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Gehen wir!「小話掲示板」へようこそ。
エヴァに関するショートショートショート、つまり小話を自由に書きこんでください。
もちろんLASだけに限らず、エヴァネタだったら何でもOK。
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[523] 題名:下流の宴(※NOTパロディ、タイトル以外に全く繋がりはありません) 名前:銀世界 MAIL URL 投稿日:2011年06月25日 (土) 19時49分

「何や、ケンスケ、急に呼び出して」

「ふふふふふ・・・今日こそ、トウジにもこっち側の暮らしに入ってもらおうと思ってさ」

「こっち側て何やねん」

「説明しよう! 世の中に上流階級と下流階級があるように、物語世界にもそれがあるっ!」

「つまり、主人公に立場が近ければ近いほど上流、離れれば離れるほど下流だっ!」

「・・・で、今、日向さんと青葉さんが説明してくれた通りだけど、この2人が説明したって、オレが補足しないとわからないだろ?
 どっちがどっちかすらわからないよな・・・まぁ、あんまり重要じゃないから飛ばすけど」

「飛ばすな、ケンスケ君!」

「要するにだ、この2人がエヴァ世界での最下層ってわけで・・・」

「最下層と言うな、チンタ君!!」

「つまり2人は下流のイメージにすら使われない・・・オレはそのすぐ上・・・下流の代表みたいなモンだ・・・」

「はぁ・・・ようわからんけど」

「上流階級は、シンジとか惣流とか綾波とか・・・カヲルもそうだな」

「上流かぁ?? あいつらも大変そうやけど・・・」

「実はそうなんだよ! そして、上流と下流の間には、越えられない分厚い壁があるっ!
 そしてトウジっ、お前はその壁の中に埋まってる存在だっ!!」

「へっ?! そ・・・そやったんか?!
 壁に埋まっとるとか、全然、気ぃつかんかったで!!
 こないして動けるからのぉ」

「そうだ・・・だからこうやって壁から助けに来たんだよ(笑顔)。
 いつまでもわけわからないところで埋まってないでさ、おとなしく下流の暮らしを始めようぜ?」

「見せ場はなく」

「彼女もなく」

「「ただ静かに笑っている」」

「「「そういう暮らしをオレ達は、他の奴らにもさせてみたい!!」」」

「と、言うわけでトウジ君」

「まずは、NERV食堂のメニューを食べて、ここにいついてくれたまえ」

「ようわからんけど・・・ほな注文させてもらいますわ・・・んー、ほな手始めにカツ丼1丁」

「それにしても、ケンスケ君、行動が素早いなぁ・・・」

「でも、長らく我慢してたのに、何で急に・・・」

「実はですね・・・セカンドインパクト前のTVアニメのディスクが手に入ったんで、見たんですよ。
 主人公は少し気弱だけど落ち着いた発明少年で、お約束通り主人公にはちょっと気の強いしっかりものの美人のガールフレンドがいる」

「まあ、それは、よくある話だな」

「男主人公はヒロインを手にする・・・世の中の常だ」

「で、主人公の友人に、少し強引でマイペースなガキ大将と、お金持ちで振り回され役の坊っちゃんがいて。
 主人公がシンジだったら、ガキ大将がトウジで、坊っちゃんがオレかな・・・って思って見てたんですよ。
 まあ、オレは坊っちゃんキャラじゃないですけど、ガキ大将はもっと違うんで。
 そしたら・・・中盤辺りで・・・大変な事に・・・しくしくしくしく」

「「な、何があった?!」」

「まさかの『ガキ大将に彼女が出来る』事件発生ですよ!!
 超美人ってわけじゃないけどしっかり者で奴のことが大好きなかわいい彼女が!!
 余計にトウジと委員長を思い出して、オレは画面めがけてクッションを投げ付けましたって!!」

「「お、落ち着け、ケンスケ君!!」」

「くそっ、トウジのブタゴリラーっ!!!」

「誰がゴリラじゃ!! やかましいわ!!(どかっ!)」

「ち、違うって、登場人物のあだ名だ!」

「・・・でも、実はあのキャラは、本名が『カオル』じゃなかったか?」

「まあ、カヲル君がブタゴリラは絶対にあり得ないがな・・・」

「そして・・・そのまま見ていたら、終盤には、坊っちゃんキャラにまでガールフレンドが・・・しくしく。
 奴にすら彼女が出来たのに、オレは・・・」

「・・・さっきから聞いとったら、どないやねん、何が起きたら満足するんや、オノレは」

「それは・・・オレがモテモテになる・・・は無理なら、せめて公平な世の中に・・・。
 何だ、トウジ、まだ食ってないのか?」

「お前がさっきからやかましゅうて食えへんのや」

「とにかく、今日と言う今日は、トウジにも下流に参加してもらう!
 トウジだって、壁に埋まってる暮らしは嫌だろ?」

「埋まっとる感じはせんけど・・・言われたら、そらかなんわ、鬱陶しい」

「よし、ちゃんと下流になる方法を教えてやろう。
 まずは、委員長にメールしろ・・・出来るだけ罵詈雑言で埋まった奴」

「おい」

「それから・・・シンジをもう1回、いや100回くらい殴る」

「何でやねん」

「理由は適当でいい、これでめでたく下流人間が1人完成だっ!」

「それ、下流やのうて、最低人間ちゃうんか」

「とにかく、まずはメールしろ、絶縁宣言しやがれ、お前が思いつかないならオレが代わりに書いてやる」

「ちょい待てや、勝手にワイの携帯いじんなや!」

******************************

トウジにはまだあだ名がないので取り急ぎ付けてやろうと思ったけど、よく考えたらブタゴリラは究極の勝ち組脇役だった。


>ごまめさん
そうか・・・心象風景だったのか・・・なるほどです。
チンタでなければ(ケンスケのままなら)「いい人」とすら言われなかったんじゃないだろうかと思うと、余計泣けてきた(ぇ)。

>何処さん
インド料理店では、たまにゆで卵入りカレーが出て来ることはありますね。
生卵は知らんなぁ・・・ウスターソースはかけることあるけど。
そしてエレキセロいいですなぁ・・・わくわく。


[522] 題名:味的フィールド再び 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2011年06月24日 (金) 04時59分

「はぁ…」

「そんな落ち込むなよトウジ。」

「?トウジどうしたの?」

「…センセか…」

「委員長と喧嘩したんだってさ。」

「…又?でも今回酷くない?」

「それがさ…」


***


グッチャグッチャ

「嫌ぁ!鈴原何してるのぉ!」

「何って…カレー食うとるんやが。なあ店員さん、生卵あらへんか?」

「!?ち、ちょっと鈴原!?ここインド料理の」

「あぁ?生卵無い?ほなソースは…はぁ?おいとらんの?何やけったいなカレー屋やのう。兄ちゃん少し勉強せんと…あれ?委員長どないしたん?」

「い…い…いい加減にしてぇ!!雰囲気ぶち壊しよ!帰る!」

「へ?ま、待ってえな委員長ぉ!」


***


「…何悪かったのかのう…」

「…自覚無いんだよな…」

「トウジ…僕は玉子掛けご飯食べてたらアスカに“野蛮人”呼ばわりされた事があってさ…」

「はぁ?生卵に醤油は基本やないか!」

「…自分の常識は他人の常識と違うって事だよトウジ…自分の常識押し付けてないで相手も受け入れないと…」

「…振られるかもな…」

「何でや!カレーに生卵とソースは常識」

「「なのはトウジの田舎だけ」」

「!う、嘘やー―――っ!?!!」


***


「美味しい…」

「ミサト…納豆カレーに生卵は止めて…味はともかく見た目悪過ぎ…」

「でもさ、これメニューに載ってるわよリツコ。それにこの店あんたの紹介じゃない。」

「納豆はともかくせめて半熟玉子にしてよ…」


[521] 題名:ジオフロント・メタル・シティ 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2011年06月24日 (金) 04時20分

「ふう…」

「?どったのリツコ?」

「…いないのよ…」

「は?」

「ブウ…」

「新人…これぞ!って才能の持ち主…あたしのハートを焼き焦がす程の熱いソウルの持ち主が…」

「あのさリツコ…」

「ブウ」

「ああっ!デスボイスと壊れかけたマインド、溢れ出る怒りと哀しみの作り上げるソウルが生み出す奇跡!」

「リツ…」

「嗚呼キール様!メタルの伝説!貴方の様なの破天荒なパワーに満ちた新人は何処!我が破壊神ゲンドウ様!貴方の様な私の女を疼かせるデスボイスは何処!」
「ブウ」

「ブウブウ喧しいわよ豚!」

ビシッ!

「ブヒ!」

「リツコ…時田豚を椅子にしてアンニュイるのはいいけどさぁ…」

「はぁ…又取材?伊吹マヤクラスの勘違い女はお断り…これは!?」

「そ。この子勘違いでオーディションに来たの。でもさ…」

「判る…判るわミサト!この子…パッと見いぢめて君だけどこのあたしの眼は誤魔化せない…」

「だしょ?」

「見える…見えるわ、鬱窟し、虐げられ、どん底に叩き落とされ尚立ち上がるソウルの煌めき…真性のSの薫りがする…」

「オーディションでこの子に《インドの虎狩り》弾かせたの…エレキチューンなチェロが欲しくなったわ。」

「ぞくぞくするわね!JAなんてカス連れて来たこの豚が如何に役立たずか判るわ。」

「ブヒ!」

「おだまり豚!さぁてと…ってミサト!?この子の名前…」

「碇シンジ君だけど…」

「デスメタルの魔王、堕天使ゲンドウの名前は確か…碇ゲンドウ…」

「まさか!?じゃああの神話的メタルバンド“永遠の魔女”の悪魔ユイさんの息子!?」

「…もしそうなら…」

「…メタルの申し子ね…彼…」


◇◆◇


「碇…」

「何だ冬月…」

「お前の息子、計画通り“第三神東京フィル”とすり替えた“ゲヒルン”のオーディション会場に行ったぞ…」

「…ああ。」

「…全て計画通り…か。」

「…(ニヤリ)」


[520] 題名:チンタの島を後にして 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2011年06月22日 (水) 23時21分

「アスカ、本当にいいの?」
ボートのオールを漕ぎながら少年が言った。

「どういう意味?」
「本当はあの島にずっといたほうがいいんじゃないかな…って。だって幸せそうだった」
「幸せね…。ええ、幸せだった。島の暮らしは素晴らしかったわ!この星にあんな場所があるなんてね」
「…だろ。そ。それに…チンタ君だって…本気で君のことを」
「チンタさん、チンタさんは、本当にいい人だった…」
「…」
「何人目かわからない、赤い海に浮かんだ不思議なレイが、傷ついたあたしをあの島に連れて行けってシンジを導いたときには、どうなるかわからなかった。チンタさんとあの島のおかげで、あたしは体も心も癒すことができたわ」
「あの島は補完の届かない場所、次元の彼方、アスカがあそこで体を癒してるあいだ、僕は必死にがんばったよ」
「知ってる。あんたがととのえてくれたから、また世界はリスタート出来るように準備できたのよね…ありがと…シンジ」
「だけど僕は、僕は彼みたいには出来ない。きっと。もしアスカが僕を捨ててどこかに帰ってしまうなら、『よかったな』なんて言ってあげることは出来ない…僕は…きっと、また…」

何も言わず、娘は少年の頬を撫でた。

「くすぐったいよ」
「ヤキモチ妬いた?」

「…ちょっとだけね…」

〜〜〜

「あの島は本当にあるのかな?今はない過去の世界か、誰かの心の中だったのか」
「チンタさんのこころが島の形になってたのかもしれない」
「あの子、ケンスケに似てたね」
「そうかしら」
「ケンスケの世界には、あんな豊かな場所があったのかもしれない」
「そうかもね」


「でも、本当にあるのよ。あんな島はきっとあるの。」

海の色が替わってきた。
青から赤へ。

「もうすぐだよ、アスカ」
「あたしはしっかり心に刻んだわ。だから、新しい世界も、きっと大丈夫。大丈夫よ。シンジ」




-------------------
蛇足のような気がしますが、エヴァ世界っぽいシメ方をおまけでつけときました。
受け取って<銀世界さん


[519] 題名:ケンスケ=チンタが定着してしまった、どうしよう(汗) 名前:銀世界 MAIL URL 投稿日:2011年06月22日 (水) 23時07分

何だかいろいろと申し訳ない(滝汗)。
でも、当初、ケンスケのまたの名は正吉だったはずなんだ・・・。
本当はチンタじゃなかったのに、何でこうなった。

******************************

<金と銀と・・・>

「だから何でそうなるんだよ!」
「あーもう、知らない、バカシンジ!」

森の中、景色はとてもロマンチックだったのに、僕らは何故か、いつものように喧嘩をしてしまって。
と言うか・・・アスカがいつものように怒ってしまって。

「だから待ってってば、アスカ!」
「触らないでよっ!」

アスカは、僕の手を振り払ったと同時に、弾みですぐ横の泉に落ちてしまった。
・・・念のため言っとくけど、僕が突き落としたわけでは、決して、ない。

「アスカっ?! アスカ、大丈夫?!」
「貴方が落としたのは、金のアスカ? 銀のアスカ? それとも普通のアスカ?」

アスカの代わりに・・・何故だか、泉の中からは綾波が出て来た。

「・・・綾波、何してるのさ?」
「綾波・・・それは私の事・・・? よくわからない・・・私、泉の精だもの・・・。
 それより、貴方が落としたのは、金のアスカ? 銀のアスカ? それとも普通のアスカ?」
「えっ・・・き・・・金のアスカ」

答えた瞬間、「これでも食らえーっ!!」って声がしたかと思うと、何か硬い物が飛んで来て、僕の頭に直撃した。

「駄目よアスカ、碇君は嘘つきだから、何もあげてはいけないわ」
「あー、そうだったわね、回収回収」

アスカがいつの間にか出て来ていて、僕の頭にぶつかった後で転がっていたその何かを拾うと、さっさと綾波の横に戻ってしまった。

「だ・・・だってアスカ、金髪っぽいじゃないか!」
「アンタバカァ?! 有名な昔話くらい知ってるでしょ?!
 こういう時は・・・」
「普通のアスカーっ!!」
「そうそう、『普通のアスカ』って答えなきゃ駄目・・・ええーっ?!」

アスカの説教の間に誰かの声が割り込んで来て、そっちを見ると・・・

「シンジが、2人?!」
「違うわよ!」

元気のいい声がしたかと思うと、木々の間から、もう1人のアスカが現れた。

「コイツはね、玉キンサブロウよ!」
「た・・・たま・・・きんさぶ・・・」
「うぅ・・・酷いや・・・同じ碇シンジなのにバカにして・・・」
「だから、アンタは、玉キンサブロウだって言ってるでしょ!
 それと・・・コレが普通のアスカってどういう意味よ、あたしが普通じゃないとでも?!
 ま、あたしは並々ならぬ美貌と桁外れの闘魂を持ってるけどね!」
「そこが普通じゃなくて、アスカ・ボンバイエなんだよ!!」

キンサブロウ君とボンバイエなアスカは、僕らをそっちのけで喧嘩を始めた。

「・・・シンジ君、銀のアスカは選択肢としてかすりもしないのかい・・・?」
「もしかして・・・まさか、銀のアスカって・・・女装したカヲル君?」
「銀髪だからね」
「じゃ、正解は金のアスカでいいじゃないか!」
「いいえ、金のアスカはこれよ」

綾波・・・いや、泉の精が差し出したのは、全身金色のアスカのミニチュア像だった。

「何、これ」
「司令が企画した、エヴァパイロット黄金フィギュアシリーズよ。
 研究費稼ぎのために売るの・・・絶賛量産中。
 とにかく、嘘つきには何もあげないルールだから、私達、行くわ・・・さよなら」
「じゃ、さよなら、バカシンジ」
「待って・・・待ってよ、普通のアスカぁーっ!!」



「待って・・・待ってよ、普通のアスカぁーっ!!」

叫んだ瞬間、僕は目が覚めた。
クラス中が僕を見て、大笑いしてる。

「・・・ゆ・・・夢・・・?」
「この・・・バカシンジ!」

いきなり鉄拳が飛んで来た。

「強くて頭もいい絶世の美少女を掴まえて、『普通』ってどういう意味よ!」
「そんな・・・金でも銀でも駄目で、『普通のアスカ』って言えって、アスカが言ったんじゃないか!」
「知らないわよ、アンタの夢の話なんて!」

気付くと、僕らは2人して立ち上がって大声で喧嘩してた。

「・・・いい加減にしなさいっ、今は授業中よ!!」

次の瞬間、委員長の怒鳴り声が飛んで来たのだった。

******************************

>ごまめさん
かっこええなぁ・・・男前や、チンタ・・・振られ役マニアにはたまらんキャラや(ぇ)。
だけど、主人公になってもそういう役回りなのは、さすがケンスケと言うか何と言うか(涙)。
彼は永遠の当て馬キャラなんだとつくづく思いました。
ちなみに、格差社会なくそうとして、いつも主人公が誰だかわからん話を書くのは私です(遠い目)。

>何処さん
え・・・からし付けないのが関東ではデフォルトなんですか?!(驚愕)
ちなみに、大阪の某コンビニでは、肉まんと豚まんが両方売っています。
肉まん110円、豚まん160円。
お財布にもダイエットにも、ちょっとだけ肉まんの方が優しい仕組み。
東西の最大の壁は、うどんそばの出汁の色・・・そして「たぬきそば」だと思います。


[518] 題名:あの子のことが僕は嫌い 27 水に映るあかり 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2011年06月22日 (水) 22時48分

「あたしはあんたなんか認めない」

そんなふうに君は言う。

水のほとりを歩いている。
プラグスーツのまま、三人で星を見た帰り道、小川のほとりを歩いている。
踏みしめられた草が音を立てる。

「どうしてさ」
「あんたなんか、ポッと出じゃない。あたしはずっとエヴァに関わって来た。最初から違うのよ」

黒い夜空には、月が輝いている。

「めちゃくちゃだよな…アスカって」
「うるさい」

「あ…月が、ふたつある」

「えっ?」

ずっと黙って後ろを歩いていた綾波がつぶやいた。
僕もアスカも足を止めた。

川のせせらぎの途中の深みに、黄金の月が揺らめいて映っている。
水の揺らぎは星のまたたきみたいだ。

「あんた…水に映る月を数えるなんて、しゃらくさいマネするわね!」
「…?」
「でも本当に綺麗だよ」

空の月と、水の月。
どちらも輝いている。

「夫婦みたいだ」
「…きょうだいかもしれない」
「あんたら馬鹿?片方はまぼろしよ。嘘っぱちのコピーよ。オリジナルはたったひとつだけ。空の月だけがほんものよ」

「…そんなことない…」
「何よ?ファースト。根拠あんの?」

「…映る月も、月…」







歩みを進めていくと、水に映る月に、ちがうあかりも仲間に加わってきた。

「えっ?何?これ」
「ホタルだ」

数られるくらいの小さな光が、ふわふわと点滅しながら漂って、輝いている。
こんな場所で見られるなんて思ってなかった。
ホタルの光も綺麗なのに、水面を見たら、映った月を、闇に浮かぶホタルのあかりが彩っている。

「きれい…」

アスカが言った。

「そうね…」
「めずらしい。あんたとあたしが気が合うなんて」
「…」

水に映る月と蛍のあかりは、不思議なきらめきを見せる。心まで一緒にゆらめいてしまいそうな。水面の黒い闇までもが、引き込まれそうなほど輝いているように見えた。

水面を見つめる、アスカと綾波の横顔も綺麗だった。

「あのあかりが欲しい。あの月が欲しい。だって綺麗なんだもの」
「はっ?」
アスカが急に非現実的なことを言ったのでびっくりした。

「嘘よ。できるわけないじゃん」
「…蛍は捕まえられるかもしれないけど、月はさすがに無理じゃないかな」

「…碇くんのお父さんは…碇司令は月を捕まえようとしてるわ…」
「えっ…?」

綾波がそう言葉にしたが、どういう意味かは、僕にはわからなかった。






しばらくそこで、三人でずっとたたずんでいた。

「……」

二人とも、綺麗すぎて立ち去れなくなってるのかな…。
さっき、綾波は街のあかりを見て、ヒトは闇を恐れて火を使ったと言っていたけど、蛍のあかりはどうなんだろう。
やっぱり何かを恐れて光っているんだろうか。

「蛍ってどうして光るんだろ」
「オスがメスを呼ぶために光るのよ」
「ヒトみたいに、闇を怖がっているのかな?」
「虫は闇なんか恐れないわ。もし、恐れるとしたら、好きな相手に届かないことのほうがきっと怖いのよ」
「…ここにいるって、伝えたいのね…」

蛍がふわふわと飛ぶ。
じわりじわりと、特有のリズムを刻んでまたたく。

生き物のあかり。小さな命の光そのものなんだ。


僕たち三人とも、魅入られたように見つめていた。
じっと、月と蛍の映る水面を見ていたら、「そうだ」いいことを思いついた。

「ちょっと待ってて」
「?」






僕は水際まで行って、両手のひらをうつわのようにして川の水を掬いあげた。
ぼくの手の中にも、漆黒の闇と、黄金の月と、軌跡を描く蛍の光たちがコピーされていた。小さくていびつだけど、月。

「はい。ここにも月」
「………バっカみたい…」
「……」
綾波が無表情にこっちを見つめている。

は、恥ずかしいかな?

「ファーストもほしいの?」

アスカがニヤニヤ笑いかけた。

「……」

綾波は無表情のままだけど、アスカにからかわれて、少し機嫌が悪くなったみたい。


「…えーと…じゃあ、まずアスカに。手を出して」
「えっ?う、うん」
とっさに差し出されたアスカの手の平に、水を渡した。アスカの手に小さな月が生まれた。

「あげる」

「………」

もう一度、水際に戻って、今度は綾波のぶんを汲んだ。

「ありがとう…」
「お、お礼なんていいよ」

綾波の白いプラグスーツの両の手の平に、小さくて頼りない月が浮かぶ。白いから、透明な空間に月が浮かぶように見えた。

「この月はわたし。碇くんが作り出したわたし…。ありがとう」
「えっ!?」
不思議なことを言って、綾波は小さな月の浮かんだその水に唇をつけて飲んだ。

「ちょ…何してるのっ?」

アスカもびっくりしてる。
僕もびっくりした。

「お腹壊したらどーすんのよ…」
「平気。おいしい水…」

「…」

僕とアスカは黙った。
綾波から、何かよくわからないけど、気圧されるような、ひたすらな魂みたいなものを感じたせいだと思う。

「シンジのお月様ね…」
「え!?」
アスカまで飲んだ。

よくわからないけどドキドキした。睫毛を伏せて唇をつけてる。手の平の月が乱れて、アスカの唇にそっと吸いこまれた。

「おいしい」

「……」

よくわからないけど照れた。恥ずかしかった。
僕の心まで、飲み込まれた気がした。
アスカって、たまに…エッチっぽい。僕が勝手にそう思ってるだけかもしれないけど。

「シンジも飲んだら?おいしい水だわ」

「う、うん」

そう言われて、もう一度水際に近付いてしゃがんだ。
何か嫌な予感がした次の瞬間

「わっぷ!?」

アスカが僕を突き飛ばした。

バッシャーン!

「ケケケケーッ!」

僕のせいで水面が乱れて、月がぐちゃぐちゃになった。蛍たちが逃げた。
アスカがケケケケーッとと笑ったのは大袈裟じゃないよ。本当にそう聞こえたんだよ。

「何すんだよぉ!」

ずぶ濡れだ。

「あーおっかし…キャア!?」

ばっしゃ!

僕も水かけてやった。

「何すんのよ!」
「自分がやったんじゃないか!」







そのあと、結局わあわあ言い合いながらジオフロントに帰った。
アスカと僕がぎゃあぎゃあ言ってるのを、少し後ろを歩く綾波が、微笑んで見ていてくれている気がした。


---------------
<蛇足的解説>
天の月:ユイさん 水に映る月:ゲンドウが作り出したレイ
そんな感じでっす。
シンジ君の月は、「笑えばいいと思うよ」と教えた、彼の心でしょう。
アスカちゃんにとっての月は、また違う意味でしょう。だから少年はドキドキしたんじゃないですかね。


[517] 題名:チンタの恋 名前:ごまめ MAIL URL 投稿日:2011年06月21日 (火) 21時45分

エヴァ×羽衣伝説・・のような
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俺はチンタ。
島の入江の小さな家に住んでる。

ある日、俺は天女を拾った。
わけわからない赤い衣装を身につけたその天女は、すっかり傷ついて、弱り切って浜に打ち上げられていた。

俺は慌てて救い出した。
家に運んで、米を柔らかく煮たのを食べさせ、面倒を見た。よく見たら、右腕と左目がひどく傷ついてるようだった。

「かわいそうに」
「山の裏の泉の水で清めたなら、どんなケガでも治るさー」

村のみんなの助けもあって、俺はせっせと山に通って、奇跡の泉の水を汲み、海では漁にも精を出した。

天女は少しずつ元気になった。

「よかったよかった」
「ありがとう…親切にしてくれて」
「いいのさ。ところで行くところあるのかい」
「行かなければいけない場所があるの。来てくれるはずの人がいるの」
「…ふーん…。なあ、それまで、よかったなら、ずっとおいらのとこに居ていいよ。いや、居てくれよ」

〜〜〜

なぜって、天女は天女なだけあって、ずいぶんとべっぴんだったからね。
夕焼け色の髪をして、海の一番綺麗な青色の瞳をしていた。肌は浜の白砂のように白い。
きっと島の美しさを吸い取って生まれてきたんだろう。
少しわがままだけど、それだって天女ならしかたないだろう。

何年か一緒に暮らした。
おいらは幸せだった。

朝は海で魚をとり、暑い昼は昼寝して、夕方には森の泉の水を汲んでやり、夜には酒を飲んで、村のみんなと楽器を奏でて歌を唄って踊った。

天女は最初はとまどっていたが、いつの間にか、そんな暮らしにすっかり慣れ、楽しそうに、幸せそうに見えた。
つらいこともあったようだが、本当はほがらかで明るい気立ての娘だった。

「チンタは、いつあの天女を嫁にするんじゃあ」

村のおじいが言った。

「そんなんじゃないさー。天女は、いつか帰ると言っとるし、今でもおいらは幸せさー」
「天女だって、この島にずっとおったほうがきっと幸せさー。早く嫁にしたほうがいいぞー」

…そうかな。
確かに、今の暮らしを死ぬまで続けていられたら、おいらだって天女だって幸せだ。よし。ちゃんと嫁に貰おう。
村のみんなの前で祝言をあげよう。

俺は海で一番綺麗な珊瑚玉をとってきた。天女への贈り物だ。

〜〜〜

俺が真剣に申し入れると、天女は目を大きくして、びっくりしていたが、やがて両手で顔を覆った。

「ごめんなさい…あたしもそうできたらどんなにいいか。だけど出来ないの。来てくれる人がいるの。約束したの」
「ずっとそう言うが、そいつは、本当に迎えに来るのか?」
「来るわ。必ず来るわ。あたし待っているの」
そういって、涙を流してるのに、ぱっと笑顔で面をあげた天女を見て、俺は、ああ、やっぱり天女というのは美しいもんだなあと思った。

〜〜〜

もしかしたら、死ぬまで来ないかもしれん迎えを待つ女なのに、俺は離れることが出来ずに一生そばにおるんだろうか。
そう考えると居てもたってもいられず寝床でどたどた暴れ回ったりするんだが、朝になれば風が吹き、でいごの花が揺れ、鳥の声を聞き、「おはよう。朝ねー」そう言って朝飯の支度をする天女を見ると、まあいいかと思えてしまうんだった。

珊瑚玉の数はどんどこ増えていった。

〜〜〜

ある日、俺が漁から帰って家に戻ると、天女の姿がなかった。いつもお昼を用意してくれてるのに。嫌な予感がして、家の中や庭やあたりを捜しまわった。

浜に出たら、あの赤い衣装を来た天女が、小船に乗っていた。同じような変な衣で青いのを着た若い男が櫓を漕いでいた。

「あっ。チンタさんだわ。チンタさーん!おーい!」

天女が俺を見つけて手を振った。

「おーい!み、見つかったんかー!来たのか、迎えがー!その人かー!?」

俺も両手を口の前でわっかにして叫んだ。

「うん、そうー!迎えが来たから、あたし、もう行くねー!ごめんねーー!」

天女が叫ぶ。
とても幸せそうだった。
だから俺も叫んだ。

「…そっかぁ、そっかぁー!見つかって、よかったなーー!さよならー!」

「チンタさーん!ありがとーー!ごめんねーー」

男のほうが、おずおずと俺に目礼を寄越したが、そんなことはどうでもよかった。

だって天女は天に帰ったんだ。

〜〜〜

行ってしまった。
いつかは来ると思っていたことが来た。
夕闇の中、がらんとした家で呆然としていたが、島のおじいが現れた。おばあも来た。男も娘もこどもも来た。酒持って。

「天女はお帰りになったかー」
「会いたい人に会えたんじゃ。こんなめでたいことはないさー」

そう言って、みんな踊った。俺も唄った。三線を奏でる俺の周りで、村の衆みんなで踊った。

まるで島が踊ってるみたいだった。


------------------------------

※チンタ、北海道の黒板家からいきなり沖縄に飛んでしまいました。
※見る人が見ればわかると思いますが、元ネタは映画「ナビイの恋」です。(不思議な感動の映画やった。哀しいけれど明るくて、沖縄ならではの世界だなあと)
※チンタは、珊瑚玉も貯めたことだし、このあとも島の衆に囲まれて、幸せに暮らすことでしょう。ってどうでもいいか?※格差。中々大変そうなテーマですね。格差のない社会って無いよね。※男と女はえげつないもんやで..
※何処さん。次はメタル。


[516] 題名:“お肉嫌いだもの”“なら豚は大丈夫やな”“?”“肉言うたら牛やしな。”“…” 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2011年06月20日 (月) 07時24分

【人分かつAT(味文化的)フィールド】


「…ねえシンジ」

「?何?」

「このパン…じゃない、饅頭なんだけど…」

「?うん?」

「…何で辛子が付いて来たのかしら?」

「辛子?あ、本当だ…アルバイトの店員さん間違って付けたんじゃないかな?」

「ん〜…かもね。」


※※※


ドカッ!

「ト、トウジいきなり何を」

「センセ…ワイはセンセを殴らなあかん…」

「な、何で!?アスカが買った肉まんの話しただけ」
「ちゃうわ!肉まんやのうて“豚まん”や!」

「え?だ、だってトウジ肉まんは肉まんじゃ」

ドカッ!

「センセ…オドレも懲りんやっちゃなぁ、肉まんやのうて“豚まん”や!」

「わ、判ったよ…でも何で辛子なんかがにく…豚まんに付いて」

ドカッ!

「あんなぁセンセ…豚まんに辛子のうてどないすんねん!」

「うう…な、何でたかが饅頭の為に殴られるんだ…」


***


「黒はんぺん?」

「何だ碇知らないのか?ここらじゃ駄菓子屋のおでんに」

「…待ってケンスケ…駄菓子屋に…何でおでん?」

「は?それ普通だろ?」

「…肉まんに辛子が付いて来る位だもんな、何でも有りか…」


***


「…こ、こりは…」

「どうしましたミサトさん?胡瓜嫌いですか?」

「い、いやき、胡瓜はいいんだけどシンジ君…」

「?」

「これ…お味噌汁よね?」

「冷やし汁ですけど。」

「あ、あたしちょっちこりは苦手かも…」

「…アスカも綾波も美味しいって言ったんだけどなぁ…」

「…愛の力かしらね…」

「?」


*食文化、それは時に人種の壁以上に厚く硬く高い**食わず嫌い多目*ソース二度漬け厳禁*麦茶に砂糖*


[515] 題名:うーん・・・ 名前:銀世界 MAIL URL 投稿日:2011年06月19日 (日) 23時32分

>ごまめさん
キンちゃんの話がええ感じで終わっているからか、消毒話(女は、追うと逃げます。それだけです)の方がえげつなく感じるのは私だけだろうか(汗)。
大阪の話は、単に私の関西人の血が騒ぐだけですw

とにもかくにも、メタ的な立ち位置から見る格差社会は、私の専門(?)なのですよ。
エヴァは比較的格差が少ないですが(脇役を踏み台に主人公がのし上がっていくわけではないので)、ケンスケ君は例外っちゅーか何ちゅーか。
某ネット辞書のインデックスの表記は実話ですから泣けますよ、ええ・・・(誰か書き直してあげて〜)。


>何処さん
ヘルシーなお弁当です、きっと司令は高血圧にはならないでしょう^^。


[514] 題名:綾波さん、すっとばす父の日 名前:何処 MAIL URL 投稿日:2011年06月19日 (日) 03時43分

皆さん今晩は、綾波レイです。

今夜のゲストはこの方…

『…私だ。』

ネルフ総司令、碇ゲンドウさんです…

『…処でレイ、これは何だ?』

…碇君から、司令に父の日のプレゼント…

『…二つあるが…』

…一つは弐号機パイロットから…

『?』

…将来の父には胡麻を擦れ…との葛城三佐、それに赤木博士の進言らしいです…

『…レイ、開けてくれ。』

?私が開けて宜しいのですか?

『ああ。お前が適任だ。』
では…碇君の方から…

『…』

…司令、これ…

『…弁当だな…それも日の丸弁当…』

…おかずが無い…

『否、梅干しがある…レイ、もう一つを…』

は、はい……え?

『タッパーか…中身は…』
…ホウレン草の胡麻和え、胡麻ダレ肉団子、人参とセロリの胡麻ドレッシング和え…

『言葉通りだな。』

胡麻を擦れって…そんな意味なんですか?

『…二人で漸く一人前か…ふっ…』

?…実はもう一つ父の日プレゼントが…

『何?』

今フィフスが準備『レイ、フィフスの行動を全力で阻止せよ。槍の使用を許可する。緊急警報発令、総員第一級戦闘配備、これよりネルフは総力戦体制へ移行、各部署は迎撃戦用意、エヴァンゲリオン出撃準備。』

ゥウウウウー――――!

…即断ですね、司令。

『…下手をすれば多方面の勢力からこちらに槍のプレゼントが逆に来かねん。トラブルの芽は早めに摘む。』

了解…

レイ、作戦終了後食事にしよう…胡麻風味のな。

『はい…クスッ…』




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