[295] 題名:思うより下を狙えと言ひきかせ七十九歳射的に遊ぶ≫森川慶子 名前:風太郎 投稿日: 2024/02/04(日) 09:01
今朝の新聞歌壇の『内藤明選』での彼女の作品です。▼初句・2句の意外な入り方、そして下の句でストンと落とす臨場感。私とは同輩であるが、「参りました」と素直に頭を垂れました。▼上の句の「漢(女)」顔負けの大胆な言い差しは、まさしく男の心をくすぐります。▼そうして、なりよりも励みになるのは、創作への意欲が減退する傾向性の中で、まだまだ負けて居られないと、火が付くことであ。
[294] 題名:さよ更けてひとりとなりし吾のために娘(こ)の置きゆきし柚子の香のする≫森川慶子 名前:風太郎 投稿日: 2024/02/03(土) 09:28
新聞歌壇『大辻隆弘選』での彼女の作品です。【評】冬至も近づいた夜。訪れてくれていた娘たちも帰っていった。ひとりだけの夜の時間が流れる。静かなさびしさが作者を襲う。そんなとき娘が置いていった柚子の香りがほのかに漂ってきた。心遣いがしみじみと嬉しい。▼考えて見ますと同年代の友人や、歌友さんも、このような環境に置かれている人が多くなってきています。妻が逝き、夫が逝き、子らも独立をしている。そんな景色を慶子さんは、しみじみと詠っているのである。▼さよ更けて、柚子の香りが漂ってくる情感が何とも言えない世界を醸し出す。そこいらを上手く引き出す、慶子さんの詩情にいつも感心をしています。
[293] 題名:ロシアにも「百万本のバラ」の歌 愛した多くの人達を知る≫池中健一 名前:風太郎 投稿日: 2024/02/01(木) 09:32
今朝の新聞歌壇の『小島ゆかり選』での私の作品である。月の初めに、斯うしてヒットが出ますと、今月は坊主でないとほっとする自分がいます。▼小島先生にも随分と採用して頂き本当に感謝しています。▼この歌は、是非にもと、日の👀を当てたかったと思っていました。露&ウクライナの戦争を別な角度で光を当ててみました。▼この歌は、ロシアの母達、女性のなかで大流行した、平和を愛する女性の叫びです。▼戦争には勝利者はなく、多くの子供や女性を泣かせます。その残酷な殺し合いが、終わることなく未だに続いているのです。
[292] 題名:片方ずつ老眼鏡でたしかめて眉ととのえる泣いておられぬ≫小川洋子 名前:風太郎 投稿日: 2024/01/31(水) 09:54
今朝の新聞歌壇の『坂井修一選』での彼女の作品です。これからはどこの歌壇も、こう言うタッチの歌を詠んで行かなければ、ヒットが難しくなる気配がします。▼洋子さんのこの歌のポイントは結句の『泣いておられぬ』で有ろう。▼なんで泣いているのかを、読者に想像させることによって、景色が幾重にも広がって行』きます。▼その上に『眉ととのえる』との言葉ががアクセントとなり、この歌を引き立てていると思いました。このリアル感が好きです。
[291] 題名:あさまだき東京行きののぞみ号みな前を向きパソコンを打つ≫池田敏子 名前:風太郎 投稿日: 2024/01/29(月) 11:01
今朝の新聞歌壇の『小池光選』での彼女の作品です。この作品は必ずヒットが狙えるから自信を持ってと激励をしたことを昨日の様に覚えています。▼今朝は先輩と後輩が同時に掲載されましたが、結果が成り寄りの励みになる事は言うまでも有りません。▼下の句は、只事歌で名をはす『奥村晃作・歌人』を彷彿させる、何でもない、あるある景色ですが、この、プット嗤ってしまうような、場面の切り取りが成功しました。どんどんと伸びて行って欲しい後輩の歌友です。
[290] 題名:満月が熊野古道にさしこめば山のけものの騒めく気配≫池中健一 名前:風太郎 投稿日: 2024/01/29(月) 09:11
今朝の新聞歌壇の『水原紫苑選』での私の作品です。新年の出始めの1月に5首も採って頂いたのは、少し驚きを隠せません、嬉しい反面、複雑な気持ちです。▼故郷、熊野の神秘的な気配を割に、上手く引き出せたと思います。▼多感な小年時代を、果てなしの紀伊山脈の山間に育った私は、👆の歌のような気配を感じつつ過ごしました。晩年、歌を詠む機会を得た私の貴重な原体験となっています。
[289] 題名:『草の葉』にホイットマンが詠みし国かのアメリカは何処に行くや≫池中健一 名前:風太郎 投稿日: 2024/01/28(日) 08:36
今朝の新聞歌壇の「大辻隆弘選」での私の作品です。【評】十九世紀のアメリカの詩人・ホイットマン。その詩集『草の葉』は、自由平等・民主主義の理想を高らかに歌いあげている。あの理想の国は、今、分断の苦しみのなかにいる。行く先も見えがたい。そんな嘆きが伝わる。▼1年のなかで、詠んだ瞬間にこの歌は「活ける」と思う瞬間が有ります。👆の歌はそのうちの1首です。▼大好きな詩人、ホイットマンをテーマにして詠み、ホームランを打てたことは、素直にうれしく思います。
[288] 題名:訪問の看護士さんは目に留めぬ連れ添う前のふたりの写真≫森川慶子 名前:風太郎 MAIL 投稿日: 2024/01/27(土) 13:13
新聞歌壇「栗木京子選」での彼女の1席の作品です。【評】作者と夫がまだ恋人同だった頃の写真が飾られているのであろう。「連れ添う前のふたり」であるところに味わいがある。そのことに気づいてくれた訪問看護師の存在も、歌にぬくもりを添えている。▼私と同輩である彼女の夫が亡くなる前の景色であるが、何とも言えない優しさが垣間見える夫婦関係である。▼老いてからの、このしっとりした空気感は誰もが真似の出来ることでは有りません。▼この、映画の1場面のような世界を私も切り取りたいと思いますが、時間が掛かりそうです。
[287] 題名:フォトで見しウユニ塩湖のフラミンゴ行進するをこの目で見たし≫池田裕宣 名前:風太郎 投稿日: 2024/01/25(木) 07:06
昨日、同じ『坂井修一選』での彼の作品です。鹿児島県の雅夢士さんの後輩で昨年、秋に退院後、予想した通りにほつほつと、作品がヒットしだしています。▼やはり、結社の歌会で学んでいる現役の詠み手らしく、歌に過不足はなく、具体的な景色が紡ぎだされ好感の持てる作品である。▼恐らく入院中に何かの写真集を見たのでしょう。彼も伸びてくる詠み手の一人だと思いました。
[286] 題名:ふるさとは立木そだたぬ枯木灘 風が風よびまた風を呼ぶ≫池中健一 名前:風太郎 投稿日: 2024/01/24(水) 09:18
今朝の新聞歌壇の『坂井修一選』での私の作品です。今年から交代されました坂井先生はその就任の挨拶で、伝統的な写生歌も採ってゆくと話されていましたが、1ヶ月で2首の採用は予想外の嬉しさです。▼枯木灘の周辺は年中、風が強く、備長炭の原木の馬部樫の雑木は育ちますが高い木立の樹は育たないところから、そう呼ばれています。▼下の句で、思い切って『風』を3度繰り返し、リフレイン効果を狙って成功したのかな、と思っています。▼確りと地に足の着いた歌に挑戦したいと思います。