることがある。でも、お年寄りの前で我を忘れて怒ったりできない。
ガラガラガラ。パタン。
「ただいま。水買ってきました」
「重いのにご苦労さん。ヘレンちゃん、ジン君に麦茶いれてあげて」
「は…はい」
なんであたしが!と以前みたいに言えない。『わしの婆ちゃん血圧高いからな。くれぐれも興奮させんといてくれよ』鈴原に釘をさされた経緯があるし。
「ありがとう、アスカ」
あたしが手渡した冷たい麦茶のグラスを、あいつが受け取る。少しだけ指が触れて、照れ臭そうにあいつはあたしに微笑む。
このごみごみした街の熱気のなか、昔にかえったみたいに一瞬錯覚して頭がくらくらする。
そのたびにあたしは自分の体に巻かれた包帯を見る。失ってしまったものを。傷ついてしまったものを忘れないために。
自分に無理矢理にでも言い聞かせるために。
だけど、それが。
なんでこんなに苦しいんだろう…。
つづく
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※ギャグ※お笑い※ばあさんが出てきたらやっぱり腹立つなあ※別にこき使ってるわけじゃないんですよ※そこに若者がいるのが悪いんですよ※きっとミツルちゃんが紹介した医者が、気をまぎらわすために小さいシゴトさせなさいって言ったんですよ※ああ寒※
[435] 題名:あの子のことが僕は嫌い 21 支配しあいしたい 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2011年01月16日 (日) 16時34分
葛城に平手打ちをくらった頬をさすりながらエレベーターを出て、自室に戻る道すがら、自動販売機の並ぶ休憩コーナーを通りがかったら、制服姿のサードとアスカが口論していた。
「…あんたって、なんでいつもそうなわけ!?」
「そんなに怒らなくてもいいじゃないか…じゃあこれ僕が飲むから、アスカが新しいの買えばいいよ」
「そういうこと言ってるんじゃないの!なんであたしの好みをちゃんと覚えないのかって言ってるの!」
「そんな〜 わかるわけないよぉ…」
「二人とも、何喧嘩してるんだい?」
なんとなく邪魔をするのもはばかられるような、幼いなりにそこはかとない痴話喧嘩の雰囲気も感じたが、なんと言っても子供同士、無視して通り過ぎるのも気がひけたので、話しかけた。
「加持さん!」
喜色を浮かべて、俺に飛び付いてくるアスカ。
しまったな。
やっぱり声をかけるんじゃなかったかな。
「あ…こ、こんにちは…」
シンジ君のテンションが下がっちまうんだよ。
**
「それで、何で喧嘩してるんだい?」
「シンジが悪いの」
「おいおい、まだなんにも聞いてないぞ。」
「えーと…最初は、テストの後、普通に飲み物を買って、ここで休憩してから家に帰ってたんですけど…そのうち、アスカがお互いの飲みたいジュースを当てようって言い出して…」
「へえ!それで」
「それで…自分で自分の分のジュースを買うんじゃなく、アスカが僕の、僕がアスカのジュースを買うってゲームなんです…で、今日僕が買ったのは、アップルティーなんですけど」
「ブブーッ!それ、アイスじゃない!今日はホットがよかったの!」
「そこまでわかるわけないよー!」
「……いや、すごいな君達…感心するよ…」
仲いいなぁ。
「で、勝率はどっちが上なんだい?」
「もちろんあたしよ!」
「はい。僕はたいてい、どれもそんなに嫌ってことはないんです。だからいつもアスカに負けるんです…」
でも正解なんて、絶対自分自身にしかわからないんだから、完全なる『後出しじゃんけん』で、いちゃもんをつけるワガママな性格の方が絶対的優位のような気がするが…。
「そうか、じゃあアスカ、お金やるからシンジ君に買ってやれよ」
***
「はい。シンジ」
「ありがと。」
スポーツドリンクを受け取ったシンジ君。
「…正解なのかい?」
「え?はい。全然嫌じゃないです。正解なんです。どうしていつも負けるんだろ…?」
それは君の性格のせいだよ。
「シンジ、おいしい?」
小首をかしげて微笑むアスカ。
「うん。おいしいよ」
微笑み返すシンジ君。
…はっきり言って、味なんてどうでもいいんじゃないかな…。
女はいつでも男を支配しようとするんだな。支配して、そして甘える。か。
***
「シンジ君にもお金あげるよ。アスカだけだと不公平だからな」
「やった、ありがとうございます」
小銭をシンジ君に渡す。
「シンジって、どうしていつまでたっても覚えないのかしら!」
ぶつぶつ言いながらアイスのアップルティーの蓋を開けようとするアスカ。
「あ、待って」
「え?」
自動販売機にすたすたと歩いて行って、ガシャン。
戻ってきたシンジ君の手には、ホットのアップルティー。
「はい」
「……」
……今、あげたばかりの俺の小銭を使って、アスカのためのジュースを買い直すとは…。
「……アリガト……」
ジュースを両手で受け取って、赤くなって、消え失せそうな小声で礼を言うアスカ。
今、素になってるな…。
俺には絶対見せない表情だ。父親には見せない「女の子」の表情。
そんなアスカを見ながらニコニコしてジュースを飲むシンジ君と、小さくなってホットアップルティーを飲むアスカ。
男も女を支配する…。
こうやって甘えさせることでかい?
このゲーム、真の勝者はシンジ君かもしれない…。
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※作者あとがき
支配、きつめ。
[434] 題名:AEOE@WEST 13 Just after that day. 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2011年01月16日 (日) 16時28分
※ギャグのくせに色気を出してシリアスパート※でも基本的にろくでもないギャグなんでご注意※ [AEOE@WEST 9 アスカ、来阪]のアスカ視点です※
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<前編>
あたし一体、何やってるのかしら。
馬鹿みたい。
あたしは一度死んだ。
いえ、死ぬよりもっとまがまがしい、終わらない痛みと屈辱のどん底に堕とされた。
全部倒したはずなのに、土壇場で蘇る不吉な天使たち。
あんな展開あり?
でも、あたしにはお似合いだったのかもしれない。
たったひとつの喜びは、ママに会えたこと。汚穢にまみれた死の底であっても、ママがいた。それだけが炎のような、暗い闇の中の喜びだった。これで、充分。あたしは安心して闇に熔けた。
なのに。
あまりにも唐突に、あたしは呼び戻された。
気がつけば、一度は無くなった痛みが全身を責め立て、今まで闇の中で見つめた全てのことが、あたしを苛んだ。
あたしに馬乗りになって、あたしの首を絞めるあいつ。
本気だ。
全身の体重を、あたしの首にかけている。気管が圧迫された。あたしは殺されるんだ。またしても。
ごりっ。
喉仏が潰れるのがわかった。
きゅうっ。と呼吸がつまる。
だけど。
死よ。こんにちは。
また、会えたのね。
あたしは最大級の愛と敬意をもって、あんたの頬を撫でた。
ただいま。
会いたかった!
あんたが、あたしの死。
なのに変なの。
途端に力が緩められ、あたしの頬になま温かい雫が落ちた。
しおからい。
この触覚と、味が、あたしが生身の人間で、前と同じ肉体を持ち、生きていることを思い知らせた。
そして、
「気持ち悪い」と、思ったままを言葉にした。
死んだはずなのに蘇り、生きている自分が。
他人のくせに、全てを共有しようとした世界中の人間が。
こんな世界が。
こんな世界に飛び付いておきながら、何もかも自分のせいであることに怯えて、やっぱり逃げようとするシンジが!
本気で、気持ち悪かった。
***
次に気がついたら、白い病室にいた。
知ってる人は、いなかった。あいつ以外。
ネルフという組織は国連に併合され、かつての職員はみな散り散りになったということだった。今は、イデオロギーも目的も全く異なる組織に支配されている。
あたしは何回も終わらない検査をされ、カウンセリングと称した尋問、査問を受け続けた。消耗しきった。
そんな中、あいつだけがあたしの病室を毎日のように訪ねてきた。お見舞い?ふざけるな!
今さら、何を偽善ぶってんの?
自分がラクになりたいだけでしょ。「許して」って冗談のつもり?笑える!
あたしの心を死なせて、あたしを汚して、あたしを見殺しにして、…呼び戻して、そしてご丁寧にもう一度殺そうとしたくせに!
あたしは残ってるエネルギーを全てかけて、あいつを攻撃し、えぐった。
それでも毎日、あたしの病室に来ていたが、ある日、とうとうやって来なくなった。
***
サードはここを去ったよ。
ニコニコ笑いながら、中年の主治医が言った。
君にとっても良かった。我々は、本当は彼にお見舞いに行くなと言っていたんだ。ちゃんとね。でも彼は言うことを聞かなかった。困ったことだ。
なら、あいつを監視するとか、拘束するとかしたら良かったんじゃないの?
そんな人手がどこにある?
血色のよい禿頭の医師はニコニコ笑って答えた。
サードインパクトは中途半端に起こり、世の中は混乱の極みだ。我々国連は君達ネルフの尻拭いでてんてこ舞いだ。だが安心したまえ。人道的見地から君達の面倒は見てあげるよ。最低限ね。
私はセカンドチルドレンたる君には同情しているんだ。たった一人で戦自を相手に汚れ仕事を請け負わされて。それに、君が今こうして生きていること。これこそ奇跡だ。君の生命の器たる君の身体に、学術的興味がつきないね。今はもうどこにもないエヴァンゲリオンという奇妙な兵器との関係の解明も含めて、是非、今後ともお付き合い願いたい。
***
断罪されることもなく。
結局、あたし達チルドレンは、アンタッチャブル。
いるけれどいないものとして、無視を決め込み、歴史の闇に葬り去りたいのだ。
禿頭の医師以外の医療スタッフは、皆よそよそしく、疲弊していた。外には無数の行方不明者と原因不明の病人がいるのだ。サードインパクトシンドローム。人事不省に陥り、記憶喪失になった人間が大量発生した。
忙しいのに、飼われているだけの元チルドレンとやらのサンプルの世話をしている。お荷物。厄介な前権力の忘れ形見。存在価値があるとすれば、生きたサンプルとしてのこの体だけだ。
「私があなたなら、国に帰るわ」
疲労した看護士が点滴のパックを取り替えながらポツリと言った。
「あのドクターの研究と出世の為に身体を捧げたいというなら別だけど」
居場所なんて、ない。
***
シンジの行き先はわかった。ジャージ馬鹿の実家だ。ずっと西のほう。
あいつを許せない。
だから、復讐しに行ってやる。
そのために病院を抜け出すんだから。
あいつのとこに逃げ出す訳じゃないんだから。
かつてあいつに感じた、温かい感情。そんなものは木っ端みじんに壊れた。
思いきり殴り飛ばして、それからドイツに帰る。直接、国連に申請したら、二つ返事で送還されるだろう。
***
着の身着のまま逃げ出し、列車に飛び乗った。
あたしは何をしているの?
居場所が無いからって、よりにもよってあんな奴に縋るの。きっとあいつは困惑し、絶対あたしから逃げようとする。
それなのに?
違う、違う。
あたしはあいつが憎いから、あいつに復讐をしに行くんだ。
夜の闇を映した列車の窓には白い包帯を巻いた、痩せたあたしだけがいる。
あたしは、ひとりぼっちだ。
***
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<中編>
ジャージ男の家はすぐわかった。猥雑な雰囲気の街に、似たような平屋の家がみっちり密集していた。小汚い家ばかり。
なんでこんなに自転車に乗った人が多いの。しかもあつかましい。轢かれそうになる。
ここにあいつがいる。
全身に燻る怒りと憎しみをかき集めて、息をひとつついてから、玄関の引き戸を開けた。
***
めちゃくちゃにあいつを罵り、殴りつけてやった。
ものすごく久しぶりに会ったジャージ男と、鈴原の身内だろうか、小さな小太りのお婆さんが、なんだか色々言っている。
やっぱりだ。あいつはあたしを見て怯えてる。
頭を守るように、肘から先の両腕で顔を隠している。「アスカごめん、ごめん…」って小声で何度も繰り返して、腕の隙間から見えるあいつの瞳は、怯えた子犬みたいだ。
やっぱり!ほらね。
あんたはあたしを恐がる。
あたしを恐がるあんたにすがったあたしは、きっと世界一、みっともない女の子。
どうしてこうなったの?
いつからこうなったの?
かつては輝く日々が確かにあたし達にはあったのに。
だけど、もうどこにもないんだ。
いつの間にかお婆さんは消え、ジャージの制止する声だけが響いていて、あたしはあいつを殴りながら、泣きそうになっていた。そうしたら、無抵抗なあいつが、あたしの頬っぺたに触れた。
「触るな!気持ち悪い!」
そう言って振り払おうとしたのに、
「アスカ…ごめん…泣かないで…」
あたしの顔は気付いたら涙で濡れていた。そうしたら包帯を巻いた右腕を、両腕をあいつが撫で始めた。
「ごめんね…ごめん…」
「謝ったって…謝ったってすまないことがあるわっ…」
罵ろうとするのに、しゃくり上げてうまく声が出せない。
あいつに両腕を抱きしめられて、触れられて、あいつの体温にどうしようもなく歓喜しているあたしの身体が、憎らしかった。同時に今までどれだけあたしがひとりぼっちで、寒かったのかを思い知らされた。
「あんたがっ…みんな悪いのよ…」
「うん」
「う…うわあああんっ!あんたなんか…あんたなんか…殺してやればよかった!
せっかく一度死ねたのに、あたしを呼び戻しておいて…っ…なのにまた逃げ出して…あたしは、あたしはどうすればいいのよ!一体、どうすればいいのよー!!」
恥も外聞もなく、あたしは泣きわめき、あいつに包帯を巻いた腕を、背中を撫でられ続けた。
嫌なのに、そんなつもりないのに、涙があとからあとから溢れてくる。涙が熱い。いつの間にかジャージ男もいなくなり、粗末な板敷きの廊下に、あたしとあいつの二人きりだった。
みっともなく泣き喚いていたが、しばらくしたら、荒れた呼吸も落ち着き、お互いの顔をまともに見れた。
あいつはあたしの体に触れたままだ。
「シンジ…。なぜ?なぜあたしを死なせてくれなかったの?あたし、もうどこにも居場所ないんだよ。…ママのいた弐号機は無くなったんだもん…」
視線を合わせたら、あいつはやっぱり怯えた表情になって、目を反らした。
「そ…それは、僕にも…」
「…わからないって言うの…」
急激にスーッと、再び感情が冷たくなるのを自覚した。
「…わかった。もういいわ」
えっ。と顔をあげたシンジの胸板を思いきり突き飛ばした、あいつは尻餅をついた。
そのすきにあたしは玄関に向かった。
ガラッ!
あたしが手をかけるより先に、玄関の引き戸が開いた。驚いて目をぱちくりさせた、さっきのお婆さんと一瞬目があったが、あたしはそのまま外に飛び出した。
闇雲に道を走る。
どっちが駅だっけ?
そんなのどうでもいい。
後ろから「アスカ!」って裸足で飛び出したシンジがあたしを呼ぶのがわかったが、構わず、逃げるように薄汚れた街を駆け抜けた。
***
後編につづく
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